Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

JPDS ブランディング支援特別講演会

Brand Management~ブランドの育成と管理~

2017年10月3日、日本パテントデータサービス(株)(JPDS)の講演会に行ってきました。講師は、元ヤマハで商標を担当されていた、弁理士の橋本政美先生です。

 

商標協会の年次総会で、JPDSの方と名刺交換したので講演の案内をいただくようになりました。

知的財産戦略の総合サポート JPDS日本パテントデータサービス株式会社

JPDSは、特許事務所の方には、PATDATAを引き受けた会社として有名だと思います。

 

講師の先生は以前知財協会の商標委員会でご一緒したことがあったので、どのような話をされるのか、興味がありました。知財の仕事と、ブランドマネジメントの仕事が、どのように関係性があるのか、ヒントになるようなことがあればと思って参加しました。

 

会場は、西新橋のJPDSの会議室です。名古屋、大阪、福岡を高解像度のテレビ会議システムで結んでいましたので、全部で100名程度の参加者でしょうか。見た感じは、企業の商標担当者が多かったようです。

JPDSとしては、商標調査ツールのサービスが仕事のようですので、新規顧客勧誘の一環だと思います。

 

さて、内容ですが、基本的に、ブランドディングなり、ブランドマネジメントの話です。丁寧に概念を説明していただきました。

 

事例としては、関アジ・関サバのブランディングの事例、ヤマハ(株)とヤマハ発動機(株)のロゴの違い、商標管理(Trademark Management)とブランド管理(Brand Management)の違い、ブランド価値・ブランドアイデンティティ・ブランドスローガン等の概念の説明、などです。

途中、前の会社のブランドプロミスが漠然としていると指摘がありました(う~ん)。

 

講師が丁寧に各概念を理解されていることが分かりました。以前の職場で、ブランドコンサルティング会社や広告代理店の方からプレゼンを受けるときは、ビジュアルなものがほとんどで、概念を中心に話を聞くことが無かったので、新鮮でした。ただ、理解のためには、ビジュアルが欲しいようにも思いました。

 

面白かったのは、講師の先生は、ロゴの使い方などのブランドのミクロ要素の管理を、商標管理(Trademark Management)に分類され、商標担当者の業務とされていた点です。確かに、日本の商標管理のバイブルである日本生産性本部の「商標管理」では、権利管理以外の商標の適正使用管理が紹介されています(木村先生や大村先生の「商標が分かる12章の本」でも参考文献に挙がっています。今は、入手は難しいですが、古い企業や事務所にはあると思います)。

 

知財の商標部門で適正使用管理をするのが良いか、ブランドマネジメントの部門でやるのが良いか、企業によってそれぞれとは思いますが、考えさせられる話でした。

 

TIPSとしては、INTAが、適正使用管理のガイドライン(ACID)を出していることです。

http://www.inta.org/Media/Documents/2012_TMUseMediaInternetPublishing.pdf

ACIDとは、Adjective、Consisent、Identification or Status、DIstinctiveの略のだそうです。ここで書かれているのは、前述の日本生産性本部の商標管理と同じレベルです。

 

企業のブランドマネジメントでやっている、ミクロ要素の管理ですが、この70年でだいぶ変化しています。それをINTAも正面から分析していませんし、アメリカにおいても、商標管理とブランディングがだいぶ距離ができているのかなと、改めて思いました。

この冊子を出すだけでも、INTAはだいぶ良いのですが、現在のブランドマネジメントでこの4つが重要と言われても、一貫性以外は、ピンとこないと思います。

 

もう少し、各企業が何をマネジメントしているのか、大学の先生なりが調査して、まとめることは非常に有用と思いますが、ブランドガイドラインはノウハウの塊であり非公開という企業も多い(反対に今はWebサイトに公開する企業もあるのですが)ので、研究が、あまり進んでいないように思います。

 

また、根本論ですが、ブランドマネジメント的な視点でみると、ブランド価値、ブランドイメージのコントロールが基本ですので、出所混同を中心に概念を整理している商標法は、混同概念に縛られ過ぎているように思います。

コモンローと違い、欧州の名声(レピュテーション)理論の方が、ブランドマネジメントに合致しています。欧州の共同体商標などは、20年前にできたものですので、最近の議論が反映できているのだと思います。

アメリカでは、ダイリューションの理論が名声に近いですので、まだ、何とか理解できますが、日本の商標法は、名声もダイリューションもなく、出所混同だけですので、社会と法律が乖離しており、どうしたものかと思います。