Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

全ての元号登録不可に

商標審査基準の改正

2018年11月6日の日経に、政府が全ての元号を商標登録不可にするという記事がありました。

www.nikkei.com

同日の朝日新聞には、

とあります。

 

特許庁のWebサイトに、審査基準案があります。

「商標審査基準」改訂案に対する意見募集について | 経済産業省 特許庁

 

商標法3条1項6号

「現行審査基準」

4.現元号を表示する商標について
商標が、現元号として認識される場合(「平成」、「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する。

「新審査基準(案)」

4.元号を表示する商標について
商標が、元号として認識されるにすぎない場合は、本号に該当すると判断する。
元号として認識されるにすぎない場合の判断にあたっては、例えば、当該元号が会社の創立時期、商品の製造時期、役務の提供の時期を表示するものとして一般的に用いられていることを考慮する。

 

コメント

官房長官が発表したという点に、驚きました。

 

公益などの見地からの具体的不登録理由の4条に入れず、3条ですので、識別性の問題です。元号だけでは、誰の商品・サービスか判断できないため登録しないという考え方です。

 

新聞では、「明治ホールディングス」「大正製薬」「昭和産業」などがあがっています。これらは、使用により識別力を獲得したとして、例外的に登録したという説明です。

従来の審査基準は、現元号だけですので、旧元号を排除をしていませんでした。(今更、旧元号を使いたいという人が少ないのかもしれませんが。)

 

今回は、新元号発表後、実際に改元がされるまでの間に、駆け込み的に出願されるものを排除しようということのようです。

 

さて、識別力の問題ですので、「平成」に何かがくっついていると、登録になります。何か面白い登録例はないかと思って、J Plat Patで見てみると、次の例がありました。

・「平成狸合戦/ぽんぽこ」(スタジオジブリ

・「平成教育委員会」(フジテレビ)

・「月桂冠/平成仕込」(月桂冠

また、図形付きのものとしては、

・「平成食品工業」

・「平成ビルディング株式会社」

・「平成建設」

などがあります。

 

他の文字が識別力があったり、他の図形に識別力があると、商標全体としては登録ができるということになります。

 

新しい元号になると、「平成」は設立年などの時代を示すものになりますので、それほど新しいものは出てこなくなるようにも思います。

 

新審査基準案の後半ですが、明治、大正、昭和、平成は、商標として使用されるケースが多いですが、それ以上前の誰もしらないものを、商標として使用しても識別力がないとは言えないということだと理解しました。

 

有名な元号ということで、大化の改新の「大化」など調べても、「大化け教育」というものしか出てきませんでした。

新語・流行語大賞の候補30語し

聞いたことがないものは

2018年11月8日の日経に、2018年の新語・流行語大賞の候補30語が掲載されていました。

www.nikkei.com

現代用語の基礎知識(ユーキャン)が行っているもので、対象の発表は12月3日ということです。この30語は、朝日新聞にも、出ています。

 

ユーキャンのWebサイトでは、次の説明があります。

「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞

この賞は、1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの。

1984年に創始。毎年12月初めに発表。『現代用語の基礎知識』収録の用語をベースに、自由国民社および大賞事務局がノミネート語を選出。選考委員会によってトップテン、年間大賞語が選ばれる。

とありますので、一般が投票できるようにはなっていないようです。

さて、30語は、

とあります。スポーツ関係の言葉が多いのが特徴ということです。

 

コメント

まったく知らないもの、なんとなくは分かる程度のもの、いろいろあります。

ちなみに、下記が分かりませんでした。

  • ダークウェブ(簡単にアクセスできないWebサイト)
  • 計画運休(台風などのときに、一斉に鉄道が止まる運休)
  • ご飯論法(言い逃れ答弁の論法で、「朝ごはんを食べましたか?」という質問に「(朝、パンは食べたけど、ごはん=米飯は)食べていない」と答えるようなやり方)
  • 翔タイム(大谷翔平が出てくることをいうようです)
  • 「U.S.A.」(DA PUMPニューシングル)
  • TikTok(中国のBytedance(字節跳動)が提供する短編動画共有アプリ・SNS)

30個で、6個ですので、2割は知らないという感じです。

 

もぐもぐタイム」が今年の話とな思えなくなっています。何か、だいぶ前のことのように思えます。

また、「時短ハラスメント」は、最近よく言われる言葉だと思います。強制的な働き方改革の負の側面ですね。

チコちゃんの「ボーっと生きてんじゃねえよ!」はテレビ番組で、通年で見ますので、一番良く覚えているでしょうか。8時になると強制的に消灯するなどがこれです。

 

何が選ばれても良いのですが、12月3日は楽しみにしています。

 

読んでみました

コカ・コーラ その資本・戦略・体制(ダイヤモンド)

アメリカのブランドライセンスの話で良く出てくる、コカ・コーラの本を図書館で見つけたので、読んでみました。

昭和43年の本で、古いのですが、ダイヤモンド社の「世界の企業物語」の一つです。

ファンタがでるまで、70年間、コカ・コーラを売り続けたとあります。

コカ・コーラの発展は、フランチャイズ制とルート・セールスが、重要とあります。

 

フランチャイズ

同社は原液を販売し、許可した企業にのみボトリングを認めるというのが、フランチャイズ制です。これで工場建設等で資金的に無理をせずに、販売地域の博大が可能になります。

卸を通さず、地域を分割するので、卸が同じ小売店を食い合うという関係性には立たず、ボトラー同士が、助け合う関係になるとあります。

フランチャイジーボトラーは、地元の有力企業や資本家に限られ、高等教育を受け、従業員と進歩的な関係にあり、闘志・戦略があり、規模の拡大にも耐えうる人物と極めて厳しく審査されます。5年間の審査があるとあります。

当時は、日本全国に16のボトラーがありますが、このボトラーは米国の資本の入った日本コカ・コーラと資本関係はゼロとあります。

 

ルート・セールス

販売は、ボトラーが担当し、ルート・セールスは営業、販促、配送、集金と複数の役割をもち、赤い車、茶色のユニフォーム、緑の瓶、黄色の木箱で、動く広告塔でもあります。

 

<その他>

原液ビジネス

原液の量は、1%弱であり、あとは、水、炭酸、砂糖、香料とあります。原液以外は基本は現地調達で、特に海外では、原液も、96%は現地調達品であり、アメリカからの輸出品(コンセントレート)は、ほんのわずかとあります。

原液の処方箋を保有するのは、社長と技術担当重役の二人だけで、処方箋(フォームミュラ)を二つに分けて別々に所持しているとされます

 

コカ・コーラの瓶

緑の瓶は、瓶の会社から売り込みがあったもので、当時流行のスカートを参考にしたものとあります。デザイン的にも、持ちやすさなどの構造的にも優れたものとあります。

権利は最終的に買い取ったようです。

 

海外展開

海外展開は、コカ・コーラ・エクスポート・コーポレーションが担当し、当時、世界に20数か国に子会社があり、それぞれの国にボトリング会社があるとします。

 

コカ・コーラが世界に広がった理由に、米軍の派遣があるようです。兵士はコカ・コーラに、瞬間の平和を感じ、国防省もそれを認め、米軍の拡大でコカ・コーラが世界に広まったとあります。

 

歴代経営者

ベンバートン博士

コカ・コーラの開発者。当初は、強壮剤として薬と考えていたようです。水で薄めて飲むのですが、たまたま水がなく、ソーダで割ったところ良く効いた。そのため、ソーダファウンテンに原液を販売。しかし、商売は上手くいかなかったとあります。博士は、今でも顕彰されています。

 

キャンドラー

権利を買い取った初代社長。コカ・コーラは薬ではないと明確にした。許可した相手だけに販売するフランチャイズ制を導入。ルートセールスを発案とあります。

 

ウッドラフ

経営理念を導入。海外展開。「いつでも、どこでも、コカ・コーラを手の届くところにおく」。このビジョンにより、世界中に配給網を整備。自動販売機の設置もこの延長上。

また、「コカ・コーラは、この飲料に関連するすべての人々とともに、その利益を分かち合う」としたとあります。

 

広告

・広告費は、コカ・コーラ本社が一部負担するという条件で、ボトラーに協賛を呼び掛け、統一的な全国的な広告活動を展開する

・繰り返しの哲学

・積極的な工場見学(マーケティングの一環)

・「広告には、上品さが必要である。それは、楽しくひかえめで、すがすがしいものでなければならない。たとえすこしでも押し付けがましいところがあってはならない。人から好かれ愛されるような態度、広告にはそのような心ががけが出なければならない」

・キャッチフレーズは、何年も使用する。少なくとも、4、5年10年ぐらいの間。消費者に印象付ける。限界に達したと判断すると、思い切りよく表現を変える

基本は、Refresh(日本語では「さわやか」)であり、これは聖書のマタイ伝から取った言葉

・広告活動は、日本コカ・コーラが厳しく審査する。各ボトラーは、トレードマークを使用するPR活動に限っては、勝手はできない

・コーク(Coke)という言葉は、世間が言い出した愛称。法廷闘争の末、自社の権利にした

・社会貢献活動は、積極的ですが、陰徳としてあまり公表したがらない

 

研修

・会議の持ち方、運転の仕方、小売店での対応方法など

・リバイタライズ(店頭の汚れをとるなど)

 

コメント

最近は、フランチャイジーの合併等があったり、沢山の新製品が出たりしているのでしょうが、同社の基本的なところは、良く理解できました。

 

原液などを媒介にした商標ライセンス(フランチャイズ)と、宣伝によるコントロールのモデルですね。

 

単なる「Coca-Cola」商標のライセンスでは、品質確保は十分できません。ソフトドリンクにとって一番重要な原液を抑えている点が、品質確保のスタートになります。

当然、その他の製造上の品質基準も重要ですし、瓶や車やユニフォームのデザインも重要な項目となりますが、原液とCoca-Colaの商標権という、2つの首根っこを押さえている点が、ポイントです。

 

あとは、広告です。ボトラーの費用と本社の費用を足して宣伝費にするという点も面白い記述だと思いました。ただ、マス宣伝の制作などは、本社に一元化していると思います。

当時は、コカ・コーラの広告代理店は、マッキャン・エリクソンで、日本にまでマッキャン・エリクソン博報堂を立ち上げたとありますので、米国本社の広告のイメージコントロールは、このルートでやっていた可能性が高いように思います。

 

原液の中に、すべてのロイヤルティを入れ込む方法と、商標やノウハウのロイヤルティを個別に取る方法がありますが、言及がありません。お金についての記載としては、宣伝費を分担している点ぐらいです。

JIPA商標委員会の勉強会

武田グローバル本社で


2018年11月2日に、日本知的財産協会(JIPA)の商標委員会の勉強会があり、一時間ほどお話をする機会がありました。そのあと、1時間ほど、参加者とディスカションするという勉強会です。
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本社の横に、福徳神社があります。
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●しばらくの間、このブログで書いていた、「商標の管理」(日本経済新聞社)や「商標管理」(日本生産性本部)は、そのための事前準備のためです。

 

●商標委員会は約20年ぶりです。以前参加していたときは、20代後半から30代前半の時期で、若手として参加していたので、隔世の感があります。

当時と比較すると、若い方と女性が多くなっているのと、サービス業の方が、多くなっています。

 

●依頼を受けたテーマは、「商標担当者のプレゼンス向上とキャリア形成」だったのですが、サブタイトルを「商標管理(Trademark Management)」の復活」としました。

ちなみに、商標担当者の幸せとは?というのが、検討課題としてあるようです。

 

●最近の電機業界を念頭に、ブランドマネジメントと商標管理が分離してしまい、60年前にアメリカのUSTA(INTA)の商標関係者から学んだ状態と違い、適正使用管理(ブランドマネジメントがやっています)や商標ライセンス時の監査をやらない商標管理となっており、それはいかがなものか、という視点で、「商標管理の復活」とサブタイトルに決めました。

 

●商標調査・商標出願などの権利確保や、更新は、基本的になものではありますが、ここは、特許事務所に外注も可能な部分ですので、これだけに注力するよりは、企業にとって重要な適正使用管理やランセンス監査をした方が、ブランド価値低下を防止し、ひいてはブランド価値向上のために、有用と思います。

 

●2000年以降に、ブランド論が盛んになり、経営学的なブランド用語が企業に入ってきました。この流れは止めらません。ブランド用語は、ビジネスの標準語になっています。

過去、商標と言っていたものが、ブランドという言葉に置き換わっています。

これについては、将来的には、商標用語とブランド用語の統一が必要と思います。

先週、中華商標協会の訪日団があり、弁理士会商標委員会のメンバーとして受け入れの場に参加しました。中国では、「商標品牌」というように、「商標」と「ブランド(品牌)」をセットで使うことが多いように思います。このあたりから、やり直さないと、商標管理は復活しないと思っています。

 

●広報宣伝部門に、ブランドマネジメントがありますが、宣伝や広報に重きがあり、適正使用管理やライセンスなどの、ブランドマネジメントは、二の次、三の次になりがちです。

 

ブランドマネジメント部門も、商標部門の助けを必要としていると思います。今一度、商標部門とブランドマネジメント部門の完成を再構築して、模倣品対策などのその他の業務とともに再構成すべきというのが、云いたかった内容です。

 

●更新の使用証拠収集がなくなったのは、適正使用管理という業務から、商標部門を遠ざけたものであり、商標管理を決定的に低下させたものと考えました。これによって、使用管理の足場を失いました。

対策としては、アメリカのように使用宣誓を導入してはどうかなどを提案しました。

 

●他には、米国流に、ライセンスにQuality Controlを入れる(品質管理をしていない権利は無効となります)ことも提案しました。

こちらは、ライセンスの仕組みや監査に商標担当者が大きく関与するための足場になります。

 

●付与後異議を付与前異議にすることについては、異議申立は「商標の華」ですので、これを阻害している要因は、徹底的に廃除する必要があります。一番には、異議に勝つパーセンテージの低さです。これでは誰も異議をしなくなります。

ここは、付与前異議に戻すか、特許庁が、中国程度の数字を目標に異議申立する方を勝たすかの方法がありますが、数値目標を作れないと思いますので、付与前がましだと思います。

意見の分かれるところです。

 

●議論になったのは、電機業界が念頭にあったので、商標部門の地位が低下していると認識していたのですが、この点は、違う意見もありました。最近は会社の中でも特許よりも商標が重要といわれているということです。

確かに、BtoBの企業では、広報宣伝の力はそれほど強くなく、適正使用管理もこれからという企業もあるでしょうし、商標部門がブランドマネジメントの実務自体をやることになる会社も多いだろうと思いました。

 

●他の意見しては、「商標の力」を議論したいというものがあり、これは「ブランドの力」の話だと思います。概念的な商標機能論ではなく、ブランドのパワーの問題であり、どのようにすれば、商標の力を最大限に発揮できる(活用できる)か、そのために何をすべきか、何ができるか、成功例、失敗例をもとに、実践的なプロセスを考えるもので、ブランド学者のケーススタディを、咀嚼し、自社に一番良いように適用することが必要と思います。

 

●最後に、以前からの知り合いの方に、各所に面白いところはあったが、法改正よりも、要は個人の熱量の問題ではないか?という指摘ももらいました。そうかもしれません。

 

何はともあれ、久しぶりに、商標担当の皆さんとお話しをする機会を得て、うれしく思います。感謝しております。

商標管理(日本生産性本部)(その13)

資料Ⅲ 商標に関する論文

この本の最後です。「商標の使用許諾」というタイトルのアーサー・L・ナザンスンさんの論文と、「混同と消費者の心理」という特許局副長官のダフネ・リーズさんの論文です。

ただ、判例はときどき引用されていますが、先行論文の引用がありませんので、通常の論文ではなく、日本人のための寄稿文、法律的な随筆と考えた方が良さそうです。

特別に、ミッションのために書いてくれたので、載せたものと理解しました。

 

商標の使用許諾

使用許諾を認める理由

まず、商標の歴史は、中世の商人標(merchant's mark:商品がその商品を表示するために自発的に用いたもの)と生産標(production mark:生産が生産にかかわる商品に付することを強制されたもの)があるとします。

生産標が今日の商標につながるとあり、商人標は複雑な流通機構のもと、なくなったしたとあります。

生産標は、商品の出所を示すもので、品質に欠陥があった場合に、責任を負わせるためのものとあります。

 

その後、商標は、自他商品の識別標識とされるようになり、その文言が示すように、譲渡やライセンスは、否定されます。

しかし、広告や通信の発達により、商標が全国的となり、商標所有者だけの使用では限界があり、シロップ製造業者(※コカ・コーラ、サンキストの例でしょうか)のように、ライセンスが経済的と認識されるようになったとあります。

そして、生産標の概念の転換があり、同じ商標を付した商品の品質は同じであるということを保証するという品質保証の話が重要となり、これがあれば、ライセンス可能とされるようになりました。

 

なぜ、子会社にまで契約が必要か?

ズバリ、国有化や独禁法問題とあります。国有化は海外の会社で問題なり(※戦時接収や共産化などです)、国内では独禁法違反で意に反して切り離されることがあるため、とします。(※国有化や独禁法を説明してくれている文章をはじめて見ました)

 

商標権者のコントロールの性質

単に資本関係があるだけではコントールとならず、また、外部的に判断できるものであれば、サンプル検査や試験でコントロールできますが、シロップの供給の場合は、外部的コントロールは可能ですが、衛生条件や製造工程など、より内部的管理業務までコントロールしないといけないとあります。

ただ、特許と商標がセットになった場合は、コントロールありとされたようです。(※この場合、特許権者は品質に合致したものを製造する面倒を見ないといけないようです。技術導入ですね。)

 

現実のコントロール

契約書上の紙のコントロールでは十分ではなく、製品の品質チェック程度では、コントロールありと言えない場合があり、より現実的なコントロールのために、覚書を交わす必要があるとします。

 

 

混同と消費者の心理

 冒頭に、1942年のFrankfurer判事の意見の引用があり、商標はシンボルであり、商標は消費者が自ら望んでいるものと信じているものを選ぶようにさせる販売上の方法であり、一旦消費者の心にそのマークのついた商品の望ましさを伝えると、商標所有者はかなりの価値を得たことになり、これは広告手段によって達成されるものであるとして、商標の保護とは、シンボルの心理的機能に対する法律的認識であるというような説明があるとします。(※今日のマーケティングのブランド論とほぼ同じものです)

 

「混同を生じる程度に類似した」(confusing similar)というフレーズは、良く使われるが、しかし、法律上は、1981年法は、「公衆の心に混同もしくは誤認を生ぜしめ、または消費者を欺瞞しそうなほど、他人の合法的商標に類似した」マークといい、1905年法は、「公衆の心に混同もしくは誤認を生ぜしめ、または消費者を欺瞞しそうなほど、他人によって所有され使用され、かつ使用されている登録もしくは、知られた商標に類似したマーク」、1946年法(※現行法)にも、「混同を生ずるほど類似した商標」というフレーズはないとあります。

 

問題は、商標自体が、「混同を生じるほどに類似していること」ではなく、Frankfurther判事の考えからすれば、連想するシンボルを使用することは、公衆の心に同一の心理的反応、印象を生ぜしめるので、保護されるのだとします

 

そして、タバコのCamel商標が、双方タバコと関係ない商品の、ライターに使用された場合と、懐中ナイフに使用された場合の心理的な反応、連想の違いを提起しています。

 

最後に、商標権は抽象的に存在するのではなく、特許局における登録は、現実の商標の使用者の権利を反映させるものであると締めくくっています。

 

コメント

前半の論文では、もともと、責任を示す生産標であったものが、商標に変化し、自他商品識別標識(≒出所表示)となり、よって譲渡や使用許諾が禁止されたが、その後、品質保証があれは、ライセンス可能とされるようになったとあります。

 

後半の論文は、1942年の判決中に、今日のブランド論(ブランド価値の議論)にちかい議論を紹介し、

  • 商標はシンボル
  • シンボルの心理的機能に対する法律的認識
  • 登録は、現実社会を映す鏡

というような説明が続きます。

架空の権利範囲を議論している日本とはだいぶ議論が違うなと思います。

 

以上が、この本の内容です。なかなか、面白い内容でした。

 

昭和34年法も、成立から60年経ちましたし、インターネットの普及で商標の使用状態が丸裸になっている時代(アメリカのコモンロー調査レポートがタダで入手できる時代)です。

権利と現実を別物と考えるのではなく、現実を直視し、現実をベースにした商標権という体系に移行してもやっていけるようにも思います。

そうなると、後願排除や、禁止権の基礎にある、類似の概念を完全に変更する必要があります。

不正競争防止法との整合性は、過去、商標法の優先適用の議論があり、その後、請求権競合で処理されましたが、本来は、一体成型すべきです。

ドイツでさえ、使用による商標権を認めています。あるいは不正競争防止法を改定し、商標権の優先適用が必要だと思います。

商標管理(日本生産性本部)(その12)

資料Ⅱ 商標使用許諾契約

資料の2つ目は、契約書例です。Sunkistのボトリング事業に関するものと、CYANAという樹脂の成分ブランディングのタグ表示についての契約書です。

契約書は、機密性が高いという理解をしていましたが、雛形が完全オープンになっています。

 

面白いと思ったところだけ、ピックアップすると、

Sunkistレモネードに関する契約

サンキスト社は、農業法に基づいて設立された非営利団体とあります。

 

  • レモネード用の濃縮レモンジュースを、ライセンシーであるボトリング会社に、1ガロン4.6ドルで販売し、ライセンシーには、0.4ドルの広告費の負担があります(合計5ドル)
  • 工場の検査があります
  • 商標については、態様が決められ、ライセンシーの商標と結合(ダブルブランド)としないように要請されています
  • 広告は、ライセンシーも行います
  • ラベルなどは、事前にライセンサーに提出して、チェックを受ける必要があります
  • Licensed Sunkist Distributor, (Licensee) Licensed Sunkist Bottler という表示を容器にする必要があります
  • 前述の1ガロンあたり、0.4ドルの広告費に、ライセンサーが、1.2ドルの拠出をして、それをプールするとあり、パンフレット作成、販促品質検査マス宣伝にこの費用を拠出できるとします。ライセンサーの承認があれば、ライセンシーも使えるようです
  • 別表に品質基準があります

※ライセンス料はなく、濃縮レモンジュースの対価に含まれている構成です

 

”CYANA”PERMEL樹脂に関する契約

複数の契約、書簡、証書、書面に分かれています。

サンキストのものよりも、品質管理が細かく、厳しいことが特徴です。

  • ライセンサーの品質管理の条件に従って、織物加工を行う目的で、契約をします
  • ライセンサーからライセンシーに、樹脂を販売し、ライセンシーは織物が当該加工をしていることを示すレッテル、下げ札(タグ)、広告宣伝が可能で、さらに、ライセンシーの先の顧客にも使用を許可できるあります(※タグが介在するので、情報コントロールが可能ですが、一種のサブライセンスです)
  • 書簡で、品質検査は、ライセンサーの研究所で行うとあります。品質検査方法まで指定があります
  • 条件にかなうと、ライセンサーからライセンシーに、タグが渡されます
  • 品質維持のための契約・証書というものがあり、ライセンシーの先の顧客もラベル、タグ、広告宣伝で商標を使用できるとあります。ただし、タグ、ラベル、宣伝物はライセンサーからライセンシーの提供され、ライセンシーは顧客別に、織物の数量、用途、製品の概数、必要なタグやラベルの数を、通知するとあります(※現物給付でコントロールできています)
  • 品質検査を合格しないと、販売できないようです
  • タグの受領書の書式があります
  • 別途、品質管理の基準があります

(※こちもライセンス料の記載がありません。)

 

コメント

よく、サンキスト社やアメリカン・サイアナミッド・カンパニーが、ここまで出したなと思いますが、表に出しても良いほど、標準的なものだっとも言えます。

 

この2つとも、品質管理への言及があり、日本に説明する素材としては適切だったのだと思います。

サンキストのものは、コカ・コーラなどのボトリング事業を彷彿させます。

 

この本の別のところに、記載がありましたが、当時のアメリカでは、アメリカ国内での取引では、製品の対価の中に、ライセンス料見合いが入っていることも多かったようです。

一方、国外へのライセンスでは、ライセンス料と取る構成という記述がありました。

 

日本の契約実務の感覚では、ライセンス料を取るために、商標使用許諾契約をするのであり、ライセンス料を取らないなら契約不要(黙示の許諾)となりますが、アメリカでは第三者に品質コントロールをせずに商標をライセンスすると、商標権が無効になります(登録無効、コモンロー上の権利も放棄したとなるのでしょうか?)ので、他人に使用されるなら、品質管理に関する契約が必要となります。

 

ライセンスに品質管理を要求する法制にすると、ストック商標を中心に、日本で行われている、許諾被許諾の契約は、ほとんど権利が無効になります。これが、日本でアメリカ流の品質管理を条件にしなかった理由だと思います。

 

網野先生も、旧英国流のライセンスの登録の制度を薦めています(役所の許可制です。現時点では役所の許可という法制は無いと思います)が、アメリカ流には言及がありません。

まあ、ストック商標の貸し借りの関係は、本来はライセンスではないのだと思いますので、不使用取消審判で取消すか、譲渡するか、同意書を出すかで、十分なように思います。

あまり、日本の許諾被許諾の契約実務を重視すべきではありません。

 

CYANAの契約で、タグや現物給付によるコントロールが効いているのですが、サブライセンス権を認めているのは、驚きです。

 

本人だけではできないレベルに、露出を強化できるのが、ライセンスのメリットです。良くできているなと思います。

 

商標管理(日本生産性本部)(その11)

 

資料Ⅰ 商標使用便覧

この本の最後に、資料が3つあります。商標使用便覧商標使用許諾契約書例、商標に関する論文です。

 

まず、商標使用便覧ですが、11社のものが掲載されていますが、今日のブランドロゴ使用ガイドラインとは、少しちがいます。

 

ブランドロゴ使用ガイドラインは、ブランドマネジメント部門が、正しいロゴの使い方を示すもので、表示に重きがあります

 

一方、ここにあるマニュアル・ハンドブックは、商標の役割、自社がもっている重要な商標、商標の選択時の留意事項(望ましい商標)、商標使用の方法(特に説明文章の中での使用方法)、普通名称化の防止策(Ⓡの使用など、普通名称とのセットでの表現の推奨)、特許部門への連絡、などとなっています。

 

社員一般に配布するもののようで、読みやすいものです。11社のうち一社だけ、商標法の説明書のような文章ばかりのものがありますが、他は、ロゴがあったり、箇条書きになっていたりして、見やすくレイアウトされています。

その会社の社長が巻頭言を書いているものもあり、今日のブランドブックの要素もあるようです。

 

当時は、まだ、ブランドブック、ブランドロゴ表示ガイドラインも、それほど一般的ではなく、このような商標部門の出すマニュアルが、一般的だったのかと思います。

 

今日、ブランドマネジメントが、広報宣伝系の職場に置かれることが多いですが、ここに記載されているような要素は、どの部門が発行するとしても、ね「入れ込んでおけば良いと思います。

 

そもそも、アメリカでも、マーケティングのブランドの定義と、商標法の商標の定義が、「差別化」と「識別」という言葉の違いを除いて、ほとんど同じですし、出所表示・品質保証・広告宣伝機能(効果)は、どちらでも言っています。

 

博報堂ブランドコンサルなどもありますが、基本的には広告代理店はブランドはそれほどやっていません。どちらかというと専門ブティック型のインターブランドやランドーのようなところがブランドコンサルであり、そこがブランドロゴを作ったりする延長で、ガイドラインも見てくれています。

 

しかし、ガイドライン・マニュアルというものの性質上、それほど創作性が高いものではないので、商標担当者でも十分作ったり、運用したりできますし、理論・事例を整理することなどは、法律的ですので、商標担当者向きの仕事ではあります

 

さて、11社のうち、参考になりそうなものは、Pittsburg Plate Glass Co.のものです。今でも使えると思いました。

  • 商標とは何か
  • 商標の機能とは何か
  • 商標の選択
  • 商標はどこに使用すべきか
  • 使用による商標権の獲得
  • 継続使用の必要
  • 不適正な使用による権利の喪失
  • 商標権擁護の三原則
  • 商標権擁護の追加三原則

という内容で、赤字の二つの三原則がポイントです。

 

商標擁護の三原則

商標を他の文字とはっきり区別して表示すること

商標は、

大文字で書く。引用符で囲む。イタリックで書く。

(※英米が商標出願で、ロゴではなく、普通書体の大文字で商標出願することが好きな理由はこのあたりも影響していると思っています)。

登録されているときは、その旨表示すること

ⓇやTMなどです。

製品の説明的名称を商標とともに使用すること

窓ガラス “PENNVERNON” Ⓡ、などと表示せよとあります。

※たぶん、「 “PENNVERNON” Ⓡ 窓ガラス」もOKなのだと思います。

 

商標擁護の追加三原則

●商標の文法的(語法的)に誤った使用を避けること

1)商標を所有格で使用してはならない

”HERCULITE'S” great inpact strength (ハーキュライトの強い耐衝撃性)これは駄目とあります。

 

2)商標を説明的形容詞として使用してはならない

”SOLEXⓇ” walls and skylights (ソレックスの壁と天窓)これも駄目とあります。

※”SOLEXⓇ” windowpane(天窓) は、OKであるとの対比が難しですね。「壁、天窓」は、商品の説明的名称(普通名称)としてではなく、単なる文章の一部の「壁と天窓」に商標の”SOLEXⓇ”を掛けているが、商品との対応関係が不明確で、よろしくないという趣旨と理解しました。

 

3)商標を動詞として使用してはならない

 ”Let us "SUN-ROOF" your home”(あなたの家をSUN-ROOFにしましょう)

※「XEROXする」のようなことです。

●商標の変化を避けること

●法律上の意見を求めること

 

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アメリカの商標の書き物で、商標は、形容詞的に使用せよというものと、商標は形容詞的にしようするなというものがあり、意味が分からなかったのですが、たぶん、この会社の説明がその答えなのだと思います。

 

大前提として、文章中の表現と、ロゴ的な表現でも違いますので、ここは、文章中の約束として理解した下さい。

 

商標は、商標と分かるように、引用符や大文字にして、Ⓡまでつけるとして、それに、商品の普通名称をセットにすることは、望ましい。

例)うま味調味料「味の素」、「味の素」うま味調味料

 

「”味の素”する」(動詞的)、「”AJINOMOTO's””」(所有格)は駄目。

ここまでは理解しやすいと思います。

 

しかし、「”味の素”の調味料と冷凍食品」がNGと言われても、ピンときません。「の」ではなく、「”味の素” それは調味料と冷凍食品」と記載することはNGように読みました。

 

また、ハウスマークのような広い商品に使用される商標と、個別の商品を指す商標でも違うと思います。

個別商品商標の場合は、前や後ろに普通名称をセットで記載すると、普通名称の防止にも役立ちますし、その商標の意味が分かりますが、

ハウスマークの場合、色んな商品に使われるので、普通名称化の防止の意味がありません。

そして、ハウスマークの場合、ロゴ化され、独立した表示・標記が重要ですので、現時点は、ロゴの話が影響して、ハウスマークと普通名称のセットは、NGとしている会社が多いと思います。