Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「オンキョー」ホームAVの事業売却

これからどうなる?

2021年4月30日の日経(夕刊)に、オンキョーがホームAV事業をシャープ、米ボックス社などに、売却する方針という記事がありした。

オンキヨー、ホームAV事業売却へ シャープなどと協議: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • ホームAV事業は連結売上高の大半を占める主力事業
  • 売却後も「ONKYO」ブランドは残る方向
  • 5月20日まで詳細を詰める

 

関連で、2021年4月1日の日経電子版に、上場廃止に至るまでの、これまでの経緯を説明した記事がありました。

名門オンキヨー、上場廃止へ 「市場」対応で後手に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • ホームAV事業の譲渡先が、二転三転している
  • ニコンポ市場が消滅しているという
  • 家電量販店の話としてオンキョーの製品が入ってこないという話の紹介

 

コメント

2021年4月1日の記事を見ると、資金調達がうまく行かなかったことがよくわかります。しかし、そもそもの問題は、ミニコンポの市場消滅が一番の問題のようです。

 

コロナ禍もマイナスに影響しているようです。PCやコンピュータ周辺機器はリモートワークで、また、生活家電は巣ごもり生活のために、コロナ禍の中でも需要が伸びています。しかし、ホームオーディオへの関心は低かったようです。

 

オーディオが再生するには、日本の住宅の防音性能があがる必要があります。マンションで隣人への迷惑を考えると、あまり大きな音ではかけられず、そうなるとテレビやPCのスピーカーや、ヘッドホン、イヤホンで十分ということになります。

なぜ、オーディオが売れないのかという原因は、いろいろあるんだろうと思いますが、急によくなる感じはしません。

 

さて、オンキョーブランドを、シャープなどが引き継ぐとしても、おそらく、商標権は、オンキョー側に残しておくと思います。

 

商標権の移転は事業の移転がなくてもできますし、ライセンス制度もありますので、法的には問題ないとわかっていても、奇妙な感じはします。

米国法なら、ライセンス時には、品質管理(Quality Control)の義務があり、品質管理をやっていない場合は、商標登録自体が無効になるという法理(Naked Lisence)があるので、一定の歯止めになっていますが、日本法は全く何もなく、当事者に任せれています。

 

ある程度の収益があり、ライセンス料を支払える事業であれば、ライセンス料の範囲で品質管理をするということもできますが、もうからないような事業なら、ライセンス料も期待できません。

PhilipsやGEが認知を獲得するための手段として、家電のライセンスビジネス化を進めていますが、それは、双方の本業がしっかりしてからできるのであって、この2社には、品質管理をする余力があります。

 

ビジネス上は、日本法よりも、アメリカ法が優先されているので、もし仮に、オンキョーに、品質管理する余力がないなら、いっそ、商標権ごと譲渡した方が筋は良いのかもしれません。

 

また、パイオニアの商標を考えるのはパイオニアの方ですが、同じようなことが言えると思います。しかし、こちらは、パイオニアの既存事業との関係があり、簡単に譲渡はできないと思います。