商標の沿革と発展
<前史>
古代、中世の標識と、近代的な商標の区別ですが、ここは本を、読んでもらうしかありません。
中世のギルドの生産標(production mark)は、生産者の利益のための標識ではなく、ギルドの信用を守るための標識であり、同一品質を保証するものではなく、最低品質を保証するものだそうです。
近代になり、組合制度が崩壊し、営業の自由が確立して、義務的な標識から、積極的な商品の出所表示としての、近代的な商標に発展したとあります。
当初は、偽造罪、詐欺罪だったので、特別刑法的な保護に発展し、民事的な保護になし、そして、今日のような制度になったとあります。
<各国の動き>
1.フランス
- 世界最初の商標法「製造標及び商業標に関する法律」(1857年):使用主義、無審査主義
- 1964年法:登録主義へ
- 1991年法:EC統一理事会指令により、相対的登録要件について異議申立てを認めた
2.イギリス
- コモン・ロー(普通法)により、詐称通用訴訟で商標の冒用に対する救済
- 1905年法:フランスに50年遅れて、商標保護のための統一的制度がスタート
- 1938年法:使用意思で登録できる、審査主義、出願公告制度、連合商標、使用許諾制度、防護標章制度、権利不要求制度など
- 38年法は、出願は使用意思で足り、アメリカのような純粋な使用主義ではない。一方、登録は設権ではなく、商標所有の推定的証拠となるにすぎず、日本やドイツような登録主義とも異なる。
3.ドイツ
- 1874年法
- 1894年法:審査主義
- 1936年法:近代的な商標制度。出願公告なし。特許庁から先願者に通知、異議がなければ登録する制度
- 1957年法:出願公告
- 1967年法:不使用による登録取消など使用強制制度
- 1979年法:サービス・マーク
- 1995年法:新商標法(標章法)・・・EC理事会指令に則り改正。出願商標と先願との類否は、異議申立てをあってはじめて審査する登録後異議へ。
- 周知形態表示の「表装」は、商標法と不正競争防止法の双方で保護
4.アメリカ
- 1870法は憲法違反(違憲)に
- 1881年に州際通商条項を頼りに、連邦商標法制定
- 1946年法(Lanham法、ランナム法):使用主義の徹底、使用意思では足りず現実の使用を必要とした
- 1989年法:出願時は使用意思で良いが、登録には使用が必要とした
- コモン・ローの保護(パッシング・オフ)、州登録の保護、連邦登録の保護がある
- 世界で最初に、サービス・マークを認めた
5.CTM(EUTM)
- 1996年制定
- 単一の出願により、EU全域に亘って商標登録、独占的な権利を取得できる
- 絶対的拒絶理由は審査をするが、相対的拒絶理由は異議待ち審査
- 加盟国に1つにおいて不登録理由があれば登録が認められない
- 国内出願に変更は可能
コメント
各国、色々と変遷しているなと思いますが、使用主義や登録主義は、双方歩み寄る形で、収斂しつつあるなという気がます。
本当は、ドイツ法は、もっと研究すべきなのですが、日本人が出願するときは、EUTMになるので、研究不足になりがちです。
1936年法から、先願との関係は相対的だったようです。日本の類似概念の重視は、英国法の影響でしょうか?
さて、小野先生は、米国法のことをランナム法と記載されています。発音通りに書くとランナム法です。特に、人名ですので、このように書くのが正しいと関西では言われており、ランハム法という記述は間違いと関西では指摘されます。
「ヘイグ」と「ハーグ」のようなことに、将来なるのであれば、できるだけランナム法と記載すべきだなと思いました。