マリカー事件に関連して
発明の2019年9月号にあった、弁護士の江頭あがささんの解説を読んでいます。タイトルは、「ファッションローとコスプレ ーコスプレ衣装貸与の法的問題点についてー」というものです。
- 抽象的なイメージとしてのキャラクターは、アイディアレベルの存在で、具体的な表現を保護する著作権法では保護されない
- 一方、アニメや漫画等の視覚的に表されているキャラクターは、美術の著作物として保護対象となり得る
- コスチュームの作成は、二次的な表現形式を立体的な表現形式に変更する変更行為で、翻案権の侵害(著作権法27条)
- 二次的著作物であるコスチュームを第三者に貸与することは、貸与権の侵害(著作権法26条の3)
- コスチュームはライセンスを得た適法なものでも、購入等してビジネスに使用すると貸与が問題となる
- しかし、個人的にコスチュームを作成する場合は、通常は、私的使用目的の複製、翻案として、著作権侵害にならない(著作権法30条1項、47条の6第1項第1号)
- 翻案権については、江差追分事件の最高裁判例。元の著作物の「表現上の本質的な特徴が感得される」か否かが判断基準
- アイデアであったり、創作性のないありふれた表現は、翻案権の侵害にあたらない
- しかし、釣りゲーム事件では、地裁と高裁で翻案権侵害の判断が異なるなど、判断は難しい
- マリカー事件でも、マリオの本質的特徴は、顔なのか、コスチュームなのか、議論になっている
- マリカー事件の地裁、高裁判決は、著作権侵害の議論に立ち入らず、不正競争防止法の部分のみの判断
- 不競法は、不競法2条1項1号(混同惹起行為)と2号(著名な商品等表示)が問題
- 混同については、ゲームを提供している企業とコスチュームの貸与企業は別との認識
- 知財高裁は、混同を生じさせるか否かに関係ない2号を適用
コメント
キャラクターのコスチュームの法的問題は、そう考えるのかと思いました。是非、発明誌で、ご確認ください。簡潔に、分かりやすく書かれています。
コスチューム自体が、キャラクターの著作物の翻案権を侵害しているとなるのかどうかですが、マリオの顔があれば格別、服だけで、翻案権の侵害になるかが論点のようです。
コスチュームを製造、販売している企業は、任天堂に著作権利用の許可を取り、対価を支払っていると思いますが、その事実と、コスチュームが、本当に翻案権の侵害にあたるかどうかは、別の話だというのは理解できます。
任天堂のキャラクターでも、マリオは著名なので、著作権侵害も成立しやすと思いますが、ピーチ姫などは、それほど特徴はありません。
翻案権侵害が成立しないなら、貸与権の問題は議論するまでもなくなります。
もう一つ、江頭先生が紹介している、利用者は混同を生じていないという考え方にも一理あります。消費者は、良く分かった上で、行動しているので、おそらくこれは、そうかもしれないなと思います。
そこで、著名表示の不競法2条1項2号になります。これは、マリオでは成立しても、著名ではないキャラクターでは成立しないかもしれまん。
また、貸与行為は、引き渡しや展示で読むのでしょうか?
著作権も難しい、不競法もギリギリの、非常に微妙な事件なんだなと思いました。
案外、本件は任天堂が、コスチューム業者に依頼して、コスチュームを販売するときに、条件をつけて、私的使用に限りOKで、事業として貸与はできません、仮に事業として貸与したら、著作権の翻案権の侵害(すなわち著作権侵害)になるというような、契約構成で処理した方が、良いのかもしれないなと思いました。
これから、ハロウィンです。コスチュームも沢山売っていますし、渋谷にコスチュームを着た人が沢山出てくると思います。