Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

店舗デザインの保護

意匠権で保護?

2018年5月20日の日経に、特許庁は店舗デザインも意匠権で保護する方針であるという記事がありました。

www.nikkei.com

  • 意匠権の対象を広げ、店舗の内外装を新たに加える
  • 優れた店舗デザインの海外企業からの模倣を防ぐ
  • 21日にまとめる報告書に明記。2019年の通常国会提出を目指す
  • アップルやスタバの特徴のある店舗は、企業ブランド作りの一端を担う
  • 欧米では知財として保護
  • 日本でも、2016年にコメダの事件
  • 不競法では、周知性が要件
  • 意匠では周知性は不要で、新規性でたる

コメント

特許庁が、「産業競争力とデザインを考える研究会」をやっており、ここでトレードドレスが議論されていることは聞いていました。トレードドレスというぐらいですので、デザイン的な側面も当然ありますので、意匠で保護することも可能性としてはありえます。

しかし、トレードドレスは、アメリカなどでは、 Lanham Actで保護され、商標の対象ですので、本当に意匠で保護するのが良いのかと思っていました。

 

店舗デザインの問題を、マクロでみると、

⚫周知で、消費者が混同するような場合以外は、保護不要とすべきとの考えがあります。この場合は、商標的な保護だけにしておくことなります。経済自由主義的な考えであり、店舗デザインを模倣することは悪ではなく、意匠で保護することは企業の自由を制限するだけという意見です。

⚫一方、店舗デザインを、意匠で積極的に保護して、新規な店舗デザインがどんどん世の中に出てくることを奨励しように誘導するという立場なら、意匠でも保護するとなります。

 

店舗デザインの問題を、ミクロでみると、

⚫商標であれば、更新もできますし、出所混同を半永久的に防止することもできます。一方、意匠の保護期間は、設定登録の日から20年であり有限です。

これについては、伊勢の赤福の本店のように、何十年何百年と使われているものもありますが、確かに20年もあれば、ほとんどの案件では、十分かもしれないとは思いました。

⚫また、物品性との関係をどう整理するか?も議論になります。画面意匠でも、物品性を超えることができなかったようですので、今回それをどう整理するのかということになります。

特に、例えば、コーヒーショップのようなサービスをどのような物品と考えるのか?と言う論点です。

⚫一番の課題は、日本で意匠と認められても、海外で意匠と認められないことです。日本の店舗デザインの意匠をベースに優先権主張をしたり、ハーグ条約の意匠の国際出願をしたときにどうなるのかという論点です。

最近は、従来、ドメスティック企業と思われていた企業でも、サイゼリヤユニクロなど海外で成功している会社が出てきており、それらの店舗内外装を守ることが必要ですが、海外で意匠と認めてくれるのだろうか?と思います。

 

最後の落としどころは、意匠では新規性を中心に登録し、商標では周知性の獲得で登録して、トレードドレスの早い時期は意匠で、有名になってからは商標でと、二重の保護になるのではないかと思いますが、マクロの議論は重要だと思いました。

飲食店チェーンでは、店舗模倣が目に余るので、それを積極的に改善していくために、意匠登録を使おうというなら、意味のあることだと思いますが、異議申立制度がないので、無効審判などは増えるかもしれません。

意匠でも商標でも、どちらでも良いのですが、行政が紛争を高い次元から、整理するという強い意思が必要と思います。