Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

デジタル時代の小売業(5)

ドメインネームの話

デジタル時代の小売業の最後に、ドメインネームの話です。最近、TVで、AEON.comのCMを良く見ます。AEONは.comです。

www.aeon.com

一方、アマゾンはどうかというと、amazon.comはアメリカのサイトで、日本のサイトはamazon.co.jpです。

www.amazon.com

 

他の国も、amazon.co.uk(英国)、 amazon.de(ドイツ)、amazon.fr(フランス)と国別ドメインを使っているようです。           

 
ちなみに、2015年10月現在、アマゾンが事業拠点をもって展開している国は、14ヵ国と、イメージに比べると案外少ないようです。
具体的には、カナダ、アメリカ、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、インド、イタリア、スペイン、日本、フランス、オランダ、イギリス、ドイツ、中国とありました。
 
日本、中国、インド以外は、欧米諸国ばかりです。英語圏で、商売がやりやすそうな、シンガポール、香港でも直接展開はしていないようです。 

services.amazon.co.jp

アマゾンの画面構成やシステム自体は、日本もアメリカも大差ないように思いますので、ドメインネームも一つにして、amazon.comをブランドにするのか思うと、国別ドメインを使っているところが面白いところです。

展開国毎にサーバーを置き、展開国毎に最適なサービスを提供するためなのでしょうか。

単純に、誘導上の理由だけなら、ドメインネームはamazon.comにしておいて、顧客の使用言語などから当該顧客に最適なサイトに誘導するなどの方法もありますが、amazon.comに拘っていないようです。(新聞などでは、会社を示すのに、アマゾン・ドット・コムという表記がされることがあり、日本の消費者の印象もamazon.comが強烈で、co.jpであることに注意は向けられていないと思われます。)

 

この構成は、楽天も同じです。どうやら、小売業では、国別ドメインが主流のようです。小売は、その国のインナーに溶け込む必要があり、ドメインネームでもそれが表れているのだと思います。

 

そう考えると、冒頭のAEONは、なぜAEON.comなのかということになりますが、.comはECサイトであることを示しているのだと思います。

アマゾンは、そもそもがECサイトですので、自らのブランドロゴamazonの右隣に、.comを配したamazon.comを使っても非常に自然ですが、リアルな店舗を忠信とするAEONが、AEON.comと書くのは、AEONロゴの使い方として良くないのではないかと思います。全体の書体を変える、.comの部分の色を変えるなど、何か別の方法はなかったのかと思います。

 

さて、楽天は、アマゾンと違って、サービス毎に特徴を出す、いわゆるサブドメインを重視しているようです。

サブドメインとは、rakuten.co.jpの前についているtravelを含めた、travel.rakuten.co.jpがサブドメインとなります。システム的に詳しいことは分かりませんが、サブドメインを切ることで、サーバーを変えることができるようです。travel.rakuten.co.jp

ブランド的には、Rのマーク+Rakuten Travelが、ワンセットになっています。

しかし、単なるRマーク+Rakutenだけでは、小売りのサイトと思われるので、旅行のサイトですということを明確にするため、Rakuten Travelのサブブランドを使っています。

その状態を、ドメインネームの世界でも展開していることになります。ブランドとドメインネームでは、travelの位置がひっくり返っていますが、ブランド体系的やブランド表記は良く整理されていると思います。 

デジタル時代の小売業(4)

大手(ヤマト運輸)から独自配送網構築へ

小売業がデジタル化したときに、最後に問題になるのが、物流・配送の問題です。今年、ヤマト運輸が、業務の多忙から当日配送を撤退するという話がありました。

www.nikkei.com

 

人手不足、働き方改革、再配達問題(不在)などもあり、ヤマト運輸が音を上げたような形です。

 

www.nikkei.com

ヤマト運輸の後は、どうなるかというと、首都圏で独自の配送網を構築するようです。記事には次の話が出ています。

  • アマゾンジャパンが独自の配送網の構築
  • 当日配送サービスを専門に手がける個人運送事業者を2020年までに首都圏で1万人確保
  • 大手運送会社の下請けとして繁忙期に業務が集中しがちな個人事業者の活用
  • アマゾンは国内で年間約3億個の荷物を発送
  • 国内宅配便取扱数の1割弱を占める
  • 東京都心部では、桃太郎便を手がける丸和運輸機関が個人運送業者を組織化
  • 丸和運輸機関は個人事業者を囲い込む。寮や燃料割引、研修制度も用意
  • 貨物自動車を貸し出し、新規参入も促す
  • 17年度中に東京都心部をカバーするため1000台まで増やし、運転手も1000人規模の確保を目指す
  • 20年度までに軽貨物車1万台、運転手1万人体制に拡充し、当日配送の受託地域を首都圏の主要都市に拡大
  • 総投資額は100億円を超える見込み。丸和は自社で負担
  • 貨物自動車での運送事業は、個人事業者が多くを占める
  • 国への届け出制で1台から営業可能。16年3月時点の事業者数は15万4842社
  • 多くが中堅・大手の運送会社からの下請け。年末など繁忙期に集中しがち

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ネット通販が盛んになると、配送の問題が出てくるというのは、2000年のネットバブルのころにも言われていました。当時もヤマト運輸が株式市場の話題の一つになっていたと思います。

ただし、昨今の人手不足や働き方改革の動きの中で、ヤマト運輸は音をあげた格好です。

 

今回、アマゾンは、独自配送網を構築が必要になっていますが、日経の記事では、丸和運輸機関が次の受け皿になるようにありました。

 

先日、引用した、2017年8月22日の日経にあった、フィナンシャル・タイムズの記事では、アメリカでは、シリコンバレーのインスタカートという会社が、ウーバー型で、個人の車を手配しているようです。

 

丸和運輸機関がやろうとしているのも、それに近いものです。日本にもウーバー型のスタートアップ企業があれば、すでに15万人の個人事業主がいるようですので、ねらい目だと思います。三方よしになりそうです。

 

ヤマト運輸丸和運輸機関が、企業としてやっていたIT投資のようなものを、ウーバー型のサービスがやってくれれば、中間マージンが減るので、個人事業主としてはやりやすくなるのではないでしょうか。

 

ちなみに、下記のブログでは、ヤマト運輸が音をあげるのは、アマゾンの既定路線とあります。各国に入るときに、はじめは軋轢を避けるため、運送大手と付き合うが、徐々に独自の配送ルートを構築するのが戦略とあります。

アマゾン恐るべしです。

www.appps.jp

デジタル時代の小売業(3)

ウォルマートとグーグルの提携

2017年8月24日の日経に、先行するアマゾンに対抗するために、アメリカでは、ウォールマートとグーグルがインターネット通販事業で提携しているという記事がありまりました。

www.nikkei.com

人口知能(AI)を搭載したスピーカーなどで、簡単に商品を注文できるようにするようです。記事には、このようなことが書いてあります。

  • 9月下旬から、声で買い物ができるサービスを始める
  • グーグルのネット通販・宅配サービスの「グーグル・エクスプレス」にウォルマートが日用品など数十万点を出品
  • 顧客はグーグルの対話型AI搭載スピーカー「グーグルホーム」やスマートフォンで音声で商品を注文
  • アマゾンは対話型AI搭載スピーカー「エコー」を2014年に発売
  • ウォールマートはアマゾンに対抗できる技術力のある会社としてグーグルを選択
  • 両社は、来年から生鮮品も声で注文できるようにする
  • ウォールマートの全米4700の店舗で受け取れる
  • 一定金額以上の買い物をすれば無料配送
  • 一方のアマゾンは、高級スーパー「ホールフーズ」を買収し、リアルの世界に進出
  • 共通の敵を前に、ウォールマートとグーグルが手を組んだ

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ネット通販拡大の一つのポイントが、生鮮食料品で、来年あたりからこの動きが本格化しそうです。

 

日本でも遅かれ早かれ、生鮮食料品がネット通販される時代が来るように思います。従来、通販の食料品といえば、ギフト商品の派生のような加工品や、ケーキ類のようなお菓子、牛肉・カニ・ワインといった高級食材、らでぃっしゅぼーやのような有機野菜といった、少し高めのお取り寄せ商品が多かったですが、ついに一般の生鮮食料品に来るのだと思います。

 

もう一つのが、AI搭載スピーカーです。

 

Amazon Echo - Now Available

 

イトーヨーカドーの店舗で、ネットで注文すると、店員が本人に代わって店舗で買い物して、配達してくれるサービスがありますが、本来使ってほしい高齢者が、ネットを使いなれていないために利用できていないという状態があります。コールセンターで対応する方法もありますが、コールセンターのコストもかかるので、ここをAIで置き換えるというのは、理屈にかなっています。

 

私の実家は駅から徒歩30~40分。あるは、バス10分でバス停から15分というとこです。いままで、近くに食料品スーパーやコンビニがあったのが、どんどん閉まってしまい、高齢の母が買い物に苦労しているようです。(買い物は散歩にもなり、楽しみでもあるのですが。また生協もありますので、今はなんとかなっています。)

 

高齢者の家庭では、WiFi環境がない可能性があり、ここはネックになりますが。アマゾンのKindleには、書籍のダウンロード用の通信機能付きのものがあります。これがエコーの買い物機能につけばよいのにと思います。あるいは、ポケットWiFiなら操作も簡単なので、これを渡しておく方法もあります。

 

エコーなり、グーグルホームは、日本ではあまり紹介されませんが、アメリカで成功した後は、日本でも爆発的に広がるように思います。

 

 

デジタル時代の小売業(2)

アマゾン・エフェクト

2017年8月19日の日経にアマゾン・エフェクトの記事があり、アマゾン恐怖銘柄指標と事例が紹介されていました。

www.nikkei.com

アマゾンが進出する業界には、強い逆風が吹き荒れることを、米国では、「アマゾン・エフェクト」と呼び、影響を受ける銘柄は、「Death by amazon(デス・バイ・アマゾン)」として、アマゾン恐怖指数になっているようです。

指数に入っている会社の年初来の株価騰落率が出ています。この間、S&Pは、8.54%のプラスだったようです。

マイナスは以下です。

  • JCペニー、メーシーズ(百貨店)
  • クローガー(生鮮スーパー)
  • ライト・エイド(ドラッグストア)
  • オフィス・デポ(オフィス用品販売)
  • DSW(靴販売)
  • フットロッカー(スポーツ用品)
  • ビタミンショップ(サプリメント販売)

反対に、プラスになっているのが、以下です。

プラスになっている方もウォルマートなどはアマゾンへの対抗でネット通販分野への投資で減益にはなっているようです。

また、米国の衣料品販売高は、今年、メーシーズを抜いて、アマゾンが1位になる見通しで、動画配信の「プライム・ビデオ」も賞を受けるなどネットフリックスを脅かしているとのことです。

 

アマゾンの業績がアマゾン恐怖指数を構成する企業を上回り始めたのは、2015年初めからで、この2年間で差が開いたとあります。

 

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アマゾンは、規模の拡大のために、収益は拡大再投資に配分し、また配当はせずやっていると聞いていましたが、ここにきて、一気に花開した感じですね。

アマゾンの株価は、2015年の1月に400ドルだったのが、最近は、945ドルまで上がっているようです。

 

影響を受ける企業の種類は、基本的には、日本も同じだともいます。メーカーであれば、アマゾンで販売するという手段が取れますが、小売りは影響を受けるようです。

 

生鮮食料品のクローガーの株価が急落意したのは6月中旬で、アマゾンがホールフーズを買収すると発表したあたりです。アマゾンも、生鮮食料品はこれからの分野で、そのため、ホールフーズを買収したのだと思いますが、ニュースで急落した感じです。

 

アメリカと日本の、アマゾンのカテゴリーを比べて見てみると、基本、差がありませんでした。

薬事法がうるさい薬品はというと、いつも良く見る、バファリン正露丸・Vロートなどは、日本のアマゾンでも販売していました。

Amazon.com - Earth's Biggest Selection (米国)

Amazon CAPTCHA (日本) 

デジタル時代の小売業(1)

アマゾン一強の可能性

2017年8月22日の日経が、傘下の英フィナンシャルタイムズの社説(21日付の記事)を載せていたのですが、参考になりそうな数字が出ていました。

www.nikkei.com

記事は、次のようなことを言っています。

  • オンラインショッピングが実店舗に勝ってきている
  • 特に、アマゾンが規模の経済の恩恵と、低い資本コストで優位
  • 競合企業は、独食料品ディスカウント販売チェーンのアルディ、それと組んだ米インスタカート(ウーバー型の宅配)
  • 小売業の歴史では王者が変わる。百貨店の時代(シアーズ)、大規模小売店の時代(ウォルマート)、ネット通販の時代(アマゾン)
  • ただし、市場シェアを誇張してはいけない
  • アマゾンは、米国の小売り電子商取引(EC)市場で、シェア2割
  • ECは、まだ米国の小売りの1割
  • しかし、ウーバー型はアマゾン優位には立ちにくい(理由は、アマゾンもウーバー型をすることができる)
  • 歴史的には、小売業での支配は、10年か20年しか続かない
  • アマゾンのビジネスモデルは、その常識を超えるかもしれない

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アマゾンで、米国の小売りの2%のシェアということが分かります。

食料品などは通販ではないですし、街にはまだまだ多くのお店があるので、いくらアマゾンが普及しても、この程度の数字なのだと納得しました。

 

日経は、アマゾンをいろんな角度で追いかけていますが、2017年8月24日の記事に、日本のアマゾンのシェアが出ていました。

www.nikkei.com

この記事では、国内のネット通販市場について、次のように記載しています。

  • 2016年に15兆円超え
  • 小売り市場全体の1割
  • アマゾンが躍進

フィナンシャルタイムズのように、国内ネット小売り市場におけるアマゾンのシェアは言及がなかったのですが、米国と同じ2割ぐらいなのでしょうか。

 

個人的にも、アマゾンを良く使うようになってきています。家族がDVDやCDを買い、私が本や文房具(筆記具の替え芯など)を買うのですが、一万円/月まではいかないですが、小売消費の2%は超えてしまっているように思います。

現在、スーパーやドラッグストアで買っている食料品や日用品を、アマゾンで買うようになったら、当然2%程度では済まなくなります。

 

米国発の企業で、日本で成功した会社は沢山あります。

例えば、コカコーラ、ハリウッドの映画会社、マクドナルド、マイクロソフト、アップル、スターバックスGoogleFacebookなどです。

地域密着性が強い小売り業で成功した米国企業(実体は違いますが、当初は米国発)としては、セブンイレブンがありますが、セブンイレブンは時間をかけて伸びてきたのに対して、アマゾンは成長スピードがとても速いように思います。

このスピード感もデジタルの特性だと思います。

マック対マクド

愛称対決「マクド」の勝ち

2017年8月25日の朝日新聞に、今月マクドナルドが実施した愛称を題材にした販促キャンペーンの話が出ていました。 

www.asahi.com

キャンペーンは、東京などで使われると「マック」という愛称と、関西で使われる「マクド」という愛称を題材にしたもの。

「マック」「マクド」のイメージでつくった商品を用意し、4日~20日の間に、ツイッターでつぶやかれた商品名や愛称の数を競ったようです。

 

結果は、「マクド」が「マック」を上回りました。

マクドナルドは、「マクド」の商品である「ビーフカツバーガー」のクーポンを配信しているようです。

 

「マック」の勝利を受け、同社のホームページが、サラ・カサノバ社長のメッセージや、商品紹介などの一部が、期間限定で関西弁(大阪弁)になっています。

www.mcdonalds.co.jp

クーポンは公式アプリからで、9月1日まで、「マクド」のビーフカツバーガーが、優勝記念で390円のところが300円に、「マック」の東京ローストビーフバーガーが、440円のところが420円とあります。

 

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新しいバーガーの販促キャンペーンですが、同社の愛称の「マック」「マクド」にかけたところと、同社のホームページまで大阪弁にしたところなどが、面白いところです。

マクドナルドも経営が大変な時期がありましたが、ポケモンGOとのタイアップあたりから、だいぶ元気になったようです。

 

同社復活の話は、アエラにありました。危機広報と、販促戦略の題材ですね。

dot.asahi.com

8月26日の朝に、サタデープラスというTV番組で、今人気の福島アナウンサーが「マック」「マクド」の話をしていました。

外国人に、マクドナルドの「M」のロゴを見せて、あなたの国ではなんというか聞いていました。

どうやら海外では「マクド」が主流のようです。「マック」は、男の子の名前とか、AppleMACと紛らわしいという面もあるようです。

 

マクド」は、「マクドナルド」を短縮するのに、前から3文字とったものです。一方の「マック」は、「ビックマック」「マックシェーク」というように、同社が自社の商品のファミリーネームとして使っている接頭辞、接尾辞ですね。

 

1970年代に小学生のころから、たまにマクドナルドは利用しますが、当時は、大阪でも正確に、マクドナルドと言っていました。

1980年代に高校生になったころは、「マクド」が定着していたように思います。「マック」「マクド」論争は、当時からあり、東京はええカッコして「マック」と言っているというのが、大阪人の見方でした。

 

当時の大阪の高校生男子は、喫茶店に行くのを「ちゃーしばきにいこーか~」と言ったのですが、ある時、同級生が、吉野家に行くのを「うししばきにいかへんか」と言っているのを聞いて、すごい言い方をするなと思ったことがあります。さすがに、この言い方は、高校生の時以外、聞いたことがありません。

口の悪い彼らも「マクドしんばく」とは言っていませんでしたが、「マクド」という言葉を聞くと、ついつい「うししばく」のことを思い出してしまいます。

 

外国商標のTIPS(1)

中国における商標の色彩の判断

先日、中国における商標の色彩の件を調べたいことがあり、検索をしたら、下記のWebサイトに載っていました。

工業所有権情報・研修館(INPIT)の新興国知財情報データバンクです。外国実務をされている方は、活用されているのだと思います。

www.globalipdb.inpit.go.jp

今回、調べたかったのは、カラー(色彩をつけた)商標があったとして、中国では、モノクロ(白黒)で商標出願すべきか、カラーで出願すべきか?という話です。

 

中国では、A.色彩を指定しない商標と、B.色彩を指定する商標に分かれています。

資料では、色彩を指定しない商標として、マクドナルドの「M」の文字、昔のデザインの中国向けのスタバのロゴ、ブリヂストンの「B」のロゴがあがっています。

一方の、色彩を指定する商標には、中国石油(CNPC)のロゴなど、現地のロゴがあがっています。

 

審査では、文字や図形が類似すれば、色彩が違う(別の色、あるいは、白黒)に対しても類似となるようです。後願排除効という面では、色彩の有無にさほどこだわる必要はないようです。

 

日本と違いがあるのは、登録商標の使用となるか否かで、色彩を指定しない商標の権利は、色彩を変えても登録商標の使用となるのに対して、色彩を指定する商標の権利は、別の色彩にすると登録商標の使用とならない点です。

  1. 不使用取消審判をかけられたときに、色彩を指定色彩をしない登録商標は、どのような色彩を付しても登録商標の使用であるのに対し、色彩を指定した登録商標は、異なる色彩を付して使用しても「不使用取消」を免れないこととなる、とあります。
  2. また、色彩を指定した商標で、色を変えて使用しようした場合に、商標登録表示のRマークをつけたら、登録商標を許可なく変更した行為に該当し、中国商標局が、商標法44条1項に基づき、期間を定めて是正を命じ又はその登録商標を取り消すことがあり得るとあります。

日本の場合、商標法70条で、色彩はほぼ完全に捨象して権利を考えるので、不使用取消審判で色の違いで不利益はないですし、また、Rマークは付記的部分としてこちらも無視します。日本では気にしないことを、中国では気にする必要があることになります。

 

資料では、結論として、使用による特別顕著性を主張するようなケースを除き、モノクロ出願が望ましいとあります。

 

ただ、このあたり、ちょっと突っ込んで考えると、色々と論点があります。単なる文字商標は、確かにモノクロでも良いのですが、カラーに特徴のある図形商標は、カラーで出すのが常識に適います。

  • 色彩とは、白黒が入るのか、入らないのか?通常、色彩というときは、白黒は入りません。色彩学的に、白黒は、色ではないのです。どうしても、二値でしか表現できないもの(例えば、業界紙の新聞広告)があり、色彩だけの商標を取得して白黒で表現せざるを得ず、不使用になる、あるいは、Rマークで虚偽表示になるといってしまうと、あまりに理不尽です。たぶん、中国でもそうは判断されないと思います。イエローの色彩に特徴があり登録されたマクドナルドの「M」の文字を、グリーンで使用するという特殊ケースではないでしょうか?
  • もう一つ、お金のある会社は、白黒とカラーの双方の権利が取れます。そうすると、白黒のメリット(上述)とカラーのメリット(本来、使用している商標ですので、ライセンス、権利行使で、イメージがビジュアルに伝わり、説得力が高い)の双方のメリットを得ることができそうです。

個別ケースで、検討も必要な感じの話ですが、外国商標は、色々とTIPSがあると思いました。このレベルのTIPSを200~300程持って、自由に駆使できるようになると、何となく外国商標の専門家のようなイメージがします。

 

INPITの新興国のデータベースは、非常に参考になるものがありそうです。ただ、検索性がもっと良くなればと思います。