Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

見えざる資産といっても

データのこと?

2019年2月25日の日経の朝刊1面に、無形資産が有形資産の1.5倍になり、見えざる資産が成長の源になっているという記事がありました。

見えざる資産、成長の源に 有形資産の1.5倍 :日本経済新聞

経済の形、情報が変える カリフォルニア大バークレー校・デロング教授 :日本経済新聞

(Neo economy)進化する経済(2) 「ムダ」排除が生む低温経済 摩擦ゼロに備えはあるか :日本経済新聞

(Neo economy)進化する経済(3) LINEの価値300万円? 豊かさはGDPの外に :日本経済新聞

3日間の特集で、Neo economyで進化する経済を説明しています。

 

大略、物よりもデータなどの情報の交換に価値がシフトしており、物の価値ではなく豊かさという価値で測るべきで、経済の成長もGDPで測れなくなっているということが事例をあげて説明されています。

 

2007年比で、2018年には、米・中・日の主要302社で、特許・ソフトウェアなど無形資産の価値は、約440兆円で、有形資産の1.5倍と紹介されていますが、

事例を見ている限り、無形資産とは、特許や商標やノウハウというよりは、データの話のようです。

すでに、物→特許・商標・ノウハウ→データと、データの時代になっている感じです。

 

紹介されている事例は、

  1. 愛車をやめて月に6万円のコストが無くなり、スマホアプリのWhim(ウィム)で、同額程度の定額で公共交通機関やレンタカー、シェア自転車。車は売れなくなったが、快適な移動で豊かさの実感は増した
  2. JRの自販機は、顧客の好みの分析で、水を売るのをやめて商品を入れ替えて、売上が3%増
  3. タイのアパレル・ネット通販は、カフェやヨガスタジオの空いた空間を、試着室に変える
  4. 利用料無料のLINEの価値は、1人当たり300万円
  5. スマートフォンの普及で写真は安くなった(枚数は15年前の20倍の年1.6兆枚)
  6. 照明の価格は3倍近くになったが、明るさという品質の向上を加味すれば、実質的には1千分の1に値下がりしたのも同然

日経の記者は、大略、

  • 物の所有からデータを利用した物の効率的な活用へ
  • GDPは、値段のない豊かさをとらえることは不得手(主婦の労働もカウントされていない)
  • 今後は、投資や生産は減り、物価が抑えられるデフレへ
  • 仕事が人工知能(AI)やロボットに置き換わり、失業も増える
  • 余暇や自由という新たな豊かさを手にしたと感じる発想の転換が必要

とまとめているようです。

確かに、収入が多少減っても、豊かさが増すなら、そちらの方が良いのだろうと思います。

 

コメント

少し前まで、一口に無形資産といっても、その内訳は、特許やソフトウェアやノウハウやブランドとなり、そのなかでも、ブランド価値が圧倒的に多いという理解をしていたのですが、この話を見ていると、ブランド価値から、データそのものの価値に、価値の所在がシフトしているように思います。

 

ブランド価値も、煎じ詰めると情報価値です。

NIKEなりAppleというブランドには、市場で靴を買うときに、ブランドは商品選択の目安となるということで、購買決定のファクターとしての価値があります。

また、BMWやロレックスの時計は、その価値あるブランドの商品を所有する喜びのような価値があります。

 

完全に、データ中心の社会にはならないように思いますが、データの有効活用で、豊かさを増していく社会に変化しており、それは時には、物の値段を劇的に下げたりする副作用がある。しかし、基本的には人々の生活を豊かにするものであるという捉え方でしょうか。

五輪関係の「文化プログラム」

5タイプのロゴの乱立

2019年3月3日の朝日新聞に、2020年の東京オリンピックパラリンピックに関連した文化プログラムについて、特に、ロゴにポイントを絞った話が載っていました。

  • 文化プログラムは、五輪憲章で義務付けられている
  • 大会組織委員会の他、政府、東京都がそれぞれ取り組む
  • 都の関係者からは、統一感がないとの声
  • 大会組織委員会は、2種類。主催・共催するものは、東京2020NIPPONフェスティバルのロゴ。また、文化オリンピアードのロゴ
  • 東京都は、TokyoTokyo FESIVALのロゴ
  • 政府は、2種類。beyond2020ロゴと、日本博のロゴ。日本博は、政府が力入れるもので、ロゴは、3月3日に発表

2019年3月3日のNHK News Webで、日本博のロゴが掲載されています。

東京五輪・パラ「日本博」の旗揚げ式 ロゴマーク発表 | NHKニュース

 

コメント

  1. 東京2020NIPPONフェスティバルのロゴは、東京五輪パラリンピックの大会エンブレムのタイルを利用し、そのタイルをカラフルにして、3つ巴を作り、中心に車軸のようなものがあります(大会エンブレムの制作者である野老朝雄(ところ あさお)さんによる開発)
  2. 文化オリンピアードのものは、紺色とオレンジのワンポイントのタイルを、クローズアップしたものです(※文化の他にも色々あり、全体で、「東京2020参加プログラムマーク」というようです)

    東京2020参画プログラムのマーク|東京2020参画プログラム

  3. TokyoTokyo FESTIVALのロゴは、文字そのままです
  4. beyond 2020のロゴは、bを象ったオレンジ図形の下に、beyond 2020とあります(単純なオレンジ色の図形で、強いロゴです)   
  5. 日本博のロゴは、日の丸に漢字で日本博とあり、金銀があしらわれています(こちらは、露出は限定されそうです)

 

実施主体が違ったり、目的が違ったりするのでしょうが、確かに一般人からすると、何が何だか分かり難いですし、色んな団体が、色々やっているなという程度の感覚しかありません。

 

まず、タイルのデザインを使っていないので、東京都と政府の2つは、オリンピックとは、別ものということは分かります。

 

2.の東京2020NIPPONフェスティバルのものは、3つ巴の図形要素がありますが、タイルを使っているので、大会エンブレムと同程度の扱いに見えます。

また、タイルにも、文字にも、カラーが多用されているので、大会エンブレム以上に目立つものです。

東京2020NIPPONフェスティバルのロゴは、大会の組織委員会のWebサイトにロゴが掲載されています。

東京2020 NIPPONフェスティバル|東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

 

全体の盛り上げのためには、大会組織委員会のタイルのパターンの使用をメインにすべきなのかなと思いました。

東京都や政府のものは、出れば出るだけこんがらがります。特に、政府のbeyond 2020が、「2020」を使っているので、アンブッシュ的な感じもします。

 

東京都の方がロゴの乱立が問題だと言っておられるようですが、解決策としては、何かのイベントがあるときに、東京都や政府のプログラムであっても、重複して大会のロゴプログラムに申請して、東京2020参加プログラムマークや東京2020NIPPONフェスティバルのロゴをメインにして、東京都や政府のロゴの露出はサブにするということひ出来ないものかと思いました。

 

 

2020年までは、大会組織委員会のロゴの使用をメインにし、その後は、東京都や政府のロゴをメインにする作戦です。

 

東京都のプロクラムは、大型のものだともいますので、これは、東京2020NIPPONフェスティバルのロゴをメインにし、

小さなものは、東京2020参加プログラムをメインにして、beyond2020をサブにするというイメージです。

 

まだ間に合うのかなあという感じです。

日刊工業新聞のネーミング賞

第29回読者が選ぶ ネーミング大賞

2019年3月1日の日刊工業新聞の電子版の電子版に、同紙のネーミング大賞の話が掲載されています。

第29回読者が選ぶネーミング大賞、「だい杖ぶ」に決定 | トピックス ニュース | 日刊工業新聞 電子版

会員登録が必要で、会員登録すると、毎月11記事が無料で読めるとあります。

 

今年は、

  • 大賞は「だい杖(じょう)ぶ」:日本生命保険生活習慣病に備える保険商品
  • ビジネス部門の1位「一網打尽」:岩田鉄工所の店舗天井に設置する防犯装置
  • 生活部門の1位「本麒麟(きりん)」:キリンビールのビール系飲料
  • 洗練されたセンスを評価する「スタイリッシュネーミング賞」1件
  • 遊び心のあるネーミングに着目した「ユーモアネーミング賞」3件
  • 企業や商品のブランド名を評価する「ブランドネーミング賞」2件

とあります。

 

第29回とありますので、長く続いているようです。

「読者が選ぶネーミング大賞」は、

  • 読者の投票で優れたネーミングを選ぶ
  • 日刊工業新聞に掲載した新製品、新サービスなどの中から、きらりと光るネーミングをノミネート
  • ビジネス部門と生活部門を設定し、読者の投票によって「かっこいい」「ユーモアあふれる」「忘れられない」「とにかくぴったり」など、これから長く広く愛されていくだろうネーミングを選定し、表彰

とあります。

顕彰事業 ネーミング大賞 | 日刊工業新聞社

 

コメント

いままで、日刊工業新聞はほとんど読むことが無かったので、この表彰制度自体知りませんでした。

日刊工業新聞で掲載した新製品、新サービスからノミネートがあり、それを読者が選ぶというものです。

 

既に投票は終了しているのですが、エントリー候補の情報は、こちらにありました。

第29回読者が選ぶネーミング大賞

生活部門、ビジネス部門各々15個のノミネートです。知っているものもありますが、知らないものが多い感じのノミネートです。

投票総数は、1万2798票とある程度あります。新聞に広告のようなものがあり、時計などの景品がもらえるので、読者は積極的にアンケートに回答するようです。

 

過去の表彰されたものも、見ることはできます。それを見ていると、知っているものも多くあります。こらから長く愛されるネーミングを選定し、表彰するとありますので、それに沿った結果かもしれません。

 

過去の結果を見ると、LIXILのような、本格的なコーポレートブランドなども含まれているのですが、全体的には、BtoBの、個別の商品・サービスの、国内中心の、ネーミングが多いようです。

どちらかというと語呂が良かったり、洒落を使ったものが多いように思います。

 

毎年のネーミングのランキングや、ロングライフ・ネーミングの表彰制度などが、合ってもおかしくないのですが、それに特化したものは無いように思います。

 

ブランド系では、次が有名ですが、ネーミングとはあまり関係ありません。

  • インターブランド Best Global Brands、Janan's Best Global Brands
  • 日経BP ブランド・ジャパン 2018 総合力ランキング

ヒット商品系は、ネーミングが出てくるのですが、商品を呼ぶためにネーミングを使っているだけであり、純粋にネーミングの顕彰・表彰ではありません。

グッドデザイン賞などは、これに比べて、(インダストリアル)デザインに特化しており、デザイナーを表彰することにもつながっています。

 

実際はネーミングは、相当高度な知的「創作」作業なのですが、商標は、法律の創作行為の結果物ではなく、選択行為の成果物にすぎないと法律は整理しています。

そのため、商標出願時に、創作者を記載しません。

 

法律と世間の感覚のズレのあるところであり、このズレはグローバルにそう整理してしまっています。唯一の例外が、EU法であり、「商標」も創作行為の成果物であれば、EU意匠で、商標を「意匠」出願できるという点ぐらいです。

 

言いたいのは、日刊工業新聞のこのネーミング賞は、あまり表彰対象となっていない、ネーミング自体に着目しているので、良いところを突いていると思うのですが、日刊工業で紹介されたものだけであることと、読者だけが選択するという点で、いまいち、企業が着目する表彰制度になっていないのではないかと思いました。

東芝機械の社名変更

芝浦機械に

2019年2月22日の日経電子版に、東芝機械が、2020年4月1日に、「芝浦機械」に社名変更するという記事がありました。 

www.nikkei.com

  • 2017年3月に、約2割を保有していた東芝が経営悪化を受け、保有株式の大半を東芝機械に売却
  • 現在の東芝保有比率は約2%に低下し、グループから切り離していた
  • 伝統の芝浦が59年ぶりに社名に
  • 「芝浦」は同社がかつて工作機械で展開していたブランド名「SHIBAURA」でもある。現在も一部製品に残り、工作機械の老舗ブランドとして一定の知名度
  • 1980年代に、対共産圏輸出統制委員会(ココム)の規制に違反したとして、「東芝機械ココム違反事件」があった

 

コメント

2017年3月にグループを離脱して、2019年に株主総会で社名変更を決め、2020年4月1日に社名変更ですので、3年かかっています。

 

現在の東芝機械のWebサイトを見ると、左肩のヘッダーの部分に、赤い「TOSHIBA」ロゴは使われておらず、その替わりに、「TOSHIBA MACHINE/Best Partner of Leading Industries」という表示があります。

社名から、「株式会社」「Co., Ltd.」を除いたものを表示しています。

通常の東芝グループではないのは、分かりますが、「TOSHIBA MACHINE」とあるので、どういうことか?信憑性に欠けるなという感じはします。

 

SHIBAURAというブランドの使用例があるようですが、Googleの画像検索で出てきたのは、SHIBAURAを楕円で囲んだ、それらしき製品銘板がありました。相当大きな製品だと思います。

 

20%を切ったら、定義上は、どうみても、グループ外ですので、社名を変更するのは、当たり前だと思います。

これを認めると、グループ運営はぐちゃぐちゃになってしまいます。

今回の話は、どちらかというと、東芝からのお願いで、株式を買ってもらったのだと思いますので、3年の猶予期間があったのだと推測しました。

 

20%を切ったのに、社内の声の大きい人が、特攻隊を組んで本社部門にアタックしてくることがあります。

本社部門も隊列を整えて、経営企画、経理、法務、品質などを巻き込んで、論点を整理し、経営者に最終判断を仰ぐ必要があります。

 

東芝機械は、海外の子会社もTOSHIBA MACHINEを冠しているようなので、その社名変更も必要です。

また、ブランドロゴ(商標)は、現在は、「TOSHIBA」ロゴではなく、「TOSHIBA MACHINE」となっています。これも変更が必要です。

社名が、「芝浦機械」ですので、おそらく「SHIBAURA」ないし、「SHIBAURA MACHINE」なのだと思いますが、こちらも作業量があります。

 

「芝浦」は、地名であり、一般名称なので、「芝浦」を冠したものは沢山あります。芝浦工業大学なら、まだ良いですが、機械やエレクトロニクスの会社が沢山あります。

折角、「東芝」「TOSHIBA」という識別力の強いネーミングだったのが、「芝浦機械」となると、識別力があまりありません。昔の伝統を記憶している人は少数です。「芝浦機械」でリブランディングするのは、ネーミング的には至難の業です。

 

そうなると、京都の村田製作所村田機械ではないですが、少なくとも、ロゴ化したり、図形をつけたり、あるいは更に、次の社名への変更を考えたり、そこまでがワンセットの取り組みではないかと思います。

 

電通の「日本の広告費」

ブランド毀損の防止

2019年2月28日に、電通の「2018年 日本の広告費」のニュースリリースが出ています。

  • 広告費の総額は、6兆5,300億円(前年比102.2%)で、2011年の底(5兆7,096億円)から7年連続のプラス
  • インターネット広告は、1兆7,589億円(前年比116.5%)
  • 地上波テレビ広告費は、1兆7,848億円
  • インターネット広告媒体費のうち、運用型広告費が1兆1,518億円(前年比122.5%)
  • ブランドセーフティへの関心の高まり
  • アドフラウド問題への対処など、コンプライアンス意識が求められている

などとあります。

 

コメント

日本の広告費自体は、2011年から比べると、14%も伸びてます。リーマンショック前は、7兆円を超えていたので、そこと比べるとまだまだなのでしょうが、着実に回復しているなと思います。

その中でも、他の媒体は、軒並み横ばいかダウン傾向で、インターネット広告が伸びています。

 

インターネット広告では、

  • 運用型広告
  • ビューアビリティ
  • ブランドセーフティ
  • アドフラウド

など、聞きなれない言葉が出てきます。

 

運用型広告とは、Yahoo!Japanのバナー広告のような、純広告をのぞいたもので、1クリックしていくら支払うというタイプの広告のようです。

「運用型広告」とは何なのか?

 

ビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティの定義は、電通報に記載があります。

  • ビューアビリティ(Viewability)
    広告がユーザーに本当に見られているのか?
  • アドフラウド(Ad fraud)
    広告が“人”ではなく“ボット”(=BOT、インターネット上の操作を自動で行うプログラム)によって閲覧やクリックがされていないか?
  • ブランドセーフティ(Brand safety)
    広告が不適切なサイト上に表示されていないか?

これらは、2017年1月、P&Gの最高ブランド責任者が「広告価値毀損」に関するスピーチで、デジタル広告の問題点を指摘したことから話題となったそうです。

特に、ブランドセーフティについては、2017年の3月、世界的な広告会社アバスが「ブランド毀損リスクの高さ」を理由に、GoogleYouTubeへの広告出稿をイギリスで取りやめたとあります。

デジタル広告の新常識「ビューアビリティ」「アドフラウド」「ブランドセーフティ」 | ウェブ電通報

 

日本では、大和ハウスが先進的な取り組みをしているようです。

コンテンツ単位のブランドセーフティが必要 大和ハウスの徹底した対策に迫る (1/3):MarkeZine(マーケジン)

住宅は、高額商品なので、出稿先の選定は重要なようです。

そこで、イスラエルの「CHEQ(チェック)」というツールを使って、媒体単位ではなく、コンテンツ単位で、コントロールしているとあります。

全記事の約3割をブロックしているが、反対に従来は掲載できなかった媒体に掲載できるようになったとあります。

 

フラウド(fraud)は、詐欺のことで、商標の業界では、実際はその商品に使用がないのに使用があると言って使用宣誓するときに、権利が無効になるなどのときに良く出てくる言葉ですが、Ad fraudは、ロボットがやっているんですね。

 

ブランド毀損は、事故、不祥事、品質問題などリスクマネジメントの関係で出てくる言葉ですが、インターネット広告では広告主自らがお金を払って、自らブランド毀損をしている可能性があるので、大和ハウスのような、地道な活動が大切なんだなと思いました。

 

守りを固めることはあまり評価されないですが、実は攻めの手段になることがあるのではないかと感じました。

 

nishiny.hatenablog.com

  

nishiny.hatenablog.com

 

スタバとLuckin、無印と蘇寧極物

中国の消費の変化

2019年2月21日の日経に、中国の消費者が「見えっ張り」から賢い消費に変化し、地場の会社が急成長しているという話が出ています。

www.nikkei.com

  • スタバは1999年進出で、3600店。憧れのコーヒーブランド
  • Luckin coffee(ラッキンコーヒー)は2018年参入。2000店
  • 2杯でもう1杯無料。価格も2割安
  • 平均給与の2~3倍でコーヒー人材を引き抜き。スタバからも従業員が流失
  • 無印良品は2005年進出。中国にない日用品を持ち込み、中国人の憧れのブランド
  • しかし、家電量販の蘇寧易購集団の「蘇寧極物」が人気
  • 実力若手デザイナーを起用。ビッグデータで顧客の好みを分析

という内容です。そのほか、

  • アリババ集団も、無印良品のデザイナーを務めた深沢直人を起用
  • コンビニでは「便利蜂」が、日本式商品開発とITと急拡大
  • 家具では「居然之家」がイケアを脅かす存在

全体的な理由として、

  • 価格が高く高品質の海外ブランドから、「価格も安くて、品質もまあまあ良い」賢い消費に

とあります。

 

コメント

中国出張したときに、日本と同じように、スターバックのお店は良く見かけました。日本と同じように人気なんだと思って見ていました。中国語では「星巴克」です。

スターバックスが、20年かけて3900店のところ、1年で2000店というのは、相当な成長スピードです。これなら、スタバの店舗数を抜くんじゃないかと思います。

カフェチェーンで10年以上の経験を持つ人材を、平均給与の2~3倍で引きぬくことや、価格や割引が特徴のようですが、あっという間にこれだけ成長するというのは、中国人にコーヒーが人気と言うことが背景にあると思います。また、賢い消費にシフトしてきているのもそうだと思います。

 

家庭の天井にあるシーリングライトには、ブランドロゴがありません。あるとしても、開け方を説明するシールに、小さくブランドが記載されているだけです。

しかし、以前の中国では、堂々と、大きくブランドロゴがありました。

中国の消費者が、海外の高いブランドの製品を使っていることを、来客に示すためと聞きました。

照明という機能から考えると、大きなブランドロゴで、光を隠すのはどうかなと思ったのですが、賢い消費者が増えてくるなら、このあたりも変わっているのかもしれません。

 

この記事は、中国の消費者の変化を紹介するのが、目的なのでしょうが、もう一つ、経営戦略を示してくれているようにも思います。

 

Luckin coffeeのような手法をとれば、スターバックスを抜くコーヒーチェーンを、今からでも作れるのかもしれません。

 

タリーズなどは、スターバックスと同じような価格帯で、同じようなインテリアの店舗で、同じような商品だと思います。タリーズは、立地の違いで、スタバとすみ分けているような感じがします。

一方、ドトールは価格です。昔は、喫煙可能なことが差別化要因だったと思いますが、これは早晩変化するように思います。

 

 

大阪の水出しコーヒー/ダッチコーヒーのHoll's Cafeは、東京に出てくれば、成功すると思うのですが、全く、関西から出る気配がありません。

少し庶民派に振り過ぎているかもしれませんが、非常に堅実な経営をしているだろうなという印象です。でもスターバックスとは、違います。

 

コーヒーチェーンは、身近なものですし、ブランド論として面白いですし、コメダ珈琲に至っては、不競法事件や、空間デザインで意匠法や商標法の改正の恰好の素材を提供してくれています(コメダ珈琲は、MKBパートナーズが入って、やったようです)。

コーヒーチェーンは、ブランドとしても、商標としても、見ておかないといけないと思います。

キリン「氷結」

立体商標として登録

2019年2月21日の朝日新聞デジタルに、キリンの「氷結」の缶のデザインが立体商標として登録になったという記事がありました。

  • 「氷結」の容器に使われる凹凸模様の「ダイヤカット缶」が、立体商標に登録
  • 発売から19年目での登録
  • 冷涼感ある現代的なチューハイとのコンセプトを表現するための形状

とあります。

関連で、キリンのニュースリリースがあります。

https://www.kirin.co.jp/company/news/2019/0221_06.pdf

文字や図形などが表示されていない、アルミ缶だけのデザインでの登録であり、酒類・食品業界において、非常に珍しい事例とあります。

 

コメント

最近、キリングループの活動を書くことが多いのですが、面白いことをやっているなと思います。本日は、立体商標です。

 

氷結は、缶のダイヤモンドカットも面白いのですが、蓋をあけたときに、全体が膨張して震える、あの動きも面白いので、動き商標でも出願すれば良いのにと思います。

立体商標が1996年から導入され、動き商標などは2015年から導入ですので、これからなんでしょうか。

 

さて、立体商標や動き商標などの新しい商標は、文字や図形で、既に十分に識別できるものを除いて、はじめは識別力なしとして、使用による識別力の獲得の立証が求められます。

立証にあたっては、多くの使用証拠の提出や、場合によっては、アンケート調査が必要になります。

 

J--Plat Patで確認しました。まだ、登録番号はついていません。商願2015-003096とあります。最近の出願です。審査経過を見ると、相当回数のやり取りをしています。

使用による識別力の獲得の立証は、通常の商標出願に比べると、大変な労力がかかるのですが、これこそ商標制度の本来の姿だなあと思います。

 

商標で一番重要なものは、商標自体の識別力であり、その立証は実際の使用実績であり、第三者の権利との抵触は、その次のテーマです。それにも拘わらず、抵触性の類否判断のみに汲々としているは、いかがなものかと思います。

 

抵触性の判断は、欧州のように当事者の異議申立に任せて、当事者で判断することも可能なぐらいのマターです。これを行政が判断すること自体、時代遅れの感があります。

会社法の改正で、類似商号の審査がなくなりましたが、これが原因で商号で、問題が起きたということを聞いたことがありません。おそらく、不正競争防止法が強化されているために問題が生じないのだと思いますが、従来の類似商号の審査は、一体何だったのかと思います。

 

商標の場合は、同意書制度を導入するというのが、解決の方向性ですが、民間の要請が高いにも拘わらず、なぜか特許庁は導入しようとしません。(民間という言葉は、お役所用語です。企業の人には違和感がある言葉です)

同意書制度の代わりに、日本では使用許諾が代用されていますが、あれはQuality Control(品質管理)を前提とする、世界的に一般的な使用許諾ではなく、日本の使用許諾を品質管理を無視してしまったために可能になった、同意書制度の代替物です。

企業では、通常の技術ライセンスが付随する本来の趣旨の使用許諾と区別して、これを商標の許諾被許諾と分類しています(貸し借りです)。名板貸しの禁止に近い話なので、筋が良いものではありません。

 

海外の人に理解されない制度は、早晩、終わりが来るのではないかと思います。同意書の代替として、一旦、商標権の名義を変更して、権利を取得してあげて、返却する、アサインバックがあると云われますが、アサインバックは海外の人に説明のが大変ですし、日本人の自体が、奇妙な考え方を持っていると誤解されないかと心配します。

 

さて、本題に戻って、立体商標や新しい商標の識別力を慎重に判断するのは、本当に良いことだと思います。これこそ、商標制度です。

この権利取得に100万円かかっても、マス宣伝や、ニュースリリース効果を考えると安いものです。