2つの記事から考えると
2020年7月22日の朝日新聞に、大文字「Black」の記事があります。アメリカでは、「人種や民族、文化的意味合いで用いる場合は大文字のBlackを使う」という記事です。
- AP通信、USAトゥデー、ニューヨーク・タイムズが決定
- 小文字は「黒」の色を示すに過ぎないが、大文字なら固有名詞
- 大文字には、アフリカから奴隷として強制的米国に連れてこられた後、独自の文化を育んだ文化を認める意味
- 「アフリカ系米国人(African American)」では、カリブ諸国出身の黒人など、アフリカ系と自認していない人が入らない。「ブラック」が良いかは黒人でも評価が二分
- 白人の「white」も大文字にすべきという意見はある。しかし、白人至上主義者が大文字の「White」を使っている。ニューヨーク・タイムズは「Wihte」は使用せず
- 日本語では「Black」と「black」の区別を表現するのは難しい。「黒人」とするしかない
一方、2020年8月3日の朝日新聞には、日本語の「ブラック企業」という言葉の使い方についての記事があります。
- ニューヨークから日本に移住した黒人作家が悲嘆の声
- 英語で「ブラックビジネス」というと、黒人社会のために黒人などが営む事業の意味
- 違法で悪質な企業という意味はない
- 良い会社を「ホワイト企業」という動き
- 「黒=悪」「白=善」のイメージの新しい造語が広がることに疑問の声
- 「ブラック企業」は00年代後半から使用
- 2013年に新語・流行語大賞。新聞なども使用。広辞苑にも掲載
- 日本語では「腹黒い」など、黒を否定的に使う傾向
- 「ブラック」「黒」に悪いレッテルを貼るのは、やめた方が良い
- 「問題企業」というべき
というような内容です。
コメント
前半の記事は、ニューヨークの駐在の記者のもので、現地で話題になっていることの紹介のようです。一方、後半の記事は過去に米国駐在経験のある記者の記事です。
特に、後半の記事は考えさせられるものでした。「ブラック(企業)」などという言葉を聞いて不快感を持つ人がいるというのは、気がつきませんでした。
特に気にせずに「ブラック企業」と使っていましたし、「ホワイト国」「グレー国」などの区別もあります。
後半の記事は特殊浴場を指す言葉であった「トルコ風呂」がトルコ人留学生が政治家に訴えて改称された例と、欧米の大手化粧品会社は、差別につながるとして「美白」にあたる言葉をブランド名から消す動きがあるという紹介しています。
日本語の中に、「黒=悪」「白=善」がり、白黒をつけるという言葉があるのであり、これを変えるのは無理があります。英語にも「ブラックリスト」という言葉はあるとありです。
おそらく、黒人の方も、ここまで変えろとは言わないと思います。
問題はカタカナの「ブラック」を冠した一連の、新語・造語です。
「問題企業」という解決案は示していますが、「問題企業」では労働条件が劣悪であるので問題なのか、不祥事を起こしたので問題なのか、収益が悪いので問題なのか、不明です。ネーミングの力が試されているような気がします。
これは、「社会的ネーミング」ですね。世の中にはネーミングの専門家は沢山いると思いますが、しっくりくる、いいネーミングつくれないものでしょうか。これを解決できたら、ネーミング大賞ものですね。
あの時のトルコ人留学生は、相当に勇気のある人ですね。それまでも嫌だなと思っていたトルコ人は多いだろうとおもいますが、言い出しにくい話題であり、勇気をもって主張したのだと思いました。