Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「はつな弁理士法人」に転職しました②

cotoboxのシステムを使ってみて

先日、ある企業の知財部の方から、はつな弁理士法人とcotoboxの関係をよく質問されました。これを、説明しようと思います。

また、cotoboxについては、何よりそのシステムを理解することが重要です。cotoboxのシステムでは、特許事務所時代に感じていた、業務の無駄が相当改善されています。

 

<はつな弁理士法人とcotobox>

はつな弁理士法人の代表とcotobox株式会社のCEOが、同じ五味弁理士という共通点がありますが、基本的には別の法人であり、運営は別々です。

cotoboxのサービスを利用するユーザーが、cotoboxの提携事務所の一つとして「はつな弁理士法人」を商標出願の代理人として使用し、最終的に特許庁に出願するという関係になります。

 

<cotoboxのシステム>

cotoboxは、AIを使った商標検索というイメージがありますが、それは、実はユーザーをcotoboxを使っていただくための導入部分です。

より重要なことは、cotoboxは商標に特化したコミュニケーションツールであるという点と、商標管理システムでもあるという点です。

 

1.商標に特化したコミュニケーションのツールとしてのcotobox

cotoboxのユーザーは、商標の特定、指定商品の特定、出願に至るコミュニケーションや、出願した商標情報の連絡について、cotoboxのシステムを利用します。

事務所の弁理士がcotobox上で記載したコメントはcotobox経由でemail送信され、何らかの動きがあったことをお知らせします。ユーザーはcotoboxのウェブサイトを見て、必要な連絡を事務所に出してもらうことになります。

この意味で、cotoboxは、ユーザーと事務所宛てのemailソフトのような役割を果たしています。そして、その内容は、スレッド形式で全て記録されています。

 

WORDで書類を作り、PDF化して、emailで送るという、面倒な作業が必要ありません。業務効率が良いのが特徴です。従来のemailよりも、断然、作業がはかどります。

 

また、最近は企業内のワークフロー、事務所への依頼、知財管理データベースが、一つになったシステムもありますが、大企業の特許利用を中心に設計されているので、オーバースペックだったり、使いにくかったりします。

cotoboxのシステムでは、商標に特化しているため、ユーザーと事務所にとって最適化されており、ユーザーフレンドリーなシステムです。

 

2.商標管理システムとしてのcotobox

通常、特許事務所では、PATDATAやroot IPのような商標管理システム(知財管理システム)を使用します。一方、クライアントでも、同じようなシステムか、あるいは、エクセル表で商標管理(狭義の商標管理=期限管理など)をします。

 

通常は、emailでやり取りしたような内容を、紙ファイルでファイリングしたり、商標管理システムに入力・資料格納をする必要があります。

紙ファイリング・電子ファイリングや、商標管理システムでの期限管理等は、重要な作業なのですが、非常に面倒な作業です。cotoboxではコミュニケーションのツールと商標管理システムが一体化していますので、ユーザーも事務所も、業務効率が非常に良好です。

 

3.ユーザーと事務所が、一つのシステムを使うメリット

cotoboxを活用することで、クライアントも特許事務所も、共通の商標管理システムを使って、出願情報を共有することになりますので、双方とも、従来タイプの商標管理システムを使用することが不要になります。

 

①ユーザーのメリット(商標の書誌的情報の管理が不要に)

cotoboxの商標管理システムは、個人や中小企業といったユーザーにとっては、非常に大きなメリットです。

保有標数が数百件以上というような会社であれば、商標管理システムを導入しても良いかもしれませんが、数件/年しか商標がないような個人や中小企業では、どうしても、エクセル表管理となります。

一般に、大企業の知財部門でも特許事務所ほどの期限管理はできません。cotoboxをデータベースと考えると、ユーザー側は入力が不要ですし、安心です。

(多少の改善を加えれば、大企業でもcotoboxで十分と思いました。)

 

なお、国内については、特許庁のデータベースと同期をとっているので、書誌的情報は完全なものです。

 

②事務所のメリット(2重の入力作業問題について)

特許事務所では、コロナ禍以降、企業から、各企業の知財管理システムへの入力を依頼されることが多くなっていますが、事務所では、事務所の商標管理システムに入力と企業の商標管理システムへの入力という2重の入力作業が発生しています。

無償でこれを要望するクライアントが多いのですが、相当な手間がかかっており、事務所としては放置できない問題です。

もし、事務所の商標管理システムをcotoboxにし、ユーザーもcotoboxを使用すれば、2重の商標管理システムへの入力作業をせずにすませられます。

 

<まとめ>

cotoboxは、AIを使った商標検索システムと思っていましたが、実際は、商標業務に特化した、クライアントと事務所間の、優れたコミュニケーションツール(兼)商標管理システム(商標データベース)と考えた方が良いと思いました。

まだ、十分に使い込んでいないので、さらに良い面があるかもしれませんが、私個人の第一印象は、上記のようなものです。

「はつな弁理士法人」に転職しました①

創立7年目の若い事務所

2022年7月末に、約5年半お世話になった、きさ特許商標事務所を退職し、はつな弁理士法人に転職しました。

www.hatsuna.com

(まだ、ウェブサイトに私の情報は載っていません。)

 

はつな弁理士法人は、2015年にできた若い事務所であり、現在7年目です。

代表は五味和泰弁理士ですが、五味さんは、AIを使った商標検索と商標願書案の自動作成をするシステムの開発・運用をしている、cotobox株式会社(https://cotobox.com/ )のCEOでもあります。

そのため、はつな弁理士法人の業務は、cotobox経由の依頼が多いのですが、事業は好調のようであり、2021年や2022年上期は、出願代理件数日本一という結果だったようです。

2021年商標 事務所ランキング | 知財ラボ (jp-ip.com)

2022年商標 事務所ランキング | 知財ラボ (jp-ip.com)

 

5年前(2017年9月)、AIによって士業が大変になるのではないかという話があったときがありました。

AI時代のサムライ業(上)代替の危機 新事業に挑む: 日本経済新聞 (nikkei.com)

実は、このとき、私もこの記事を見てAI商標検索に関心を持ち、夜にcotoboxを訪ねて、五味さんにお話を聞きました。

ただ、当時の私は、パナソニックから、きさ特許商標事務所に転職してまだ半年だったので、五味さんと一緒に行動するには至りませんでした。

 

それから、5年の歳月が経ち、きさ特許商標事務所を去るときに、自分で事務所を開業しようか、どこかに再就職するべきか考えました。

結論として、自分ひとりでできることには限界がありますし、事務所の代表の先進的な考え方やフランクな人となりもあって、五味さんのはつな弁理士法人に、転職することにしました。

 

それでは、「はつな弁理士法人」を少しご紹介します。

 

事務所は、霞ヶ関駅直結の飯野ビルにあります。ECOに配慮したビルだそうです。そのビルに、最近流行のWeWorksタイプのシェアオフィスがあり、パブリックスペースからは、日比谷公園全体が見通せます。なかなかの眺望です。

飯野ビル (iino.co.jp)

 

「はつな」とは、寒梅の異名「初名草」に由来し、「先駆者」という意味を込めています。事務所のウェブサイトの説明では次のようになっています。

事務所名「はつな」は、寒梅の異名「初名草」に由来します。

寒梅を、一年のうちで一番に咲く花であり、あらゆる花のさきがけと捉え、知財業界の「先駆者」でありたいという意味が込められています。

また、漢詩に「真理似寒梅敢侵風雪開」(真理は寒梅のごとし。あえて風雪を侵して開く)というものがあり、あえて真理の探求を楽しむことを願って名付けられました。

 

これまでは、「はつな知財事務所」と言っていましたが、今回、弁理士法の改正を受け、「はつな弁理士法人」になります。

弁理士法人はつな知財事務所」とする方法もあったと思いますが、「後株」形式にしています。「はつな弁理士法人」とする方が、文字数が減りますし、シンプルです。「前株」形式の「弁理士法人はつな」では、折角の「はつな」が目立ちません。この「抽象名称+弁理士法人」は、最良の方法だろうと思います。

 

名称変更に合わせて、事務所のブランドロゴを新たに作り、ミッション・ビジョン・バリューを整理したりしています。提携しているデザイン会社やブランドコンサルタントもいるようであり、このあたり、よく考えているなと思いました。

 

はつな弁理士法人では、弁理士その他、メンバーはほとんどがリモート勤務です。人が集まった日は、夕方に急にカードゲーム大会をやったして、親睦を深めたりしています。このあたりは、スタートアップ的で開放的です。インターナルコミュニケーションも積極的にやっているんだなと思いました。

 

若い事務所ですので、もちろん課題はありますが、それらをクリアーしながら、今後とも伸びていく事務所ではないかと思っています。

「BtoB企業におけるブランディングの実践論」を読みました

知財管理に出ていた論説

1年ぶりのブログです。毎日書くのは大変ですが、気が向いたときなどに、書いてみようと思います。

 

さて、昨日、知財管理誌の2022年6月号に出ていた、「BtoB企業におけるブランディングの実践論」という、博報堂コンサルティングの森門教尊さんの論説を読みました。

知財担当やその中の商標担当は、BtoB企業ではブランディングの主役になることが多く、その方々にブランディングの実践方法を解説しているものです。

 

確かに、技術に特徴のあるBtoB企業では、広告宣伝や広報もそれほど人がいるわけではない反面、知財担当者は充実していることもありえますので、知財担当がブランド戦略の推進役になることもあるのだろうと思います。

 

そのほか、論説の内容としては、BtoB企業とBtoC企業の違いの説明や、ブランドのプロジェクトの進め方、特に既存の社内の会議体の活用などに言及しているところがポイントでしょうか。

 

知財担当が、BtoB企業においては、重要なブランディングの推進役であるという指摘が、この論説のメインの主張と思いました。詳細は、知財管理誌をご確認ください。

 

<敷衍して>

最近、弁理士会の関係で、コーポレート・ガバナンス・コード(CGC)について、教えてもらったり検討することが多かったのですが、CGCにおいては、「知財財産」ではなく、「知財・無形資産」と広がりをもって捉えられています。

知財・無形資産」は、「技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信頼・レピュテーション、バリューチェーンサプライチェーン、これらを生み出す組織能力・プロセスなど」を指すようです。

 

また、サービス業で、従来、技術や特許にあまり関係のなかった企業でも、十分に「知財・無形資産」があります。

上場企業には、サービス業も沢山ありますので、それらの知財担当者がいない会社にも、当然に、「知財・無形資産」はあります。そして、従来型の技術・特許では収まりきらないところまで、CGCは知財開示や取締役会などでの監督を求めています。

 

冒頭の論説にもどりますが、この論説がターゲットにしているのは、部品・部材などを作っている技術の会社なんだろうと思いますが、世間には、技術や特許に関係ないBtoBの会社というものも、相当にあると思われます。

そして、技術や特許に関係ないと、特許担当という意味での知財担当者はいません。

 

そのタイプの会社でも、商標はあることが多いですので、法務や総務の担当者が、商標担当者になっているのだろうと思います。

まだまだ、知財=特許=技術、という感じで捉えてしまいますが、上記の「知財・無形資産」の定義は、「技術、ブランド、デザイン、コンテンツ、データ、ノウハウ、顧客ネットワーク、信頼・レピュテーション、バリューチェーンサプライチェーン、これらを生み出す組織能力・プロセスなど」ですから、技術やノウハウ以外の方が種類は多いように思います。

CGCは、知的財産の概念も変えていくものになるかもしれません。

 

知財管理誌は、知財担当者が読む雑誌ですので、冒頭の論説の知財担当者あてで良いのですが、本当は、それ以外の方で、上記の「知財・無形資産」を扱っている方にも、ブランディングの裾野を広げる必要があるのかもしれないと思いました。

 

 

ボラギノールの天藤製薬

ロートが買収

2021年6月9日の日経に、一般用目薬の国内最大手のロート製薬が、痔治療薬の「ボラギノール」の天藤製薬を買収するという記事がありました。

ロート製薬、「ボラギノール」の天藤製薬を買収 90億円: 日本経済新聞 (nikkei.com)

とあります。

 

コメント

 ロート製薬は、胃薬(パンシロン)と目薬(Vロート)の会社と思っていたら、メンソレータムの買収で、現在はスキンケアの会社でもあるようです。

ヘルス&ビューティー事業 | ロート製薬株式会社 (rohto.co.jp)

 

痔のクスリはスキンケアの延長線にはあるので、商品戦略としては理にかなったM&Aのようです。

 

天藤製薬の2021年3月期の売上は58億円とありますので、90億円の買収金額は、少しプレミアムがついているなと思いました(この点、薬は利益率が高いので、適正なのかもしれませんが)。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF02D7Z0S1A600C2000000/https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB097LE0Z00C21A6000000/

 

少しに気なったは、武田薬品が30%の株式を持っているという点です。

確か、ボラギノールは、元武田コンシューマヘルスケアのアリナミン製薬が販売していたと思います。

アリナミン製薬株式会社(旧社名 武田コンシューマーヘルスケア株式会社) (alinamin-pharma.co.jp)

また、今回の買収の立役者のロート製薬の杉本社長は、武田の出身のようです。天藤製薬のことも良く知っていたんだろうなと思いました。

 

アリナミン製薬は今後もボラギノールの販売を継続するようですが、これは日本での話であり、海外ではあまり販売していないようです。

一方、ロートはメンソレータムがあるためでしょうか、海外販売網があり、ロートの海外販売網にボラギノールを載せることができるそうです。

国内販売にも影響を与えず、海外を攻めることができるということで、上手く整理されているM&Aだと思いました。

 

大衆薬は、多くの儲けにはならなくても、着実に儲けができるので、ボラギノールなどでしっかりと稼いで、その資金を再生医療に投入するということです。再生医療の知識がないので、どれほど重要なことかわかりませんが、夢がありそうです。

 

武田薬品は、一般大衆薬の武田コンシューマーヘルスケアを切り出しましたが、大衆薬で儲けるというビジネスモデルもまだ健在なんだなと思いました。

 

※都合で、このブログは、少し、お休みをします。また、再開できる日を心待ちにしています。

企業統治指針と知財とブランド

ブランド戦略の開示、外部評価、そして投資へ

2021年6月19日の日経で、6月に改定されたコーポレート・ガバナンス・コードの話が載っていました。

企業統治指針、次は知財 ブリヂストンなど先行: 日本経済新聞 (nikkei.com)

改訂されたコードの内容は、

  • 内容は2つ
  • 「取締役会は知財などの投資を実質的に監督する」
  • 「上場会社は、知財の情報を分かりやすく開示」する
  • 知財を他社からの訴訟などに備える「守り」だけでなく、事業提携など「攻め」にも生かすには、経営層と知財部門の頻繁な情報交換が欠かせない

とあります。

 

内閣府の資料には、コーポレート・ガバナンス・コードに知的財産が明記されることに対応して、

  • 企業では、「知的財産投資・活用戦略に関する開示ガイドライン(仮称)」の策定が必要になり、
  • 統合報告書、知財報告書、IR資料等において開示し、
  • それを、知的財産専門クラスターが分析・評価分析して、機関投資家に提供するとあります

siryou2.pdf (kantei.go.jp)

 

また、「知財ガバナンス研究会」というものが、発足しているようです。

「知財ガバナンス研究会」の発足とメンバー企業募集のお知らせ | HRガバナンス・リーダーズ株式会社 (hrgl.jp)

 

なお、ここでいう知財には、特許のみならず、ノウハウやブランドを含んだ概念だそうです。

 

コメント

2003年〜2006年頃に、知財報告書や知財白書がブームになりましたが、それは一過性に終わりました。

しかし、東証のコーポレート・ガバナンス・コードに明記された現在、状況は大きくことなっています。

また、IPランドスケープなどの手法も、一般的になり、企業の知財活動は高度化しています。

以前とは異なり、今回は、続くと思われます。

 

ポイントは、外部の評価者で、内閣府の資料にある知的財産専門クラスターの育成が上手く行くかどうかですね。

企業の知財戦略を評価して、投資家や世間に伝える仕事です。YouTuberが子供の憧れの職業となる時代ですので、知財専門クラスターに収入がある状況になり、知財パーソンの憧れの職業となるようにでもなれば、このスキームは回る可能性がありますが、その資金を、機関投資家が出してくれるのでしょうか?

あるいは、一般の人を対象に、知財専門クラスターは、YouTuneチャンネルを開設した方が良いのかもしれません。

 

25年前に、松下通信工業にいたときに、クアルコムの話題で持ち切りでしたが、そのとき、クアルコムの株式を買っていたら、今頃、左団扇であったことは確かです。

 

さて、もう一つはブランドです。ブランドを、経営戦略ではなく、コミュニケーション戦略という間違った位置づけをしている会社がほとんどです。これは、広告代理店やブランドコンサルにも、大きな責任があります。

いち早く、ブランドは経営戦略そのものであるという当たり前の状態に戻すべきです。コミュニケーション部門は、ブランドの名称を返上すべきです。すべてはそこから始まるように思います。

コミュニケーション部門の問題点は、事業部門や研究開発部門が作ったものを、社内外に発信するのが仕事であり、基本的に受け身であるという点です。すなわち、事業部門や研究開発部門のような主体性に欠ける点にあります。これでは、ブランドを作り、育成することはできないと思います。

もちろん、調整機能だけの経営企画なら、あまり大差はないのですが。

 

内容的には、知財的な

  • ブランドの権利化の目標、権利化の効率性
  • 模倣品対応

ぐらいは、公表資料なので、昔から開示しているとしても、

  • ブランドガイドライン(ポリシー、考え方、ルール、表現)の公表
  • ブランドをマネジメントする組織
  • ブランドライセンス収入、ブランドライセンス方針
  • M&A時のブランド方針
  • コ・ブランディングの方針、外部との協業方針とブランド表示の例示
  • 技術ブランディング
  • ブランド社内浸透の内容
  • 社内外のブランド認知等の評価、その目標、評価向上のための指標
  • ブランド戦略の成功事例

このあたりをどこまで開示するかですね。

しかし、社員に開示できないものはほとんどないでしょうが、内々で処理してきたことも多いので、どこまで何を開示するかは、考えてしまいそうです。

 

内々で処理をして、外部の批判の目に晒されていなかったのですが、公開して、批判を受け、軌道修正していくのもありだろうと思います。

アマゾンの不正商品流通の課題

名誉棄損、わいせつ物頒布

2021年6月20日産経新聞に、アマゾンの不正商品管理に不備があり、名誉棄損やわいせつ物頒布が頒布されているという記事がありました。

<独自>アマゾン、不正商品管理に不備 名誉毀損やわいせつ物頒布の疑い - 産経ニュース (sankei.com)

  • 女性芸能人への名誉毀損やわいせつ物頒布などの疑いがある不正な商品が多数販売
  • マーケットプレイスの商品
  • 販売されているのは女性芸能人の顔とわいせつ画像を合成した画像を使った商品
  • 検索で女性芸能人の名前を入力しただけで、検索候補として不正商品名が表示される
  • 政府もアマゾンに聴取するなどの検討
  • アマゾンは出店者の行動規範にすべての法律と利用規約を遵守することを明記
  • 人工知能(AI)などの技術を使って出品物の監視
  • アマゾンは1週間に世界で数億件、規約を侵害する商品を排除

というような内容です。

 

コメント

全世界で、一週間に数億件の規約違反を排除しているとあります。ECをあまり使っていない人々も、世界中には多いはずですので、アマゾンにおける日本のシェアが1割と仮定して、日本でも数千万件の規約違反を排除している勘定になります。

 

数千万件、本当に排除できているかどうかは別として、少ない数ではなさそうです。

 

アマゾンが、自ら販売している商品では、このような問題は起こりませんが、マーケットプレイスでは起こりがちです。

アマゾンの販売ボリュームは絶対的なものがあるので、このルートに乗せられるかどうかは、業者としては死活問題です。

 

不正商品を販売している者は、通常は、自分のサイトとか、闇サイトとかで、販売するのでしょうが、もし、アマゾンのルートに乗せることができれば、販売量が稼げるので、不正認定されるまでの間に売り切れば、自分でサイトを土あげるよりは、早く目標の売り上げを達成できそうです。

 

アマゾンも、AIなどを使い機械的に、不正商品を発見しようとしているんでしょうが、限界があるんだろうと思います。

試しにアマゾンで、「広瀬すず」さんの名前を検索してみると、これは偽物ではないかというタペストリーがありました。よくわからない出店者です。また、同種の商品として、橋本環奈さん、有村架純さんもあります。

 

本物か偽物かは、タレントが所属する事務所はすぐにわかるでしょうから、定期的にアマゾンを巡回して、発見したら、アマゾンに抹消申請をしないといけないように思います。

 

アマゾンとしても、有名女優の名前があるものは、書籍やDVDとして正規に流通しており、コードがあるような商品以外は、受け付けないようにしないにしないといけないのではないかと思いました。

 

これを規制しても、違う種類の商品で同じようなことが起こりそうです。抜本対策は出店者の規制強化なんでしょうが、マーケットプレイスへの出店をしやすくすることと、矛盾するんだろうと思います。しかし、ある程度の規制は必要と思いました。

 

 

台湾の小室哲哉ビル

法的には考えさせられることが多い

Friday Digitalで、台湾で小室哲哉さんの名前など日本人の有名人の氏名を使った建物名称があるという記事がありました。

「小室哲哉マンション」…!?台湾で日本人名ビルが乱立の謎 | FRIDAYデジタル (kodansha.co.jp)

日本の著名人や歴史上の人物は、台湾でも有名。「表参道」「新宿」など地名もマンション名として使われているとあります。

 

コメント

この話は、捉え方が少し複雑です。

 

●まず、単なる名称の拝借の話があります。日本でも欧米の有名な地名を冠したビル、お店の店名など五万とあります。基本的には模倣は次の創造のために必要なものであり、模倣自体が悪いのではありません。

不正競争防止法や商標法に反して初めて、権利侵害の話になります。

 

●また、マンション名、住宅街の名称、ビル名は、商標法が予定する商品やサービスではありません。

ラーメン店、マッサージ店、カフェが、他人に対する便益の提供で、商標法が予定するサービスであるのに対して、「不動産」の名称は不正競争防止法は問題になりえますが、商標法上の商品やサービスではなく、商標登録の対象ではありません。

間接的に商標権侵害ということはありえても、直接的な商標権侵害にはなりません。

 

商標法は、歴史的に、産業革命や交通革命が起こり、国内市場が一市場になったことにより、商品の転々流通というものがおこり、それに対応するために、地域的な不法行為不正競争防止法での対応ではなく、全国的な商標登録制度を設けたという歴史があります。

 

不動産は、土地及びその定着物ですので、そもそもが住所と不可分であり、転々流通しませんので、商標法とはなじみません。

 

そのため、サービスマークが導入された現在においても、一番近い第36類でも、建物の管理、建物の貸与などは、サービスですが、「建物」自体は、商品でも、サービスでもありません。

 

基本は、建物の名称は、自由に名づけることができます。

しかし、有名なものを借用すると、不正競争になることはあります。

森ビル以外が、「虎ノ門ヒルズ」でないビルに、勝手に「虎ノ門ヒルズ」と命名するなどがあると、不正競争になることがあり、これは差し止めの対象になります。

 

また、この偽の「虎ノ門ヒルズ」が、建物の管理や、建物の貸与をしたときに、パンフレット、納品書、請求書に、「虎ノ門ヒルズ」と記載したとすると、間接的ではありますが、商標権侵害になると思います。

商標法による間接的な保護です。 

 

●もう一つ、商標法の話題ですが、今、日本の商標法が厳しすぎると話題になっている、氏名の問題があります。

商標法4条1項8号では、他人の氏名と同一の場合は、商標登録のためには、他人の了承が必要になります。その氏名が、自分の氏名であっても、すべての他人の了承が必要である点で、無理なことを要求するルールであると話題になっています。

 

人格権保護の規定であり、生存中の人にしか適用がないとされています。現在生存中の人物としては、小室哲哉さん、久石譲さんですね。織田信長徳川家康夏目漱石は、故人ですので、同意は不要です。

桜木花道は、スラムダンクの主人公です。いわばミッキーマウスのような空想上の人物名称です。4条1項8号の問題ではありませんが、出所混同の問題は生じますので、他の条項で拒絶になる可能性はあります。

 

氏名と不登録理由の台湾商標法を見ていると、次の拒絶理由の条項がありました。

第30条

13.他人の肖像又は著名な氏名、芸名、ペンネーム、屋号があるもの。但し、
その同意を得て登録出願した場合は、その限りでない。

 20180628_2139171811_20180628-新商標法(2016年12月15日施行)-j.pdf (chizai.tw)

 

「著名な」に限定している点で、承諾書が必要範囲が制限されており、すでに問題はクリアーしています。

人格権保護と簡単に片付けたした、日本法の説明が間違いなのですが、台湾はさすがです。