Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

マンシングウェアの商標権

一社集約を中止

以前、このブログで紹介した件ですが、動きがあったようです。

マンシングウェアの商標権は、現在、伊藤忠東洋紡デサントの3社共有になっているのを、デサントに一社集約するということで、デサントからリリースがされていたのですが、結局、中止となったというものです。デサントから中止のリリースが出ています。

http://www.descente.co.jp/jp/ir/181214MSW.pdf

 

nishiny.hatenablog.com

とあります。

 

コメント

デサント伊藤忠には、過去から深い関係があるようです。

 

詳細は、2018年11月26日のBusiness Journalに詳しく出ています。

伊藤忠・岡藤会長、デサント恫喝騒動の真相…株価下落時にTOB強行か | ビジネスジャーナル

もともと、デサントが経営不振になったときに、伊藤忠が支援した関係があり、現在では、伊藤忠デサントの株式の29.9%を保有している大株主ということです。

 

デサントには、伊藤忠から社長が派遣されていたところ、創業家の社長が返り咲き、韓国事業の好調で業績は良いようです。デサントは、伊藤忠のコントロールを嫌っているようであり、ワコールと提携したり、独自の動きがあるので、伊藤忠としては面白くなく、トップ会談で詰め寄ったところ、会議のテープが流出する等の問題になり、関係が悪化しているとあります。

 

ハッキリは分かりませんが、今回のマンシングウェアの一社集約の中止も、このようなことが影響しているような感じがします。

 

消費者の目線に触れ、表にでてくるブランドの話しとは違う、企業の裏側の話です。

人間くさい話ですが、欧州のラグジュアリブランドでよくあるように、ファッションブランドには、他の産業に比べて、人間くさい話が多いように思います。

創業者がデザイナー自身であったり、デザインなり、広告なり、人の感性が重要な事業であるため、人にまつわる話が多く出てくるのかなぁと思います。

 

ファッションにも、論理や技術で語る分野もあるだろうとは思いますが、こういう人間くさい話も、ファッションらしいなと思います。

 

ただ、いえるのは、経営陣がこの種の話に大事な時間を取るということは、商品開発等に割く時間が減るということです。

その間にも、ライバルに追い抜かれることを覚悟していなければなりません。

ガソリンスタンドのブランド

出光昭和シェル

2018年12月18日に、出光と昭和シェルの共同のニュースリリースで、昭和シェルとの合併に関する、株式の交換比率が株主総会で承認されたというものがありました。

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1657071

2018年7月10日のリリースで発表されていたことが、前に進んでいるようです。

7月10日のリリースを見ると、次のような記載があります。

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1609344

  • 株式交換の効力発生日は、2019年4月1日
  • トレードネームは、 「出光昭和シェル」 とす る予定。なお、国外でのト レードネムを含め実際の運用については両社で別途協議し決定
  • 既存ブランドの取扱いは、経営統合後の一定期間は、両社の既存ブランドを併用

とあります。

 

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出光と昭和シェルの合併は、出光興産の創業家からクレームがあり、ギクシャクしていたようですが、結論としては、前に向かって動いているようです。

ニュースリリースが、商号のことをトレードネームと表現している点は、日本語と英語で差のないリリースを出すんだろうなという感じがしたのですが、単に、英語を使っただけなのか、どちらにしても、グローバルな事業なんだろうなと思いました。

 

「trade name」を「商号」と訳しますが、「営業上の名称」という方が正確なのかもしれません。

なんとなくなのですが、「trade mark」(営業上の標識・標章)と「trade name」(営業上の名称)には、日本語における差よりも、もう少し、重なった、滲んだものであるように感じています。

 

さて、本題は、統合後の一定期間は、既存のブランドを併用するというところです。

昔は、沢山あった、石油会社のブランドがどんどん減っています。車で道を走っていても、ガソリンスタンドを見つけることが難しくなりましたし、古いカーナビの地図にあるガソリンスタンドが無くなっていることも多く、ガソリンスタンド業界は大変なんだろうなと思います。

 

ENEOSを展開する、JXTGホールディングスのWebサイトを見ると、同社のガソリン販売のシェアは1位で、50%とあります。

エネルギー事業|事業紹介|JXTGホールディングス

そして、リンクが張ってあるJXTGエネルギーのサイトには、

現在は、ENEOSとエッソ・モービル・ゼネラルがあるのですが、「エッソ・モービル・ゼネラル」は2019年7月までに順次「ENEOS」に変わるとあります。

決済ツールご利用状況のご案内|JXTGエネルギー

 

国内1位の50%のシェアのガソリンスタンドが、ENEOS一本になるようです。

 

残る50%を、出光、昭和シェル、コスモで分けているようです。

 

昔は沢山、ガソリンスタンドのブランドがあったのが、2019年7月には、ENEOSと出光(アポロマーク)とシェルとコスモの4つになります。

将来、出光とシェルもブランド統合することになったりすると、3つになってしまいます。

 

おそらく、エッソ・モービル・ゼネラルの場合、エッソとモービルは海外の商標ですので、ブランド使用料が発生していると思います(あるいは、現金ではなく、原油の購入などの義務かもしれません)。これを避けるとENEOSへの統合になります。

 

今回のシェルも同じことが言えるので、出光ブランドになるのか、日本石油(Nisseki)が、ENEOSになったような第三の商標が生まれるのかもしれません。

 

現在は、商号と商標、セットで考えるのが一般的ですが、JXTGホールディングスなど、全く商号と商標は違います。

JXTGでは、事業がやりづらいという(商標にならない)という判断があったんだと思います。

社名は、マーケティングブランディングを無視して決まる時が、往々にしてあります。

 

その後のENEOSの宣伝投入量はすさまじいものがありますので、あれだけのブランドであった、Nissekiも、徐々に記憶からは薄れています。

 

また、出光が強いなら、出光に一元化という方法もありますし、

社名は出光昭和シェルとしているので、反対にグローバルに強い「シェル」のブランドを担ぐ方法もあります。

 

さらには、当面と言っている、2つのブランドの併存を、長く継続するという方法もあります。

 

さて、どうするのかなぁという感じです。

くら寿司の社名変更

「株式会社くらコーポレーション」から「くら寿司株式会社」へ

2018年12月18日のくらコーポレーションニュースリリースで、社名変更の話が出ていました。

http://www.kura-corpo.co.jp/company/ir/kura_pdf/release_pdf/kurair_181218companyname.pdf

 

  • 2019年5月1日に商号(社名)変更
  • 商号変更の理由は、新たな元号を節目として、事業がさらにグローバルに展開していくことをふまえ、海外のお客様にわかりやすい名称とするため「すし」を商号に入れる
  • 名称といたしましては、長年当社の呼称として定着している「くら寿司」を新商号とし、世界に「Kura Sushi」ブランドの浸透を推進
  • くら寿司株式会社(英文:Kura Sushi,Inc.)

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二点、面白いと思いました。

 

一つ目は、新たな元号を節目として、というところです。平成に替わる、新たな元号の変更に、時代の変化を感じとり、そこに今後の成長の機会を感じて、商号(社名)変更するというのは、あまり聞いたことがない話なので、新鮮でした。

時代を感じる感覚にすぐれた経営者しか、こんな発想は出てこないと思いました。普通の会社では、お金のかかる社名変更を、この理由ですることはなかなかできません。

 

二つ目は、より実質的なところでしょうが、グローバル化を見ているということです。同社の歴史を見ていると、昭和52年に堺で一般的な寿司店として開業とあり、平成2年に「株式会社くら寿司」となり、平成7年に「株式会社くらコーポレーション」とあります。

 

(そして、その後、自動廃棄システム、ビッくらポン、タッチで注文、鮮度くん、すし屋のラーメン、すし屋のカレーと技術革新やアイディアが満載の事業をしています。)

 

海外には、台北、カリフォルニア、テキサス、台中にお店があるようです。

 

現在の英語社名は、「Kura Corporation」であり、日本語と英語はどちらも、発音が「くらこーぽれーしょん」ですが、今後は、日本語は「くら寿司株式会社」で、英語は「Kura Sushi, Inc.」となるとあります。「Corporation」より、「Inc.」の方が短くて良いというところでしょうか。

 

通常、ある業態で成功を収めると、別の業態に進出して、多角化をして、経営を安定させようと考えます。吉野家でさえ、はなまるうどんや、京樽、すてーきのどん、フォルクスなどのブランドを経営しています。

 

くら寿司と、「寿司」の名前を持った会社が、寿司店以外をすることは自由ですし、子会社形式での保有なら、何らの問題もありません。

今回は、あえて「寿司」を入れることで、海外に打って出るという姿勢を示すという面白い戦略だと思いました。

2020年の東京オリンピックパラリンピック、その後の2025年の大阪万博と、日本は観光立国として成功しそうな感じです。日本の文化を世界の人々が体験することになり、日本のサービス業が世界に出る良いタイミングですので、非常に時期を得た、社名変更ではないかと思いました。

 

くら寿司のようなお店になると、初期投資に相当資本が必要なので、コンビニやコーヒショップのように、フランチャイズというよりは、直営になるのだと思います。

海外展開しているようですので、海外で仕事ができると思って、入社する優秀な若い社員が増えるのではないかと思いますし、投資家や金融機関の支援も得やすくなるのではないでしょうか。

中国商標出願の実務分析

HFGの李 蕾弁護士、蘇斌商標代理人の論文

2018年12月号のパテントに中国で、マドプロ出願するべきか、直接出願すべきかを中心に、日本の出願人向けに書かれた論文がありました。

HFG LAW & INTELLECTUAL PROPERTYの李 蕾弁護士、蘇 斌商標代理人の論文です。

 

さて、内容ですが、

  • 2017年の中国の商標出願件数は、574.8万件(前年比55.72%増)、16年連続で世界一
  • 直接出願が、553.9万件(96.36%)
  • 中国を指定国とする国際登録は、6.7万件
  • 日本人の中国出願は、外国人ではアメリカに次いで多く、20,387件
  • 内、直接出願が16,846件、マドプロ出願が3,541件
  • 中国で多い出願分類は、35類(ビジネスサービス)、25類(アパレル)、9類(計器・装置)、30類(食品)、43類(飲食、宿泊)
  • 外国人が中国に出すのは、9類、35類、3類(化粧品及び洗濯用品)、25類、5類(医薬品)
  • アメリカ、日本、韓国、イギリスからは、直接出願が多い
  • 欧州のドイツ、フランス、スイス、イタリアからは、マドプロが多い

以下、直接とマドプロの利害得失ですが、直接:マドプロで

  • 審査期間ー9ヶ月:18ヶ月
  • 指定商品の記載ー中国の標準基準のみ:国際基準
  • 権利行使ー商標登録証を示せば足る:国際的な商標登録証では不足であり中国で「商標登録証明書」を取得する必要がある(ただし、指定商品が英語なので、裁判では問題ないが、行政摘発では商標登録証明書では不十分な時がある?)
  • 審判請求:15日:30日(計算はややこしい)

論文の結論では、

  • 中国直接出願のメリット:審査期間が短い、国内出願は不要、セントラルアタックがない、商標登録証がある
  • マドプロのメリット:手続きが便利、費用が安い、権利化後の管理が容易

出願戦略としては、

  • 中国直接出願を奨めるのは、中国での実際の商業的使用がある場合(デパート、電子商取引プラットフォームへの出店)、権利行使の可能性がある場合など
  • マドプロを奨めるのは、出願国が多い場合、出願目的が実際の商業的使用ではなく、幅広い範囲での保護を受けるため

とあります。

客観的な立場で、読みやすまとめられているので、正確なところは、是非、論文をご確認ください。

 

コメント

HFG事務所ですが、昨年、弁理士会の貿易円滑化対策委員会の主催の研修会で、来日され、事務所近くのニッショーホールで話を聞いた事務所です。李蕾弁護士の名前は覚えていました。

講演会の内容もありますが、当日、HFGが作成した、中国の1年間の判例や異議事件をまとめた、写真を多用した冊子をもらったので、記憶が鮮明にあります。

買えば、1000円~2000円しそうな冊子です。日本に積極的に売り込みをかけてきているのだと思いました。

この論文のそのための物だと思いますが、内容は、丁寧だと思いました。

 

マドプロのデメリットで、権利行使時に障害があるというのは、20年前に、マドプロが始まった当初は良く云われていたのですが、今でも、言われていることは驚きです。

その理由が、権利行使時に「商標登録証明書」を個別にもらう必要があるのは、仕方ないとしても、その指定商品の記載が、英語なので、地方の行政官は、読めない、あるいは、読めるけれども、地方保護主義の影響で読めないと主張する、ということのようですが、インターネットで翻訳のハードルが下がった時代に、それは言えないのではないかと思います。

 

先日、アフリカの代理人にあったときに、アフリカではマドプロを奨めていない国があると言っており、昔の中国のようなだなと思ったのですが、今の中国でも、この説明がされるときがあるというのは、驚きました。

 

マドプロで、何もないときは、中国の代理人に仕事が入りませんので、どこの国の代理人もマドプロには積極的ではありませんが、企業のことを考え、パリ条約のもともとの理想を考えると、マドプロ頑張れと云いたくなります。(木棚先生の国際工業所有権法の研究に詳しく出ています) 

国際工業所有権法の研究

国際工業所有権法の研究

 

 

欧州のドイツ、フランス、イタリアは、中国でもマドプロを活用しています。国際登録の伝統の違いがこのあたりに出ているようです。

 

面白いは、直接出願が良いという理由に、従来の行政摘発の便に加えて、「中国での実際の商業的使用がある場合(デパート、電子商取引プラットフォームへの出店)」が出てきている点です。

確かに、ECモールでは、商標登録証を呈示することが多いようですが、商標登録証明書でも十分なような気がします。インターネット企業こそ、英語が使えるように思いました。

インターネット上の模倣品対策(その2)

ECサイトを通じた各国での拡散

パテントの「スポーツと知財」の続きです。本日、読んだのは、ヨネックスの法務部知的財産課の弁理士さんの「模倣品撲滅への取り組み」というタイトルの論文です。

ヨネックスの会社の説明、事業の説明、代表的な技術(ブランド)の説明、模倣品対策の説明と続きます。気になったところをピックアップすると次のようなところです。

 

ヨネックスといえば、バトミントンです。バトミントンは、中国およびアセアン諸国で非常に人気があり、インドネシアやマレーシアでは国技であり、ブルネイでは王室や大臣などがバトミントンの愛好家のようです。

 

模倣品対策では、真贋鑑定が容易になるように、ヨネックスでは特殊な技術で製造されたシールおよびラベル「真贋判定シール」「真贋判定ラベル」を採用し、特定のビューアをかざすことでそのシールの見え方が変わるもので、単にラベルの外見を真似ただけのシールを簡単に識別できるとします。

各国の模倣品取締担当者などにも好評で、ビューアを欺くものはまだ出ていないそうです。

 

さて、この論文でも、特に面白いと思ったのは、後半のインターネット上の対策です。

 

積極的な対策が功を奏して、すでに中国では、リアルな店舗で、ヨネックスの模倣品を見かけることは少なくなり、代わりに、インターネットのECサイトにシフトしているとあります。

中国では、大手以外のECサイトが活況を呈しており、これから関係を作る必要があるのと、SNSを介した販売があり、会員制のグループチャットで模倣品の売買があるそうです。

 

そして、これらの販売サイトから、中国以外の国へ模倣品が拡散しているそうです。同社は、アセアン諸国で人気があり、そちらに出回っているとあります。

模倣品対策も、制度が異なり、税関登録一つとっても、制度の有無、登録要件、効果に大きな差があり、日本のように行き届いた税関の対応は期待できないのが実情とします。

また、アセアンのECサイトも勢いがあるそうです。

 

中国中心の時代から、各国の調査会社、代理人の協力を得る時代になっており、JETRO知財協の協力が重要としています。

 

コメント

インターネット販売を通じて、日本にも沢山の模倣品が流入してきているのが問題だと思っていました。先日、A社で購入したmicro SDカードは、サイトで見た時は、ブランドがあったのに、実際に送られてきたものはブランドがなく、A社に電話したのですが、送り返せば返金するということでした。

その会社の知財の方を知っていたので、見てもらったところ、模倣品とのことでした。最大手のA社でさえ、模倣品は沢山出ているんだなと実感しました。

 

この論文を読んでいて、インターネットの普及は、日本のみならず、海外でも影響が出ているということを改めて理解しました。

当然と言えば当然です。これだけ流通機構がしっかりしている日本でも、ネット上には模倣品が溢れているのですから、海外ならもっとありそうです。

 

ブランドが人気のある地域で、模倣品が出るのは当然です。バトミントンの人気の高いアセアン諸国に、製造国である中国からの模倣品が流入し、その対策を取る必要があるというのは、良く分かります。

 

模倣品対策は、企業が現地の調査会社や弁護士、行政機関と直接仕事をすることが多く、弁理士が参画できていない部分です。

 

一番大きな障害は、スピードです。書類を中心に、数か月の期限がある期限ものになれた弁理士のスピード感と、一日、一時間をあらそう模倣品対策のスピードの違いがあるように思います。

 

税関登録ぐらいは問題ないとして、税関で模倣品が発見された後のフォローが、特許事務所の時間軸とは異なります。

チャット的に、e-mailを使用し、CCに企業の人を入れて、企業の一員のように動くことは可能なのですが、これをやると、日常業務ができなくなるので、特許事務所は積極的にならないのだろうと思います。

しかし、対庁の手続きだけで、このようなビビッドな仕事をしないのは、弁理士の姿勢としては、問題があるように思います。奈良の大仏商法と同じです。

 

また、税関登録も、日本の事務所を経由すると、その費用がかかるので、どうせ英語でやるんだからと、企業は直接、各国の調査会社や代理人に頼むことになりそうです。

ただし、このあたり、企業の模倣品対策の方も、働き方改革で時間がないので、税関登録とその後の対応などを中心に、特許事務所が切り込むチャンスがあるように思います。

 

インターネット上の模倣品対策

モール型サイト、個別サイト、オークションサイト、SNS

昨日に続き、2018年12月号のパテントの「スポーツと知財」特集を読んでいます。ミズノの法務部の弁理士さんが、「スポーツ用品メーカーにおける模倣品対策」をまとめて書いておられます。

前半は、工場・倉庫、小売店、侵害訴訟、税関水際取締というような、なじみのあるものですが、後半にインターネット上の対策をまとめて書いておられるところが、有益だと思いました。

具体的には、

  • モール型ECサイト
  • 個別の販売サイト・偽サイト
  • オークションサイト
  • SNS

についてです。

 

まず、モール型ECサイトですが、Amazon楽天、ヤフーショッピングなどをいうようです。海外にも中国のTaobaoなどがあります。

偽造品販売サイトの検出から削除申請までワンストップで行う外部の専門企業があるとのことです。

ミズノでは、年10,000件ぐらいの件数を削除申請しているとのことです。非常に多いと思います。

 

個別の販売サイト・偽サイトについては、主に消費者からの問い合わせで発することが多く、フィッシングサイトも存在するとあります。

クレジットカードが使えるサイトであれば、クレジットカード会社に返金を求め、クレジットカード会社が求償したり、取引停止にすることで、被害拡大を防止する方法があるようです。

また、警察経由でAPWGという機関から、セキュリティソフト会社やウェブブラウザの会社に通報してもらう手法があるようです。

 

オークションサイトは、中古なら問題ないのですが、偽造品が出ており、削除申請をするようです。ただ、悪質な場合は、警察と連携するとあります。

 

SNSは、偽造品販売の連絡先やURLを掲載するとあり、大手のSNSに記事やアカウントの削除申請をするとあります。

 

コメント

ミズノの法務部の方は、模倣品と呼ばずに、「偽造品」と呼んでおられます。

あまり偽造品という言葉は、聞かないので、興味を持ちました。

 

経産省のWebサイトには、模倣品、海賊版について、次の定義があります。

被害に遭ったら -権利侵害とは(METI/経済産業省)

模倣品とは、特許権実用新案権意匠権、商標権を侵害する製品のことを言います。例えば、有名ブランドのマークを真似したマークを付けたバッグなどがあります。

海賊版とは、著作権著作隣接権を侵害する製品のことを言います。例えば、日本のアニメーションが海外で無断で複製され、販売されていることなどがあります。

 まあ、そうだなと思います。

 

模倣品という言葉には、コピーすることで人類は発展してきており、コピーすること自体は悪ではなく、他人の商標権・意匠権などのを侵害することが問題であり、それは責められるべきことというような、対象を客観視しようという意識があるように思います。

偽物≒偽造品の方が、より一般的な言葉であり、特実意匠と著作権の双方を包含するようなニュアンスと、より直接的に他人の物に見せかけて悪いことをしているというニュアンスがあるように思います。

また、インターネット上の模倣品対策では、どうも、偽造品という言葉を良く使うようです。

 

Webで英語を検索すると、模倣品はCounterfeit goodsとあり、海賊版はPirate edition、Bootleg(音楽関係の海賊版)、Copy catとあります。偽造品は、fake goodsでしょうか。

 

さて、本題にもどって、モール型ECサイトの削除申請を年10,000件やっているという点は、驚きました。全世界の件数でしょうか。

200日稼働日とすると、一日50件ペースです。もし、社内でこれをするなら、これだけで、一つの課が必要です。

外部機関を使っているのだと思いますが、大変です。

 

良く知りませんが、仮に、一件1万円で削除申請できるとしても、ネットのEC型モールの削除申請だけで、1億円の費用がかかります。

模倣対策も、一つの産業になって来ているんだなと思います。

検索や削除申請にロボットでも入れて、自動化しているのでしょうか?

 

経産省のサイトには、経産省への相談件数が、数百件とありますが、現実の動きは、一企業で1万件という数字のようです。ミズノは特別に多いのだと思いますが、日本企業全部足すと、一体どのぐらいの数字になるのでしょうか?

 

パテントの「スポーツと知財」特集

アシックスの知財部長の論文

2018年12月号の「パテント」に、アシックスの齊藤部長の論文が掲載されていました。

まだ、Web上に公開されていないかもしれませんが、数か月の内にはネット上で入手が可能になりますので、是非、読んでもらえればと思います。

 

アシックスでは、このような知財面でのPRにも力を入れており、各種講演会にも頻繁に出ておらるようです。

ブランド作りのために、知財部長が率先して、やっておられる良い事例ではないかと思います。

 

さて、論文は、

  1. アシックスの歴史
  2. アシックスの知的財産
  3. アシックスの知的財産部門
  4. グローバル化への対応
  5. ブランド保護活動
  6. スポーツを支えるアシックス知財の取り組み

などとなっています。

パテントという雑誌の特性(対象が弁理士さんや知財関係者)から、知財業界の人に、広くアシックスそのもの、アシックスの知財(特許、意匠、商標など)を理解してもらい、更に最近手掛けている、グローバル化対応、ブランド保護活動などを説明するという構成です。

 

約1年ほど前に、商標協会の講演では、特に、5.ブランド保護活動を中心にお聞きしましたが、今回の論文はそれ以外の部分を充実されている感じです。

以前の講演のときの感想は、次です。 

nishiny.hatenablog.com

 

今回、論文を読んで、個人的に面白いとおもったのは、次のような4.以降の後半部分ですが、特に、グローバル化対応の部分です。

  • 社内外での、知財活動のアピールを重視
  • 難しい知財用語を咀嚼して、受け取り手の目線でコニュニケーション
  • グローバル化で、販促媒体が英語ベースに
  • デジタル化で、媒体の入れ替えが早くなる
  • 知財チェックは、ボリュームとスピードの時代に
  • 声のかかる知財部門を目指した、知財教育
  • 経営幹部にも、模倣品を第1世代、第2世代、第3世代に分けて、分かりやすく説明し、理解を得た
  • スポンサーシップでは、ブランドロゴの露出を効果的、印象的になることが重要。これには、事前の知財チェック
  • 社外の知財サービスの活用。社内は社内でしかできないことにフォーカス(調査、分析、企画、提案)
  • スタッフへの社内外でのプレゼン機会提供。自信をもつ

 

コメント

模倣品は、昨年お聞きしたことと変化はないようです。

上に赤字で書いた、グローバル化、デジタル化で、販促物等を海外ですることが多くなり、その更新頻度があがり、それに対応しないといけないというのは、面白い話だと思いました。

 

海外のことは海外に任せていると、収拾がつかなくなります。Black Boxの塊になってしまいます。

一方、海外のこともすべて日本の事業部門から知財部門に相談が上がってくるようにすると、中間に入る人がいるため、時間やコストがかかります。

具体的にアシックスがどのようなことをやっているか良くは分かりませんが、海外で生まれる販促物等の知財チェックを、現場まかせではなく本社の知財部門が積極的に関与しつつ、ボリュームのある調査量を、スピーディに対応していくというのは、面白い取り組みだなと思いました。

 

商標の予算を本社知財が持っていることがポイントになるのか、本社知財の卓越した知識・見識がポイントになるのか、良くは分かりませんが、海外の現場とのコミュニケーションの取り方が重要だろうと思いました。