Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

PISAの調査結果

デジタル読解力

2019年12月23日の朝日新聞に、PISAの「読解力」の調査結果の分析が出ています。

 

PISAとは、OECDが行うもので、3年毎に15歳(高校1年生)を対象に行う学習度達成調査をいい(2018年は79ヵ国・地域が参加)、読解力、数学的リテラシー、化学リテラシーを調査するものであり、今回は読解力の調査ということです。

 

結果は、15位と2000年の8位、2012年の4位から下がったようです(2006年にも15位のときあり)。

 

前回の2015年からコンピュータを使ったテストになり、今回からはブログや電子メールなどを読む、本格的な「デジタル読解力」を測るものになっているそうです。

 

デジタル読解力では、幅広く複合的なテキストを比較して読むことが必要であり、ラテラル(lateral/横読み)リーディングが必要ということです。

この読み方は、複数のサイトをさっと見て、情報の信憑性を判断したり、複数の意見を比較考量したりする読み方とあります。

 

しかし、検討した中央教員審議会の委員の中でも意見は割れており、従来のPISA読解力も落ちているのではないかという意見もあるとあります。

 

読解力の平均がトップだったのは、北京・上海・江蘇・浙江の中国4都市ですが、本を読まない人が3%と少ないようです(日本は26%、OECD平均は35%)。

また、読む本の種類としては、小説などのフィクションを読む人の平均点が高いとあります。

 

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日本の成績が落ちたということが、ニュースになっていますが、15位といっても79ヵ国・地域での15位ですので、まだまだ上位です。

 

今回のテストから導入されたという、複数のサイトをさっと見て、情報の信憑性を判断したり、複数の意見を比較考量したりする読み方は、TOEICのPart 7で出てくる、double passages、triple passagesに似ているところがありそうです。

 

TOEICのdouble passages、triple passagesの場合、問題自体は簡単に判断できるものも多いですが、より深く中身を聞くなら、今回のPISA調査に似てくるのではないかと思いました。

ここは、少し、訓練が必要なように思います。

 

ただし、中国の4都市のように、本を読む人が多い地域が、読解力の成績が良いことからすると、結局は、デジタル読解力といっても、基本的な読解力が一番大事なように思いました。

 

対策としては、従来の読解力を鍛える読書を中心として、少しだけデジタル読解力の訓練をするというので、良さように思いまして。

無形資産の話

3つの分類、労働分配率、寡占

2019年12月24日の日経に、Neo Economy「無形資産 成長の源に」「フィジカルからインタンジブルへ」という特集があります。

Neo economy 無形資産、成長の源に:日本経済新聞

  • ヒト・モノ・カネの3要素から、研究開発(R&D)やブランドなどの無形資産が投資対象
  • 機械や工場などの有形資産とR&Dやブランドなどの無形資産
  • ソニーやIT企業など、無形資産が有形資産を上回る企業が多くなってきた
  • 無形資産は3つに分類できる
  • 情報化資産(ソフトウェア、データベース)
  • 革新的資産(R&D、デザイン)
  • 経済的競争力(人材訓練、ブランド、組織変革)
  • 日本は経済的競争力が弱い。特に人的資本を育てるための投資が不足
  • 無形シフトの時代に、労働分配率の低下が進んだ(無形資産に投資が集中し、格差拡大、富の富裕層への集中)
  • 無形資産は補足されてない
  • また、一部の企業にデータ、優秀な頭脳が集中しがち
  • 特にインターネット業界では寡占傾向

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これは面白い特集です。無形資産に投資が集中して、人への投資が減っているという話ですが、こんな分析は聞いたことがありませんでした。

無形資産への投資の拡大と労働分配率の低下に直接の関係があるのかどうかは分かりませんが、現象面としてはそうなっているようです。

 

また、無形資産を、情報化資産、革新的資産、経済的競争力の3つに分析する手法も聞いたことがありませんでした。

どこかに記載がないか探したのですが、分かりませんでした。

 

従来は、2019年1月23日の日経にあるような、分析ぐらいでした。

  • のれん
  • ソフトウェア
  • 研究開発
  • 知的財産
  • 市場関連資産
  • 顧客関連資産

無形資産とは 特許や商標、デジタル化で重み :日本経済新聞

 

これに比べると、3つの区分にしたことで、分析が進んでいます。特に、情報化資産と革新的資産は分かりやすいと思います。

経済的競争力に、ブランドがあるのは分かるのですが、なぜ、ここに人材訓練や組織変革といった人事的なものが来るのかなという気はします。一般的には顧客データや取引先データのようなものの方が、経済的競争力という感じがします。

この3分類については、関心をもって見ていきたいと思います。

 

次に、各国の比較で、日本は有形資産への投資が多いようです。その内訳で特徴的なのは経済競争力への投資が少ないという特徴があります。

欧米企業に比べると、日本企業では、人材訓練、組織変革への投資も少ないのだと思いますが、ブランドへの投資も相当少ないと思います。

人事とブランドを括って、何か出てくるのか良く分かりませんが、ブランドは社員の士気を高めたりするものでもあり、実際のインターナルブランディングの施策(運動会をしたりするのもインターナルブランディングであって労政に近い)としては人事に近いものがあります。この括り、あながち悪くないように思います。

 

 

コングロマリットディスカウントの解消

スピンオフ~古典的な商標管理とは正反対~

2019年12月23日の日経に、「子会社の分離上場が広がるか」という記事があります。スピンオフのことで、税制が改正されて第1号が出たという話です。

子会社分離上場 広がるか スピンオフ、税制改正で第1号 成長加速/「株主の視点」課題 :日本経済新聞

  • 2017年の税制改正後、子会社と本体を資本関係のない独立した会社にする会社分割(スピンオフ)の第1号
  • コシダカHD(まねきねこブランドのカラオケを展開)が、フィットネス子会社のカーブスHDを分離
  • 両者は営業上の相乗効果がない。成長を速め、従業員に緊張感を持ってもらうため
  • カーブスHDを単独上場へ
  • 手法としては、親会社の保有株を一部売却する方法(親子上場)と、親会社の株主に子会社の株式を割り当てる方法
  • しかし、親子上場には批判あり。今回は、後者
  • スピンオフは、コングロマリットディスカウント(多角化部門を多く抱える企業の経営効率が悪くなり、企業価値を最大化できないこと)を解消すると期待
  • 事例としては、ダウ・デュポンが3社に分割。イーベイがペイパルを分離。P&Gなど

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税制のことは理解が難しいのですが、中外製薬がロッシュのグループに入るときに、米国子会社を分離して、実際には差益が発生しないのに、350億円支払う必要があったことがあるそうです。

アメリカでは、コングロマリットディスカウントを解消する方法として、スピンオフが活用されているそうです。10年で300社ほどが利用して、合計時価総額も高くなる傾向とあります。

 

スピンオフというと、大企業で新規事業を考案したが、大企業の内部では企業化できないので、外でするものをいうのかと思っていました。

言葉の意味からすると、そのような限定はないので、企業の企業分割一般を指すと言えるのだと思います。

 

記事にもありましたが、経営者の立場に立つか、株主の立場に立つかで、違いはあります。経営者は、スピンオフで事業が縮小します。株主としては、子会社が機動的になり成長による利益が見込めます。株主のことを考えるとスピンオフなんだと思いました。

今回は、コシダカHDの株主は、コシダカHDの社長が約4割の株式を持つようであり、経営の最終意思決定者は個人としての社長であるというのも、やりやすかった理由のようです。

 

日本でも昔は企業のスピンオフが多かったように思います。ダイセルから富士フィルム富士電機から富士通富士通からファナックなど、今回の意味でのスピンオフです。ヤマハヤマハ発動機なども同じ系統です。

 

商標管理やブランドマネジメントでは、親会社でハウスマーク/コーポレートブランドを名義等を含めて一括管理して、親から子会社にライセンスすることが多いと思います。そして、ハウスマークのライセンスは、50%超の子会社に限定して、子会社にガバナンスを効かせます。

100%子会社にしかブランドライセンスしない会社などもあり、もっと基準が厳しい会社もあります。そして、これがブランドを守る一番の方法と言われたりします。

 

しかし、これは視点を変えると、スピンオフやカーブアウトを極力防ぐ方法で、今の親会社の経営陣のための管理手法という感じはします。

商標の名義の戦略など、本当は経営学的にもっと分析すべきものだと思いますが、そのような分析をしている経営学者、ブランドマネジメント学者は聞いたことがなく、企業の知財担当が上に述べたような考えでやっているのが実情です。

 

ブランドネームが、ダイセル富士フィルム富士電機富士通富士通と(富士通ファナックというように、異なるときは、まだ、スピンアウトは可能だと思います。

 

しかし、ヤマハヤマハ発動機など、多少の図形の違いやカラーの違いはあるとして、ほぼブランドは同じです。以前研修会で、数年前に商標管理をまとめようという話になったが、結局、できなかったと聞いたことがあります。

 

日本の上に記載した事例は、何十年もかけて、この形態に落ち着いたのだと思います。記事にある税制改正で、少しは促進されるのかもしれません。

 

スピンオフを認めるというのは、商標管理やブランドマネジメントの立場を超えた、記事にあるような、株主のため、事業の発展のためという、大儀が必要です。

そういえば、財閥解体でそうなってしまったのですが、三菱や三井、住友などは、結果としては、コーポレートブランドを共通にしながらのスピンオフで、上手くいっている事例だと思います。

 

TMIがコンサルに変身

監査法人系の法律業務への参入

2019年12月23日の日経に、TMI総合法律事務所が、総合コンサルティング事務所への変身中という記事がありました。

TMI総合、コンサルに変身へ 監査法人系参入に危機感 :日本経済新聞

  • 12月3日にベンチャーキャピタルを設立
  • 第1号は個人データを扱う際のプライバシーとセキュリティに関するコンサル(専門コンサル)
  • 9月には所内コンペでAIを使った契約チェック、内部通報システム構築、社内不正調査など約20件の提案
  • 法律業務を中心とした総合コンサルを目指す
  • 理由は、①弁護士の増加、②大手監査法人の法律業務への参入(EY、PwCが日本で法律事務所)、③データ保護法制やサイバーセキュリティなど課題
  • 監査法人系は、経営、M&A、税務、不正調査といったサービスをそろえる。一方、法律事務所は、株主総会と訴訟に限定
  • 法律業務だけでは事業機会を取り込めない
  • 他の法律事務所もコンサル志向。森・浜田は税理士と弁理士を採用し、税務や知財戦略への関与を強める

というような内容です。

 

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弁理士の業界に、大手法律事務所が参入してきており、弁理士業界も大変だなと思っていたら、その大手法律事務所も監査法人グループとの競争にさらされているというのが、面白いところです。

 

同じ記事に、監査法人系グループの規模は、法律事務所大手(1000名程度)の10倍程度とありますので、まったく規模では太刀打ちできません。

大手法律事務所は、当然、国際的な紛争解決や契約サービスはできますが、企業のニーズが、新たな仕組み作りにあるとすると、そこは不得手です。

 

以前の会社のブランドマネジメントの部署のときに、監査法人系のコンサルティング会社のお世話になっていたことがあります。マッキンゼーのような経営コンサル、インターブランドのようなブランドコンサル、監査法人系のコンサルティング会社、全てにお世話になったことがあります。

そのときの印象でいうと、新たな制度導入しようとしたときなど、監査法人系のコンサルティング会社は、経験が豊富ですので、何かと頼りになるという感じがしました。

 

経営コンサルは概念的過ぎで、ブランドコンサルは目的が限定されており、ちょうど欲しい情報を監査法人系が持っているというイメージです。

 

それはさておき、大手法律事務所でも変わらないといけないということは、特許事務所では更に大きく変わらないといけないということを意味するように思いました。

現在は、弁理士試験の合格者の半数が企業勤務ですし、合格後、特許事務所から企業に入る人も多いようですが、あと10年もすると、その人達が次のステージのことを考えないといけない時期がきます。一方、通常の権利取得の仕事が増える訳ではありません。

 

企業勤務の弁理士は、企業で発生する問題している問題には遭遇していますので、コンサルティングを受けていることも多いのですが、顧客として立場からサービス提供者側に回ることができるかどうかについては、ちょっとハードルがあります。

 

私も、商標管理やブランドマネジメントについて相談を受けることが多く、勤務している事務所の業務で、コンサルのようなことをしていますが、ボリューム的には、まだまだこれからという感じです。

昭和シェルと出光興産

ブランド統合へ

2019年12月10日の日経に、昭和シェルと経営統合した出光興産の社長が、ブランド統合を検討しているという記事がありました。

出光、全国で給油所改革 社長「ブランド統一検討」 :日本経済新聞

  • EVのカーシェア「オートシェア」を全国に広げる
  • 従来の方針を転換して、EV事業を積極展開
  • 給油所のブランドは、出光興産の「アポロマーク」、昭和シェルの「ペクテン」がある
  • 当面、併存の方針だったが、取材では「統一を検討」にと社長が発言
  • 割引カードの共通化なでで、販売戦略の足並みをそろえ、集客効果
  • JXTGホールディングスは、給油所のブランドを「ENEOS」に統一し、顧客からわかりやすいと評価
  • 今回、販売店からも要望あり。ブランドの一本化が不可欠
  • 「アポロマーク」そろえる方向が有力視
  • 石油メジャーは、すでにLNG事業や再生エネルギー事業にシフト
  • 20年後には石油事業は半減する見通し

とあります。

 

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Wikipediaによると、2019年4月から、昭和シェルは出光興産の子会社ということです。将来的には、合併を目指しているとあります。

出光興産 - Wikipedia

 

同社のWebサイトによると、商号は「出光興産株式会社」で、トレードネームは「出光昭和シェル」となっています。

会社概要 | 会社情報 | 出光興産(出光昭和シェル)

 

商標担当者としては、Trade nameとTrademarkの違い、Trade nameとBusiness nameとの違いなど気になるところです(ついでに、Brand nameとの違いも気になります)。

 

辞書的は意味では、商号に対応する英語が「Trade name」であり、商号とトレードネームは同じと考えることが多いですが、出光興産は、商号とトレードネームを使い分けているようです。

おそらく、「商号」は法的に登記されている正式名称の意味で、「トレードネーム」は商売上使っている名称という意味だと思います。ビジネスネームや屋号に近いものだと思います。

 

さて、細かい点はさておき、こ創業家からのクレームがありましたし、対等合併のようなイメージでいたのですが、記事では昭和シェルと出光興産の関係は、昭和シェルが出光興産に吸収されるような書きっぷりです。

社名も、出光興産中心ですし、ブランドも出光興産のアポロマークになる方向との話です。

 

アポロマークは、図形商標なので、言葉の商標が必要です。「IDEMITSU」か「アポロ」かですが、おそらく「IDEMITSU」なんでしょうね。世界で戦うなら、「アポロ」よりも、独自性の高い「IDEMITSU」です。日本でも、出光さんという氏は非常にレアです。

ただし、シェルと貝殻は、両商標の外観・観念・称呼が一致しますが、IDEMITSUとアポロマークは、これらが不一致です。

商標はやはり言葉が重要ですので、IDEMITSUのロゴを中心にして、給油店の看板などにだけ、アイキャッチとしてアポロマークを使うというのが素直でしょうか。

 

また、この記事を読んで、日本から、ついに「シェル」のマークが無くなるのかと思いました。

「シェル」のマークは、「ペクテン」というようです。pecten/ペクテンは、ホタテ貝のラテン名であり、「櫛」の意味。殻の表面にみられる放射肋(ロク)が、櫛を思わせるところから、ということのようです。

ホタテガイ

 

映画のシェルブールの雨傘で、シェルのマークが出てきて、フランスでもシェルの給油店なんだと思った記憶があります。

 

シェルに統一すると、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルにブランド使用料の支払が必要になるでしょうから、アポロマークにするのは分かります。

NissekiやJOMOを止めて、ENEOSにしたように、別のブランドを創ることも可能であり、新しさあるのですが、今回、この手法はとらないようですね。

 

ENEOSといい、IDEMITSU/アポロマークといい、基本は日本中心のブランドであり、ローカルブランドです。

 

ガソリンスタンドのブランドが、世界に進出するには、メジャーのようにならないといけない大変な世界なんでしょうね。 

良品計画が中国で敗訴

なぜ「無印良品」が商標権侵害訴訟で負けるのだろうか?

2019年12月19日のAFPBB Newsに、北京市高級人民法院での「無印良品」をめぐる訴訟で、日本の良品計画及びその子会社が敗訴したという記事がありました。中国のCNSから配信のようです。

「無印良品」の商標訴訟、良品計画が敗訴 中国 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

  • 原告は、北京棉田(Miantian)紡織品で、「無印良品」の商標登録を所有
  • 被告は、日本の無印良品と中国のその子会社
  • 日本の良品計画およびその子会社に対し、侵害を停止するとともに、その権利侵害の影響を消し去り、損害賠償金50万元(約780万円)と諸費用12万6000元(約200万円)を支払うよう命じた
  • カバン、シューズ、家具類のソファ、寝具、織物のペンケースやデスクマットの商標は、「無印良品MUJI」から「MUJI」へ名称変更していると、日本の無印良品は声明を発表
  • 日本の無印良品は中国に進出する前、事前に商標登録を実施せず
  • 中国の「無印良品」が一部の商品で先に商標登録してしまったことが原因
  • 意識の高い中国企業は、経営活動を始める前に、事前に、自身の経営する商品やサービスやその他の領域についても登録し、事前に他社の割り込みを防止
  • 外市場に進出する際に、数年前から相手先市場における類似商標の状況を調査し、他社に利用されないようにしている

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最高人民法院もありますが、中国は二審制度なので、通常は知財事件は上告できないと云われています。おそらくこれで確定ではないでしょうか。

 

CNS(China News Service)の配信ですので、中国から視点ですので、日本での受け止め方とは違うような書きっぷりです。

 

日本の感覚は、2018年11月9日付けの、一審判決が出た時の日経ビジネスの感覚だと思います。

中国・無印良品のパクリが商標権侵害勝訴の謎 (5ページ目):日経ビジネス電子版

この日経ビジネスによると、中国人の間でも、相手方の北京棉田紡織品は、パクリだと認識されていることになります。

 

さて、CNIPAのWebサイトでチェックすると、1999年11月17日に、良品計画が9区分(24類は含まず)ほど出願しています。商標は下記です。「MUJI」が大きく、「無地良品」はサブです。

 

ちなみに、日本のJ Plat Patをみると、1995年に、すでに、これと同じ態様の商標が出願されていますので、ブランド戦略上「無印良品」ではなく、「MUJI」をメインに使用とする意図が感じられます。

海外子会社の名称も「MUJI」〇〇というMUJI接頭辞商号ですので、コーポレートブランディングとしても、「MUJI」が基本なのだと思います。

 

世間では「無印良品」のことを省略するとき「MUJI」「ムジ」ではなく、「ムジルシ」とニックネームで呼んでいる人が多いのではないでしょうか。

どうも、企業の意図と世間の認識がズレている例のような気がします。一つのブランド問題です。

商標登録の態様からすると、中国の当局者は、「MUJI」がメインで「無印良品」がサブ(中国語のルビのようなもの)というようにも見てしまいます。

 

日本の良品計画が出願した時点で、3件ほどの先行商標があります。

 

そして、今回の相手方の24類の出願は、2000年4月6日に、出願されています。相手方の商標は簡体字です。「無印良品」の「無」が日本語で中国の簡体字とは違う点も特徴です。

 

その後、良品計画は、多くの分類を出願して、権利化しているようですが、今回の相手方は、24類ではその後も商標出願・商標登録を積み重ねているようです。

 

先願登録主義のもとでは、やはり、はじめに、多くの商品分類について、出願しなかった点は悔やまれます。

 

日経ビジネスによると、相手方は30店舗ほどの実店舗を運営しているようです。

実際、訴訟をしたのかどうか不明ですが、その時に、日本の良品計画が侵害訴訟を起こしているかどうかもポイントだと思います。

訴訟を躊躇している間に、相手方の既得権が積み上げっていきます。日本企業は訴訟を嫌う傾向があるので、もしかするとやっていないのではないかと想像します。

 

また、中国の場合、医薬品などを除き、小売り役務が商標登録の対象として認められておらず、関係する商品区分で商標登録をコツコツと積み重ねる必要があります。小売りの35類があればと思います。

 

最後に、影響しているのは、日本の良品計画の商号です。日本の商号を「無印良品」にしておらば、第24類で商標権がなくても、それも一つの根拠とできた可能性はあります。ここも、同社のブランド問題です。社名とメインの商標とがちぐはぐでは、知財の保護が分散されます。

 

日本人には、本家がパクリになぜ負けるのかと不思議に思うこの訴訟ですが、同じ轍を踏まないために、一度、きっちり振り返ってみる価値がありそうです。

 

相手方の商標登録の無効は行政上の手続きで、そちらで勝たない限り裁判所はこう判断せざるを得ない仕組みなのか、侵害訴訟中に抗弁として無効が主張できる仕組みのかは確認しないと良く分かりません。

しかし、そもそもの、良品計画の商標管理とブランドマネジメントに課題がありそうです。

売れ残り衣料品15億点

販売された衣料品は13.6億点

2019年12年6日の日経の「それでもアパレルと生きる④」で、衣料品の売れ残りの記事を見ました。

〈それでも、アパレルと生きる〉(4) 売れ残り15億着は宝 ブランド外し独自のタグ :日本経済新聞

  • 国内で2018年に出回った衣料品は29億点
  • 消費されたのは13.6億点
  • 年間15億点は売れ残り、不良在庫に
  • 名古屋のFINEが不良在庫から、ブランドや洗濯タグを取り外して、「Rename」というブランドとして販売
  • 元のブランドを分からなくする
  • 売店や通販サイトで販売
  • 安売りするとブランドが傷つく
  • Renameは30万着を販売
  • 仕入れたアパレルは200以上

「Rename」で検索すると、通販サイトがでてきました。

Rename.jp - 服の新しい売り方 | リネーム公式通販

 

その説明によると、ブランドを外して、Renameというタグをつけることで、ブランドネームではなく服本来の価値で商品を選択することができ、価格以上の価値があり、環境にも良いというあります。

 

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無印良品」が出てきたとき、「理由(わけ)あって安い」というコピーがありました。

はじめは無印良品は文字通りの意味でしたが、徐々に、「無印良品」の言葉がブランド化しました。

 

この衣料品のリサイクル商品については、「Rename」も識別性の低くそうな言葉ですが、完全に識別性がないとも言えず、登録になっています。

録5974668 号、登録5993600号

 

なかなか、いいところを突いたネーミングだと思いました。「Rename」は、将来、無印良品のようなビッグなブランドになる可能性があります。

 

さて、ブランドを外して商品本来の価値で、商品を選択してもらいたいところに注目しました。

Renameがブランドであり、全くブランドがないという訳ではありません。本当に商品だけの価値で商品を選択してもらうには、「Rename」というタグ自体も取り外すできなのですが、それでは商売になりません。

消費者はRenameという、「有名ブランド品のブランドを外してリサイクルしているが、元の価格よりも安く売っている」ブランドであり、その商品には「Rename」商標がついているというころまで理解して、Renameブランド商品を購入します。

 

Renameのブランドがないと、ネット通販サイトも立ち上げられません。単なるタグのない商品では、消費者は洗濯方法をどうするかも分からず、もしも不良品のときに返品することもできず、安心して購入できません。

 

それはさておき、記事にあった、衣料品では販売される商品点数よりも、廃棄される商品点数が多いというのは驚きました。

電気製品などでは、売れ残りを量販店やネットショップで安く販売するということがあると思いますが、ここまでの廃棄は聞いたことがありません。

海外の新興国などでは、電気製品は憧れの商品でもあります。

 

衣料品の商売は、大変だなと思いました。