テクノロジーブランディング(技術のブランド化)の法的保護に関する研究
技術ブランディングは、ブランディングやマーケティングからのアプローチがメインであり、法的な保護の検討は遅れているのですが、その辺りを説明した弁理士の上條由紀子さん他の論文です。
平成21年度TEPIA知的財産学術研究助成成果報告書のなかにあります。
https://www.ipaj.org/aboutus/pdf/TEPIA_seikahoukoku/h21_jyosei.pdf
①多くの事例にあたって、技術ブランド(テクノロジーブランド)を類型化した、②不使用取消などで、技術ブランドの法的保護が十分ではないのではないかという点を明らかにした、③そのため、商標の使用について主要素論を主張した、という点が特徴です。
●類型化については、
タイプ1:商品ブランドのケース(キシリトール/XYLITOL)、
タイプ2: 企業ブランドのケース(ドルビー)、
タイプ3:いわゆる成分ブランド
・要素技術(ハイドロテクト)
・原材料や含有成分名称のケース(クロロプレンゴム、ネオプレン)に、
分類されています。
テフロンは、要素技術、素材名称、原材料のすべてに該当するとしています。
●技術ブランドを、どの分類で商標出願すべきかに関心があるようです。タイプ1は、当該商品に、タイプ2では、企業の業務範囲に出願すべきであり、タイプ3では、成分部分は良いとして、用途については商標の使用についての議論があり、不使用取消では、用途について、商品への商標の使用があったと認められないケースが多いとします。
●そして、ZAX事件、タカラ本みりん事件、カルゲン事件などの事件について言及しています。
素材についての生地についての使用が、被服についての使用と言いうるか?について、生地は被服の主要な要素であり、生地への使用があれば、被服についての商標の使用ありとしても良いのではというのがこの論文の主張です。
(ZAX事件は、グラム事件で、状況は一変しています。)
●その他、商標法の保護を補完するものとして、不正競争防止法での保護が重要であることや、
技術ブランドを、特許やノウハウとライセンス契約するときの、商標の使用強制が、独占禁止法違反になることが、説明されています。(ちなみに、VHSは特許、ドルビーはノウハウ契約がベースです)
コメント
ドルビー、テフロン、Compact diskなどが、古典的な技術ブランドだと思います。
法律的な論点としては、技術ブランドは、どのように構成すれば、法的に保護をすることができるかであり、商標法、不正競争防止法などが、中心となるのは、そのとおりだと思います。
この論文がまとめられたのは、平成21年で9年前であり、その後、グラム事件で権利者有利の結論が出ているので、この論文にはそれを先導したという点で、意味があったというところでしょうか。
ただ、素材のブランドの商標権を取得するのは出来ても、その展開商品までグローバルで、権利取得をするのは大変です。
この考えを進めると、自分で自分の首を絞めることにもなります。
昔、デュポンのテフロンを調べたときに、素材のところだけを商標権を持っていて、鍋釜類には権利がありませんでした。
グローバルに権利を取得することを前提にすると、素材は素材と割りきる方が合理的です。
最終製品まで、権利取得せずとも、テフロンのタグ程度は、可能であるという理論を整理する方が、企業としては、良い面があるのではないかと思います。
選択肢は両方ともあり得ますが、ここは、重要なポイントだと思います。