Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

読んでみました

コカ・コーラ その資本・戦略・体制(ダイヤモンド)

アメリカのブランドライセンスの話で良く出てくる、コカ・コーラの本を図書館で見つけたので、読んでみました。

昭和43年の本で、古いのですが、ダイヤモンド社の「世界の企業物語」の一つです。

ファンタがでるまで、70年間、コカ・コーラを売り続けたとあります。

コカ・コーラの発展は、フランチャイズ制とルート・セールスが、重要とあります。

 

フランチャイズ

同社は原液を販売し、許可した企業にのみボトリングを認めるというのが、フランチャイズ制です。これで工場建設等で資金的に無理をせずに、販売地域の博大が可能になります。

卸を通さず、地域を分割するので、卸が同じ小売店を食い合うという関係性には立たず、ボトラー同士が、助け合う関係になるとあります。

フランチャイジーボトラーは、地元の有力企業や資本家に限られ、高等教育を受け、従業員と進歩的な関係にあり、闘志・戦略があり、規模の拡大にも耐えうる人物と極めて厳しく審査されます。5年間の審査があるとあります。

当時は、日本全国に16のボトラーがありますが、このボトラーは米国の資本の入った日本コカ・コーラと資本関係はゼロとあります。

 

ルート・セールス

販売は、ボトラーが担当し、ルート・セールスは営業、販促、配送、集金と複数の役割をもち、赤い車、茶色のユニフォーム、緑の瓶、黄色の木箱で、動く広告塔でもあります。

 

<その他>

原液ビジネス

原液の量は、1%弱であり、あとは、水、炭酸、砂糖、香料とあります。原液以外は基本は現地調達で、特に海外では、原液も、96%は現地調達品であり、アメリカからの輸出品(コンセントレート)は、ほんのわずかとあります。

原液の処方箋を保有するのは、社長と技術担当重役の二人だけで、処方箋(フォームミュラ)を二つに分けて別々に所持しているとされます

 

コカ・コーラの瓶

緑の瓶は、瓶の会社から売り込みがあったもので、当時流行のスカートを参考にしたものとあります。デザイン的にも、持ちやすさなどの構造的にも優れたものとあります。

権利は最終的に買い取ったようです。

 

海外展開

海外展開は、コカ・コーラ・エクスポート・コーポレーションが担当し、当時、世界に20数か国に子会社があり、それぞれの国にボトリング会社があるとします。

 

コカ・コーラが世界に広がった理由に、米軍の派遣があるようです。兵士はコカ・コーラに、瞬間の平和を感じ、国防省もそれを認め、米軍の拡大でコカ・コーラが世界に広まったとあります。

 

歴代経営者

ベンバートン博士

コカ・コーラの開発者。当初は、強壮剤として薬と考えていたようです。水で薄めて飲むのですが、たまたま水がなく、ソーダで割ったところ良く効いた。そのため、ソーダファウンテンに原液を販売。しかし、商売は上手くいかなかったとあります。博士は、今でも顕彰されています。

 

キャンドラー

権利を買い取った初代社長。コカ・コーラは薬ではないと明確にした。許可した相手だけに販売するフランチャイズ制を導入。ルートセールスを発案とあります。

 

ウッドラフ

経営理念を導入。海外展開。「いつでも、どこでも、コカ・コーラを手の届くところにおく」。このビジョンにより、世界中に配給網を整備。自動販売機の設置もこの延長上。

また、「コカ・コーラは、この飲料に関連するすべての人々とともに、その利益を分かち合う」としたとあります。

 

広告

・広告費は、コカ・コーラ本社が一部負担するという条件で、ボトラーに協賛を呼び掛け、統一的な全国的な広告活動を展開する

・繰り返しの哲学

・積極的な工場見学(マーケティングの一環)

・「広告には、上品さが必要である。それは、楽しくひかえめで、すがすがしいものでなければならない。たとえすこしでも押し付けがましいところがあってはならない。人から好かれ愛されるような態度、広告にはそのような心ががけが出なければならない」

・キャッチフレーズは、何年も使用する。少なくとも、4、5年10年ぐらいの間。消費者に印象付ける。限界に達したと判断すると、思い切りよく表現を変える

基本は、Refresh(日本語では「さわやか」)であり、これは聖書のマタイ伝から取った言葉

・広告活動は、日本コカ・コーラが厳しく審査する。各ボトラーは、トレードマークを使用するPR活動に限っては、勝手はできない

・コーク(Coke)という言葉は、世間が言い出した愛称。法廷闘争の末、自社の権利にした

・社会貢献活動は、積極的ですが、陰徳としてあまり公表したがらない

 

研修

・会議の持ち方、運転の仕方、小売店での対応方法など

・リバイタライズ(店頭の汚れをとるなど)

 

コメント

最近は、フランチャイジーの合併等があったり、沢山の新製品が出たりしているのでしょうが、同社の基本的なところは、良く理解できました。

 

原液などを媒介にした商標ライセンス(フランチャイズ)と、宣伝によるコントロールのモデルですね。

 

単なる「Coca-Cola」商標のライセンスでは、品質確保は十分できません。ソフトドリンクにとって一番重要な原液を抑えている点が、品質確保のスタートになります。

当然、その他の製造上の品質基準も重要ですし、瓶や車やユニフォームのデザインも重要な項目となりますが、原液とCoca-Colaの商標権という、2つの首根っこを押さえている点が、ポイントです。

 

あとは、広告です。ボトラーの費用と本社の費用を足して宣伝費にするという点も面白い記述だと思いました。ただ、マス宣伝の制作などは、本社に一元化していると思います。

当時は、コカ・コーラの広告代理店は、マッキャン・エリクソンで、日本にまでマッキャン・エリクソン博報堂を立ち上げたとありますので、米国本社の広告のイメージコントロールは、このルートでやっていた可能性が高いように思います。

 

原液の中に、すべてのロイヤルティを入れ込む方法と、商標やノウハウのロイヤルティを個別に取る方法がありますが、言及がありません。お金についての記載としては、宣伝費を分担している点ぐらいです。