Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

サムスン対アップルのスマホ訴訟

損害賠償額は、ほぼ意匠権

2018年6月28日の日経夕刊にアップル対サムソンの7年におよぶスマホ知財をめぐる係争が、最終的に和解になったという記事がありました。

www.nikkei.com

  • 6月27日付で、カリフォルニア州サンノゼの地裁に和解を通知
  • 5月に、地裁は、サムスンに損害賠償金の支払いを命じていた
  • アップルは、スティーブ・ジョブズ氏の存命中の2011年4月に、ギャラクシーのデザインが自社の権利侵害と提訴
  • サムスンが、日本や韓国で反訴。係争は10ヵ国に
  • 転機は、米国以外の訴訟が、取り下げられた2014年8月あたり
  • ファーウェイ(華為技術)やシャオミ(小米)など中国勢が台頭
  • 世界中で費用をかけて訴訟を続ける意味は薄れていた

2018年6月29日の日経に、関連記事がありました。

www.nikkei.com

  • サンノゼ地裁の陪審は、損害賠償額として、5億3,900万ドル(590億円)を支払うよう求めた
  • 裁判でアップルが求めたのは、独自性の認定
  • もた、訴訟で、サムスンは、アップルと互角に対抗する有力企業として位置づけられた
  • 現在、主役は、スマホの上で動くサービスとクアルコムなどの部品

という内容です。

 

コメント

タイミングよく、2018年7月5日に、JETROの「韓国の商標・デザイン制度とトレードドレス保護の最新事情」というセミナーに参加しました。

その中で、韓国の特許事務所 NAM & NAMの代表のユ・ビョンホ弁理士から意匠権に関連して、この訴訟の説明を聞く機会がありました。

 

ユ先生は、クアルコムサムスンに在籍していたことがある弁理士です。2011年~2015年にはサムスンにおられたようです。

 

今回の損害賠償金の内、意匠権3件で、5億3,331万6606ドル、特許は2件で、532万5,050ドルで、意匠が特許の100倍の算定があったようです。

知財の中での意匠の位置づけを、高いものと見直すべきという解説をされていました。

 

本体のデザインについての14名の意匠創作者には、ステーブ・ジョブズの名前もあります。

新聞に、ティム・クックCEOの「感情の戦い」という言葉がありましたが、会社のアイデンティティについての、命を懸けた戦いだったようです。

 

3件の意匠の内、フラットな画面に関する意匠が1件(US D 618,677)、ベゼルとフラットスクリーンについての意匠が1件(US D 593,087)、アイコンのGUIが1件(US D 604,305)です。部分意匠と画面デザインの意匠です。

 

米国では、意匠権の侵害は、商標や文字を外してみて、消費者が混同を生じるかどうかという基準で判断されたようです。

特許は、特定の機能についてのもので、損害賠償額の算定でも、スマホ全体が対象ではなく、貢献のあった部分が対象になりますが、今回の意匠の場合、正面の部分意匠であった点で、スマホ全体を対象として、損害額を算定するので、100倍になったようです。

 

和解契約には、単なるお金以上の条項もあるようでした。また、この和解金の6割が訴訟代理人の費用となるという説明もありました。

 

ベゼルとフラットスクリーンの組合せについてですが、今のギャラクシーのS9は、スクリーンが側面に回り込んでおり、フラットではなく、また、外周に沿ったベゼルもないデザインになっています。これは、このアップルの意匠権を徹底的に回避して、作りあげた新しいデザインではないかと思いました。

 

日本では低調な意匠出願ですが、韓国では好調なようで、2017年に65,635件と日本の29,865件の2倍強です。人口を考えると、4~5倍、意匠が出願されています。中国も意匠が多いようですが、日本の意匠は、本気で考え直さないといけないのではないかと思いました。

 

日本の意匠が低調になった理由ですが、大昔のホンダのスーパーカブの訴訟で、当時、最高額の判決が出て(近年まで、知財の最高額でした)、これでは企業が意匠で潰れるという政策判断があり、意匠権の効力を抑えていく方向となり、特許庁が権利を細かく設定し、そして、権利さえとれば意匠権侵害でないという実務を作ってしまったところにあると理解しています。

 

こういう抑制的な判断の積み重ねが、結局は、企業の闘争本能を抑えてしまい、特徴のない製品に繋がってしまいました。

今は、意匠の仕事をしていないので、好きなことを言えるのですが、日本の意匠は抜本的に法運用を変える時期ではないでしょうか。