Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

やせるおかず(の)作りおき

スピード解決

2017年6月13日の日本テレビのニュースで、小学館の「やせるおかず作りおき」と新星出版社の「やせるおかずの作りおき」という本が争いになり、小学館から販売中止を申し入れていることを知りました。

www.news24.jp

ポイントは次のようなものです。

  • 表紙の写真や文字の配置、色使いなどが極めて似ている
  • 9日付で販売中止を申し入れた
  • 2つの本は、同じ業者がデザインを担当している

すでにスピード解決(販売停止)しており、6月14日には、小学館のホームページに、解決内容を説明したニュースリリースも出ています。 

www.shogakukan.co.jp

 

コメント

本のタイトルと、表紙デザインの双方が酷似している話です。

今回の話は、表紙のデザインを担当した会社が同じということです。デザインは、確かに似ています。

 

言いたかったのは、本のタイトルの件です。

一般に、本のタイトルは、商標法では保護される商標ではなく、そうかといって、著作権法で保護される創作物でもないうというやっかいなものです。

今回の本のタイトルでは、非常に一般的なことを記述しただけなので商標法でも保護されず、表現も俳句ほどの創作性もないので著作権でも保護はないと思います。

表紙デザインと本のタイトルとコンテンツがセットになったとき、不正競争行為になって、不正競争防止法違反となるといったところでしょうか。

 

以前も書いたかもしれないのですが、従来は、雑誌のような定期刊行物だけが商標法の保護があり、単行本、新書本、文庫本などのいわゆる本は、記述的であり、識別力はなく保護しないとしていました。

この点、昨年、識別力についての商標審査基準が改正され、本や映画のタイトルも、①シリーズものになって、②出所表示機能を発揮しているときは、保護されると変わっています。

アメリカなどは、以前からこの考え方でした。アメリカの映画会社のタイトルと同じ名称の商標の件で、大変な目にあったことがあるので、やっと日本も同じ基準になったかと思った点です。日本人は、日本の商標審査基準をベースに考えるので、このあたりグローバルベースの考え方になったのは、良いことだと思いました。

今回は、シリーズものということではないと思いますので、小学館の本のタイトルが、商標法で保護されたということではありません。

 

さて、もう一点、面白いのは、スピード解決です。どうも、小学館は、警告をしたこと自体を公開していて、それがテレビやネットのニュースにもなり、スピード解決を後押しています。

この種の話は、特許紛争とは違い、時間をかけても意味がありません。そのための仮処分の制度もありますが、とにかく出版停止をしてもらい、被害拡大防止をすることが大切ですので、今回の小学館の動きは、鮮やかだと感心しました。