Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

パワハラ対策の議論

法制化か指針(ガイドライン)か

2018年9月26日の朝日新聞で、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会の分科会で、パワーハラスメント対策の議論が始まったという記事がありました。

  • 企業に義務付ける法制化か、強制力のないガイドラインかが、議論の焦点
  • どんな行為が、パワハラかもテーマ
  • 労働者側は法制化を主張
  • 経営者側はパワハラの定義があいまいで仕事上の指導との線引きが難しく、経営に悪影響があるとしてガイドランが現実的と主張
  • セクハラやマタハラは、企業に防止措置をとる義務
  • パワハラには規定がない
  • 2012年の厚労省有識者会議のパワハラ類型はあるが、判断基準や防止策の指針はない

コメント

パワハラの定義を調べてみると、法務省の人権関係の資料(企業における人権研修シリーズ パワー・ハラスメント)に次の解説がありました。

明確な法令上の定義はないとの前提で、

一般的には「職場内での地位や 権限を利用したいじめ」を指し、「職権などの優位にある権限を背景に、 本来の業務範囲を超え、継続的に、相手の人格と尊厳を侵害する言動を 行い、就労環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与えること」

とあります。 

 

一方、厚生労働省の定義は少し違うようです。

職場のパワーハラスメントについて

職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義をしました。

法務省のものは、後半部分が、アンドかカップかが、分かりにくいので、厚生労働省の定義の方が、良さそうな感じです。

ただ、雇用不安は抜けています。雇用不安があれば職場環境が悪いとなるのかもしれません。

 

たしかに、定義自体が明確ではないようです。

 

そして、厚労省のWebサイトでは、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、類型として、

1)身体的な攻撃

暴行・傷害

2)精神的な攻撃

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言

3)人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視

4)過大な要求

業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

5)過小な要求

業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

6)個の侵害

私的なことに過度に立ち入ること

とありますが、これがすべてではないそうです。

 

類型を掘り下げて、個別のケースの認定基準を作る必要があるだと思いますが、それはなく、企業に義務付ける防止策といったものもガイドライン化はされていません。

 

この程度の状態であれば、一挙に法制化するのでは現実的ではなく、ガイドラインを作ったらと思いますが、問題解決を促進するには、法制化が先決ということのようです。

 

一方、セクハラは法制化されているということですが、調べると、根拠法は、男女雇用機会均等法第21条とありました。

法律と裁判 | セクハラ110番

事業主は、職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により、その女性労働者が労働条件に不利益を受けたり、就業環境がその性的な言動により害されることのないよう雇用管理上必要な配慮をしなければならない。

性労働者へのセクハラはありますが、男性労働者へのセクハラは無い構成です。双方向ではないようです。

 

パワハラも、セクハラも、社会的に問題になることが多い、重要な話題だと思うのですが、漠然とした点が多いような感じがします。

より緻密な具体例や判断基準が必要なように思いました。

 

また、これらの規制は、職場という(公務員は別のルールらしいです)限定があり、最近話題の学校やスポーツの世界は対象外のようです。

 

一般の企業の場合と、自衛隊や警察で、パワハラの認定基準が、同じとは思えませんし、スポーツも厳しそうな世界です。

すべてを統合的に判断するのは非常に難しい感じがしますが、企業だけの議論でもなさそうですので、より体系的に考える必要がありそうです。

 

すべての社会に適用できる全体の大まかなルールと、個別部分社会毎の個別のルールを作っていかざるを得ないように思いました。