独占の意図なし
2019年7月8日のIT Mediaで、ヤフーが広告用語で大量の商標出願をしているという記事がありました。
ヤフーが広告用語で“大量の商標出願” 「先取りを防ぐため」「独占の意図はない」と説明 - ITmedia NEWS
- ヤフーが、ネット広告業界で広く使われている用語を商標登録出願
- 「リッチアド」「レスポンシブ」「入札戦略」「オーディエンスカテゴリー」「ラーニングポータル」など
- 独占的に使用するためではないかと疑問視
- 同社は、そうした意図はないと否定するコメントを発表
- 商標を“先取り”されてトラブルに発展するのを防ぐ目的
- 防衛的な観点から出願
- 登録できた場合は業界で広く使えるようにする。独占的に使用する意図はない
- 業界全体で使用されており、特許庁の審査で「識別力がない」「一般的な名称である」と判断された用語は、どの企業も商標登録できない
- 今回のヤフーの出願が審査を通過するかは分からない
というような内容です。
ヤフーの「お知らせ」は下記です。
商標法改正の背景とヤフーの商標出願の方針について - Yahoo! JAPANの最新マーケティング情報
ベストライセンス問題に端を発しているとの記載があります。
コメント
さて、ヤフーがどのぐらいの件数を出願しているのかと思い、J-Plat Patで見ると、2019年で、32件とヒットしました。たいした件数ではありません。
ベストライセンスは、すでに、2019年に2万件を商標出願しているとあります。(上田さん個人は、2500件くらいです)
これに比べると、微々たる数字です。
当然、誰にも、商標出願する権利、自由もあります。ヤフーが出願することを、出願したヤフーを非難はできないように思います。
また、ITメディアで議論になっているようなものは、特許庁が、識別力なしとして、拒絶するのだと思いますので、あまり心配はないように思います。
日本の特許庁はその程度のことはやってくれます。
ただ、ヤフーが、識別力のないものに商標権を取られて事業活動を阻害されるのを防止するために、防衛のために出願するというのは、特許庁の識別性の審査に対する不信の表れでもあります。
ヤフーのようなことを、各社がすると、特許庁の審査の量が増え、審査の足を引っ張るので、そういうことをしなくて良いように、商標の風土を変えていく必要があります。
ヤフーの問題のスタートはベストライセンス問題です。上田さん一人に振り回され、未だに根本的な解決策が出せないというのは、どういうことかと思います。
商標行政遅延で、商標出願差止訴訟を上田さんに起こせばよいと思いますが、ちっとした改正で、後手後手の対応しかできない、現在の特許庁へのヤフーからの批判とも考えられます。
ヤフーを責めらることはできないとして、各社がヤフーのように、識別性のない商標出願をするとすると、世の中が更に疑心暗鬼になります。
本来、経済発展を図るべく商標制度を導入しているのに、商標制度が、経済発展を阻害しているという現状をどう見るかです。
ベストライセンス問題を、本気で考えると、
- 使用意思の確認を厳しくする方向に戻す
- 商標審査の識別力の判断を厳しく判断する(無駄な出願をしなくて良いように)
- 識別力の疑わしいものには、3条2項での使用証拠を要求する
- 出願時の使用商品を、上位概念指定できなくする(国際分類のアルファベチカルリストのレベルにする)
- 異議のしやすい付与前異議に戻す
- 使用証拠を、登録時や更新時に要求する方式に戻す(使用宣誓でもよい)
- 権利行使には使用を条件とすることを法律に明記する(中国、ドイツ)
全体に、使用していない商標は価値がないという原則にもどるということになります。
権利者同士に任しておけばよいような、抵触性審査は、ズバリ同一や極類似だけにして、そこのパワーを掛ける必要はありません。
上記のような、商標本来の姿に戻すように、上田さんが課題提起しているような気もします。
ちなみに、長期間、類似商標が併存して市場に出ていることは、市場では混同していない、すなわち、類似しないという論理があり思います。
この論理を入れるなら、類似審査をしてもかまわないと思います。
日本は、一般的出所混同という概念ですので、この考え方を否定しますが、この考え方を、台湾の案件で見ました聞いた。納得ができる考え方です。
一般的出所混同からの決別が、ベストライセンス対策になるとも言えます。
先願主義と先使用主義が正しい対比なのに、使用主義と登録主義という別の言葉入れてしまったために、日本の商標法は、おかしくなった感じです。全世界、登録主義といえば登録主義です。
もう一度、商標制度は設計し直すべきです。