Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

無印良品とカインズの知財高裁判決

無印勝訴

2018年3月30日の日経に、無印良品(株式会社良品計画)とカインズの組み立て式の棚をめぐる訴訟の二審判決の記事がありました。

二審もカインズが負けたようです。

www.nikkei.com

  • 2018年3月29日に知的財産高裁で、無印良品良品計画が、カインズに販売差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決
  • 販売差し止めと商品の廃棄を命じた一審・東京地裁判決を支持
  • カインズ側の控訴を棄却
  • カインズ側は、消費者を対象にした独自調査をもとに、棚の形状はありふれていると主張
  • 機能上、支柱の構造なども似てしまうと訴えた
  • 知財高裁は、良品計画の棚のような構造を採用しなくても棚は製造できるなどとして退けた
  • 一、二審判決によると、良品計画の棚は累積で70万台を販売
  • カインズの棚は現在は販売中止

とあります。

 

コメント

一審の判決を今やっと見ているところです。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/056/087056_hanrei.pdf

一審は、不正競争防止法2条1項1号違反を認定し、カインズ敗訴としています。差止と廃棄であり、損害賠償がありません。

 

二審はまだ、知財高裁の裁判例検索では出てきていません。

 

一審判決が出た2017年8月31日の時は、良品計画は判決当日に、ニュースリリースで勝訴を伝え、反対にカインズは、2018年9月2日に控訴をするとニュースリリースを出していましたが、今回は無印良品は今のところリリースを出していません。すでに、ニュース価値はないということなのでしょうか。

 

判決の法的な話もありますが、論点としては、意匠調査があると思いました。意匠出願をして、意匠権になると意匠公報に掲載されます。当業者なら、自分の業務に関係する意匠公報を入手し、職場で回覧等しますので、ズバリ同一などは発生しないことが多いと思います。

今回は、意匠出願されておらず、不競法違反という主張です。それは現行の不正競争防止法ではあたり前の判断ということなのでしょうが、それでは、先行意匠調査をどうするのかという問題になります。

 

法的紛争になってから、日本デザイン保護協会などに意匠公知資料の調査を依頼することはあるでしょうし、J-PlatPatでも、全くできないことはないのですが、著作権の壁があるのか、蓄積情報が十分ではありません。

そうなると、意匠公知調査が当業者の経験と勘に頼ることになります。

カインズの生産委託先のデザイナーが、先行意匠調査や、意匠公知調査をちゃんとやっていたのかどうかは、不明ですが、意匠制度が十分利用されていない(機能不全である)ことから、意匠調査だけでは十分ではなく、意匠公知調査は情報的、コスト的に難しい構造であるということであれば、この点は、なんとかならないものかと思います。

 

商標の場合、登録も調査も精度が高く、使用実績の有無もインターネットで簡易検索可能ですので、このような事案が起こる確率が低いと思います。

 

もう一つ、J-PlatPatで、良品計画名義の意匠権を調べてみました。最近は、棚も意匠出願をしているようです。調査という意味では、侵害事件で裁判までする程度の重要意匠なら、意匠出願ぐらいは出しておいて欲しいところです。

 

制度や施策の欠陥があるように思いました。