Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

米国の模倣品対策

最近のアメリカの話

2018年2月20日に、日本弁理士会の貿易円滑化対策委員会が主催した「模倣品の実情と米国における模倣品対策」という研修会に出ました。

模倣品対策というと、中国であるとか、中近東であるとかが、すぐに出てくるのですが、米国の話しというのは珍しいと思い参加しました。

 

講師は、特許庁の総務部 企画調査課の課長の 今村 亘さんです。JETROでニューヨーク駐在をされていたときの話のようです。配布資料をベースに、理解したところと、印象に残ったところを、ざっくりまとめると次のようになります。

 

1.アメリカでも模倣品は多い

最大の消費地ですので、多くて当然でしょうか。生産地(例えば、中国)で押さえるか、販売地で押さえるかは、選択です。

 

税関の数字と思いますがで、2016年の模倣品は2009年比で60%増となっているそうです。2016年の年間の差押えは31,560件となっています。1990年代初頭から、模倣品の取引は合法的な取引の8倍のスピードで伸びているようです。

 

模倣品の出荷国は、中国が72%、香港が14%ですが、金額では、中国と香港は同じぐらいのようです。香港からは高級品の模倣品が輸出されているようです。

 

また、3Dプリンターで作った銃器が、ネットで販売されていることもあるようです。

 

2.インターネットと模倣品

最近、特に問題になっているのは、ネットショッピングやネットオークションなど、ネット販売で、特に薬だそうです。ネット上で模倣品の薬が販売され社会問題になっているようです。カナダが発信地ということです。健康被害の出る薬もあるようです。

 

3.知的財産執行調整官(IPEC)

模倣品対策は、FBI、食品医薬品局、税関、ITC、USTR、USPTO、その他と関係省庁が多いので、全体を見るために知的財産執行調整官(IPEC)なる役職があり、ホワイトハウスにいるようです。

 

4.USTR

米国通商代表部は、知的財産権の保護とエンフォースメントの状況を記したスペシャル301条の報告書を作成しています。

優先監視国、監視国を指定して、是正を迫るなど、通商政策の面があります。

 

5.税関(CBP)

模倣品対策で、一番身近な組織として、税関があります。6万人の職員がいるようです。一日、500万ドル相当の製品を押収しているようです。

商標登録が200万件ありのに、税関登録されているのが32,000件程度と少ないようです。

 

6.ITC

米国国際貿易委員会で、関税法に基づく準司法的機関です。行政法判事が審理し、知的財産侵害品の差止が可能です。

特許侵害事件で、一般に米国企業が外国企業の製品流入を止めるために使うものです。申立てから1年半という迅速な決定が出るのが、ポイントです。

 

7.CSIP(安全なインターネット医薬品センター)

各種の業界の団体があるようです。このCSIPのwebサイトでは、インターネット薬局が正規の薬局かを確認するサイトで、ドメインネームを入れると、結果を示してくるようです。

 

米国は、世界一の消費地ですので、模倣品の数も多く、その対策も多岐に亘っているというのが感想です。当然、通常の民事や刑事もありますが、その他にも色々あるんだなぁと思いました。

 

これまで日本は、日本語という言語の特殊性や、独特の流通制度などが、模倣品を防止してきたのだと思いますが、日本でも、インターネット取引を中心に模倣品が出てきているようです。先日、日本商標協会の30周年記念イベントで、楽天の国内における模倣品対策の話を聞きましたが、相当、事例もあるようでした。

 

アメリカの各種の対応策を、日本でも実施しないといけない時がくるかもしれません。