Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

メルカリの悪質出品対策

AIを活用

2017年12月23日の朝日新聞電子版に、悪質出品を撲滅するためのメルカリの取組みが紹介されています。個人情報の入力項目を増やすことと、AIを活用して疑わしい取引をアプリで見れなくするなどの対策を取っているようです。

www.asahi.com

  •  フリーマーケットアプリ大手メルカリには、額面以上の価格で「現金」が出品されたり、盗品が持ち込まれたりしている
  • CEOは、取引の監視にAIを活用するとの考え
  • これで、悪質な出品はかなりの精度で撲滅できるようになる
  • すでに、出品時に入力が必要な個人情報を増やしたりするなど悪質出品者を排除する対策を実施
  • また、AIを使って過去の悪質な出品を分析
  • 疑わしい取引をアプリで見られないようにする仕組みを導入

 

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フリーマーケットソフトのメルカリには、面白いものが出品されているようです。

例えば、2017年12月27日のYahooニュースの記事によると、メルカリに、スタンプ押印済みのポイントカードが大量に出品されていたようです。 

news.yahoo.co.jp

店員の関与が疑われますが、有価証券偽造罪などになる可能性が高いようです。このような、偽造ポイントカードなどは、AIなどで弾くことができるタイプのものかもしれません。

 

メルカリのWebサイトを見ていたら、偽ブランド品撲滅への5つの取り組みというページがありました。

https://www.mercari.com/jp/authenticity/

1.ブランド権利者と協力した出品パトロール

2.プロの鑑定士の在籍

3.テクノロジーを使った不正を見抜く仕組み

4.捜査機関や官公庁とのパートナーシップ

5.偽ブランド品補償

 

メルカリを利用したことはないので、実際のところは分かりませんが、全体的に、中古品の流通業者としてはできることをすべてやっているように思います。

 

今回、ニュースになったのは、このうちのテクノロジーを使った不正を見抜く仕組みのところですね。

 

特に、偽ブランド品補償で、条件に合致したときは、商品代金を補償することまでやっているようです。補償対象ブランド一覧という表もありました。

 

Yahooオークションでは、出品者の評価(レーティング)が重要で、入金も基本は個人同士のやり取りですが、メルカリでは、お金のやり取りにはメルカリが介在し、商品が届いてから振り込まれるようです。

 

だいぶやり方が違います。ヤフオクは、あくまでオークションであり、個人の責任が重要で、メルカリはフリーマーケットアプリであり、事業者側ができるところまではやっている感じがしますので、一個人として楽なのは、メルカリだと思います。

 

しかし、結局、一番重要なのは、欲しい商品があるかどうかなのだとは思います。

 

 

日航がメール詐欺被害で3.8億円

メールアドレスが一字違い

2017年12月23日の日経に、ビジネスメール詐欺で、日本航空が計3億8400万円の被害にあった件が解説されています。www.nikkei.com

  • 日航の航空機のリース料の払込
  • 電子メールで新たな入金先を通告する請求書が届く
  • 日航は指定された香港の銀行口座に3億6000万円を送金
  • その数日後、払込み先の変更はない旨の連絡あり
  • 電子メールをよく見ると、発信元のメールアドレスが1字違う
  • すでに口座から全額が引き出されていた
  • 本物そっくりのメール(添付の請求書は本物に酷似)を、実際に支払いが発生しそうなタイミングを見計らって送りつける典型的な手法
  • 支払い期日も迫っており、航空機が使用できなくなる恐れがあり送金した
  • 2013年10月~16年12月に世界で発生した件数は4万件。被害総額は53億ドル(約6000億円)
  • 詐欺師は取引先とのメールをハッキングし、支払い手順を学んだうえで犯行
  • 取引先を含むサプライチェーン全体での対策が求められている

大略、このような内容です。詳しくは、日経でご確認ください。

 

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個人ならまだしも、億単位のお金を送金するような経理の専門家でも引っかかるのかと思いました。今回は、複数人でチェックしたとありますので、大の大人が数名かかって、見抜けなかったということになります。

 

この記事には、後半で、スカイマークの2017年10月の事例がのっており、そちらは、200万円だったようですが、あやしいと見抜いて、被害が出なかったとあります。

ただ、こちらの方は、メールアドレスが、一字違いなどではなく、実在の取引先のものと一致しており、メールアカウントが乗っ取られた可能性が高いとありました。怖いですね。

 

一文字違いの場合は、amazon.comが、anazon .comになっているケースであり、まだ見抜ける可能性がありますが、同一アドレスなら、アドレスからは見抜けません。

 

何かが違うということをスカイマークの担当者は気づいたのでしょう。非常にアナログですが、電話で確認するしか対策がありません。

 

日航の件では、事前にアドレスだけではなく、担当者名や請求書の書式や日程など、色々なものが事前に詐欺師に筒抜けだったようです。PCがウィルスに感染して、そこから情報が取られたようです。

 

また、日経では、取引先から情報が漏れることについて、取引先を含めたセキュリティの水準の強化が必要とありました。

その通りですが、取引先の監査など、日本では契約上は書いたとしても、実際にはなかなかやってこなかったものだと思います。ビジネスメース詐欺のために、情報セキュリティの世界では、それをやる時代になったようです。

 

日本にも詐欺サイトは沢山ある

検索上位に詐欺サイト

2017年12月21日付の毎日新聞の電子版に、日本にも多くの詐欺サイトがあり、注意が必要という話が出ています。

headlines.yahoo.co.jp

  • インターネットで、時計やバッグなど商品名を検索すると、送金しても商品が届かない詐欺サイトが検索結果の上位に表示され、金をだまし取られる被害が増加
  • 詐欺サイトの業者は上位に表示されるようにSEO対策を実施
  • 5月以降、サイトに記載された口座に約2億4000万円が入金されているのを確認
  • 警察庁や日本サイバー犯罪対策センター(JC3)は注意を呼びかけている
  • 今年5月から今月にかけ、詐欺サイトのアドレス約2万件を発見
  • 米国の非営利団体「アンチフィッシング・ワーキング・グループ」(APWG)を通じ警告
  • 神奈川県警などはJC3から提供された情報に基づき、詐欺サイトに「振込先」として記載されていた122の銀行口座を捜査
  • 中国人2人を含む43人を検挙
  • 詐欺サイトは昨年末から目立つようになった
  • 検索結果をクリックすると、一瞬だけ公共団体などの正規のホームページにつながり、詐欺サイトに転送される仕組みがある
  • 正規のサイトを経由することで、検索結果に詐欺サイトのURLを表示させず、発覚までの時間を稼いでいる

などとあります。詳しくは、毎日新聞の記事を見てください。

 

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ひと昔前まで、模倣品といえば、中国や中国製品を販売している海外の話と思っていましたが、今は、日本でもネットで、だいぶ売られているようです。

 

これに近い話かもしれませんが、ネット上には詐欺サイトが沢山あるようです。

 

日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の調べで、約2万件の詐欺サイトがあると言いますので、大変な数です。

 

振り込め詐欺は、お年寄りをターゲットにしていますが、こちらの詐欺サイトは老若男女を問わず、すべての人がターゲットになります。

 

下記のJC3のWebサイトに、詐欺サイトやフィッシングサイト(クレジットカード情報などの重要情報を盗むためのサイト)を見分ける手法が紹介されています。

注意情報|一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター

  • ドメインネーム(ドメイン名)とURLアドレスのチェック
  • サイト運営者・連絡先の名器(名前や住所、代表者の氏名が記載されているか)
  • 日本語は自然か
  • 暗号化されているか(https://など)
  • 記載された決済情報(クレジット可)と違う決済しかできない(振込のみ)
  • 個人名義の振込先は注意
  • 激安価格が多いが、中にはそうでもないケースがある

このページでは、チェックポイントが解説されています。

 

最近の高校では「情報」の授業で、このあたりのことを教えてもらっていることもあるようです。

より世間一般が知るためには、中学でも教えるべき内容ではないでしょうか。

特に、ドメインネームの基本などは、国民の基礎知識として知っておくと良い内容であり、現代社会において、「情報」は他の科目よりも重要性が高いように思います。 

 

ウィルス被害を装った、詐欺も多いようです。

news.microsoft.com

実際に近くであった話ですが、ネットでいつものサイトを見ていたときに、たまたまこれに遭遇してしまい、直接詐欺業者に電話をし、コンビニで振込むように言われた件があります。

結局、「URLアドレス」がおかしい(一文字違い)と気づいたので、送金せずに済みました。詐欺にあうと大変です。

社会問題を解決するデザイン

文京学院大学経営学部のゼミ生ら

2017年12月17日の朝日新聞に、文京学院大学経営学部のゼミ生らが、エスカレータの事故を防ぐためのデザインを開発して、アトレ目黒で実験し、成果を上げたという話が出ています。

www.asahi.com

要点としては、

  • 関東地方の都市部では、エスカレーターの左側に立ち、右側は急ぐ人のために空けることが、暗黙のマナー
  • しかし、エスカレーターでの歩行は事故につながりやすい
  • また、エスカレーターの業界団体によると、構造的に歩くようには設計されておらず、歩くと故障しやすくなる
  • 学生は、事故などを防ぐためにも、思わずつかまりたくなるようなエスカレーターの手すりをつくりたいと考えた
  • 学生らは、手すりのラッピング広告を作るアサイマーキングシステムに製作の協力を依頼
  • デザインは学生が担当し、効果について結果を提供することを条件に今年8月、共同プロジェクトを開始
  • ゼミ生らは、約80種類のデザインを考案
  • 「ぎゅっ」という擬声語と動物のイラストを交互につけたデザインとした
  • アトレ目黒1では、エスカレーター1基で設置し実験
  • 設置前には、手すりの利用者は1日あたり240人だったが、設置後は258人に。歩行者は、41人から37人と約9・8%減った
  • 利用者からも「ぎゅっ」と書いてあったから、思わずつかまったなどの声
  • 今年度「社会人基礎力育成グランプリ」の関東地区予選大会で準優秀賞を受賞
  • 成田空港でも、試験的実施を検討
  • 空港は外国人利用者も多く、文字より絵でアピールしたいという要望あり
  • 空港担当者は、ステップに2人が横に並ぶような足跡マークを記したり、つかまりやすい手すりのデザインにしたりするなど、学生たちと一緒に工夫していきたい

 

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ユニバーサルデザインとも言えますし、マーケティングとも言えますが、デザインで社会問題を決する良い事例だと思いました。

この学生達は非常に良い経験をしたので、将来が楽しみです。将来は、CSV=Creating Social Value(共通価値の実現)を実現することなどをやってくれるのではないでしょうか。

 

エスカレーターを歩いてはいけないというのは、割と知られてきていますし、鉄道会社やエスカレーター事業者、百貨店などでも積極的に誘導しています。しかし、一旦、社会に根付いた習慣を変えるのは、大変です。

 

今回のデザインは、なかなか変わらない社会の習慣を変更していくキッカケになるように思いました。

 

プロでもなかなか変えられなかったところを、学生がチャレンジしているところなどは爽快ですし、学生の提案に対して、プロのラッピング業者やアトレ目黒や成田空港といった事業者が協力してくれているものも良いと思います。

 

朝日新聞の紙面では、歩行者が41人から37人に減り、それは0.8%と記載がありましたが、ネットでは訂正がされ、9.8%減となっています。単純ミスのようです。0.8%は効果がないように思えますし、10%なら有意な差があるように思います。

 

アトレ目黒1での実験は、10月12日から31日と20日程度ですが、ずっと続けるとすると、刷り込み効果もあり、徐々にエスカレーターを歩く人は少なくなるように思います。

 

できれば、小さな実験ではなく、大きな規模で何らかのキャンペーンをやってもらいたいものです。プレミアムフライデーのような特定業界寄りの発想から来たものではないので、これこそ大々的にキャンペーンをすべきではないでしょうか。

 

以前も書いたかもしれませんが、新橋の横須賀線のホームから上にあがるところは、エスカレーターを片方空けるために、人の流れがおかしくなり、また、ホームに人が溢れ危険を感じることもあります。首都圏のJRは、一刻も速く導入すべき対策ではないでしょうか。 

「かっぱえびせん」のコピーの話

創作者が誰かで、もめない様に

2017年12月19日付のIT Mediaに、カルビーの「かっぱえびせん」の「やめられない、とまらない」のキャッチ・コピーの帰属をめぐる、カルビーと元広告代理店クリエイターの争っている話が載っていました。www.itmedia.co.jp

記事の内容は、かっぱえびせんの「やめられない、とまらない」というコピーを考えた元広告マンが、カルビーを誉棄損で訴えたというものです。カルビー側は、コピーはカルビー社員が考えたとしています。

  • 「やめられない、とまらない」という文句の発案者は近年まで不明
  • 元広告マンがカルビーに対して、我こそが「生みの親」だと手紙で伝えた
  • 社長にも誕生秘話を直々に伝え大いに喜ばれた
  • 元広告マン氏の誕生秘話はカルビー社内報に掲載される運びとなった
  • しかし、待てど暮らせどいっこうに掲載されなかった
  • カルビーは、テレビ番組や新聞記事などで、コピーはカルビー社員が考えたという説明をするようになった
  • 元広告マンは、今年7月に1億5000万円の損害賠償請求をカルビーに提訴した

このような内容の話です。詳細は、IT Mediaをご覧ください。

 

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この話、考えさせるものがあります。

 

発明や意匠の場合、職務発明であっても、個人が発明してそれを会社が譲渡を受け、証拠として譲渡証を作ったり押印したりしてきていますし、明細書への発明者掲載権があったり、使用報償制度があったりして、発明者、創作者の特定はされていると思います。

一方、商標や著作物の場合、このあたりがいい加減で、後で困ることが多いように思います。

 

商標でも、あの商標、誰が考えたのか?というのが、後になってみて、分からないケースっていうのが非常に多いのではないかと思います。

 

商標では、社内に俺があの商標を考えたという人が、複数いることもあります。何が本当かどうかは分かりません。会議でブレーンストーミングなどしながら決めて、決めた時に会議に参加していた人は、皆、関与しているのかもしれませんし、よくわからないのです。また、ネーミングは、外部の委託先と一緒に作ることも多いので、外部の人が本来的な創作者のときもあると思います。

 

以前の会社では、だいぶ前ですが、知財部への商標出願依頼書に、商標の創作者の記載欄があり、ミニマムな使用報償金を支払っていたので、皆、一応、創作者の記載をしていました。

 

しかし、特許や意匠のように譲渡証を取るまでの厳格な運用ではなかったので、依頼書への記載をそのまま鵜呑みにするしかありませんでした。外部の人が作ったものを社内の人の名前で知財部に申請することもなかったとはいえません。

 

それはさておき、今回のコピーですが、一番良いのは、米国の発明ノートのようなものをつけておくことです。確かに、以前、ブランドマネジメントの仕事を一緒にやったメンバーで、クリエイター系の人は、自分の業績をまとめて、ファイルを作っていました。あれがあれば、何をしたかは、ある程度、はっきりします。

 

最近、商標のケースですが、米国や中国で、商標に、著作権も活用できるというケースに遭遇し、現地の弁護士・弁理士から著作権登録が重要と勧められるケースがあり、そうだなと思ったことがあります。確かに、著作権登録により、公表日や、譲渡の関係が明らかになります。

 

かっぱえびせんのコピーや、商標の創作者を、著作権登録でなんとか明確にできないかと思ったですが、日本の著作権登録では、創作者が誰かということは、正面から記載事項ではないようですし、法人著作もありますので、個人の創作者なり、企業なりがしかっりと著作権法を理解して、メモをとり、契約をして対応するしかなさそうです。

 

このあたりの権利意識というか、創作者認定の問題は、今後も出てくると思います。法律はこのあたりは考慮の対象外で実務に任せ、実務は法律がないので何もしておらず、取り組みがちぐはぐだと思われるところではないでしょうか。

確信的な(悪質な)特許権侵害への対応

パナソニックの豊田さんの寄稿文を読んで

2017年12月21日の日経の私見卓見というオピニオン欄に、パナソニックの元知的財産センター長の豊田秀夫さんの寄稿文がありました。

www.nikkei.com

内容は、確信犯的に特許を侵害する悪質な企業が増えている。国際的な大企業のときもある。パテント・トロールより深刻な問題。しかし、特許庁などの危機感は薄い。早急に、実態調査や対策を講じるべきというものです。

 

説明としては、ライセンス交渉をまとめるには、手間とコストがかかるが、技術革新は速く、交渉妥結を待たずに製品が市場から姿を消すことも珍しくない。そして、交渉を引き延ばして特許を侵害したまま逃げ切ろうとする企業がいる。

パテントトロールは、訴訟をふっかけて和解金を得る手法。金額の折り合いさえつけば交渉はまとる。

これに対し、ごねて特許権者をあきらめさせたい、悪質な特許侵害企業との交渉は難しい。裁判を起こしても、時間とコストがかかる。「差し止め請求権」も、なかなか認められない。

特許庁は、新たに「裁定制度」の構想を出したり、異業種間の交渉のガイドラインの策定を準備したりしている。

しかし、トロール対策ばかりが強調され、悪質な特許侵害企業に関する議論や実態調査はほとんどない。

このままトロール対策に偏重した制度設計が進めば、特許権者の権利が不必要に制限され「特許のただ乗り問題」を助長させかねない。バランスの取れた議論が必要。

 

詳しくは、日経を見てください。

 

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トロールは、だいたいイメージできます。特許権を企業から買い取り、裁判を起こし、その間に交渉をして、ある程度の金額をせしめる会社という理解です。相手方は、製品の販売はしていないので、クロスライセンスができす、どうしても対価が高額になるのが、対応が難しい点とされていました。

 

日本の裁判所は、コストは大したことがないのですが、裁判を提起しても勝てないので、トロールも日本を飛ばして、ドイツ等で裁判を起こすという話がありました。 

nishiny.hatenablog.com

 

一方、豊田さんの話は、確信的(悪質な)特許権侵害企業ということで、 模倣品・海賊版対策の特許版のようなことと理解して、考えてみました。

 

一読しただけでは、確信的(悪質な)特許権侵害企業というもののイメージがつかみにくかったのですが、仰るように、ITなど製品の移り変わりの速い分野では、逃げ切ろうとする企業がいるというのは、事実だと思います。

模倣品対策で言われている、モグラ敲きであるとか、イタチごっこ、という言葉が、この種の特許権侵害企業には当てはまるのだと思います。

 

スタートアップの会社には皆さん優しいですし(実際、影響もないことも多いでしょうし)、外国企業で特定国でのみ活動して日本に入ってこない会社(製品を日本で販売しない会社)の場合はどうすることもできません。

 

ある程度の規模をもって、日本で活動しているが、特許を無視する会社に、特許権者として、差止請求するのは正当な権利行使ですので、それを円滑にできるようにすべきという話だと思いました。

 

私見ですが、このような問題に、対応するには、素早い判断で差止が認められる制度が必要です。

 

外から入ってくるものについては、アメリカのITCの差止のようなものが必要ということになると思います。たぶん、アメリカでも連邦地裁ではなく、行政機関が行っているので、素早い動きが可能だからです。しかし、現在の日本の税関は、著作権、商標権、意匠権など、現在の税関職員が簡単に止められるものはやりますが、特許は難しいと思います。法改正も必要でしょうし、特許庁からの出向とか、弁理士の採用とか、工夫が必要です。

 

もう一つは、国内向けの話ですが、韓国の確認審判制度です。技術的範囲の検討を技術的素養のない裁判官と弁護士がするのは無理です。今回、ロースクールでも、技術の分かる司法試験合格者を増やすという方向をトーンダウンしたように、裁判官や弁護士では無理があります。韓国の制度の方が、良いと思います。

 

この2つを組み合わせると、ある程度、豊田さんのいうものに、対応できると思います。また、特許権者を、バランスの取れているところよりも、少し有利にしたぐらいの方が、経済は発展すると思いますので、日本全体にとっては良いことだと思います。

しかし、これらの実現には、頑強な反対勢力がいそうです。

中国の消費者の変化

シンプル化で、日本製品が人気に

2017年12月9日の朝日新聞に、中国の消費者が「MUJI」ブランドを好むようになっているという紹介がありました。

従来の「派手さ」や「安さ」ではなく、「シンプル」なものを好むように変化してきているという話が出です。

www.asahi.com

事例として、「無印良品」の良品計画のホテルが中国で始まることと、中国の越境EC業で日本の商品が人気であることを挙げています。

 

まず、無印良品ですが、「MUJIホテル」の第1号が2018年1月に深センに開業予定で、2号店は北京に2018年3月に開業する予定のようです。北京のホテルには無印良品の店舗が入るようです。

 

ホテルのコンセプトは、「アンチゴージャス、アンチチープ」

 だそうです。

 

従来、中国の消費者は、派手さを好む「ゴージャス」か、反対に安さを好む「チープ」だったようですが、最近は、消費者の志向は日本に近くなり、デザインが良く、実用的な無印良品は人気で、店舗数も210店まで増えているようです(日本は420店)。

 

「日本学刊」の編集者の陳祥さん曰く、

「2、3年前まで、ぜいたくな物はよいという高級志向があった。だが、本来中国は日本と同じ東アジア文化で、自然で素朴なものを好む」

という発言の紹介があります。

 

 

日本の小売業は中国進出を加速し、2016年の日本の対中投資は減ってきているのですが、卸売り・小売業だけをみると17.2%増と大幅に増加しているそうです。

 

 

中国の越境ECでも、日本の製品が売れており、売れ筋はベビー・マタニティー用品や化粧品、ヘアケア用品などとのことです。

 

「日本の商品は、頼んで1週間で届くので好評だ」

という越境EC事業者の言葉の紹介がありました。

 

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確かに、東洋人はシンプルなものが好きなのだと思います。また、最後にある、中国への地理的な近さは圧倒的に有利です。よって、これから日本のサービス業の対中進出は、大きいに期待されるところです。

日本から見てですが、商標権に関していえば、冒認出願などで、先に権利を取られてしまうこともあるので、できるだけ早く、なるべく丁寧に出願しておくべきでしょう。

 

一方、中国は、日本や欧米の技術を学ぶところから、モノづくりで成功し、技術開発力も相当つけてきました。次は、ブランドを作る時期ということで、中国政府が数年前からブランド育成に力を入れていると聞いています。

 

中国ブランドで、日本でも良く知られているのは、パソコンのlenovo、通信機器のHUAWEI、電池のBYD、テレビなどのHisense、白物家電の美的(Midea)、青島ビールなどですが、最近は、アリババ(スマホ決裁のアリペイなど)、民泊の途家(トゥージア)、自転車シェアのモバイクなどのサービス企業も、日本で、有名になってきました。

そして、最後に、ファッションや小売りや飲食などのサービスが有名になると思われます。中国の飲食店としては、火鍋の小肥羊や、蘭州ラーメン 馬子禄などが日本に入って来ているようです。私は知りませんが、もっと沢山、有名チェーン店などもあると思いますので、徐々に入ってくると思っています。

 

日本からも中国に進出している訳ですので、反対に中国からも日本に向けても進出してもらった方が、刺激があって経済は活性化するはずです。

 

日本も、徐々に、加工貿易国から、技術立国を経て、金融立国(日本で大成功する可能性はそれほど高くないかもしれません)、観光立国(宿泊、レストランなどを含む。国内では成功の可能性が非常に高いと思います)にシフトするようになってきています。

 

 

この点、知財業界なのですが、金融についてはFinTechということで、技術の要素もあるので多少の注目をしていますが、観光産業については、ビジネスモデル的なものはあると思いますが、基本、発明にはなりにくいものが多く、ノーマークです。