Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

アポロマークを軸に調整

出光興産のブランド戦略

2020年3月16日の日経電子版に、IDEMITSUの「アポロ」と旧昭和シェル系の「シェル」のマークの統合の話が出ています。「アポロ」マークを軸に新ブランドにするとあります。

出光、給油所ブランド刷新 旧昭シェルと21年統合 :日本経済新聞

 

  • 給油所ブランドを2021年から順次統一。3~4年かけて切り替える
  • 6400カ所すべてを出光のアポロマークを軸に刷新した新ブランドに
  • 出光のアポロマークに掲げる太陽神の顔のデザインなどが中心となる方向
  • 看板変更などの費用は200万~300万円/店舗。関連費用は100億円超の可能性
  • ガソリンのイメージが強い既存ブランドを刷新し、統合会社の新たなイメージを定着させる
  • ガソリンの販売は10年で3割減
  • 既にJXTGは「エッソ」「モービル」「ゼネラル」の3ブランドを「ENEOS」に一本化
  • ENEOS」と出光の新ブランドで合計6割超
  • ガソリン市場の販売シェアではJXTGと出光の2社で約8割
  • 国内の給油所は約3万店。流通業としては約5万店超のコンビニエンスストアに次ぐ規模
  • 給油所は、レンタカーやカーシェアなど収益源を拡大できるかが課題

というような情報です。

 

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現在の会社名(正式な商号)は、「出光興産株式会社」です。

何と表現したらよいのか分からないですが、一応屋号(商号)と理解するして、「出光昭和シェル」と言っています。

 

CMのCI後付けでも、「いでみつしょうわしぇる」と言っています。

【TVCM】 出光昭和シェル「モビリティの未来へ」篇 60秒 - Pick Up - MediaStation |出光興産(出光昭和シェル)

 

シェルブランドの店舗もあるし、「昭和シェル」をどこかで出さないと露出が減りますので、出光のブランドに統一するのは、これはこれで一つの解決策だなと思っていました。

 

出光興産のブランドは、「出光」は珍しい名字ですし、漢字の読み方も簡単ではないですので、日本では、氏にしては顕著性というかが高い言葉です。ブランド論でいう独自性も十分ありそうです。

ただ、別のブランド論からすると、海外では、長いので「IDEMITSU」は覚えてもらいにくい社名ではないかと思います。人によっては、「MITSU」が三菱や三井を連想するかもしれません。「IDE」という会社と「MITSU(BISHI)」「MITSU(I)」という会社が合弁会社でも作ったのかなと感じる人がいるかもしれません。

 

一方、図形のアポロマークは、ギリシャ神話由来のようですし、綺麗なロゴですので、どんなように修正するのかなという期待を持っています。

シェルは、黄色と赤の組合せで、道路から良く見えますが、出光のアポロマークの記憶はそれほどありません。

カラー変更や造形の単純化など、相当手を入れないと、シェルを上回るブランドは、なかなか作れないと思います。ライバルが、ENEOSだけなので、IDEMITSUという文字を中心としても良いのかもしれません。すなわち、アポロマークはワンポイントという位置づけです。

 

出光、IDEMITSUとアポロが同じ会社であるという連想できないのが、厳しいところです。シェルのマークを見れば、シェルと素直に連想します。

ENEOSを見ると、文字ですので、素直にENEOSを連想します。

おそらく、単にデザインだけで新アポロマークを打ち出しても、それが出光、IDEMITSUとは連想できないと思います。

 

本当は、社名を出光興産から、アポロ石油株式会社のようにするのが、ブランドの認識論からは一番良いのでしょうが、それは簡単にできそうにありませんし、海外でアポロ〇〇という会社は沢山ありそうで、独自性がありません。

 

そうすると、強烈に広告宣伝をして、無理やり消費者の頭にに刷り込むしかありません。少し、無駄な気がしますが、仕方ないというところでしょうか。

 

この出光興産、相当、ギリシャ神話が好きなようです。

アポロイルとダフネという2つの図形ブランドがあるようです。

「アポロイル」ブランドと「ダフニー」ブランドについて | 出光の潤滑油について | 出光興産

 

自由に社名を決めていいなら、「アポロイル株式会社」ぐらいの社名にするなら最高です。造語ですし、同じ社名はないでしょうし、石油のイメージもあり、そうかといって別の商品・サービスにも十分使えそうです。当然、ブランド(商標)も、「アポロイル」に変更です。

何より、アポロマークと親和性が高いと思います。広告宣伝費が数分の1で済むのではないかと思いますし、この名前なら海外で戦えそうです。

 

最高の案だと思いますが、おそらくダメなんでしょうね。

社名だけ出光興産を残す、ENEOSのような方法はあります。

(注:JXTGホールディングスは、2020年6月の株主総会で定款変更が認めらることを条件に、社名をエネオスホールディングスに変更するそうです。)

 

nishiny.hatenablog.com

 

 

 

欧州特許出願3年連続最多

日本企業は2%減

2020年3月13日の日経に、2019年の欧州特許出願についての話題がありました。

欧州特許出願、3年連続最多 昨年、日本勢は2%減 :日本経済新聞

  • 特許出願件数は、18万1406件で3年連続過去最多
  • 5G関連などデジタル通信分野が急拡大
  • ファーウェイ(華為技術)などに代表される中国企業が29%増
  • 日本からの出願件数は2万2066件で、2%減
  • 国別順位は、米国、ドイツ、日本、中国、韓国の順
  • 欧州は、長年、医療分野の出願が最多。2019年はデジタルコニュニケーションが首位、人工知能を含むコンピュータ技術も10%増

とあります。

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EUIPOのサイトを見てみると、もう少し情報がありました。

https://www.epo.org/about-us/annual-reports-statistics/statistics/2019.html

 

出願件数は、2016年に一度、若干前年割れをしているようですが、そこから3年連続で伸びているようです。

 

トップ出願人を見ると

  1. HUAWEI
  2. SAMSUNG
  3. LG
  4. UNITED TECHNOLOGIES
  5. SIEMENS
  6. QUALCOMM
  7. ERICSSON
  8. ROYAL PHILIPS
  9. SONY
  10. ROBERT BOSCH
  11. BASF
  12. GENERAL ELECTRIC
  13. ALPHABET
  14. MICROSOFT
  15. JOHNSON & JOHNSON
  16. OPPO
  17. INTEL
  18. PANASONIC
  19. HITACHI
  20. NOKIA
  21. CANON
  22. ABB
  23. MITSUBISHI ELECTRIC
  24. HOFFMANN-LA ROCHE
  25. BOEING

となっています。中国のHUAWEI、韓国のSUMSUNGとLGがトップ3なんですね。

その他には、欧米や日本の有名企業が名を連ねています。

 

あまり知らなかった会社は、4のUnited Technologies、16位のOPPOです。

United Technologiesは、アメリカのコングロマリットで、航空機エンジン、宇宙産業、空調装置、エレベータ、エスカレータ、防火・消火製品およびセキュリティサービス、その他工業製品の製造販売の会社とあります。

ユナイテッド・テクノロジーズ - Wikipedia

 

OPPOは、中国の大手電子機器メーカーで、歩歩高電子工業(通称:BBK)傘下の企業。かつてはDVD・ブルーレイ再生機器やオーディオ再生機器などのAV事業も手掛けていたが、現在はスマホ事業のみとなっているとあります。

OPPO - Wikipedia

 

また、24位のロッシュの商号は、Hoffmann-La Rocheというのですね。Wikipediaによると、エフ・ホフマン・ラ・ロシュ(F. Hoffmann-La Roche, Ltd.)とあります。

エフ・ホフマン・ラ・ロシュ - Wikipedia

 

EUIPOへの出願国は、

EU各国が45%

米国が25%

日本が12%

中国が7%

韓国が5%

その他が6%

ということです。

 

日本企業は減ってはいますが、善戦しているというところでしょうか。

 

 

 

インターネット広告が広告の主流に

昨年、ネット広告費がテレビを抜く

2020年3月15日の日経で、インターネット広告が広告の主流になったという記事がありました。

ネット広告費、テレビ抜く スマホ普及で 昨年、「ターゲティング」転機 :日本経済新聞

  • 電通調べ。2019年の日本広告費が2兆円を突破。テレビ広告費をはじめて上回った
  • 前年比19.7%増の2兆1048億円。テレビは2.7%減の1兆8612億円
  • ネット広告の約7割はスマホ向け
  • スマホの動画広告が好調。食品、化粧品業界もネットシフト
  • 世界では2018年にテレビを抜いている。世界では、ネット広告が43%。その6割をグーグル、フェイスブックの2社が占める
  • しかし、ターゲティング広告には消費者が反発
  • クッキー制限の動き

というような内容です。

 

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電通ニュースリリースは、下記です。

「2019年 日本の広告費」 - ニュースリリース一覧 - ニュース - 電通

 

日本でもネットがテレビを上回ったというのがニュースのようです。

今年は、推計のようなものを入れていて、少し数字が昨年までとは違うようです。ニュースリリースの冒頭に、広告費全体は、前年比101.9%とありますが、下の方を見ると違う数字もありました。

 

さて、「インターネット広告制作費」3,354億円(前年比107.9%)に着目しました。企業の広告活動を自社サイト(オウンドメディア)を基点に行う動きが進んでおり、自社サイトと連携させてのソーシャルメディア活用も増加したとあります。

 

この点ですが、私自身のネットを見ている時間では、ポータルサイトでニュースを見ている時間が長い中と思うのですが、スマホの動画などはあまり見ていませんし、YouTubeの前に出てくるものは早く消したいと思うことがほとんどです。

 

それに比べて、例えば、飲食店のアプリなどにある広告は、今、どんな料理についてのフェアをやっているのかと真剣にみます。

また、電化製品を買うときに、ECサイトに動画があると、こちらも真剣に見るように思います。

 

この電通の集計は、オウンドメディアについては「製作費」だけをあげていますが、その実際の閲覧時間や、購買へのインパクトを考えると、広告出稿費用には現れないけれども、大きな数字が隠れているように思います。

それをページビューなどで、広告出稿額に換算すると、相当前に既にネット広告がテレビを超えていたのではないかと思いました。

 

「イベント」という項目も重要なんだろうと思います。昨年はラグーワールドカップが盛り上がりましたが、今年は、オリンピックがどうなるのか良く分からなくなってきましたので、2020年はどうなるのだろうかと思いました。

 

8年連続増の広告費自体も、リーマンショックの時のように、落ち込んでしまうのでしょうか?

 

「型式名の使用と商標の保護」を読みました

知財管理 2019年12月号

知財管理の2019年12月号に出ていた、竹原懋(つとむ)弁理士の標記のタイトルの論文を読みました。サブタイトルに「商標権の効力の及ばない範囲」とあります。

 

紹介されていた判決は、大阪高平成31年2月21日判決、平成30年(ネ)第2025号 商標権侵害差止等請求控訴事件です。

原告も被告も、同じ特殊な産業用のLEDを生産販売するメーカーで、問題になったのは、型式名の「LDR」という3文字の標章です。

この裁判では、被告の使用は商標的使用ではなく、商標権侵害に当たらないと判断されています(商標法26条1項6号の抗弁の成立)。

 

今回の判決では、型式名(型式記号、製品品番など、言い方は色々あると思います。)が商標的使用ではないと判断されていますが、論文では結論が反対の「SVA等事件」(商品「ポンプ」と「ポンプ部品」、「SVA」等の商標の使用に関する事件、平成17年7月25日、大阪地裁平成16年(ワ)第8276号)にも言及されており、どのような場合には商標的使用になり、どのような場合に商標的使用にならないか、対比して説明してあるのが、参考になりました。

 

具体的な内容は、知財管理誌で確認いただいきたいのですが、理解したのは次です。

 

SVA等事件において、型式名も商標の使用となることがあると判示されています。

一方、LDR等事件では、下記のような事情(他にもあるのですが、代表的と思ったものを記載しました)があれば、商標的使用ではないとされ、抗弁理由となることがあるというものです。

  • 標章がカタログ等で顕著に表示されておらず、一覧表や価格表における型式名の一部として表示されるにとどまり、
  • 他にブランドやシリーズ名として把握しうる商標が使われており、
  • 型式名の由来が、商品の形態・機能・色・寸法から説明でき、
  • 型式名が商品選択の手がかりではなく、あくまで自社商品の内部での区別のためのものである、というような場合です。

 

もう一つ、型式名については不正競争防止法も関係あるようです。

不競法2条1項1号の周知商品等表示混同惹起行為にあたるものとして、商号の略称としても周知な型式名の使用差止が認められた事例(「TF型式番号事件」(平成8年1月25日、大阪地裁平成5年(ワ)第1326号))が紹介されています。

大阪地裁、大阪高裁ばかりですね。大阪では型式名での争いが多いのしょうか?

 

さて、実務上の指針として、竹原先生は、商標調査は経由しておくべきだが、商標出願は予算の関係で現実的ではないので、本判決を参考に使用方法の指導をすべきとされています。

公式に書くなら、そうなると思いました。

 

ただ、企業からは、使い方には注意するので、何とか商標調査の手間を回避できないだろうか?という質問がありそうです。

J-PlatPatを見て、諸般の事情をベースに自分で判断することができる企業の商標担当者ならまだしも、どんどん生まれる型式名について、外部の事務所に費用を出して本当に調査すべきなのか?という疑問です。型式名の数は商標数以上にあるのではないかと思います。

 

このあたりは、企業が自身で基準を決めて、ルール化しておかないと仕方ないところだと思います。

 

最後に、この論文、次のような言葉の使い方がされていて参考になりました。

まず、商標法2条の商標の定義に本質的機能の要素がないためにPOS事件のようなものが発生するというところを、出所表示機能、品質保証機能と機能論の言葉で説明しています。自他商品識別力ではない点、良いなと思いました。

また、標章と商標という言葉の使い分けがしっかりされているように思いました。MarkとTrademarkは本来ちゃんと使い分けるべきですね。 

 

ちなみに、海外での考え方は、以前の知財管理に紹介がありました。 

nishiny.hatenablog.com

 

 

美容ローラー特許権侵害訴訟 その2

判決の内容

 

知財高裁のWebサイトに、今回の知財高裁判決と地裁判決の紹介があります。

大合議事件 | 知的財産高等裁判所

判決の要旨

https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/file/31Ne10003_yousi.pdf

判決の全文

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/272/089272_hanrei.pdf

原判決の全文

https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/file/28wa05345_gensin.pdf

 

日経でポイントとして紹介されていたのは、当該特許の利益への寄与度です。

 

判決を見ると、もともと、特許は2件あったようですが、1件の特許については、特許発明の技術的範囲に属さないと判断されており、2つ目の特許についてのみ侵害が認定されたようです。

2つ目の特許は、軸受け部材と回転体の内周面の形状についての特許です。

 

製品は美容ローラーです。原告は有名な会社で、原告の製品にはソーラーパネルもあり、微弱電流が流れているそうです。また、プラチナコートされており、価格帯が違います。

原告の製品が約24,000円で、被告の製品は3,000~5,000円だそうです。

 

判決は、一個あたりの利益を割り出し(これにも論点はあるようですが)、それに売り上げが減った個数をかけています。被告の販売個数が35 万1,724個とあります(相当多いです)。

そして、価格帯が比較的異なるという面やその他の事情で、約5割の割引をしています。その結果が、3億9,006万円で、これに弁護士費用5,000万円を加えたのが、今回の知財高裁の判断です。

 

一方、地裁判決では、この2つ目の発明の部分の、製品全体への寄与度を10%としています。しかし、知財高裁ではこの考え方を認めていません。

 

法律に規定がないし、そうすべき根拠がということが理由のようです。引用すると、

(5) 本件発明2の寄与度を考慮した損害額の減額の可否について
仮に,一審被告の主張が,これらの控除とは別に,本件発明2が被告製品の販売に寄与した割合を考慮して損害額を減額すべきであるとの趣旨であるとしても,これを認める規定はなく,また,これを認める根拠はないから,そのような寄与度の考慮による減額を認めることはできない。

 とあります。

 

民間企業同士がライセンス交渉をするときは、地裁判決のいうような寄与度の感覚があると思いますが、それを考慮していません。基本発明であるとかの説明のためのロジックも特にない感じです。

 

逐条解説を読むと、特許法102条1項は、平成10年法改正で導入とあります。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/kogyoshoyu/document/cikujyoukaisetu/tokkyo_all.pdf

20年も前の法改正です。

 

今回のように、販売に直結するような基本特許でなくても、その寄与度が考慮されないとすると、相当厳しいなと思いました。

 

3億9006万円を35万個で割ると、1,109円です。一個3,000円~5,000円のものを販売して、通常、1,000円の利益はないように思います。被告にとっては相当な吐出しになりそうです。

原告側の損害をみないといけないのは分かっていますが、被告としても無い袖は振れないとならないか心配です。

 

特許権侵害をすると大変なことになるというのはわかりましたが。。。

 

美容ローラー特許権侵害訴訟

知財高裁が4億4000の賠償命令

2020年2月29日の日経に、美容機器メーカーのMTG名古屋市)とファイブスター(大阪市)の特許権侵害訴訟の判決が紹介されていました。

特許侵害の損害、逸失利益で推定 知財高裁が判断 :日本経済新聞

  • 5億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決
  • 約4億4000万円の賠償命令
  • 知財高裁は、損害額の算定方法について判断枠組みを提示
  • 特許法は、侵害品の販売数量に製品一個あたりの利益額をかけて損害額と推定
  • 製品に対する特許の貢献度合いを考慮するかが争点
  • 一審は特許が販売に寄与した割合を考慮して、約1億1000万円の賠償命令
  • 高裁は、特許による特長が製品の一部にしかない場合でも、販売で得られたはずの利益全額を権利者の逸失利益として推定できると判断
  • 一審の特許が寄与した割合の考慮を、規定や根拠がないとした

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逸失利益(得べかりし利益=得たであろう利益)の話ですね。特許権者有利の判決なので、時流に乗った判決ということなんだと思います。

 

この特許は製品の基本的な部分を占める、重要な基本特許なんでしょうか。

もし、特許が複数ある製品であるとか、被告も特許を沢山持っていて、それを原告も使っているような状態なら、事情も違うようか気がします。

枝葉末端の特許で、製品全部の逸失利益までの損害賠償が認めらるとなると、ちょっとやり過ぎだと思います。

このあたりは、別に判例評釈などが出てくると思いますので、それを読んでみたいなと思いした。

 

さて、数年前、世界中でアップル対サムスンスマホの訴訟があり、特許と意匠の価値の差というものが話題になっていました。

医薬品や化学品は別として、電気機器の特許は結局、効力範囲が特定機種に限定されたり、特定の機能に限定されたりして広くありません。

一つの製品で数千以上の特許が使われているとなると、ますます、特許は部分的な扱いしかされません。

しかし、意匠は製品全体についてのものですので、サムスンに出された高額の損害賠償額の判断の「ほとんど」は意匠でした。

 

今回のこの製品の場合、オリジナルメーカーと通従した後発メーカーという区分けもあったんだろうと思いますが、意匠権侵害ではダメだったのかなという気はします。

日経の写真を見る限り、素人的には、製品形態は類似といえば類似に見えます。

 

もしかして、意匠の悪いところが出たのかと思いました。すなわち、細かく権利を設定してしまっているというものです。

J‐PlatPatで見てみました。そのところ、ファイブスターはマッサージ器でこの製品の意匠権を、例えば登録第1628623号など持っているようです。

混同説の立場からは、意匠は商標と同じように、登録になったら使用できると、出所表記的に考えることが多いですので、デザイン的には使用可能となります。そうなると特許で争うしかなかったのだと思います。

これは、日本の意匠が創作説を採用できておらず、利用意匠の考え方が、「そっくり説」でとどまっていることから生じているように思います。

 MTGも本来、この意匠の登録無効を争って、意匠でやっても良かったのではないかと思います。

J-PlatPatを見ると、香港の会社の登録もあるので、こちらも消さないといけませんが。

 

無効で争うと、特許庁を敵に回すことになりますし、無効にしてから侵害認定をして、損害額の認定をしていると数年かかり、即効性がないということで、特許中心になったのかもしれません。

 

しかし、将来的にも、商品をちゃんと抑えるためには、今からでも、意匠無効もやっておきべきではないかという気がします。

 

知財高裁の判決です。教えてもらいました。損害賠償論に詳しい人の解説が欲しいところです。。。

https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/file/31Ne10003_yousi.pdf

知財紛争 二段階訴訟検討

民事司法制度改革 最終報告

2020年3月11日の朝日新聞に民事司法制度改革の最終報告についての記事がありました。

  • 政府が3月10日に民事司法制度改革の最終報告書まとめ
  • 民事司法制度の国際競争力強化が目的
  • 民事裁判手続きのオンライン化と知的財産権訴訟の改革
  • 各省庁が報告書を元に具体策を実施
  • オンライン化で迅速な裁判。日本の裁判所を活用してもらう
  • より多くの判決を公開
  • 実施には5年
  • 知財面では、侵害判断と損害賠償の算定を分ける二段階訴訟の導入
  • 懲罰的損害賠償
  • 専門家による裁判所への助言制度
  • 弁護士費用の敗訴者負担、など
  • その他、仲裁制度の活用や国民生活センターの越境消費者センターの職員増員など

となっています。

 

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内閣官房のWebサイトにまとめが掲載されています。

民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/minjikaikaku/dai3/gaiyou.pdf

 

パワーポイントを見ると、知財については、次のような項目でした。

・二段階訴訟制度の導入
・損害賠償の見直し
アミカスブリーフ、アトーニーズ・アイズ・オンリー。弁護士費用の敗訴者負担の導入
知財調停の活用・充実
知的財産高等裁判所の大合議制度の拡大

 

アミカスブリーフというのが専門家による助言で、アト―ニーズ・アイズ・オンリーは営業秘密の取り扱いのようです。

知財高裁の大合議制度の拡充というものもあるようですが、中国のように知財最高裁のようなものを作るのでしょうか?

 

重要なものは、二段階訴訟と懲罰的賠償です。

特許庁の資料を見ると、二段階訴訟はドイツの制度にあるようです。

また、懲罰的賠償は、米国、台湾、韓国、中国にあります。

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/tokkyo_shoi/document/32-shiryou/03.pdf

 

朝日新聞の記事では5年とありますが、これは民事裁判のオンライン化の完了の時期でしょうか?

知財裁判の改革については5年は遅すぎるのではないかと思いました。

 

韓国の確認審判制度は非常に良いと思いますので、判定制度の拡充が望ましいと思うのですが、裁判所に人気がないのか議論もされていないようです。

ただ、日本の裁判所の人員構成を見ると、もう少し専門官庁である特許庁を活用した方が良いように思います。 

 

懲罰的賠償についても、法律家は積極的ではないと思いますので、政治判断が必要だと思います。