2017年12月17日の朝日新聞に、文京学院大学の経営学部のゼミ生らが、エスカレータの事故を防ぐためのデザインを開発して、アトレ目黒で実験し、成果を上げたという話が出ています。
要点としては、
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関東地方の都市部では、エスカレーターの左側に立ち、右側は急ぐ人のために空けることが、暗黙のマナー
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しかし、エスカレーターでの歩行は事故につながりやすい
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また、エスカレーターの業界団体によると、構造的に歩くようには設計されておらず、歩くと故障しやすくなる
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学生は、事故などを防ぐためにも、思わずつかまりたくなるようなエスカレーターの手すりをつくりたいと考えた
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学生らは、手すりのラッピング広告を作るアサイマーキングシステムに製作の協力を依頼
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デザインは学生が担当し、効果について結果を提供することを条件に今年8月、共同プロジェクトを開始
- ゼミ生らは、約80種類のデザインを考案
- 「ぎゅっ」という擬声語と動物のイラストを交互につけたデザインとした
- アトレ目黒1では、エスカレーター1基で設置し実験
- 設置前には、手すりの利用者は1日あたり240人だったが、設置後は258人に。歩行者は、41人から37人と約9・8%減った
- 利用者からも「ぎゅっ」と書いてあったから、思わずつかまったなどの声
- 今年度「社会人基礎力育成グランプリ」の関東地区予選大会で準優秀賞を受賞
- 成田空港でも、試験的実施を検討
- 空港は外国人利用者も多く、文字より絵でアピールしたいという要望あり
- 空港担当者は、ステップに2人が横に並ぶような足跡マークを記したり、つかまりやすい手すりのデザインにしたりするなど、学生たちと一緒に工夫していきたい
コメント
ユニバーサルデザインとも言えますし、マーケティングとも言えますが、デザインで社会問題を決する良い事例だと思いました。
この学生達は非常に良い経験をしたので、将来が楽しみです。将来は、CSV=Creating Social Value(共通価値の実現)を実現することなどをやってくれるのではないでしょうか。
エスカレーターを歩いてはいけないというのは、割と知られてきていますし、鉄道会社やエスカレーター事業者、百貨店などでも積極的に誘導しています。しかし、一旦、社会に根付いた習慣を変えるのは、大変です。
今回のデザインは、なかなか変わらない社会の習慣を変更していくキッカケになるように思いました。
プロでもなかなか変えられなかったところを、学生がチャレンジしているところなどは爽快ですし、学生の提案に対して、プロのラッピング業者やアトレ目黒や成田空港といった事業者が協力してくれているものも良いと思います。
朝日新聞の紙面では、歩行者が41人から37人に減り、それは0.8%と記載がありましたが、ネットでは訂正がされ、9.8%減となっています。単純ミスのようです。0.8%は効果がないように思えますし、10%なら有意な差があるように思います。
アトレ目黒1での実験は、10月12日から31日と20日程度ですが、ずっと続けるとすると、刷り込み効果もあり、徐々にエスカレーターを歩く人は少なくなるように思います。
できれば、小さな実験ではなく、大きな規模で何らかのキャンペーンをやってもらいたいものです。プレミアムフライデーのような特定業界寄りの発想から来たものではないので、これこそ大々的にキャンペーンをすべきではないでしょうか。
以前も書いたかもしれませんが、新橋の横須賀線のホームから上にあがるところは、エスカレーターを片方空けるために、人の流れがおかしくなり、また、ホームに人が溢れ危険を感じることもあります。首都圏のJRは、一刻も速く導入すべき対策ではないでしょうか。