Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

英語の機械翻訳

統計翻訳からニューラル翻訳に

2017年7月8日の朝日新聞についてくる「be」に、面白いまとめ記事がありました。昨年の秋から機械翻訳の技術に世代交代があったという話です。ニューラルネットワークというAI技術だそうです。

digital.asahi.com

記事によると、

  • 昨年秋に機械翻訳に世代交代があった
  • 従来の統計翻訳という方式から、ニューラル翻訳という方式に
  • 統計翻訳は、対訳データを統計処理して、どんな単語や言い回しで翻訳されたか確率を調べて、翻訳を組み立てる。文章を途中で区切って翻訳する
  • ニューラル翻訳は、人間の脳の神経回路をモデルにしたもの。ニューラルネットワーク型のAI技術。大量のデータを読み込むことで、AI自ら翻訳のコツを身につける。全体の文脈をみて翻訳する
  • 翻訳制度は、統計翻訳よりも、ニューラル方式の方が、2割~4割良好。翻訳がこなれている。つなげたときに、ぎこちない感じがない。
  • ただし、ニューラル方式は、重要単語が抜け落ちるクセがある。

コメント

英語学校に行ったり、個人授業を受けたり、コツコツ英語の勉強は続けているのですが、仕事で英語を日常的に使うのは、15年ぶりです。ブランドマネジメントにいたときは、まわりに英語のできる人(MBAホルダーも多かった)が複数いたので、役割分担ということはないのですが、どうしても海外関係の得意な人に、英語の仕事が集中し、私は自分が得意な、会議運営や社内決裁などを担当していました。

 

特許事務所の外国商標担当となり、書面のコレポンではありますが、翻訳に近い仕事になり、どうにかこうにかやっているところです。

仕事では、自分で書いた英語を、パートナーの先生にチェックいただいている(これは大変ありがたいことと思っています)のですが、あまりにひどいものは持っていけないと思い、自分の書いた英語がどのように日本語になるか、自動翻訳でチェックしてみることがあります。

そのとき、英→日ですので、単数複数や三単現の「s」など細かいことまでは分かりませんが、時制や意味の取りにくい文章のチェックしてくれるように思います。

 

まだまだ、人間の翻訳には及びませんが、人間のプロより凄いと思うのは、スピードです。外国商標の中間処理などですので、A4で1枚程度しかないですが、1秒かかっていないと思います。これは、人間には無理です。

 

特許は、翻訳の世界でも特殊で、法律や技術の理解や表現が必要で、おもてなし英会話とは違うので、簡単に自動翻訳システムに代替されることはないと思いますが、それでも、自動翻訳の技術は何か使えそうな気がします。試してみると、以外なところで、面白い使い方があるように思います。

 

将棋のAIで、過去の対戦を記憶してそれに合った差し手を考えるのだけではなく、AI同士で新たな対戦をして学習をさせているということで、プロが対局を見ても理解できない妙手を考え始めていると聞いたことがあります。

翻訳の場合、人間が理解できないと意味がありませんが。

japan.googleblog.com

比較してみる

二人の卒業スピーチ

2017年7月12日の朝の通勤時間に、South China Morning Post (SCMP)という香港の英字新聞のネット版をスマホ見ていたら、大学の卒業生二人のスピーチが対比されるように出ていました。

一人は、Cody Abbeyという北京大学の学生さんの卒業式のスピーチです。彼は中国語でスピーチしています。 

www.scmp.com

彼は2年間、儒教の勉強をしてきたそうです。

テーマは”different but harmonios"で、3つの中国人学生とのエピソードを交えて、(中国はアメリカ人からすると)違いがあるが、それはそれで調和がとれているのではないかという、アメリカ人から見た中国文化批評のようなものになっています。

 

彼は、中国にきて、視野が広がり、良かったという話になっています。

そして、終わり近くで、トランプ大統領のことを、中国好きで始皇帝が作った万里の長城にならってメキシコ国境に長城を作ろうとしている言っています。(ジョークのようなものです。終わりに持ってきているのは、このジョークをつかみにはつかわなったということですね。)

最後に、相互理解の大切さで締めくくっています。

 

中国ではおおむね好評なスピーチだったようですが、普通のスピーチではないかともいます。このスピーチでは、トランプ大統領を批判しているところがポイントだそうです。

 

中国のSNSでは、彼はアメリカに帰れるのか?というようなコメントもあれば、アメリカは民主主義で言論の自由があるので、問題ないというコメントもあります。

通常、この程度のトランプ批判は話題にもならない程度のものです。

 

一方、SCMPの記事は、5月にあった、アメリカのメリーランド大学に留学していた、中国人女性のYang Shupingさんのスピーチが、ネットで大炎上したことと対比しています。

 

彼女は、中国に来た目的は?と聞かれると、Fresh airのためと答えていたようです。中国は大気汚染でマスクが離せず、アメリカの空港に着いたとたんに Fresh airで、Freedomを感じたとスピーチしています。

 

彼女のスピーチに対する、SCMPのコメントを探しましたが、見つかりませんした。一方、BBCにありました。

 

彼女は、中国の愛国的なSNSユーザーなどから、バッシングを受けてしまったようです。怒っている人は、彼女が自国のことを必要以上に悪く言っていると感じているようです。

結局、彼女は中国のSNSのWeiboで謝罪を行ったようです。

www.bbc.com

 

二つを対比してみると、言っても良いことと問題になることは、置かれた立場で色々だということをあらためて感じます。  

インド商標法

 バパット・ヴィ二ットさんの講演会

 

2017年7月6日に商工会館で行われた、バパット・ヴィ二ットさんの講演会に参加しました。

インド英語を理解できるのか?逐語通訳があるのか?など考えながら参加したのですが、完璧な日本語を話すインド人の講師でした。

東大の理系で博士号を取得されたインド国登録弁理士ということです。日本で、サンガムIPという会社を経営されています。

www.sangamip.jp

 

大きな視点から、細かい点まで、良くできた講義内容でした。

商標の専門ではないのでということで、ネット(Skypeでしょうか)で2名のインド人の女性弁護士が紹介され、何かあれば、彼女たちが答えますと言っていましたが、質問時間が短かったためか、再登場はしませんでした。趣向は面白いですね。

途中で、サンガムIPの事務担当の方が出てきて、インドのWebsiteの説明などをしていました。これも良くできた会社PRです。

インド人講師おそるべしです。これぐらいPRしたら、一度、頼んでみようかとなりますね。

 

<大きな視点>

インドでは、2014年にモディ首相になってから、改革が進んでいるようです。

 

特に、「物品サービス税」というものが凄いようです。従来は15種類を超える間接税があったのを、一本化できたようです。10年来の悲願で、モディさんの清廉潔白な人柄があって初めて達成できたという説明でした。インドでは2%の人しか、税金を支払っていないと言われており、税金によって国力がアップしたインドは今までのインドとは違うという説明がありました。

 

また、シラタマン商工大臣という女性大臣は、鉄の女といわれる剛腕大臣のようです。この大臣とグプタ特許庁長官がどんどん改革を進めているようです。

 

20年ほど前に聞いた話では、5拠点が、バラバラに、ノートに出願受付をしてた(と聞いています)が、今や電子出願の先進国となっているのは驚きです(真偽不明)。

審査官も、一挙に460人採用するなど、(中国もそうですが)やることの規模が違うと思いました。これにより、13ヶ月かかっていた、商標のFirst Actionを1ヶ月にする予定のようです(現状は、2ヶ月)。

 

<細かな点>

面白かった点を、列挙します。

1.商標庁の所在地は、5都市(ムンバイ、コルカタ、デリー、チェンナイ、アーメダバード。日本人は代理人の住所で決まる。)

2.商標出願件数は、27万件程度(1年で5万件増加)

3.登録主義と先使用主義を採用

コモンローのPassing Offがベースにあり、それにプラスして後から登録制度を作った形です。出願が競合するときは、先願が登録されるのではなく、先使用が登録されます。

また、日本と比べて、先使用権が強く、類似商標も使用できます。

使用主義ではなく先使用主義とされていました。

4.異議申立の滞貨は、11万件強

5.知的財産審判委員会というもの法制化されたが、まだ動いていない

6.申請制の周知商標認定制度ができた(詳細はこれから)

7.マドプロに不利はない

8.先端的な電子出願とwebsite

9.ヒンディ語と英語が商標法の基本言語。それ以外は、インドの他の言語も日本語も、ヒンディ語または英語のTransliteration(読み方)とTranslation(意味)の提出が必要。多言語間で、意味が同じ商標は登録されないようです。これについては、多くの判例があるようです

10.電子出願とwebsiteは、最先端のものになっています。

11.審査レポートは、すでにemailで送られてくるようになているようです。

12.ヒアリングは、電話会議、TV会議を想定している(未運用)

13.登録証は電子版のみ

14.裁判では和解になることが多い。裁判所は、知財は高裁からスタートすることが多く、高裁は4つ。デリー、ボンベイ(ムンバイ)、マドラス(チェンナイ)、コルカタカルカッタ)。なぜか、裁判所だけは、古い地名の言い方を踏襲している。ここは、面白いと思いました。

まだ、裁判官はウィッグをつけてやっているのでしょうか?

15.税関登録もオンライン

 

 <まとめ>

インドは 中国ほどではないですが、関心が高い国で、聴衆の数も多かったように思います。講師はインド専門の特許事務所のようなことをされていますが、インドだけで事業として成り立っているというのは、凄いですね。

インドには2010年に出張で行き、以前の会社の他、インド電通などに行きました。それから、7年、だいぶ変わっているのでしょうね。

 

コメダ珈琲のトレードドレス

和歌山の事件は和解へ

東京地裁が、2016年12月に仮処分を認めていた、コメダ珈琲店和歌山市の喫茶店運営会社の裁判(本訴)が、和解になったというニュースが、2017年7月7日の朝日新聞に出ていました。

www.asahi.com

  • 店舗外観などの使用差し止めと損害賠償を求めた東京地裁の訴訟の和解が成立
  • コメダ側の主張は、喫茶店の屋根や窓の形、提供する飲食物と食器の組み合わせなどがコメダと酷似というもの
  • 店舗外観の使用差し止め、2,000万円の損害賠償支払いを求めた本訴が和解
  • なお、仮処分については、2016年12月に決定あり。「あまりに多くの特徴が類似している」として、店舗の使用を禁じ、店舗の写真や絵を印刷物やウェブに乗せてはならないと命じていた

とあります。

 

2017年7月6日の日経によると、和歌山の喫茶店経営会社は、仮処分の決定後、営業を一時停止し、外観などを改装した上で、営業を再開していたそうです。

日経は、コメダ側は、仮処分決定で店舗の類似性が認められたことで一定の目的達成されたと判断し、和解したとみられると記載しています。

 

コメント

いわゆる「トレード・ドレス」ですね。

30年前の学生時代から、アメリカの判例ではトレード・ドレスが認めらており云々と紹介されていましたので、古くからある論点です。

 

模倣をどう捉えるかについては、他人の権利の侵害をしてはいけないが、模倣自体は悪いことではなく必要なことであるという理解が、一般的ではないかと思います。

 

例えば、スターバックスが流行ると、それにそっくりなイメージの喫茶店が沢山出てきます。しかし、どこまで似ると権利侵害になるかという点は、非常にグレーです。

類似の喫茶店が出てきたからと言って、スターバックスは本物としてますます流行っています。被害があったとも言えません。

 

商標権などがあるとまだわかりやすいのもしれませんが、それでも店舗外観が良いところで、看板のレイアウトとか、内装とか、メニューとか、食器の類似性まで、商標登録に対象にするのは難しいと思います。 

 

 Wikipediaを見ていると、日本では、「めしや食堂」「西松屋」の事例が記載してあったのですが、トレード・ドレスを認めた例はないとありました。 

 トレードドレス - Wikipedia

 

nishiny.hatenablog.com

 

トレード・ドレスは、メインは不競法マターの判断となり、サブでその構成要素の店舗外観や、使っているマークを商標登録するというところだろうと思います。

 

立体商標も商標登録できますので、ひと昔前のマクドナルドの郊外店舗なら立体商標で登録はできそうですが、その登録とそっくり同じ外観の店舗ばかりかというとそうではありません。本人自体が時代に合わせて、どんどん改良を重ね、違ったトレード・ドレスを使うことがあります。

本来、主張したいのは、消費者等に一定のイメージで認識はされている特徴でしょうが、これを数枚の図面や絵では表現できないと思います。感性的ものの寄せ集めであると思います。あえて明確にするなら、箇条書きの文章で表現か、多くの写真や絵で表現するかです。

 

消費者の意識は、アンケート調査で明確にする方法もありますが、日本企業の法務や知財がアンケートに慣れていないので、実施するアンケート調査のレベルが低いのが現状です(ブランドマネジメントでもアンケートを活用していますが、裁判に出てくるものよりは、余程しっかりした内容だと思います)。

 

現状からすれば、基本は今回のコメダ珈琲のように、警告書の送付や、訴訟提起で、自分の権利を勝ち取っていくべきものなのだと思いますが、この方法は非常にコストがかかるのは事実です。

本当は、特徴の明確化や、アンケート、警告書送付、訴訟に、もっとコストをかけるべきなのかもしれません。ブランドは、PRや宣伝で作られる面もありますが、アップルを見ていると、法務が契約書や裁判でブランドを作っていってる面があります。

ここに費用と手間を惜しんでは、いけないように思います。その意味で、コメダ珈琲は偉いと思います。仮処分ですが、勝ち取っているのも凄いと思います。

 

一方、 従来型の商標や意匠の登録では、完全な権利を取るのは無理がありますので、新しい登録制度というのも、議論としてはわかります。 

あらたしく設置される「産業競争力とデザインを考える研究会」でも議論されるようですので、期待しています。

産業競争力とデザインを考える研究会

ブランドデザイン保護

2017年7月5日の日経に、経済産業省がデザインで産業競争力を高める総合対策を打ち出すとありました。

そのため、

  • デザイン振興を進める国家戦略を制定する
  •  ブランドの象徴となるデザインを一括で保護するような意匠法の改正などを検討する
  • 「産業競争力とデザインを考える研究会」を開き、2018年3月までに報告書を作成
  • 戦略策定や2019年の法改正
  • 意匠法改正とは別に、店舗デザインを保護対象にできないか議論する

とあります。

www.nikkei.com

元ネタは、経済産業省のWebサイトにあります。アップルやダイソンは、企業理念をブランド・アイデンティティとして、デザインで表現している。プレミアムカーや服飾品も同様。新興国企業もそれにならっているが、日本企業はデザイン意識が低いとあります。

議論のテーマは次のようなものです。

  1. 製品同質化が進む中での製品・サービスの差別化の在り方
  2. デザインと産業競争力の関係
  3. デザイン・アイデンティティの必要性
  4. 我が国のデザイン力、デザインを取り巻く環境の国際比較
  5. 第四次産業革命とデザイン
  6. デザインによる我が国企業の競争力強化に向けた課題
  7. 意匠制度が果たす役割と国際比較
  8. 課題解決のための対応策

www.meti.go.jp

 

コメント 

意匠法や商標法だけの話ではなく、より大きく、ブランド戦略とデザインとの関係を検討するようです。大変良いことだと思います。

どちらかというと、ブランド戦略は、広告や広報(PR)の一環として発展してきているので、経済産業省特許庁よりも、電通博報堂外資系のインターブランドなどのテリトリーです。企業の担当部署も、知財・法務ではない、広報・宣伝・マーケティングであり、経済産業省特許庁も、ブランド戦略を十分に理解されていないと思いますので、研究会を開くことは良いことだと思います。

 

今回、重要なのは、戦略策定の方で、Cool Japanの製品・サービス版のような施策が出てくるものと思います。こちらには期待しています。色々やってみると、中には大ヒットが出てくるように思います。

 

一方、意匠法の改正で、ブランドデザインを保護するのは、どうでしょうか。以下は私見です。

 

意匠法は、実用新案法ほどではないですが、活用が停滞ぎみのようです。もともと、意匠法は、パテントアプローチの方法ですが、関連意匠や部分意匠を入れた段階から、ますます、パテントっぽく制度設計されています。

本当は、無審査の実用新案の代替品を目指したのだとおもいますが、その活用(権利行使)が活発でないので、企業としてもどう使ってよいのか分からず、停滞しているではないでしょうか。

その意味では、権利行使しやすくするのが一番であり、根本的な話になります。

 

意匠制度の課題についての意見なのですが、日本の意匠がダメになったのは、意匠法の初期の大事件だった、ホンダのスーパーカブ意匠権侵害事件で、損害賠償金額が大きすぎて、産業界の反発があり、その対策として、特許庁意匠権を細かく設定しすぎるようになったことが原因と聞いています。

そのために独創的なデザインが出てこなくなったというのであれば、特許庁に圧力をかけた産業界に責任があります。自分で自分の首を絞めたことになります。

 

もう一つの意見ですが、もし、細かく意匠権を設定しても、「利用意匠」の考え方が整理されていれば、問題ないかと思います。はじめは広い意匠権の類似範囲だったのに、だんだん細かく権利が設定されるようになり、いつの間にか、同業他社も含めて、同じような商品が、皆、意匠登録されています。

そして、なぜか、「部品と完成品の関係」をのぞいて、商標的な発想で処理され、意匠登録があれば、即、使えると理解されています。利用意匠の条文があるのに、文言を無視して運用して良いのかという気がします。

 

特許では基本特許と応用特許の区別があるに、意匠は権利になれば、そのまま使えるという商標的発想で処理されています。利用意匠の規定はあるのに、ちゃんと運用されていません。たぶん、この問題を解決しようとすると、意匠を図面のみの制度から、クレーム併用的なものにシフトする必要があると思います。

 

全体に、日本の意匠の運用は、日本企業が欧米企業に比べて弱者だったころの産業政策を継続しているとも言えます。

 

また、今回、日経の記事にあったのですが、「製品デザインに込められたコンセプトの保護」ですが、このようなブランド・イメージやブランド・アイデンティティは、パテントアプローチとはなじみません。どちらかというと商標です。

そうなると、意匠法を、今一度、出所混同の世界に戻すことになります。もともと、意匠では「類似」という商標的な概念を使っていますし。

 

今時点、どちらが良いか、はっきり意見があるわけではないのですが、トレードマークアプローチよりは、意匠はパテントアプローチに残ってほしいように思います。

ブランド・イメージやブランド・アイデンティティの保護は、商標で対応できるように思います。店舗デザインなどは、本来、トレードドレスで商標法の話ですし、BMWのフロントグリルのデザインのKidney(腎臓)デザインも、立体商標の運用の話です。英法系のシリーズ商標の制度を入れる方法もあります。

 

たとえば、ブランドデザインの保護は、BMWのKidneyデザインの保護を念頭に置くと、25年では足りません。著作権の死後50年、70年という数字でも少ないぐらいです。意匠では無理があります。

 

パテントアプローチの意匠制度を、トレードマークアプローチに変更しない状態で、「ブランドデザイン」の保護を接ぎ木し、関連意匠の出願期間の制限なしまでしてしまうと、ダブルパテントの問題が顕在化し、一つの意匠制度に括ることはできないように思います。 

宗像直子さんが特許庁長官に

女性の特許庁長官

2017年7月6日の木曜日に、インドの商標法の研修会に参加したら、講師のインド人の弁理士から、日本の特許庁長官に女性が就任しましたねという話があり、このニュースを知りました。

2017年7月4日のNHKニュースWebの記事です。他にも各新聞社で出しているようです。

www3.nhk.or.jp

  • 中央官庁の幹部への女性登用の一環
  • 産業競争力の強化に向けた企業による知的財産の活用の推進

とあります。

 

コメント

インド人講師の弁理士の話では、インドではNarendra Modi首相が2014年に就任以来、改革が加速しており、その目玉人材に、Nirmala Sitharaman( ニルマラ・シタラマン)という女性の商工大臣がおり、凄いんだと言っていました。

インドでは、モディ首相の指示で、シタラマン大臣の下、商標制度をはじめとする知的財産制度が、抜本的に改革されているみたいです。

 

研修から家に帰って、「特許庁長官が女性になったんやて」と言ったのですがその言い方はNGと長女に釘をさされました。「なったんやて」という言葉は、単に事実を述べているのか、否定的な意味を込めているのか、分かりにくいので、外では使わない方が良い。また、宗像直子さんという方が、特許庁長官になったというべきで、女性が長官になったことをニュースとして扱うことがおかしいという意見でした。

「そうですね。気をつけます。」と言いました。自宅でも、発言には気をつけなければなりません。

 

宗像さんは多彩な経歴の方のようです。

経歴の詳細は、いろんなところに出ています。

東大法学部を出て通産省に入り、ハーバードビジネススクールMBAを取得し、TPP交渉、企業が農業をできるという特区の創設、首相補佐官などの経歴があるそうです。

www.rieti.go.jp

 

相当、有名な方のようです。行動力のある方のようですね。

facta.co.jp

 

まったく、話は違いますが、「宗像」というと福岡の宗像大社(神社)を思い出しました。 沖ノ島は女人禁制だそうですが、これは祭神が女性の神様だからだそうです。

 

12年ぶりに知財の世界に舞い戻ってきたのですが、中国やインドといった、海外の知財が活性化しているのに比べて、日本の知財は、なんだが元気がなく、改革すべきことは多そうに思います。どういう施策が出てくるのか楽しみです。

個人的には、出所混同を中心とする商標と、ブランド価値を中心とするブランドマネジメントなりブランド戦略が、並行的で交わっていないことが気になります。

商標はご存知だとおもいますので、一度、インターブランドなりの話を聞いて、特許庁の産業政策として、何が出来るか考えてはどうかと思います。

行ってきました(杉田敏さんのお話)

Vital Japanの講演会に行ってきました

2017年7月8日(土)夕方に、飯田橋東京しごとセンター講堂で開催された、杉田敏さんの講演会に行ってきました。

講演会後の懇親会で、新刊の著書にサインをいただき、写真も撮らせていただきました。

f:id:yoshikeke:20170709083831j:plain  f:id:yoshikeke:20170709084329j:plain 

講演会のタイトルは、「世界を舞台に英語で勝負」です。

本当は、本のタイトルも「世界を舞台に英語で勝負」にしたかったようですが、講談社がそれでは英語コーナーにしか置いてもらえないということで、紆余曲折あって、現在の「成長したければ、自分より頭のいい人とつきあいなさい」になったとのことです。

 

海外の会社に入ったときに上司に言われた言葉のようですが、気にいっておられるようです。論語の「己に如らざるものを友とすることなかれ」と同趣旨ということです。

ここで、頭の良い人というのは定義が難しいのですが、退屈な人、専門バカではなく、幅広い話題・テーマに対応できる人という意味とのことでした。

 

話の合間に、アクティビティが2回あり、1つ目は「あなたのポジショニング」。2つ目は「First Impression」でした。

 

特に2つ名の、First Impressionについては、突っ込んだ説明がありました。アメリカのジャーナリズムやコミュニケーションの授業では、必ず習う話のようですが、他人を説得(persuasion)するには、次の3つが重要なようです。

すなわち、アリストテレスのいう、エソス(Ethos:徳、受け手の送り手への態度)/パソス(Pathos:情念、感情)/ロゴス(Logos:ロジック、言葉)の3つです。

日本人は、パトスを重視し、欧米人はロゴスを重視する傾向のようなのですが、今日のテーマは、エソスで、特に、初期エソス(第一印象)のというテーマでした。

第一印象は、何もなければ、出会ってから数秒で決まり、その印象がづっと続く傾向があるとの話です。第一印象の決定要因は、「外見、個性、評判、経験、教育」というものです。

アクティビティは、自分の思う「自分の第一印象」を説明し、同じグループになった他のメンバー5名にコメントしてもらうというものでした。

 

私の場合は、「まじめな印象ではないか」といったのですが、皆さんもそう思うと仰いました。それは弁理士という職業柄はプラスに働くという意見もありました。少し専門的な感じがするという意見もありました。

自分の理解と他人の第一印象が共通しているのは良いようなのですが、もう少し第一印象をフレンドリーなものに変えたいと思っているところです。

 

面白い趣味とかあれば良いのでしょうが、話の端々に現れる、他のメンバーへの配慮とか、言動の柔らかさとか、会話を盛り上げる積極性とか、自信にあふれた態度とか、このあたりが、第一印象を決める大きな要因なように感じました。

 

商標やブランドマネジメントの専門家であることは、職業柄、必要なことなので、専門的という部分はキープしないといけないのですが、第一印象・評判というものは全人格勝負の重要問題と再認識しました。

 

最後は、昔習ったことは役に立たない(特に、IT産業)、より高い大地を目指してという話で、締めくくられていました。

 

なお、実践ビジネス英語のビニエットは、基本ご自身で作らているようです。受講生の方が言っていましたが、毎日、英語の新聞を数紙読まれて、最新のビジネスにあったビニエットを考えておられるようです。30年これを続けてこられたというのは凄いことだと思います。