Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

シェアオフィス

大企業とスタートアップでは全然違う

2018年2月13日の日経に、シェアオフィスを大手企業が活用しているという記事ありました。

www.nikkei.com

  • シェアオフィスを活用する企業が増えている
  • 時短につながるシェアオフィスが広がる可能性
  • 日立製作所はグループ社員3万人を対象に、首都圏で合計30カ所、約600席を確保
  • オフィスは他社の社員と共同で使用
  • 機密情報も取り扱えるように、防音の個室席や会議室、電話ボックスもある
  • ザイマックスと契約
  • 高島屋はバイヤーを中心に導入
  • 三井不動産の法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」を活用
  • 三井不動産のシェアオフィスは合計25カ所で展開しているが、利用企業が100社を超えたため、東京都心などで拠点を増やす

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ザイマックスも、三井不動産も、法人契約のようです。

ザイマックスのモバイルオフィスは、15分200円~の従量課金制のようです。

mwo.infonista.jp

三井不動産も、10分300円~とあります。

commons-web.jp

会社まで戻るのは時間がもったいないというような時に、使えるようなオフィスです。

テレワークが盛んに言われていますが、自宅では誘惑が多すぎて仕事にならないので、どこか違う場所でしたいという人にも向いていると思います。まあ、従来のオフィスのサテライト版です。

喧嘩が日常的に発生する満員電車に乗って都心に行く意味はあまりないなと思いますし、企業側も家賃の高い都心のオフィスを小さくできるかもしれません。

 

これと全く違うのが、リージャスやウィーワークのシェアードオフィス(Shared-Office)=シェアオフィスです。

www.regus-office.jp

リージャスは、世界最大手のようです。もしも、自分が特許事務所を開業するなら、はじめは、このようなオフィスからスタートすることになるかもしれません。

 

一方、気になるのは、ウィーワークです。

www.wework.com

weworkは、専用デスクで9万3000円~とあります。オフィスも現代的でいい感じですが、コミュニティが充実しているのが売りのようです。若い人で、スタートアップの人には、このようなタイプが人気になりそうです。

 

このほかにも、遊休資産を持っているNTTなど、多くの会社がこのシェアオフィス事業に参画しているようです。

www.nikkei.com

中小企業にとって、ウィーワークのタイプのシェアオフィスを活用することは、メリットがあります。

まず、いいオフィスを気軽に借りられます。また、人員の増減に柔軟に対応できます。

サーバーもクラウドコンピューティングを活用するとすると、もはや、自前のオフィスにこだわる時代ではないのかもしれません。

ICタグを使った無人レジ

ICタグも悪くない

2018年2月15日の日経に、経済産業省ファミリーマートが、無人レジの実証実験を行ったという記事がありました。

www.nikkei.com

  • 場所は、経済産業省内の店舗で、23日まで
  • 商品にICタグを貼り付ける方式
  • 客は商品をカゴごと専用台にかざす
  • 今回の実験では、メーカーや物流業者が菓子やサンドイッチ、ペットボトルなどにICタグを貼る
  • 支払いは、電子マネーかクレジットカード
  • 在庫管理にも活用する

 

2018年2月17日の日経には、パナソニックがヴィンクスという流通向けシステム大手と、無人店舗の技術開発と事業化で業務提携すると発表しています。

www.nikkei.com

  • 無人レジ装置「レジロボ」にヴィンクスのソフトウェアを組み込む
  • 2018年度にコンビニやスーパーで導入
  • パナソニックは、ロボット、センサー、カメラ
  • ヴィンクスはPOS向けソフトウェア
  • 在庫管理などのシステムと親和性を高める
  • 店舗の売り上げをリアルタイムで商品の配送や製造計画に反映する

 

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AMZON GOも革新的ですが、レジロボも負けていないようです。

 

「レジロボ(R)」RFID(電子タグ)を導入した実証実験

 

 

レジがありますので、アプリ決済ではなく、通常のカードなどでの支払いのようにです。この点は、AMAZON GOの方が、未来的です。

 

ビニール袋に入れてくれるところは、日本人は喜ぶところでしょうか?反対に、海外では、環境に悪い印象があるので、海外ではどう映るかわかりません。

 

このシステムの良いところは、従来のPOSがやっていた在庫管理や発注や生産計画との連動が可能な点です。

 

RFIDですが、今は、10円程度で、2020年までに5円、2025年には1円を目指しているようです。ICタグが1円になれば、コンビニやスーパーの万引きが3%以上あるとすると、全商品につけても、十分もとが取れそうです。

uk-tai.watch.impress.co.jp

 

AMAZON GOが優れていると考えられる、もう一つの論点である、お弁当や総菜など、電子レンジで温めるものに、ICタグは発火のおそれがあるという点については、金属製のICタグに保護フィルムをつけることで、電子レンジでも発火しなくなるようです。

newswitch.jp

こうなってくると、パナソニックの方にも勝算が出てきます。たぶん、コンビニ、スーパー、協力工場などは、在庫管理等が可能なRFIDが良いのだと思います。

一方、消費者としては、カゴに入れて支払いをする手間があり、AMAZON GOの方が良さそうです。ただ、プライバシーを考えると、AMAZON GOはやり過ぎなような気もします。

 

プライバシーに関しては、公共の場所や店舗内で、既に映像はとられまくっていますので、AMAZON GOがやり過ぎということも言えないのかもしれません。また、AMAZON GOの方式でも、在庫管理等は可能なような気もします。

 

コンビニなどの店舗で5年後、10年後に、どちらの方式が主流になっているのだろうかと思います。

クラウド契約

印紙代がいらない?

2018年2月12日の日経に、契約書を書面ではなく、ネット上で締結するクラウド契約の最近の動きの説明記事がありました。www.nikkei.com

  • 電子署名したPDFファイルなどをクラウドにアップロードし、相手先に通知
  • 相手先が通知されたアドレスにアクセスし、電子署名
  • ファイルはクラウド上で保管
  • 法令上は幅広い分野で電子化が可能
  • 日本では正式文書は印鑑が必要だとする「ハンコ文化」が根強い
  • 法務部門の効率化
  • 弁護士ドットコムの「クラウドサイン」
  • 導入実績は無料での利用も含めて1万6000事業者、累計15万件の契約
  • ネット系、不動産、金融、人材サービスなど業種の広がり
  • 法律事務所が依頼人との契約などに利用するケースも多い
  • 契約の期間短縮、印紙代や倉庫代などの経費削減の効果
  • メルカリは、雇用契約書を電子化。70倍の効率
  • 海外では米ドキュサインが最大手。400社が有料で導入
  • グローバル対応に強みを持ち、外国企業との契約での利用
  • 民法では電子契約も有効。例外は、特定商取引法
  • 「書面で交付しなければならない」と定められた訪問販売の契約書など

 

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記事で紹介されていた、弁護士ドットコムのクラウドサインというサービスのWebサイトを見てみました。導入企業が相次いでいるようです。記事にあったメルカリもそうですが、野村証券ネスレなどの大手や、税理士法人などの固めの職業でも導入しているようです。

www.cloudsign.jp

いわゆる契約書というものもあれば、取引先にCSRの方針をみてもらい、同意してもらうというものもありました。

機密管理は、紙と同じ程度だとおもいます。紙の契約も、PDFにして、emailでやりとりしていますので、大差ありません。

契約の有効性には、特に問題なさそうです。

 

商標の業務で、繊維の会社が、繊維を買っていただいたお客様に完成品のシャツなどのタグにつける「●●製の▲▲糸」のようなものを使用許可する時の契約を年間1万件以上もやっており、アルバイト7~8名で担当している、というようなことを聞いたことがありますが、これなどは、クラウド契約に向いています。確かに、大量の業務量がありそうです。

 

会社の規模が小さいときは、法務部に契約を一元可能ですが、規模が大きくなると法務部で管理できなくなり、契約書の保管を事業部門に任せるようになります。事業部門では経理が契約書の管理をする場合が多いと思いますが、営業の担当者の机の中に契約書があるということも出てきます。会社の将来を決定するような重要な契約書ではないかもしれませんが、管理としては、良くありません。

 

クラウド契約が広がると、どこに行ったか分からないということは無くなるように思います。

 

一点、気になったのは、印紙税の話ですが、クラウドサインのWebサイトに、次のように説明がありました。

印紙税法第2条の別表第1には、印紙税の対象文書として20項目が記載されています。しかしながら、電子文書は、この20項目に含まれていません。そして課税文書は「紙の原本」と定義されていますので、契約書の電子データだけでなく、電子データのコピー(写し)も原本でないために印紙税はかかりません。国税庁は「電磁的記録」により契約締結した場合にいは印紙税が発生しない旨を明確化しており、E-mail、FAX等での契約締結に関しても印紙税は発生しないものとしています。

電子文書は、印紙を貼るところもないですので、現状納付の方法もありませんので、納得です。この点は、大きなメリットで、まずは、定型的な契約は書面からクラウドにシフトしそうです。

 

もう一つの海外のドキュサインのWebサイトです。

www.docusign.jp

パソナが人材派遣で使っているようです。

 

気になるのは、これらの運営会社がいつまでも残ってくれているかです。

数十年先にも見返す意味のある契約書はあまり多くはないと思いますが、極まれにお宝契約があります。それらまで、クラウドに預けて良いのかなぁという感想です。

著作権の保護期間の延長

TPP11や欧州とのEPAで必要

2018年2月11日の日経に、小説や音楽の著作権の保護期間が、作者の死後50年から70年に延長する改正案が、今国会に提出されるという話がありました。

www.nikkei.com

  • 小説や音楽の著作権の保護期間を、20年長い「作者の死後70年」に
  • 著作権法の改正案を今国会に提出
  • 1970年制定の現行の著作権法は「死後50年」
  • 欧米の多くの国が「70年」に延ばしている
  • 日本では「過去の作品を広く社会が活用するために延長すべきでない」など反対論も強く、文学作品や音楽は「50年」のまま
  • TPP交渉では米国の要求に応じ、保護期間を文学作品を含め死後70年以上に統一することで合意
  • トランプ政権となって米国が離脱した11カ国の交渉(TPP11)の合意内容では保護期間延長は一時棚上げに
  • しかし、OECD諸国の多くが死後70年としていることもあり、政府は3月8日にTPP11に署名した後、著作権法改正案を提出予定
  • TPP11の発効で施行する方向。2017年12月に交渉妥結した日欧のEPAの発効が先となれば、TPP11の発効前に施行する可能性もある
  • いずれも2019年発行を目指している
  • なお、映画(会社名作品)については2003年の法改正で「作品公表後50年」から「70年」に延長済み

 

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Wikipediaに世界の著作権保護期間に一覧がありました。50年と70年に大きく分かれるようです。

世界各国の著作権保護期間の一覧 - Wikipedia

著作物の保護に関するベルヌ条約が、第7条において締約国に最低限、死後または公表後50年間の保護を義務付けているために、50年という国が多いようです。

しかし、米国だけでなく、OECD各国が軒並み70年のようですので、TPP11や欧州とのEPAの施行に合わせて、日本も同じようにするのは、致し方ないということなのでしょうか。

この問題、日本では、相当数の反対があるようですが、政府が押し切った形です。

 

個人の場合は、遺族もありますので、ある程度長くても良いかと思いますが、法人の場合は、死というものがありませんので、企業が存続する限り、どうしても、もっと長期に、と思ってしまいがちです。きりがありません。

 

よく言われることですが、著作権法の延長はミッキーマウスを守るためと言われています。下記のサイトに詳しくその当たりの情報が載っています。

gigazine.net

ミッキーマウスの法的保護は必要だとは思いますが、本来は、立体商標不正競争防止法の保護に移るのが自然なのだと思います。

 

Best Japan Brands 2018

GlobalとDomesticの2つのランキング

2018年2月14日のインターブランド社のニュースリリースに、2018年のBest Japan Brandsが発表されていました。

GlobalとDomesticの2つのランキングがあり、海外売上比率が30%を超えるとGlobalに入り、30%未満はDomesticとなるようです。

http://www.interbrandjapan.com/ja/data/180214_BJB2018press_release.pdf

 

Global:40位までの発表ですが、10位までの順位としては、次のようになっています。

1.トヨタ、2.ホンダ、3.日産、4.キヤノン、5.ソニー、6.MUFG、7.パナソニック、8.ユニクロ、9.スバル、10.任天堂

Globalの話題としては、任天堂が躍進したのと、SMFG・みずほが、DomesticからGlobalになったようです。

 

Domesitic:こちらも40位までの発表です。トップ10は次のようになっています。1.NTT ドコモ、2.ソフトバンク、3.au、4.リクルート、5.楽天、6.サントリー、7.花王、8.キリン、9.Aあアサヒ(ビールの)、10.ローソン

Domesticでは、TOP3が携帯キャリアです。

 

コメント

ブランド価値が一年でどの程度上がっているのかを見ると、その企業が好調かどうかがわかります。スバルが+12.2%、任天堂が+21.3%という数字は本業が好調なようですので、納得できます。

ただ、最近は、日本企業の収益は絶好調なのに、全体にブランド価値がプラスになっているのが少ないように思いました。トヨタが-6.1%、キャノンが-11.7%、MUFGが-9.7%、ソニーが+1.9%、パナソニックが-6.0%などです。あまり良くありません。

 

この点、インターブランドのニュースリリースでも同じ点に着目はしているようでした。

この10年で、Japan(のGlobalの方)のブランド価値は、40%上っているようです

一方、グローバルのTOP100のブランド価値は、この10年で、68%も上がっており、日本を凌駕するとあります。

そして、世界の方が成長しているという理由で、日本企業のブランド価値はあまりプラスとなっていないとあります。

 

ブランド価値を、単純に並べるとランキングになります。ブランド価値は、相対評価ではなく金銭価値のはずですから、日本企業の現在の収益率からすると、もっとプラスになっても良いように思います。

インターブランドの方程式では、収益があがると金銭評価は上がるはずです。日本企業の昨今の業績は非常に良いので、余程他のファクターが、ブランドの強さが下がっているということなのでしょうか?

 

一点、日本のブランドに人気が無いというイメージはあります。

日本全体に将来性が感じられず、その日本のマイナスイメージが、日本企業すべてに影響し、グローバルで評価すると低めに出るのではないかと思いました。

少子高齢化が理由かもしれませんし、日本に、次の時代のスター企業である、FANG・MANT・SLAWのような企業がないためかもしれません。

 

ソフトバンク楽天、LINEのような会社が、どこまでグローバルで活躍するかが、次の日本のイメージを決めるような気がします。

国が次の時代の個々の企業を育てる時代ではないのかもしれませんが、米国ではなぜそのような企業が育ったのかを分析して、その環境を日本で整備できないものかと思した。 

nishiny.hatenablog.com

 

商標と「表現の自由」

The Slants事件

こちらも、2018年2月8日の日本商標協会の30周年記念イベントの外国法制度部会での話題です。講師は、中山健一弁理士・米国弁護士です。あまり時間はなかったので、走って解説されたのですが、配布資料をベースにして、まとめました。

この事件は、別の研修会でも聞いたことがあります。有名判決のようです。

 

1.事件の概要

2017年の米国の判例で、商標出願したものが、侮辱的表現を含むとして、米国特許商標庁(USPTO)が拒絶したものに対して、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)が表現の自由を理由にUSPTOの登録拒絶を憲法違反と認定し、それが米国の最高裁までいき、最高裁もCAFCの判決を支持したという内容です。

https://www.supremecourt.gov/opinions/16pdf/15-1293_1o13.pdf

最終的に、当該商標は登録になっています。

http://tmsearch.uspto.gov/bin/showfield?f=doc&state=4808:5wagwk.3.3

また、米国の審査基準(TMEP)が改訂されたようです。

 

内容は、米国のロックグループのThe SlantsのリーダーのSimon Tamが、2011年11月14日に、”THE SLANTS"という商標を、第41類の"Entertainment in the nature of live permances by a musical band"を指定役務として出願したいうものです。

SLANTという単語には、つり目を意味し、東洋人ないしアジア系米国人をばかにする意味合いがあるようです。

一方、リーダーのTam氏としては、アジア系米国人への侮辱的な意味合いを是正するためにあえてバンド名に採用したという主張です。The Slantsは、全員アジア系米国人とのことです。

 

2.事件の背景と議論

米国商標法(Lanham Act)の2条a項は、"disparage"(見くびる、けなす)商標は、登録できないとあります。

(a) ...may disparage or falsely suggest a connection with persons, living or dead, institutions, beliefs, or national symbols, or bring them into contempt,...

https://tfsr.uspto.gov/RDMS/TFSR/current#/current/TFSR-15USCd1e1.html

 

よって、審査、審判では、拒絶となり、その不服がCAFCに提訴されました。CAFCは、侮辱的表現を含む商標登録を拒絶することは、表現の自由を保障する憲法に違反すると判示しました。USPTOは、米国最高裁に上告し、最高裁はCAFCの判決を支持しました。

 

USPTOの主張、Tam氏の主張は、だいぶ込み入っており、十分理解できていませんので、割愛します。

キーワードとしては、商標は政府言論(govemental Speech)であるとか、商標は政府補助事業(govemental subsidy)であるとか、商標は商業的言論(commercial speech)であるとかが議論に出てきす。基本的には、憲法論のようです。

 

そして、侮辱的表現を含む商標の拒絶を定める米国商標法2条a項は違憲となりました。ただ、同条項の不道徳的(immoral)とか破廉恥(scandalous)な表現を含む商標は違憲と判断された訳ではありません。

 

コメント

最近は日本でも、バンドやグループの名称を商標登録することは、常識となってきたようですので、出願すること自体には違和感はありません。

ただ、Tam氏の商標出願の意図は、第三者に取られたりしないためとか、経済的にメリットを受けるためとか、政治的な発言につなげるためとか、何かは分かりません。判例には書いてあるのかもしれませんが。

 

日本であれば、公序良俗違反でバッサリとやるところでしょうか。表現の自由を最大限に認めるアメリカらしい判決だと思いました。

 

米国商標法の条項に違憲判決が出たのですが、条文はそのままのようです。今回の事案への適用としては違憲でも、別の事案では合憲になるという運用違憲の問題ではないので、本来は、条文を改正すべきとなるでしょうが、審査基準だけの改正で済ませている感じです。

 

今回は、Tam氏やThe Slantsがアジア人であり、彼の政治的主張が入っていますが、反対に出願人がアジア人ではなく、アジア人への軽蔑を広める政治的意図をもって商標出願した場合は、商標登録すべきではないような気もします。しかし、そのような内心の意図は、裁判でもやって、証人尋問をしないと出てきませんので、審査向きの話ではありません。

 

日常の仕事で、政治的な発言に関するものが出てきたら、企業内の担当者なら止めておきましょうと言えますが、特許事務所の担当者でお客さんが明確に政治的意図を持っているときは止めておきましょうとはなかなか云えないように思います。(ただし、そのお客さんの仕事をお断りするという選択肢はあります。)

 

商標とは何か、商標はどうあるべきかまで進む議論だと思いますので、じっくりと、双方の主張を含め、判例を読んでみたいと思いました。

「誠実な意思」の欠如

iWatch事件

(M.Z. Berger & CO., Inc. v. Swatch AG事件)

2018年2月8日の商標協会の外国法制度部会の黒田亮先生の2つめのお話しを、当日の配布資料を利用して、まとめてみました。

米国の時計メーカーのBergerが、米国特許商標庁に、”iWatch”商標を出願(2007年7月5日)し、出願公告になり、それに対して、Swatchが異議申立てをしたものです。

 

Berger社は、米国に古くからある時計の製造販売業者のようです。

www.mzb.com

 

Bergerの出願の指定商品は、第14類の腕時計などです。これに対して、Swatchは、①Swatchとの類似、②商標を使用する誠実な意思(”bona fide intention to use the mark in commerce")を欠いている、という2点を異議申立の理由としました。

異議申立の審判では、将来関連商品の開発を始めることを決定した場合に備えて、単に商標についての権利を予約しようとするものに過ぎず、当該商標を取引上使用する誠実な意思を有していたとはいえないとして、異議申立を容認しました。

これに対する訴訟(控訴)が、本件です。

 

1.連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の判決

CAFCは、審判(TTAB)の結論を支持し、Berger社は出願時に誠実な使用意思を欠いていたとしました。

2.CAFCの検討

(1)誠実な使用意思は、単なる主観では足りず、実証できるものでないといけない

(2)本件は、使用意思を示す十分な証拠がない

(3)Berger社のオーナーや従業員は、各種証言をしているのですが、オーナーが、具体的な時計の使用計画は検討していないと答えたり、権利を予約したものと答えたり、従業員も過去に対話型スマートウォッチの開発はないと答えたりしているため、誠実な使用意思がないとしました。

3.まとめ

(1) この判決で、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、初めて、取引上商標を使用する誠実な意思の欠如は、異議申立理由となることを認めた点に意味があるようです。

(2) 使用意思のあるという立証のためには、研究開発をしている、市場調査をしている、製造をしている、販促をしている、営業活動をしている、政府の許可申請をしているなどが有効なようです。

 

コメント

外からは判断しずらい使用意思が、異議申立の理由になっています。公告された商標が不使用と思うときは、これからは、この主張も可能ですね。挙証責任は、どちらにあるのでしょうか。

フロードの主張、誠実な使用意思の欠如の主張など、使えるときに選択して、使っていくことになります。

一方、出願人としては、やはり米国では、実際に使用意思のある商品だけに限定することが望まれるということになります。

 

 面白いと思ったのは、Berger社の証言が、自社に不利になるような証言をしている点です。iWatchが登録になってもならなくても、どちらでも良かったのかなぁとも思います。

iWatchという商標ですが、自らスマートウォッチに最適と言いながら、スマートウォッチを開発していないと言ったり、証言がかみ合っていないようです。そもそも、何も、スマートウォッチに使うと限定する必要はないのですが、法廷戦術で上手く証言を引き出されてしまったのでしょうか。Swatch側の弁護士が上手いのか、Berger社が素直だったのか、どちらかだなと思いました。

 

ユアサハラのWebサイトに、黒田先生の詳しい解説がありました。

www.yuasa-hara.co.jp

 

さて、本件、ブランド面やマーケティング面から考えても、面白い話です。

まず、iWatchは、良いネーミングです。Apple社がApple Watchとしていますが、iMaciPodiPhoneiPadと来ていますので、iWatchでも良かったのに、Apple Watchにしたのは、この係争が理由なのでしょうか?

Berger社が出願しなければ、iWatchになっていたような気もしますし、世界中でiWatchは色んな会社から出願されているでしょうから、結局、採用できなかったかもしれません。

2007年7月5日の出願とありますが、ちょうど、Apple社がiPhoneを出すあたりです。Apple Watchは、iPhoneの成功を前提にしているので、ネーミングの検討の検討は、もう少し後になると思います。

そういう意味では、Berger社には先見の明がありますが、如何せん、商品開発力があまりなかったようです。

 

ちなみに、Berger社は、デジタル式の電気時計も販売しているようですが、ブランドが"SHARP”です。ロゴは違いますし、SHARPは辞書にある言葉で、造語ではないので、独占は難しく、日本のシャープがすべてを持っているのではないと聞いたことがありますので、これもその一例ではないでしょうか。

Clocks + Home Décor - M.Z. Berger & Co.