Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

自己研鑽も労働時間?

電通 残業代24億円支払いへ

2017年11月29日の朝日新聞で、電通が過去2年間分の未払い残業代約24億を支払うという記事がありました。

www.asahi.com

記事によると、自己研鑽などとしてきた時間を労働時間として認め、勤務に関する一時金として支払うとあります。

具体例としては、

  • 社員が会社に残って過去のCM映像や担当企業の資料を見る
  • 語学の勉強をする

ということを、これまでは、自己研鑽としてきたのを、厚生労働省の立ち入り検査で、「業務との関連性が強い」と指摘されたということです。

 

コメント

この記事に気になったは、語学研修が自己研鑽ではなく、労働時間と考えられているとこです。

いままで、語学は自分の一般的な能力向上のためのものであり、業務と直接の関係はないと理解してきました。

昨年までいた会社でも、夕方、一旦、会社施設内で開催されている語学研修のために仕事を抜けて、そのあと戻って残業することがあり、そのときは、語学研修分を差し引いて申告するという方法だったと思います。

 

最近は、会社内ではなくベルリッツのようなところと提携して、社外での研修も多くなってきていましたが、まだ、社内の会議室を会場にした英語研修もやっていると思います。

 

語学研修が労働時間になるとすると、今までの理解と違いますので、調べてみました。

 

2017年2月4日の日経電子版の記事ですが、厚生労働省の指針が出ているようです。この指針の存在を知りませんでした。

www.nikkei.com

  • 厚生労働省は、会社側の「暗黙の指示」で社員が自己啓発をした時間も労働時間として扱うことなどを求めた指針を作成
  • 電通社員の過労自殺を受けて同省が昨年末に公表した緊急の長時間労働対策の一環
  • 指針に法的拘束力はないが、同省は労働基準監督署の監督指導などを通じて企業に守るよう徹底する方針
  • 自己啓発などを理由に会社にとどまる「私事在館」と申告していたことが問題
  • 指針では労働時間について「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義
  • 「使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」との判断を示した
  • 具体的には、業務に必要な資格取得の勉強や語学力向上の学習など自己啓発をした時間について、上司からの具体的指示がなくても、そうした状況に追い込まれる暗黙の指示があれば労働時間に当たるとした
  • このほか、制服や作業着に着替える時間、業務終了後の清掃、待機時間、研修や教育訓練の受講なども、労働時間に含めるとしている

 

この最後の具体例の待機時間は、国会待機のイメージですね。着替えの時間は、労働時間外と言われてきたのですが、作業服への着替えなどは、確かに仕事の一環といえば、言えなくもないのかと思いました。

 

私事在館を徹底的に廃除するための指針のようですが、「暗黙の指示」があったかどうかがポイントのようです。

語学はできた方が、与えられる業務、異動、昇格昇進など、何かにつけて有利なので、上司になにも言われなくても自己啓発・自己研鑽するものだと思います。語学は暗黙の指示の境目が、難しいと思いました。

 

語学研修という言い逃れをして、実際は残業をしている実態があり、それを封じるための手段として、厳しい指針を作ったのだと思いますが、「暗黙の指示」という言葉に曖昧さを感じます。

 

たぶん、厚生労働省は、在館でないものは問題視しないのだと思います。推測ですが、在館時間を減らすと、労働生産性が高くでるので、国際比較等で役立つはずです。

 

この指針のためでしょうか、例えば、特許事務所で夕方集まって判例の勉強会をすることなどもできなくなり、やりたいなら貸し会議室を借りて自分達でやりなさいということになっている例があるようですが、費用もかかりますし、現実的ではありません。

 

作業服への着替えは労働時間に入れるなら入れるとすれば良いですが、語学研修はいろいろと疑問がでてきます。「暗黙の指示」のよる語学研修を労働時間に入れるなら、論理的には、場所は社外(家であっても)、労働時間になるはずですし、語学学校で受けても労働時間になるはずです。

 

厚生労働省ガイドラインリーフレットを、さっと見ましたが、特に事例などはありませんでした。

語学学習などの言葉もなく、「参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講や使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」と記載があるだけです。

 このガイドラインによると、具体的な義務や指示がなければ、労働時間ではないことになります。「暗黙の指示」については、一言も、書いていません。www.mhlw.go.jp

 

 結局は、「暗黙の指示」とはどのようなケースを指すかは曖昧なままで、個別具体的なもののようです。悪質なものを挙げるための、一般条項のような感じです。

 

いっそのこと、 語学研修を労働時間に入れてしまうとはっきり言えば、会社は語学研修などは止めると思います。しかし、上級職務に就くには必要であり、自費で外部の英語学校に通うと思います。

今まで、社内の語学研修にかけていた予算を給与に振り替えるなら、さっぱりして、良いかもしれません。

日本的に全体の底上げというのはできなくなりますが。