Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

食品日用品ブランドランキング

ユーロモニター

2019年3月12日の日経に、英調査会社ユーロモニターインターナショナルが発表した、世界の食品日用品のブランド価値ランキングが掲載されていました。

 

この調査は、ブランド別に商品の小売販売額を推計するもので、金額の大きさを「ブランド価値」と定義して順位付けしています。

 

順位は、

  1. コカ・コーラ:350億ドル~450億~ドル(約3兆9000億~5兆円)
  2. ペプシ
  3. ネスカフェ
  4. レイズ
  5. ロレアルパリ

とあります。

日本のブランドは、34位に資生堂、46位にヤクルト、60位に日清、94位にボス(サントリー)、99位にヤマザキです。

資生堂で、40億~50億ドルです。

 

トップ100社の約4割が加工食品で、美容・ケア関連、清涼飲料が続くとあります。

 

コメント

インターブランドのランキングの食品、日用品版かと思ったのですが、考え方は異なります。

このランキングは、小売り金額を重視しています。ユーロモニターらしいというところでしょうか。小売金額だけで、ブランド価値と云えるのか?と思いますが、一つの割りきりではあります。

 

一方、インターブランドのランキングは、企業価値のようなところに着目し、そのブランドが生み出す将来利益と、業界毎のブランドの貢献度(違う業界を比較するのに必要なファクター)、ブランド自体の強さ(ブランドが効いてる会社と、その他の経営の要素が効いている会社を区別するためのファクター)のようなもので、ブランド価値を計算し、ランキングを出しています。

 

また、この調査は、FMCGのみについてのものです。

FMCGとは、日用消費財をいい、清涼飲料水、洗面・化粧品、食品などをいいます。よって、マクドナルドのようなレストランビジネスや、お酒、ビールは除かれているのが、インターブランドランキングと大きく違う所です。

 

さて、気になる順位ですが、インターブランドのランキングでは、お酒、ビールが沢山出ているのですが、それを除くと、2018年ランキングのFMCGの順位は、

5位 コカ・コーラ(663億4100万ドル)

31位 パンパース

37位 ネスカフェ

48位 ロレアル

53位 ケロッグ

62位 ネスレ

96位 スプライト

となります。

 

コカ・コーラネスカフェ、ロレアルの順番は同じですね。大きく捉えると、売上と利益には相関関係があるので、似たランキングになるのは理解できます。

ユーロモニターのランキングには、ジョージアが71位にありました。おそらく、日本コカ・コーラジョージアです。外資系ブランドとカウントされているのでしょうか?

スタバの試練

米中で伸び鈍化。既存店のイノベーション

2019年2月28日の日経で、スターバックスが成長に向けもがいているという記事がありました。

スタバ成長神話に試練 新興勢台頭、米中で伸び鈍る (写真=AP) :日本経済新聞

  • 米国と中国が伸び悩み
  • 中国は「瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)」が猛追
  • 現CEOは既存店の強化を軸にした守りの戦略。アプリで決済サービス、宅配サービス連携
  • 高級な実験店「リザーブ ロースタリー」。高級焙煎機。ブランドを高める旗艦店。しかし、前CEOの積極出店を起動修正
  • 現CEOは、高級店をイノベーションラボと位置づけ。ブランドのアンプ。インドネシアのバリの店舗にデザインを取り込んだ

という内容です。

 

コメント

目黒に高級な実験店ができたとは聞いていましたが、前CEOが1000店出店するとするなど積極姿勢だったのを、現CEOはイノベーションラボに位置づけて、出店を鈍化させているようです。

 

スターバックスは、CMなどの広告をしない会社ですが、手厚い接客へのこだわりとサードプレースとして場の提供で成長してきた会社です。

デジタルを使った会員サービスは、マクドナルドでもどこでもやっているので、何となく小手先の手法のように思えます。

コストがかかりすぎるのだと思いますが、前CEOの高級実験店の1000店という話の方が、筋は良かったのではないかと思います。

 

既存店のお客様へのサービスというなら、サードプレースとして活用する人のため、広くてゆったりした物件を確保して欲しいという点でしょうか。これもコストがかかりますが。

 

話は、全く異なるのですが、商標の略称の「スタバ」は商標登録されているのか、「マック」は商標登録されているのか、非常に気になりました。

企業は、「STATUCKS」「スターバックス」と認識してもらいたいのに、新聞は紙面の都合で「スタバ」と略称することが多くですし、一般人も省略を好みます。abbreviationやacronymでもない、日本特有の短縮文化があります。

J₋Plat Patで調べると、二段併記の「スタバ/STABA」で、30類(コーヒー)と43類(飲食物の提供)において、2003年に登録されていました。ちゃんとやっていますね。

 

反対に「マック」「MAC」の登録状況はイマイチです。関西の「マクド」もありません。あれだけ、「マック」対「マクド」と広告宣伝をしているのにと思います。権利はないですが、既に周知を超えて著名の領域です。特に、係争にならなければ、未登録でも、周知著名で保護されるという事例です。

今回の特許法等の改正

商標への影響

2019年3月1日付の経済産業省のリリースで、特許法等の改正が、閣議決定がされたとあります

www.meti.go.jp

通常国会に提出されるということです。

意匠法はどうなるのか、興味はあるところですが、商標法のところで思った点を書きます。

 

商標法に直接関係する特許法の改正は、中立な技術専門家が現地調査を行う制度(査証)の創設ではなく、損害賠償額算定方法の見直しの方です

損害賠償額算定方法については、実用新案法、意匠法及び商標法において同旨の改正を実施しますとあります。

 侵害者が販売した数量のうち、特許権者の生産能力等を超えるとして賠償が否定されていた部分について、侵害者にライセンスしたとみなして、損害賠償を請求できることとします。

損害額の推定に関しては、古くから実施料相当額というものがあり、これではよくわからないというので、販売金額から割り出す方法が導入されました。

しかし、侵害者の方が実施規模が大きく、権利者が実施規模が小さい場合には、実損填補に限定するというものでした。

その販売規模から割り出す場合でも、実施料相当額は確保できるとするのがこの改正と理解しました。

 

経産省の概要資料の図が分かりやすいようです。

http://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190301004/20190301004-1.pdf

 

不勉強で申し訳ありませんが、商標法38条、1項と、3項は、両方とも主張は出来たので、実際はあまり変わらないのかと思います。

 

損害額の推定が、現行規定になったとき、少し制約的で、アンチパテント的だなと思いました。よって、特許は、この改正案これで良いと思うのですが、気持ち悪いのは商標です。

 

今回の法改正とは、直接は関係ないのですが、不使用商標による権利行使が増えないか心配です。

 

商標の場合、日本では権利侵害の裁判での、不使用商標の取り扱いが明確ではありません。一方、同じ登録主義を取る、ドイツや中国では、不使用商標は権利行使できないことが明確にされています。

https://www.jpo.go.jp/resources/report/takoku/nicchu_houkoku/h28.html

 

ドイツでは、商標法25条で、不使用商標は権利行使できないとされています。中国では、商標法64で、不使用商標は損害賠償請求ができないとあります。

日本では、小僧寿し最高裁判決があり(最判平成9(1997)・3・11 民集51 巻3 号1055 頁)、損害不発生の抗弁が認めらる可能性がありますが、条文上、明確に不使用では損害賠償請求できないというものはありません。

 

商標の場合、使用していないと保護価値がないと考えるのが、世界では一般的ですが、日本は行政庁が商標登録を付与したので権利があるという、不使用は不使用取消に行くべきという構成です。

 

実際問題、本当に不使用の商標の場合、そんな権利で普通は権利行使しないことが多いのは事実です。不使用で価値がないものに、大枚を叩いて裁判まですることは通常ありません。

 

また、現行法でも、従来からの実施料相当額の条文はあります(商標法38条3項)。しかし、商標法の38条1項と3項が、重複適用なのかどうかは不明でした。それが、重複適用になります。

今回、38条1項の損害額の推定では、実損填補が明確だったので、不使用の抗弁と親和性が高かったのですが、それが重複適用されるとなると、またぞろ、不使用でも、権利行使できるという考えがメインになりそうな感じです。

(※ 当該商品には不使用でも、他のメインの商品には使用しており、信用が及ぶというケースはあります。例えば、コカ・コーラのロゴをT-シャツにライセンスする場合を想定します。実際、使っているのは、飲料だけですが、非常に高い信用≒ブランド価値があります。これをベースに、通常支払われるべきラインセンス料で、損害額の推定をするのは、妥当な感じです。その場合は、ランニングロイヤルティで、比較的高額でも納得できます。これは実質的には、商標の使用ありと考えて良いと思います。法律上は、使用ありとなりませんが。)

 

全く不使用でも、実施料相当額がもらえると思う権利者が増えそうです。不使用商標をベースとした裁判は、実際は、ほとんど起こらないので、なかなか表には出てこない論点だと思いますが、不使用商標の萎縮効果があり、商標選択の自由を狭め、企業活動を制約するものではあります。

不使用取消審判で処理というもの分かりますが、取消に遡及効がないのと、不使用取消が既存権利者有利の判断がされているというのを見ると、不使用がある場合、どうしたら良いのかと判断に迷うことになりそうです。

セブンイレブンのインド進出

インドの合弁事業

2019年3月1日の日経に、セブンイレブンのインド進出の記事がありました。

www.nikkei.com

内容は、

コメント

スズキ自動車のマルチスズキは、インドで成功していますが、日本のメーカーのインド進出は色々と難しいというイメージがありました。

しかし、無印、ユニクロといったSPAから進出して、今度はセブンイレブンということで、インドも他の国に近くなったんだなあと思いました。

 

Googleを検索したら、次のブログを見つけました。

セブンイレブンのインド進出はうまくいくの?〜インドのコンビニ事情〜 vol.497 | KayoreenaのIndia Blog

インドで働いたことのある若い女性のブログで、日本でインド進出のコンサルをしているとあります。

ここに、外資規制の説明がありました。

例えば単一ブランドを扱う小売業(無印とか)に関しては2018年2月の改定により、自動承認による出資が49%から100%(つまり自分たちだけで進出可能)認められることとなりました。

また、51%以上の出資が行われる場合、販売する製品価値の30%はインド国内で調達しなければならないという義務が課せられていましたが、改定によりインドでの小売業開始から5年間は、義務の適用が当該5年間の平均値へと調整可能に。

ただ総合(複数ブランド)小売業に関しては、まだ出資比率が51%の制限がある(つまり現地にパートナーが必要)ため、今回セブンイレブンはフューチャー・グループ系の企業とフランチャイズ契約を結び連携したと考えられます。

非常に面白いブログです。

 

さて、気になったのは、3点です。

  1. 米子会社のセブン-イレブン・インクが、フランチャイズ契約のライセンサー
  2. フューチャー・グループとの合弁ではなく、フランチャイズ契約
  3. 「24セブン」の名称

1つ目は、セブン-イレブンの商標権は、日本はセブン-イレブン・ジャパンが名義人ですが、海外は米国のセブン-イレブン・インクが権利者という点です。これは、メリットとデメリットがあります。

メリットは、アメリカ企業ですので、ビジネスライクに仕事をするので、ライセンスビジネスには向いています。デメリットは、日本にライセンス収入が直接入らないことです。実際の事業の支援は、日本のセブン-イレブン・ジャパンが行いますので、3者契約が必要になり、面倒です。

 

2つ目は、フランチャイズ契約という点です。普通は、本格進出するなら、合弁であり、先ほどのインドについてのブログにも、2011年にローソンが合弁契約をフューチャーグループとしたが、結局、進んでいないという記事はありますが、通常なら、合弁です。

国境をまたいだ、フランチャイズというのは、聞いたことがないなというのが印象です。どう運営するのかなぁという感想です。

 

3つ目は、ニューデリーの「24セブン」の別企業の名称です。今からは、難しいのだと思いますが、セブンはセブン-イレブンを連想します。

24は24時間営業で、それは日本のセブン-イレブンが打ち立てたコンセプトです。

また、セブンイレブンは、もともと、朝7時から夜11時まで、親子で経営するというビジネスモデルとして有名ですが、コンビニで「セブン」というと「セブンイレブン」です。

それをくっ付けただけの名称ですので、bad faithを疑いたくなります。

先使用主義なので、仕方なかったのだとは思いますが、米セブン-イレブン・インクが商標管理をしているので、放置してしまったというのでは、どうかなという気がします。

 商品ではなく、小売業がこれだけグローバル化するなど、以前は思いもしませんでした。

 

特許紛争で5Gが出せない

アップルとクアルコム

2019年3月3日の日経で、アップルが、クアルコムとの特許紛争の影響で、5Gのスマホを出せないでいるという記事を見ました。

アップル、沈黙の5G戦略 中韓勢に出遅れ (写真=ロイター) :日本経済新聞

内容は、

というものです。

 

特許紛争のことについては、次の記事があります。

クアルコムとアップル、知財侵害巡る陪審裁判始まる (写真=ロイター) :日本経済新聞

  • クアルコムとアップルの訴訟合戦は、2017年1月から
  • 端末価格に連動してライセンス料を決めるクアルコムの商慣習は不当との主張
  • クアルコムは和解を模索。アップルが拒否
  • 2018年秋に発売した「iPhone」の新機種ではクアルコムから調達していない

 

現在、Googleクアルコムが良好な関係にあるようです。

グーグルとクアルコム、5Gで対アップル連合 :日本経済新聞 

  • 現時点で発売が公表されている5Gスマホはほぼ全てにクアルコム半導体が採用
  • OSは全てグーグルの「アンドロイド」
  • 2社は「アップルの敵」という点でも利害が一致
  • クアルコムとグーグルがからんだ端末は早ければ今年の5月から発売
  • iPhoneの5G空白期間中に関連するソフトを充実させて、アップルを出し抜きたい
  • アップル優先のアプリ開発会社を、巻き込む戦略

というようなものです。

 

コメント

クアルコムの特許訴訟には門外漢なのですが、クアルコム半導体を使う場合は、ライセンス料の問題はないかと思いました。

しかし、代替調達先のインテルなどの半導体を使うことが必要であり、その場合にクアルコムの特許は使わないといけなくなります。代替して調達した、半導体の価格に特許使用料をかけるのか、製品全体なのかは、確かに論点です。

 

さて、アップルは、2019年のこの1年が勝負になる構図です。Googleクアルコムが、この1年に5Gで圧倒的に勝てば、両社が優位になります。

一方、アップルは、この遅れは、挽回できるものであり、あまり問題ではないと思っているのかもしれません。

 

特許紛争は、この勢力争い全体の一面ですが、直接の原因ですし、その結果はターニングポイントになります。

アップルは、事業の遅れにつながっても、クアルコムとの係争を続けるのは、それだけ、クアルコムの特許使用料が、高いということなんだと思いました。

 

それにしても、アップルは、知財紛争が多い会社だなと、改めて思いました。この訴訟好きの感覚は、ほとんどの日本企業にはありません。

 

日本企業も、訴訟を企業運営の手段とすることに関心がない訳でないのですが、裁判はコストかかるとか、結果不確かであるとか言って、当事者同士の交渉はやりますが、訴訟を好みません。

権利取得に、多大のコストをかけることには、案外平気なので、お金だけの問題ではないのだと思います。

 

訴訟嫌いの原因は、知財部と法務部が分かれていることも大きな要因と思いますし、知財部が権利取得中心であることも要因ですし、弁理士に訴訟代理権を付与しなかったことも要因です。

知財高裁は裁判が少ないのが課題のようですが、このあたりの全体の改革がないと、訴訟を企業運営の手段に取り込むことができないように思います。

 

商標使用許諾は有償、同意書は無償

同じようなものなのに

お客さんと話をしていて、日本の商標の使用許諾は有償なのに、なぜ同意書は無償なのかという話になりました。

 

ここでいう商標の使用許諾は、使用しており、価値が蓄積している商標を、第三者にライセンスする場合の商標使用許諾ではありません。まったく、使っていない商標のライセンスです。

 

●日本では、不使用の商標のライセンスが、有償(50万円~100万円程度の金額が多い)で行われている事例が沢山あります。

一方、海外の商標局で、審査で引例に引かれた場合に、権利者から登録と使用の同意書を取り付けて、商標局に提出することで、登録を取得できる同意書というものが一般的ですが、こちらは無償です。

 

商標が使えるようになるという効果では同じものである、日本の不使用商標の使用許諾と、海外の同意書が、対価の面では全く違います。

海外の同意書の方が、自分の権利にできるわけで、こちらの方が価値が高いように思いますが、価値のある同意書が無償というのが、社内で説明がつかないということです。

 

●日本で、新規に商標を使いたい場合、商標調査をしますが、商標調査をして抵触する商標が発見された場合、通常、次の手段となります。

  1. 商標権者に譲渡をお願いする
  2. 商標権者に使用許諾(ライセンス)をお願いする
  3. 不使用取消審判を請求して取消す

譲渡に応じてくれる権利者は、なかなかいません。しかし、使用許諾に応じてくれる権利者は、沢山います。それは、その商標が不使用の場合です。

不使用であれば、本来、商標法が前提にしているのは、不使用取消審判に行ってもらい、商標登録を取消し、そして、使っていない人から使いたい人へ商標権者を変えてもらうことですが、時間とコストがかかるので、譲渡交渉が代替手段になっています。

 

昭和34年法で使用許諾ができる前は、譲渡しかなかったのが、使用許諾が認められているので、権利者としては、不使用なら取り消されるが、使用許諾なら、(形式的な)権利は自社に残るし、多少のライセンス料も取れる。譲渡よりも、使用許諾の方が、決裁も通りやすい。というので、この使用許諾に流れてしまいました。

 

広告宣伝の人は、使用許諾のことを「権利を買う」と譲渡みたいな表現をしますが、もともと、譲渡のイメージがあるのはこのためです。

 

使用許諾ですので、対価が発生します。使用商標ならブランド価値があるので、ランニングで、3%とかなるところですが、不使用なので、定額の50万円で、一括の10年契約などが主流となりました。

 

●この50万円などの根拠ですが、

  • 不使用取消をすると、特許事務所を使うとして、費用がかかる。
  • 自分で出願した場合にも、特許事務所を使うとして、権利取得に費用がかかる。
  • 不使用取消なら、例えば、権利者が答弁しない場合でも、半年かかるとして、その分の期間の利益。
  • 契約書作成の事務手数料の数万円。

この合算です。一番価値があるのは、期間の利益です。自分で商標調査して、商標出願しても、特許庁の審査をパスして、権利になるのに、半年以上はかかります。それが、この不使用商標の許諾被許諾の関係では、今日権利者にOKをもらい契約をすれば、即日から、権利をベースにした使用ができます。単に使えれば良いというネーミングレベルでは、これほど楽なことはありません。

 

そのため、常日頃、権利の貸し借りのある大手企業同士が、持ちつ持たれつの関係で、不使用商標の使用許諾を活用しています。

ただ、暗黙の了解事項があり、使用している商標には、使用許諾はお断りしますとなります。

 

●一方、海外で一般的な同意書は、一般に無償です。

これは、商標局が類似すると引例に挙げたが、実際の商品や商標からして、問題ないと判断するので、商標権を取りたい人の権利化に協力するというものです。

当然、不使用商標の場合は、不使用取消で消されるよりは、同意書を与えようというケースもあります。また、使用しているケースでも、これは問題ないなと思えば、同意書を与えたりします。

 

同意書では、権利も取れて、無償です。

無償なのは、基本的には、権利には入っていないと判断しているためです。

 

●制度としては、同意書の方が上です。日本の不使用商標の許諾被許諾が残っているようでは、ネーミングは何時まで経ってもネーミングのままです。ネーミングがブランドに出世することもありません。日本の許諾被許諾の運用は、日本の商標の成長を妨げていると思います。

 

今の運用では、使用許諾を受けて、使用して、数億円の価値が生じたとしても、10年後には、また50万円で契約更改です。

ライセンシーの使用でも、その商標価値はライセンサーのものと契約書に書いておくことは可能ですが、50万円を一挙に、3%のランニングに変えることも、日本では現実的ではありません。

 

アメリカのライセンスが世界の商標使用許諾のスタンダードですが、そこでは、Quality Controlが求めらています。こちらは、狭義の品質だけではなく、ブランド表現も含めたコントロールです。そして、対価は有償です。

日本の許諾被許諾は、譲渡の亜流の、ネーミングの貸し借りであり、ライセンスではないということを認識する必要があります。

 

●日本でも、企業からは、同意書制度を導入して欲しいという声が多く、それを特許庁が抑えている構図ですが、同意書制度を導入すると、現行法で非常に多く行わている、許諾被許諾の実務をひっくり返すことになります。既存契約も見直しになると思います。

制度としては、同意書が圧倒的に良いですが、この作業量は、案外インパクトが大きいなと思います。

World’s Most Ethical Companies

花王が13年連続で受賞

花王が、米国のシンクタンクEthisphere Instituteが、2019年2月26日に発表した「World’s Most Ethical Companies」(世界で最も倫理的な企業)に選ばれたという、花王のリリースを読みました。13年連続ということです。

花王 | 花王、13年連続で「World’s Most Ethical Companies」 (世界で最も倫理的な企業)に選定

 

リリースによると、この賞は、2007年からスタートしており、13年連続で選定している日本企業は花王のみということです。

同賞は、透明性、誠実性、倫理、コンプライアンスに関する優れた成果を挙げる企業を表彰する賞ということであり、

  1. 企業倫理と法令遵守に関する取り組み
  2. 企業市民としての責任ある活動
  3. 倫理的企業風土
  4. コーポレートガバナンス
  5. リーダーシップ・イノベーション・社会からの評価

の5項目について、評価するようです。

 

リリースには、花王の創業者の「正道を歩む」という言葉を引き、法と倫理に則って行動し、誠実健全な事業活動を行なうことが企業行動の原点であることや、企業行動規範「花王 ビジネス コンダクト ガイドライン」などの活動を紹介しています。

 

コメント

こんな賞もあるのかと、はじめて知りました。シンクタンクのサイトで、受賞した128社を見ることができます。

Ethisphere® Institute | Good. Smart. Business. Profit.®

 

2007年からの一覧が見れるようになっています。アメリカの企業がほとんどで、欧州が一部、アジア企業が少しという構成です。今年のリストには、花王の他、キヤノンソニーもありました。

(ただし、キヤノンアメリカの会社とあります。おそらく申請をしたのが、アメリカ法人なのだと思います。ここは少し?です。)

 

日本では、当初は、イオンも選ばれていたようですが、最近は、花王、リコー、資生堂が常連だったようです。

 

審査を受けるには、3,000ドル(33万円)の参加料が必要であり、英語のアンケートにも答える必要があります。

小さな会社でも、倫理的な会社は沢山あると思ったのですが、表彰される企業の規模は、250Mドル(約275億円)の事業収入があることが多いとあります。

 

どちらにせよ、花王は審査料を払い、面倒なアンケートにも回答し続けていることになります。

担当者を張り付ける必要もありますし、担当者の代替わりもあります。

相当、このWorld’s Most Ethical Companiesにほれ込んでいないと続けられません。

 

申請・アンケートは、面倒する必要ですが、受賞できる日本企業は、沢山あると思います。

花王がほれ込んで、続けているということは、案外良い取り組みなのではないかと思います。

少なくとも、この対応を続けることで、社内のレベルをグローバル標準に保ち続けることが出来ます。

 

なお、受賞企業一覧は、ブランドロゴで表示されているのですが、知らない企業も多いのですが、色んなロゴがあるなという感じです。一覧はこちら↓

Honorees 2019 – Ethisphere® Institute | Good. Smart. Business. Profit.®