Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

サービスイノベーション

日経の連載を読みました

2018年9月4日から6回に亘って連載されていた、「サービスイノベーションとは何か?」の連載をまとめて読んでみました。

www.nikkei.com

 

最終回の第6回が、全体のまとめとなっていると思います。

 

サービスイノベーションのためには、サービスをシステムとして設計する必要があり、そのためには、

顧客起点でサービスを考えるサービスデザイン、顧客に最適なサービスを提供するための組織改革、迅速な開発・検証を可能にするアジャイル型開発手法の導入などが必要になります。

 

これを導くために、第1回から第6回まで、事例を紹介されています。

 

第1回:Suica(企業の競争力を高めるには、サービス化とデジタル化が結びついたサービスイノベーションが欠かせない)

 

第2回:ネット証券、宅配便のトラッキング(サービスインターフェースは、顧客との価値共創を促し、経験価値向上の要となる)

 

第3回: コマツのコムトラック、ランドログ(製造業のサービス化には、装置の開発からソリューションの提供に思考パターンを変える必要があり、そのためには、評価方法や、キャリアパスの仕組みの変更が必要)

 

第4回:QBハウス(顧客や従業員・経営者をつなぐインターフェイス、卓越したサービスを実現する仕組み作り、つまりサービスデザインが必要)

 

第5回:英国の行政サービスのサービスデザイン(共感=人に対する深い理解、価値共創=サービス利用者や事業者との共創プロトタイプ作成=アイデアを迅速に形にして試す)とITデザイン(ニーズからスタート、余計なことをしない、データに基づいてデザインする――デザイン原則、とアジャイル型組織)

 

第6回:S・バーゴらが2004年に提唱した「サービス・ドミナント・ロジック」の紹介(製品はサービスの価値提供のためのツール・手段。製品そのものから製品の利用に伴うサービス経験、サービスシステムに重点) 

 

コメント 

「サービスイノベーション」や「サービスデザイン」という言葉は、あまり聞いたことがありませんでした。

Googleで調べてみると、「サービスデザイン」の方が、「サービスイノベーション」よりもヒット件数が多いので、より一般的な言葉のようです。

 

Wikipediaによると、

サービスデザインとは、サービスの質と、サービス提供者と顧客の間のインタラクションの改善を目的として、人・インフラ・コミュニケーション、そしてサービスを構成する有形の要素をプランニングし、まとめあげる活動である。多くの観察をまとめて、スケッチやサービスプロトタイプなどで、コンセプトやアイディアを視覚的に表現する。

とあります。こちらは理解できます。

 

一方の、サービスイノベーションは、Wikipediaには項目がなく、上位に出てくるのは、下記の本とその書評でした。新しい概念のようです。 

サービス・イノベーション -- 価値共創と新技術導入

サービス・イノベーション -- 価値共創と新技術導入

 

マーケティングジャーナルという雑誌に、青山学院大学の小野譲司教授が書評を書いています。これよると、この本の著者らがいう、

「サービス・イノベーション 」とは、新技術導入による、サービスのシステム化発想による生産性向上と、革新的な新サービ ス創出との両方を意味する

新サービス創出だけでなく、従来、提供 されていたサービスであっても、飛躍的に生産性が上がったり、サービスの提供プロセスが変わったりすることもサービス・イノベーショ ンである

サービス産業におけるサービス生産性の向上への観点だけでなく、製造業も含めたビジネスのサービス化による市場における価値創造活動に着目する

という、幅広いスタンスでサービ ス・イノベーションを取り扱っているとのことです。

 

その他、少し古くなりますが、日経情報ストラテジーに、サービス・イノベーション推進委員会の委員の内藤耕さんの論考があります。

tech.nikkeibp.co.jp

サービスイノベーションというと、企業としての効率化に目が行きますが、顧客の価値や効果という面と両立することを目指すのが、サービスイノベーションということが紹介されていました。

 

まずは、サービスデザインという言葉や、サービスイノベーションという言葉に注意を払うというとこからでしょうか。

 

最近、経産省特許庁が「デザイン経営」といことを言っています。

www.meti.go.jp

その定義は、経産省のサイトによると、

デザイン経営とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。

 とあります。

 

特に、私が下線を引いた、本質としている部分は、「サービスデザイン」に非常に近いものです。

特許庁の提供している行政サービスを念頭に置くと、「デザイン経営」といういわゆるデザイナーに寄った言葉ではなく、「サービスデザイン」、「サービスイノベーション」という言葉でも良かったのかもしれないなと思います。

特許庁には、デザインの得意な意匠課の人も、ICTの得意な人もいると思いますが、経営学の専門家がすくなく、そこが問題なのかもしれないと思いました。

 

まあ、やることは同じなので、誰がやっても良いのですが。