そこまでやるか
2018年5月8日の日経で、ネスレがスターバックスの商品の販売権を取得したという記事を見ました。
- ネスレが、スターバックスから商品の販売権を取得
- スターバックスの店舗内の商品は対象外
- 対価は、約72億ドル(約7900億円)。現金支払
- 年間売上高は約20億ドル
- 競合相手のスタバと連携するのは、米国市場での存在感を高めるため
- ネスレの米市場シェアは5位
- 圧倒的な支持があるスターバックスのブランド力が欠かせないと判断
- 一方、スターバックスのCEOは、世界中の人々にスタバの体験を届ける機会になるとコメント
コメント
スターバックスのブランドが付いていても、スターバックスの店舗ではなく、百貨店やスーパーで販売しているときは、ネスレの商品ということになります
ネスレのリリースがありました。
商標ライセンスのロイヤルティはランニングで支払うのが一般的だと思いますが、今回は、一時金です。
スターバックスの商品の売り上げが、年間20億ドルですので、このままの売上規模なら、たとえ営業利益率が20%あっても、今回の対価の支払いをカバーするのに18年もかかります。営業利益率が10%なら36年です。ネスレにとって、大変な投資です。
また、ネスレの事業で、スターバックスの商品と競合する商品を扱っていた人達は、今回の提携に反対したはずです。 (少ないのかもしれませんが)
一方、無期限の商標ライセンスなど、商標管理の定石からはやってはならないことの代表選手なのですが、それをやってしまうあたり、スターバックスも、ドライな欧米的な経営だと感じました。それだけ、今、現金が必要なのでしょうか?
あるいは、自分達で商品を売るよりも、ネスレのルートで売る方が、長期的な成長が見込めると判断したのでしょうか?
スターバックスとしても、ネスレの力を借りることで、豆の調達などが有利になるのかもしれません。
ネスレは、スターバックスの商標ライセンスを得て、商品を(製造)販売することになります。ライセンスですので、ブランド自体=商標権は、スターバックスに残ります。
スターバックスのブランド価値を守るため、豆の選定(調達)、焙煎(加工)、パッケージング(デザイン)、流通方法、広告宣伝など、多くの領域で、ネスレはスターバックスの了解を取りながら事業活動を行うのだと思います。
そこに、ブランド価値があるので、スターバックスの指示には従う必要がありますが、調整が大変そうです。味は?販売方法は?スターバックスらしいとか、らしくないとか、議論になりそうです。
今回、500名の人材が、スターバックスから、ネスレに移籍とありますが、その人達が、このスターバックス「らしさ」を担保するのだと思います。
リリースの中で、ネスレのCEOは、
私たちは『ネスカフェ』『ネスプレッソ』『スターバックス』という 3 つの象徴的なグローバル コーヒーブランドを結びつけました。
と言っています。
まるで、スターバックスを自分のブランドであるともとれるような表現です。たぶん、リリースを出すにあたって、スターバックス側の了解はとれていると思いますが、完全買収ではないので、リリースやカタログの表現一つひとつが議論になります。
また、
この合意により、ネスレは北米での継続的成長には欠かせない強固な基盤と、プレミアムレギュラーコーヒーとポーションコーヒー事業での主導権を得ることになります。
としています。
ちなみに、ポーションコーヒーとは、液体を容器に入れたコーヒーのようです。このような新規商品が今回の提携の鍵なのかもしれません。
数年経てば、今回の投資が成功だったかどうか明確になります。ネスレとスターバックスの関係がどうなっていくのか、興味を持って見ていきたいと思います。