上級国民/下級国民
橘玲著、小学館新書の「上級国民/下級国民」を読んでみました。
内容ですが、3つに大きく分かれます。
1.日本国内の話
2.男性と女性の話
3.グローバルな話
特に、印象に残ったのは、3.のグローバルな話でしょうか。
近代後期は、知識社会化・リベラル化・グローバル化が進み、現代社会は洋の東西を問わず、自由を追求する社会になっているそうです。
リベラル=自由を追求=他人に迷惑をかけなければ何をやっても良い=自己責任
そして、一部の人に富が集中する現象が各国で起こっており、新上流階級ができあがり、一方、従来中流であった人が新下流階級になる現象が世界的に起こているようです。
例えば、アメリカでは、
- 最富裕の上位400人が所有する富が、下位50%の富の合計を上回る
- 上位1%が個人資産の42%を所有
- 下位50%が所有する富の割合は1%
と両極に集まっています。
アメリカでは、新下流階級階級の人(プアホワイト)は、その不満のはけ口をマイノリティの黒人やヒスパニックに向けています。
対するリベラルは主に白人で、白人同士が分断されているというのが、現在のアメリカであり、トランプ政権の存在理由であるとあります。
日本の話については、団塊の世代への配慮が就職氷河期を生んだことや、団塊の世代の退職によって漸く働き方改革が進みだしたが、年金改革は団塊の世代が存在する限り進まないという指摘がありました。
男女の話は、現代社会は事実上の一夫多妻制度という指摘などがありました。
コメント
タイトルの印象からすると、ルポルタージュのようなもので、社会で実際に発生している出来事を記載している本なのかなと思ったのですが、内容的には文明評論のような本でした。
タイトルは、本を手に取ってもらうためのものではありますが、ちょっとイメージが違いました。
新書本であり、短いので1日ぐらいで読めるのですが、ネット系の話、海外の話、学問的な話、時事ネタなど、話があちこちと飛ぶのでついていくのが大変です。
読む人が読むと、より深く理解できるでしょうし、あるいは反対に論理矛盾を指摘できたりするのでしょうが、私としては、現代社会を見るときの視点にはなるように思いました。
戦後、自由を手にしてしまった世界の人間は、もう自由のない世界には戻れず、ますます、自由=自己責任の世界に入っていくが、ここで勝ち残れるのは、上位の極僅かな人であり、ほとんどの人はプア層になる感じです。
トランプ大統領の登場やブリグジットも歴史の必然なんだなという感じを受けました。
本当は、処方箋のようなものが欲しいところですが、所得の再配分のベーシックインカムも困難と結論付けているので、何か救いがないなというのが、読後の感想です。