Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

パワハラ行為を明示した指針

「過大な要求」はどんな事例か?

2019年5月30日の日経で、職場でのパワハラ防止関連法が成立したという記事を見ました。今後は、具体的行為を明示した指針を厚生労働省が作成するようですが、難航が予想されているそうです。

パワハラ行為を明示し抑止 関連法成立、悪質企業公表へ :日本経済新聞

  • 就業規則パワハラ防止を盛り込むこと
  • 相談者のプライバシーを保護する
  • 行政指導でも改善しない場合に、企業名を公表する
  • スタート時は、大企業(2020年)と中小企業(2022年)
  • 罰則はなし

具体的な6類型は、次です。

  1. 身体的な攻撃
  2. 精神的な攻撃
  3. 人間関係からの切り離し
  4. 過大な要求(新人で仕事のやり方もわからないのに、他の人の仕事まで押しつけ、同僚は皆先に変える
  5. 過小な要求(運転手なのに営業所の草むしりだけを命じる。事務職なのに倉庫業務だけを命じる)
  6. 個の侵害

過大な要求と、過小な要求については、行為の線引きが難しいとあります。

 

コメント

「過小な要求」については、組合活動などをして仕事を外される例などがあり、なんとなく理解しやすいのですが、「過大な要求」の方は適切な事例が少ない感じです。

厚生労働省のサイトで、動画で説明されていた例は、膨大なデータ入力を突然指示されたケースが出ています。

「過大な要求」の例|動画で学ぶパワハラ|あかるい職場応援団 -職場のパワーハラスメント(パワハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-

 

上記の日経の記事の事例は、「新人(仕事のやり方がわからない)+業務丸投げ+同僚は帰る」という事例です。(「同僚は帰る」がポイントっぽいですね。)

 

仕事は、人によって早い遅いがあります。同じ仕事量でも、慣れている人は、半日もあれば出来て、新人なら1日かかってもできないことはあるだろうと思います。

 

上司が部下に、平均的に、一人あたりこれぐらいの仕事量をしてほしいと思って、仕事を渡したとします。上司としては、平均と思っても、受け手の新人にとっては、過大な要求になる場合もあります。

徐々に慣れてもらって、こなせるようになったら、次にシフトするということができれば、良いのでしょうが、なかなか難しそうです。

一般に、何某かの担当を持ってもらうことが多いですが、その担当に業務が集中することもありえます。

 

また、期待の新人には、通常の人以上の仕事をお願いすることもあります。この仕事を任せてもらえるのは、将来を嘱望されているということであり、名誉なことと理解する新人もいるでしょうし、反対に負担に感じてしまう新人の場合は、パワハラと考えるのかもしれません(本人のパワハラという意識と客観的なパワハラの認定は違うのだと思いますが)。

 

ただ、過大な要求は=ブレークスルーには必要なものであるようにも思います。夢を夢中に追いかけるなかで、成功があります。過大な要求がないところに、成功はないという気がします。

 

欧米流のJob descriptionの考え方でいくと、あまり細かい指示は上司はしません。部下の自主性があり、部下からすると、上司は相談したいときに相談にのってもらうために存在する人です。反対に、上司は、部下が職務を十分果たせないと考えるときは、部下を解雇できます。基本は、部下も個人として責任をもって仕事をしています。

解雇の自由があるし、部会も職業選択の自由、移動の自由がありますので、ある意味対等です。

 

おそらく日本も、徐々にはその方向を目指すのだと思いますが、急に、そこまでは、上司も部下も変われないと思います。

 

アイディアとしては、過大な要求は、上司から指示するのではなく、上司は、部下に選択肢を示して、本人が選択するというようにしてはどうかと思います。

そのためには、これができるとこういう結果になる、貴方のキャリアになるというように、納得のいく説明が必要なのかもしれません。

そして、過大な要求を選択して、それを達成した人は、昇進したり、給与があがるというのが、理想的です。

 

おそらく、具体的な裁判になるほどのケースは、離職や病気になったりして、やっとパワハラ認定がされるのだと想像しますが、厚生労働省が、「過大な要求」について、どんなガイドラインを作るのか、どんな事例をもってくるのか、関心をもって見ていきたいと思います。