Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

UCCミルクコーヒーの色彩のみの商標

色んなメリット

2020年2月7日付の日経クロスメディアの、UCCミルクコーヒーの色彩のみからなる商標の記事を読みました。

UCC缶コーヒー“あの3色”が商標登録 表に見えない真の価値:日経クロストレンド

 

記事は、特許庁、同社のマーケティング部門のそれぞれの考え方を説明してくれているので、参考になります。

「色はほとんどすべての商品に塗られているものだけに、識別力(パッと見てその商品と識別される力)がないと、商標として認めることはできない。例えば商品であれば、いつから、どんな所で売られ、どれだけの数量を売り上げてきたかのデータや、認知度を証明するアンケート結果など、識別力を裏付ける客観的資料を提出してもらうことで、商標に当たるかどうかを判断している」(特許庁

また、同社の話として、

  • ミルクコーヒーを改めて認知してもらう機会になった
  • 登録がUCCミルクコーヒーの「発売50周年」と重なったことも盛り上がりを後押しした
  • 全国の営業部からスーパーや量販店、自動販売機など、この商品が売られているシーンの写真を撮って送ってもらった
  • 一丸となって今回の商標登録にチャレンジをしたことも社内の結束を固くした
  • 長年にわたって愛され続けている商品であることを再認識し、愛社精神にもつながった

 

コメント

商標法的な商標登録取得上の話ではなく、マーケティングの方のインタビューで、マーケティング視点やブランドマネジメント視点からの新しい商標のメリットが語られていて面白い記事だと思いました。

 

全社一丸、愛社精神というのは、ブランドマネジメントをする目的の一つですが、商標の使用証拠の収集でできるなら、積極的にやるべきではないかと思いました。

 

特許庁は、識別性の審査を厳しくし、識別性の低い商標にはどんどん出願人に使用証拠をもとめて、使用による顕著性の立証をより求めるべきでは無いかと思いました。

色彩のみからなる商標など、新しい商標を見ていると、これが商標法本来の姿ではないかと思うことが多いのです。

 

使用証拠を提出してもらうと、既に市場に数年間展開していて、市場で混同などの問題が発生していないことが分かります。そうなると、その商標は抵触性かりも登録しても問題のない商標ということになります。

登録主義の建前には反しますが、現実には、大々的に使用して有名な商標の審査は甘い傾向にあるという実態と合致します。

 

商標登録を取ることが大変な制度しておく方が、企業を活性化させ、商標を強くし、世界で戦える商標を育成することにつながるように思います。

 

さて、この商標を少し見てみました。

 

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出願日:2015年5月21日

登録番号:第6201646号

登録日:2020年11月29日登録

指定商品:

 第29類「缶入りのコーヒー入り乳飲料

 第30類「缶入りミルクコーヒー飲料

権利者:ユーシーシー上島珈琲株式会社

商標の詳細な説明:

商標登録を受けようとする商標(以下、「商標」という。)は、色彩の組み合わせのみからなるものである。色彩の組み合わせとしては、茶色(PANTONE:471)、白色(RGBの組合せ:R255,G255,B255)、赤色(PANTONE:485 2X)であり、配色は、上から順に茶色が商標の25パーセント、同じく白色30パーセント、赤色45パーセントとなっている。

 

<商標の色彩の比率>

色彩のみの商標の場合、例えば、3色使っていたとして、その3色の比率をどう商標として表現するのか?という疑問がありますが、同社は、「上から順に茶色が商標の25パーセント、同じく白色30パーセント、赤色45パーセント」と縦の比率を指定していますが、横の比率は指定していません。

 

この商標は正方形ですが、缶のデザインとしては横長なものです。なんとなくイメージするのは、展開図です。昔よく乾電池のデザインを展開図にして各国出願した記憶がありますが、それに近いなと思いました。

 

ただ、この場合は、縦の比率は指定していますが、横は指定していないので、横は長くもあり、短くもあると解釈できるように思います。(横は決まっていないという考え)

 

<名義>

同社は、ユーシーシーホールディングス株式会社名義の商標権が多いようですが、この権利はユーシーシー上島珈琲株式会社名義です。実際の使用者に合わせたのでしょうか。

 

〈マークの変遷〉

また、この商標の出願日は2015年ですが、2019年にコーヒー豆の図柄などを取り去り、この色彩のみの商標に近いデザインに変更しています。出願現時点のデザインではないことになります。

 

記事でも少し言及していますが、縦の比率などは昔の製品から少し変わっているようですが、特に大きな問題ではないようです。