Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

日本商標法の未来のための方策検討(その8)

ドレードドレスの保護

 

今日は、宮脇正晴教授の「トレードドレスの保護」を読んでみました。トレードドレスの保護を、米国法を中心に概説して、日本法について検討するというものです。

 

トレードドレスは米国商標法に由来する概念であるが、店舗外観(店舗の内外装)の保護が、日本でも始まっている。

 

米国商標法では、出所識別機能を発揮しうるのであれば、商品形態はもちろんのこと、音、色彩や香り等も商標たりうる。

 

米国では、トレードドレスは、商品の容器包装に関する外観を指すものであったが、店舗外観や商品それ自体の外観に広がっている。

保護を受けるためには、非機能性の証明が必要である。

この機能性は、技術的機能性(Machanical Functionarlity)と美的機能性(Aesthetic Functinality)に分けられる。技術的機能性は、商品の技術的機能について、美的機能性は、商品の美的側面に関するものである。

 

米国では、識別性について、包装、店舗の内外装は本来的識別性があるとされ、色彩のみの商標は二次的意味の獲得が必要であり、商品形態の商標は機能性のチェックがある。

米国では、技術的機能性について、特許がある場合、権利満了後でも機能的とされ、厳しい。競争上不可欠なものが基準なのは美的機能性についての基準である。

 

日本の場合は、包装と商品形態(形状)は3条1項3号に該当するという運用であり、多くの店舗外観は3条1項3号ないし3条1項6号に該当するという運用である。結論としては、二次的意味の獲得を認めている。

 

機能性については、競争上の不可欠性基準であり、米国よりも緩やかである。

 

今後の話としては、侵害の要件として、混同のおそれが条文上なく、権利侵害を否定することが比較的に困難な日本において、機能性が、競業者の自由を狭めていないかの検討が必要である。

 

コメント

米国の非伝統的商標(新しい商標)の識別性と機能性について、読み方を分かりやすく説明している論文だと思います。

はじまりは、店舗外観ですがこれは導入であり、内容的には商品形態が中心の論文のようです。立体商標の話です。

 

立体商標は、使用による特別顕著性の獲得があれば登録になるとすると、技術を独占することにならないかという話です。

競争上不可欠なものでないなら、すなわち技術的に他に替わりになるものがあるなら、商標による独占を認めてもよいとするのか(日本の立場)、あるいは、他に替わり得るものがあったとしても、一旦、技術的であるとして特許等で独占を認めたものは、技術的であることは明らかであり、その特徴は機能的であるという米国の立場の違いがあるようです。

 

日本では、技術的形態除外説(調整説)と競争上似ざるを得ない形態除外説があるが、宮脇先生は、両説は「不可避的な」ものか否かを問題としており、同じものとします。

このあたりは、意匠法、商標法、著作権法が関係する、法的には面白い論点なのだろうと思いますが、ちょっと難しい議論です。

 

日本では、トレードドレスの検討は、相当時間をかけてやってきたと思います。私の学生時代(30年以上前)に、大学の先生(国際私法の先生ですが、工業所有権法学会の理事もやっていました)が、トレードドレスの論文が最近多いと言っていました。おそらく、50年以上の議論の蓄積があります。

 

とっつき易い面と、奥の深い面がある論点だろうと思います。