Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

シャープの北米TV

ハイセンスが拒否、そして新ブランド導入

2017年7月27日の毎日新聞のWeb版に、シャープが北米で、中国のハイセンスにライセンスしていたSHARPブランドのライセンス権を取り戻す交渉をハイセンスが拒否したという記事がありました。

headlines.yahoo.co.jp

ハイセンスの幹部へのインタービューのまとめです。要点は、

  • シャープは2015年に北米でのテレビ生産から撤退
  • ハイセンスに、米国向けなどのテレビを生産、販売することを20年末まで許可
  • しかし、鴻海傘下で、米国市場への再参入を目指している
  • 米国でのブランド使用権について、シャープが買い戻しを迫っている
  • ハイセンスに対しブランドの使用差し止めなどを求める訴訟を提起
  • ハイセンスとしては、もともとライセンスを提案したのはシャープ
  • 契約精神に欠けていると反論
  • シャープブランドの北米販売は拡大、素晴らしい効果を上げている
  • 今後もシャープブランドを推進
  • ハイセンスは正統的、合法的な利益を守っていく

一方、2017年7月25日の読売新聞には、北米で新ブランドを導入するという記事があります。

シャープ高級TV新ブランド…北米再参入へ : ニュース : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

記事の要点は、次のようなものです。

  • SHARPやAQUOSとは異なるブランドを新設する方向
  • 発売は2018年以降
  • 韓国勢に対抗するため60~80型の大型・高級タイプに絞る方向
  • 米市場に再参入するための使用契約の見直し交渉は難航
  • 鴻海は、米国で液晶パネルなどを生産する工場を新設
  • シャープが早期に再参入すれば、パネルの販売先を確保できる
  • シャープは、新たなブランドやロゴマークを商標登録する手続きを進める

コメント

この2つのニュースからすると、使用権の買い戻し交渉は、なかなか進まず、新ブランド導入とせざるをえないようです。

契約期間が、2020年までとありますので、それを待てばよいのでしょうが、3年の期間待てないということでしょうか。

 

商標ライセンス契約には、契約終了後も、一定の期間は商標権者が使用できないという義務を課されることがあります。ライセンサーの視点で、今まで使っていたブランドについて、急に元のライセンサーが返ってくると、自分の商品(そもそもの自分のブランドなどで販売)が売れなくなるので、不使用の義務を課すのです。ライセンサーには、きつい条件ですが、どうしてもブランドライセンスをしないといけないという状況下では、ありえる条件です。

 

さて、新ブランドですが、これも大変ですね。SHARPなら一番良いですし、AQUOSなら将来まだなんとか将来SHARPにブリッジすることは可能ですが、全く新ブランドは一からですので、大変ですね。一時期、北米で、VIZIOというブランドのTVが一世風靡したことがあるので、全く無理ということはないですが。

 

シャープという会社の作ったTVは、信頼感は抜群だと思いますので、商号(社名)をどのように打ち出すかも、一つの方法ですね。