Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「はつな弁理士法人」に転職しました④

商標コンサルティング

はつな弁理士法人では、新規業務の「商標コンサルティング」という新しい業務を開拓する予定になっています。

 

世の中には、インターブランド社や広告代理店、デザイン事務所など、多くの「ブランドコンサルティング」を行う会社があります。

これらは、マーケティングの一種として、ブランディングサービスを提供しており、ブランドの目指す姿を整理したり、ブランドのビジュアルを変えたり、ネーミングをしたり、消費者アンケート調査をしたり、ブランド価値のチェックをしたりします。

 

私も、12年程度の期間、企業のブランドマネジメント部門にいましたので、インターブランド社や多くのコンサルティングファーム、デザイン事務所と一緒に仕事をしましたので、日本の商標弁理士の中では、ブランド戦略やブランディングは理解をしている方なのですが、今回提供する予定のサービスは、直接、ブランドコンサルティングではありません。

(もちろん、ケースによって、ブランディング、ブランド戦略的な視点で、アドバイスすることが必要なときは、その経験を生かそうとは思っています。)

 

今回のミッションは、「商標コンサルティング」です。「商標コンサルティング」を提供するにあたり、まず必要になるのは、商標弁理士とのしての知見ですが、より重要になるのは、企業で「商標管理」をしていたときに経験した「企業の商標管理」だろうと思います。

通常の特許事務所でも、依頼された商標調査、出願、中間の権利取得や、異議等の係争案件は、使用許諾交渉や譲渡交渉程度は対応します。また、商標調査戦略や商標出願戦略を相談できる商標弁理士はいると思います(調査会社や外国出願会社の方が詳しい可能性はありますが)。

 

しかし、商標弁理士が、顧客企業の商標管理自体にコメントするようなことはほとんどありません。

「商標管理」というと、更新などの期限管理を中心とした事務管理を想像しがちですが、大前提として、商標のものの見方・考え方ということができます。

商標の名義は誰の名義にすべきか、どのような商標体系を作っていくか、ライセンスを含めてどのように戦略的に商標と向き合うか、商標の啓発はどうすべきか、商標管理体制(連絡網)はどう構築べきか、というものです。

コンサルティングファームでは、会計系のデロイトトーマツグループのサービスに、名義などは多少近い内容がありますが、ほとんど特許寄りの内容のようです。

実は、商標と特許は発想が違うことが多いのですが、そこはあまり気にせずに、一括りに知的財産コンサルティングと括っています。

知的財産コンサルティング|知的財産アドバイザリー|デロイト トーマツ グループ|Deloitte

 

会社によって、商標のポリシーは大きく異なります。沢山商標出願することを良しとする考え方もありますし、商標を絞って強い商標を作るという考え方もあります。

この「商標管理」は、実に奥が深いものであり、各企業がトライ&エラーを繰り返して、各社各様で行っているのが実情です。

商標管理を一番学べるのは、知財協会や業界団体の商標委員会の飲み会の席、商標協会の実務検討部会程度ではないでしょうか。

商標管理の書籍といっても、昔の日本生産性本部や萼優美先生や小野昌延先生、藤原龍治先生の本ぐらいしかありません。

商標管理については、知財管理誌、パテント誌、INTA、商標協会、すべての情報媒体においても、その重要性に比べて、決定的に情報不足です。

 

商標コンサルティングの内容は、アイディア出しの状態ですし、どこまで需要があるのは不明です。

ただ、はつな弁理士法人には、非常に多くの既存ユーザー(クライアント)があります。また、成長真っただ中の企業が多いのも特徴です。それらの企業では、どのように商標を管理していけば良いのか、相談したいと思っておられる会社もあると思います。

これまでの経験から、各社の状態を見ると、こうした方が良い、将来こうなるだろうから、今こうしておくべきというのは、ある程度ガイドすることができますので、このあたりが商標コンサルティングになるのかもしれません。

 

ある程度、コンサルティングの事例がまとまれば、ブログ、ウェブサイト、雑誌、書籍などで紹介したいと思っています。

 

先日、特許を中心とする「知財コンサルティング」で一本立ちしている事務所の弁理士の方の話を伺ったのですが、まだ、特許出願に誘導しようとする知財コンサルが多いが、それは目指すべき知財コンサルではないという話を聞き、まったく、その通りだと思いました。

特許事務所経験での弁理士経験、企業での商標管理の経験やブランドマネジメント(ブランド戦略)の経験もありますので、千差万別の顧客企業のご要望に、対応できるのではないかと思っています。

「はつな弁理士法人」に転職しました③

Googleスプレッドシート、Zoom、Slack、Notionなど

はつな弁理士法人に転職して、まず驚いたのは、業務で使用するソフトにマイクロソフト系があまりない点です。その代わりにGoogleなどのソフトを使っています。

Windows3.1、Windows95の時代から、マイクロソフトのOfficeソフトにお世話になりましたが、Officeソフトを使わなくて良い時代になったんだと実感しました。

 

はつな弁理士法人の業務では、cotoboxシステムという強力なコミュニケーションツールがあるので、そもそもwordが不要です。

次に、表計算ソフトについては、excelではなく、Googleスプレッドシートを使います。一番大きな違いは、「保存」が不要ということです。昔よくあった、何時間もかけて作ったexcel表が保存できずに消えてしまったということがありません。

 

自前のファイルサーバはありません。クラウドGoogleドライブに、作った表などは自動で格納されます。

「保存」という行為がいらないのは、最近のマイクロソフト365でも同じであり、One Diveに自動保存できるのだろうと思いますが、従来の共用ドライブやデータ保存の方法に慣れているので、まだ、あまり皆さん使っていないのではないでしょうか。

 

また、テレビ会議は、Teamではなく、Zoomです。これは、これまでも使うことがあったので、違和感はありません。

ただし、運用が異なり、週に2日ミーティングがあり、報告があったり、勉強会をしたりしています。

 

次に、Slackです。これが一番強烈です。ビジネスチャットのソフトとは知っていました、単なるチャットソフトではありませんでした。

チャネルが沢山あり、どんどん書き込みがあります。私にもメンションがあるので、確認の絵文字をつけたり、即答してどんどん処理していかないと置いてけぼりになります。

内部の連絡はすべてこのSlackです。外部とも使えるようですが、まだ十分使いこなせていません。まだ、そこまで使えていませんが、Slackは電話にも、テレビ会議システムにもなるそうです。

 

リモートワークが基本の事務所であり、まだ、全員をお会いしていないのですが、Zoomでの週2回のミーティングやSlackがあることで、隣で仕事をしているような錯覚を覚えます。

 

そして、Notionというソフトです。Notionは、イントラや共用サーバーの代わりになるものです。WordやPowerPointを作る程度の感じで、簡易なイントラネットサイトが簡単に出来上がります。

これに招待機能をつけて、例えばWebデザインを検討してもらっているデザイン会社などと情報共有をすることも可能なようです。

 

外部との連携に、SkackやNotionの中間のような、ChatWorkも使い始めました。

 

先ほどのSlackにも、Googleドライブにも、ほとんどのものに招待機能があります。

協業というほどのことはないですが、情報共有に、excelで書類を作り、データを保存し、それをemailソフトで送るという作業手順がなく、時間が短縮できます。

 

この話を何人かにしたのですが、スタートアップ、ベンチャーでは、Googleスプレッドシート、Slack、Notionであり、これらを使うことは標準的な話のようです。

一方、中小企業や、大企業では、導入はまだ一部のようです。

これらのソフトに影響を受けて、マイクロソフト365になっているのだと思いますが、マイクロソフトのソフトを使っていると、過去のアーカイブに引っ張られて、運用を旧態依然の方法で行うために、折角の価値を引き出すことが、なかなかできなように思いました。

 

特許事務所では、電子出願導入以前からある事務所と、電子出願導入後にできた事務所で、ペーパーレスの程度が違います。

しかし、ペーパーレスの進んだ事務所でも、Wordを重視している人が多いので、新しくできた事務所でも、スタートアップやベンチャーのように、すぐにGoogleソフトやSlackとはなりにくいとは思いますが、どこかで、切り替えが必要な時期が来るかもしれないなと思いました。

知らない間に変化が起こっているようです。

「はつな弁理士法人」に転職しました②

cotoboxのシステムを使ってみて

先日、ある企業の知財部の方から、はつな弁理士法人とcotoboxの関係をよく質問されました。これを、説明しようと思います。

また、cotoboxについては、何よりそのシステムを理解することが重要です。cotoboxのシステムでは、特許事務所時代に感じていた、業務の無駄が相当改善されています。

 

<はつな弁理士法人とcotobox>

はつな弁理士法人の代表とcotobox株式会社のCEOが、同じ五味弁理士という共通点がありますが、基本的には別の法人であり、運営は別々です。

cotoboxのサービスを利用するユーザーが、cotoboxの提携事務所の一つとして「はつな弁理士法人」を商標出願の代理人として使用し、最終的に特許庁に出願するという関係になります。

 

<cotoboxのシステム>

cotoboxは、AIを使った商標検索というイメージがありますが、それは、実はユーザーをcotoboxを使っていただくための導入部分です。

より重要なことは、cotoboxは商標に特化したコミュニケーションツールであるという点と、商標管理システムでもあるという点です。

 

1.商標に特化したコミュニケーションのツールとしてのcotobox

cotoboxのユーザーは、商標の特定、指定商品の特定、出願に至るコミュニケーションや、出願した商標情報の連絡について、cotoboxのシステムを利用します。

事務所の弁理士がcotobox上で記載したコメントはcotobox経由でemail送信され、何らかの動きがあったことをお知らせします。ユーザーはcotoboxのウェブサイトを見て、必要な連絡を事務所に出してもらうことになります。

この意味で、cotoboxは、ユーザーと事務所宛てのemailソフトのような役割を果たしています。そして、その内容は、スレッド形式で全て記録されています。

 

WORDで書類を作り、PDF化して、emailで送るという、面倒な作業が必要ありません。業務効率が良いのが特徴です。従来のemailよりも、断然、作業がはかどります。

 

また、最近は企業内のワークフロー、事務所への依頼、知財管理データベースが、一つになったシステムもありますが、大企業の特許利用を中心に設計されているので、オーバースペックだったり、使いにくかったりします。

cotoboxのシステムでは、商標に特化しているため、ユーザーと事務所にとって最適化されており、ユーザーフレンドリーなシステムです。

 

2.商標管理システムとしてのcotobox

通常、特許事務所では、PATDATAやroot IPのような商標管理システム(知財管理システム)を使用します。一方、クライアントでも、同じようなシステムか、あるいは、エクセル表で商標管理(狭義の商標管理=期限管理など)をします。

 

通常は、emailでやり取りしたような内容を、紙ファイルでファイリングしたり、商標管理システムに入力・資料格納をする必要があります。

紙ファイリング・電子ファイリングや、商標管理システムでの期限管理等は、重要な作業なのですが、非常に面倒な作業です。cotoboxではコミュニケーションのツールと商標管理システムが一体化していますので、ユーザーも事務所も、業務効率が非常に良好です。

 

3.ユーザーと事務所が、一つのシステムを使うメリット

cotoboxを活用することで、クライアントも特許事務所も、共通の商標管理システムを使って、出願情報を共有することになりますので、双方とも、従来タイプの商標管理システムを使用することが不要になります。

 

①ユーザーのメリット(商標の書誌的情報の管理が不要に)

cotoboxの商標管理システムは、個人や中小企業といったユーザーにとっては、非常に大きなメリットです。

保有標数が数百件以上というような会社であれば、商標管理システムを導入しても良いかもしれませんが、数件/年しか商標がないような個人や中小企業では、どうしても、エクセル表管理となります。

一般に、大企業の知財部門でも特許事務所ほどの期限管理はできません。cotoboxをデータベースと考えると、ユーザー側は入力が不要ですし、安心です。

(多少の改善を加えれば、大企業でもcotoboxで十分と思いました。)

 

なお、国内については、特許庁のデータベースと同期をとっているので、書誌的情報は完全なものです。

 

②事務所のメリット(2重の入力作業問題について)

特許事務所では、コロナ禍以降、企業から、各企業の知財管理システムへの入力を依頼されることが多くなっていますが、事務所では、事務所の商標管理システムに入力と企業の商標管理システムへの入力という2重の入力作業が発生しています。

無償でこれを要望するクライアントが多いのですが、相当な手間がかかっており、事務所としては放置できない問題です。

もし、事務所の商標管理システムをcotoboxにし、ユーザーもcotoboxを使用すれば、2重の商標管理システムへの入力作業をせずにすませられます。

 

<まとめ>

cotoboxは、AIを使った商標検索システムと思っていましたが、実際は、商標業務に特化した、クライアントと事務所間の、優れたコミュニケーションツール(兼)商標管理システム(商標データベース)と考えた方が良いと思いました。

まだ、十分に使い込んでいないので、さらに良い面があるかもしれませんが、私個人の第一印象は、上記のようなものです。

「はつな弁理士法人」に転職しました①

創立7年目の若い事務所

2022年7月末に、約5年半お世話になった、きさ特許商標事務所を退職し、はつな弁理士法人に転職しました。

www.hatsuna.com

(まだ、ウェブサイトに私の情報は載っていません。)

 

はつな弁理士法人は、2015年にできた若い事務所であり、現在7年目です。

代表は五味和泰弁理士ですが、五味さんは、AIを使った商標検索と商標願書案の自動作成をするシステムの開発・運用をしている、cotobox株式会社(https://cotobox.com/ )のCEOでもあります。

そのため、はつな弁理士法人の業務は、cotobox経由の依頼が多いのですが、事業は好調のようであり、2021年や2022年上期は、出願代理件数日本一という結果だったようです。

2021年商標 事務所ランキング | 知財ラボ (jp-ip.com)

2022年商標 事務所ランキング | 知財ラボ (jp-ip.com)

 

5年前(2017年9月)、AIによって士業が大変になるのではないかという話があったときがありました。

AI時代のサムライ業(上)代替の危機 新事業に挑む: 日本経済新聞 (nikkei.com)

実は、このとき、私もこの記事を見てAI商標検索に関心を持ち、夜にcotoboxを訪ねて、五味さんにお話を聞きました。

ただ、当時の私は、パナソニックから、きさ特許商標事務所に転職してまだ半年だったので、五味さんと一緒に行動するには至りませんでした。

 

それから、5年の歳月が経ち、きさ特許商標事務所を去るときに、自分で事務所を開業しようか、どこかに再就職するべきか考えました。

結論として、自分ひとりでできることには限界がありますし、事務所の代表の先進的な考え方やフランクな人となりもあって、五味さんのはつな弁理士法人に、転職することにしました。

 

それでは、「はつな弁理士法人」を少しご紹介します。

 

事務所は、霞ヶ関駅直結の飯野ビルにあります。ECOに配慮したビルだそうです。そのビルに、最近流行のWeWorksタイプのシェアオフィスがあり、パブリックスペースからは、日比谷公園全体が見通せます。なかなかの眺望です。

飯野ビル (iino.co.jp)

 

「はつな」とは、寒梅の異名「初名草」に由来し、「先駆者」という意味を込めています。事務所のウェブサイトの説明では次のようになっています。

事務所名「はつな」は、寒梅の異名「初名草」に由来します。

寒梅を、一年のうちで一番に咲く花であり、あらゆる花のさきがけと捉え、知財業界の「先駆者」でありたいという意味が込められています。

また、漢詩に「真理似寒梅敢侵風雪開」(真理は寒梅のごとし。あえて風雪を侵して開く)というものがあり、あえて真理の探求を楽しむことを願って名付けられました。

 

これまでは、「はつな知財事務所」と言っていましたが、今回、弁理士法の改正を受け、「はつな弁理士法人」になります。

弁理士法人はつな知財事務所」とする方法もあったと思いますが、「後株」形式にしています。「はつな弁理士法人」とする方が、文字数が減りますし、シンプルです。「前株」形式の「弁理士法人はつな」では、折角の「はつな」が目立ちません。この「抽象名称+弁理士法人」は、最良の方法だろうと思います。

 

名称変更に合わせて、事務所のブランドロゴを新たに作り、ミッション・ビジョン・バリューを整理したりしています。提携しているデザイン会社やブランドコンサルタントもいるようであり、このあたり、よく考えているなと思いました。

 

はつな弁理士法人では、弁理士その他、メンバーはほとんどがリモート勤務です。人が集まった日は、夕方に急にカードゲーム大会をやったして、親睦を深めたりしています。このあたりは、スタートアップ的で開放的です。インターナルコミュニケーションも積極的にやっているんだなと思いました。

 

若い事務所ですので、もちろん課題はありますが、それらをクリアーしながら、今後とも伸びていく事務所ではないかと思っています。

「BtoB企業におけるブランディングの実践論」を読みました

知財管理に出ていた論説

1年ぶりのブログです。毎日書くのは大変ですが、気が向いたときなどに、書いてみようと思います。

 

さて、昨日、知財管理誌の2022年6月号に出ていた、「BtoB企業におけるブランディングの実践論」という、博報堂コンサルティングの森門教尊さんの論説を読みました。

知財担当やその中の商標担当は、BtoB企業ではブランディングの主役になることが多く、その方々にブランディングの実践方法を解説しているものです。

 

確かに、技術に特徴のあるBtoB企業では、広告宣伝や広報もそれほど人がいるわけではない反面、知財担当者は充実していることもありえますので、知財担当がブランド戦略の推進役になることもあるのだろうと思います。

 

そのほか、論説の内容としては、BtoB企業とBtoC企業の違いの説明や、ブランドのプロジェクトの進め方、特に既存の社内の会議体の活用などに言及しているところがポイントでしょうか。

 

知財担当が、BtoB企業においては、重要なブランディングの推進役であるという指摘が、この論説のメインの主張と思いました。詳細は、知財管理誌をご確認ください。

 

<敷衍して>

最近、弁理士会の関係で、コーポレート・ガバナンス・コード(CGC)について、教えてもらったり検討することが多かったのですが、CGCにおいては、「知財財産」ではなく、「知財・無形資産」と広がりをもって捉えられています。

知財・無形資産」は、「技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信頼・レピュテーション、バリューチェーンサプライチェーン、これらを生み出す組織能力・プロセスなど」を指すようです。

 

また、サービス業で、従来、技術や特許にあまり関係のなかった企業でも、十分に「知財・無形資産」があります。

上場企業には、サービス業も沢山ありますので、それらの知財担当者がいない会社にも、当然に、「知財・無形資産」はあります。そして、従来型の技術・特許では収まりきらないところまで、CGCは知財開示や取締役会などでの監督を求めています。

 

冒頭の論説にもどりますが、この論説がターゲットにしているのは、部品・部材などを作っている技術の会社なんだろうと思いますが、世間には、技術や特許に関係ないBtoBの会社というものも、相当にあると思われます。

そして、技術や特許に関係ないと、特許担当という意味での知財担当者はいません。

 

そのタイプの会社でも、商標はあることが多いですので、法務や総務の担当者が、商標担当者になっているのだろうと思います。

まだまだ、知財=特許=技術、という感じで捉えてしまいますが、上記の「知財・無形資産」の定義は、「技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信頼・レピュテーション、バリューチェーンサプライチェーン、これらを生み出す組織能力・プロセスなど」ですから、技術やノウハウ以外の方が種類は多いように思います。

CGCは、知的財産の概念も変えていくものになるかもしれません。

 

知財管理誌は、知財担当者が読む雑誌ですので、冒頭の論説の知財担当者あてで良いのですが、本当は、それ以外の方で、上記の「知財・無形資産」を扱っている方にも、ブランディングの裾野を広げる必要があるのかもしれないと思いました。

 

 

ボラギノールの天藤製薬

ロートが買収

2021年6月9日の日経に、一般用目薬の国内最大手のロート製薬が、痔治療薬の「ボラギノール」の天藤製薬を買収するという記事がありました。

ロート製薬、「ボラギノール」の天藤製薬を買収 90億円: 日本経済新聞 (nikkei.com)

とあります。

 

コメント

 ロート製薬は、胃薬(パンシロン)と目薬(Vロート)の会社と思っていたら、メンソレータムの買収で、現在はスキンケアの会社でもあるようです。

ヘルス&ビューティー事業 | ロート製薬株式会社 (rohto.co.jp)

 

痔のクスリはスキンケアの延長線にはあるので、商品戦略としては理にかなったM&Aのようです。

 

天藤製薬の2021年3月期の売上は58億円とありますので、90億円の買収金額は、少しプレミアムがついているなと思いました(この点、薬は利益率が高いので、適正なのかもしれませんが)。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF02D7Z0S1A600C2000000/https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB097LE0Z00C21A6000000/

 

少しに気なったは、武田薬品が30%の株式を持っているという点です。

確か、ボラギノールは、元武田コンシューマヘルスケアのアリナミン製薬が販売していたと思います。

アリナミン製薬株式会社(旧社名 武田コンシューマーヘルスケア株式会社) (alinamin-pharma.co.jp)

また、今回の買収の立役者のロート製薬の杉本社長は、武田の出身のようです。天藤製薬のことも良く知っていたんだろうなと思いました。

 

アリナミン製薬は今後もボラギノールの販売を継続するようですが、これは日本での話であり、海外ではあまり販売していないようです。

一方、ロートはメンソレータムがあるためでしょうか、海外販売網があり、ロートの海外販売網にボラギノールを載せることができるそうです。

国内販売にも影響を与えず、海外を攻めることができるということで、上手く整理されているM&Aだと思いました。

 

大衆薬は、多くの儲けにはならなくても、着実に儲けができるので、ボラギノールなどでしっかりと稼いで、その資金を再生医療に投入するということです。再生医療の知識がないので、どれほど重要なことかわかりませんが、夢がありそうです。

 

武田薬品は、一般大衆薬の武田コンシューマーヘルスケアを切り出しましたが、大衆薬で儲けるというビジネスモデルもまだ健在なんだなと思いました。

 

※都合で、このブログは、少し、お休みをします。また、再開できる日を心待ちにしています。

企業統治指針と知財とブランド

ブランド戦略の開示、外部評価、そして投資へ

2021年6月19日の日経で、6月に改定されたコーポレート・ガバナンス・コードの話が載っていました。

企業統治指針、次は知財 ブリヂストンなど先行: 日本経済新聞 (nikkei.com)

改訂されたコードの内容は、

  • 内容は2つ
  • 「取締役会は知財などの投資を実質的に監督する」
  • 「上場会社は、知財の情報を分かりやすく開示」する
  • 知財を他社からの訴訟などに備える「守り」だけでなく、事業提携など「攻め」にも生かすには、経営層と知財部門の頻繁な情報交換が欠かせない

とあります。

 

内閣府の資料には、コーポレート・ガバナンス・コードに知的財産が明記されることに対応して、

  • 企業では、「知的財産投資・活用戦略に関する開示ガイドライン(仮称)」の策定が必要になり、
  • 統合報告書、知財報告書、IR資料等において開示し、
  • それを、知的財産専門クラスターが分析・評価分析して、機関投資家に提供するとあります

siryou2.pdf (kantei.go.jp)

 

また、「知財ガバナンス研究会」というものが、発足しているようです。

「知財ガバナンス研究会」の発足とメンバー企業募集のお知らせ | HRガバナンス・リーダーズ株式会社 (hrgl.jp)

 

なお、ここでいう知財には、特許のみならず、ノウハウやブランドを含んだ概念だそうです。

 

コメント

2003年〜2006年頃に、知財報告書や知財白書がブームになりましたが、それは一過性に終わりました。

しかし、東証のコーポレート・ガバナンス・コードに明記された現在、状況は大きくことなっています。

また、IPランドスケープなどの手法も、一般的になり、企業の知財活動は高度化しています。

以前とは異なり、今回は、続くと思われます。

 

ポイントは、外部の評価者で、内閣府の資料にある知的財産専門クラスターの育成が上手く行くかどうかですね。

企業の知財戦略を評価して、投資家や世間に伝える仕事です。YouTuberが子供の憧れの職業となる時代ですので、知財専門クラスターに収入がある状況になり、知財パーソンの憧れの職業となるようにでもなれば、このスキームは回る可能性がありますが、その資金を、機関投資家が出してくれるのでしょうか?

あるいは、一般の人を対象に、知財専門クラスターは、YouTuneチャンネルを開設した方が良いのかもしれません。

 

25年前に、松下通信工業にいたときに、クアルコムの話題で持ち切りでしたが、そのとき、クアルコムの株式を買っていたら、今頃、左団扇であったことは確かです。

 

さて、もう一つはブランドです。ブランドを、経営戦略ではなく、コミュニケーション戦略という間違った位置づけをしている会社がほとんどです。これは、広告代理店やブランドコンサルにも、大きな責任があります。

いち早く、ブランドは経営戦略そのものであるという当たり前の状態に戻すべきです。コミュニケーション部門は、ブランドの名称を返上すべきです。すべてはそこから始まるように思います。

コミュニケーション部門の問題点は、事業部門や研究開発部門が作ったものを、社内外に発信するのが仕事であり、基本的に受け身であるという点です。すなわち、事業部門や研究開発部門のような主体性に欠ける点にあります。これでは、ブランドを作り、育成することはできないと思います。

もちろん、調整機能だけの経営企画なら、あまり大差はないのですが。

 

内容的には、知財的な

  • ブランドの権利化の目標、権利化の効率性
  • 模倣品対応

ぐらいは、公表資料なので、昔から開示しているとしても、

  • ブランドガイドライン(ポリシー、考え方、ルール、表現)の公表
  • ブランドをマネジメントする組織
  • ブランドライセンス収入、ブランドライセンス方針
  • M&A時のブランド方針
  • コ・ブランディングの方針、外部との協業方針とブランド表示の例示
  • 技術ブランディング
  • ブランド社内浸透の内容
  • 社内外のブランド認知等の評価、その目標、評価向上のための指標
  • ブランド戦略の成功事例

このあたりをどこまで開示するかですね。

しかし、社員に開示できないものはほとんどないでしょうが、内々で処理してきたことも多いので、どこまで何を開示するかは、考えてしまいそうです。

 

内々で処理をして、外部の批判の目に晒されていなかったのですが、公開して、批判を受け、軌道修正していくのもありだろうと思います。