韓国法の現状
2019年8月16日の北大のサマーセミナーの2日目の続きです。
著作権は、私には難しかったなという印象でしたが、こちらは分かりやすく教えていただきました。
まとめで仰っていましたが、
韓国では、大きな流れとして、ベンチャー保護・育成というのことが政府の政策になっており、それに向けての動きのようです。
私的な利益の保護から、産業育成に舵を切っているというような内容でした。
1.Forest Maniaゲーム事件(著作権事件)
まず、ゲームは育成すべき重要産業ということです。
従来は、日本と同様に、著作権侵害は、アイディアと表現の二分法が取られ、キャラクターの図柄が違ったりすると、非侵害になったようですが、この大法院判例は、創作的個性を基準に実質的な類似性を判断して、表現に該当するとして、侵害としました。
それ以前の判例では、侵害としても良さそうなものも、非侵害とする傾向があったのですが、今後は、侵害になるケースが増えそうです。
2.不競法の一般条項で、差止を認める
伝統的に、不法行為では差止ができないという解釈だったのが、NAVERのバナー広告事件で差止ができるとなっていったようです。
そして、2014年1月31日から不正競争防止法の一般条項ができ、それ以降、多くの事件で、(不競法の一般条項を使って?)侵害との判決が出ていいるようです。
この不正競争防止法の一般条項の話は、JETROの韓国法セミナーでも聞いたことがあります。
3.多くの法律で知財保護
ここが、今回のポイントと思った点です。
- 下請法
- 不正競争防止法
- 中小企業技術保護法
- 共生協力法
- 産業技術保護法
といったもので、秘密や経済的価値のあるものが保護されるようです。
特に、不正競争防止法では、アイディア奪取の禁止というものがあり、経済的価値あるアイディアを、取引先の大企業が奪取したときは、秘密管理性がなくても、民事責任はあるそうです。
このアイディア奪取については、特許庁が是正勧告をすることができるようです。
また、3倍賠償の規定も、下請法、特許法、不競法など、各法律で導入されています。
また、独禁法と特許法は、通常はシーソーのような関係に立つと説明されていますが、最近の韓国では、公取と特許庁が一緒になって、ベンチャー保護をしているとしてます。現代のような大手から、ベンチャーを守ることが、重視されているようです。
コメント
最近、日本でも、ベンチャー保護は重視されていると聞きます。
3倍賠償も、政治家は議論しているようです。
韓国の中小企業は、非常に劣悪な状態にあるということは聞いたことがあるので、その保護が重要になっているのかもしれません。
これに対して、日本では大企業の裾野も韓国よりは広いと思いますので、大企業同士の関係の調整になるのかもしれません。
以前勤務していた会社は大企業ですし、現在の事務所のクライアントも日常的に良く接するのは大企業の方が多いので、ベンチャー育成にコメントできる立場にはないのですが、ベンチャーは、法律で保護を強化すれば育つという面よりも、自分で自分の権利を主張するというスピリットの方が重要なのかもしれません。
立法的解決ができる部分もあるでしょうし、韓(ハン)先生も言っていた、司法の法創造機能も重要だと思います。
そして、最終的には、大企業勤務がばからしくなるほどに、多くの成功者が出てくることですね。