Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

DENSOの室外機のブランドから

エコキュートのようです

 

自宅マンションの近所に出来た一戸建てに、エアコンの室外機があり、DENSOブランドがついていました。

ついに、Fujitus Tenに続いて、富士通ゼネラルまでデンソーの傘下に入り、DENSOブランドでのエアコンのOEM供給でも始めたのかと思いました。

 

エアコンの室外機は、家電製品の中では、家の外に設置されるという意味で、特殊な商品です。すなわち、家電は、通常は家の中のものですので、あまり知られていないメーカーのものでもOKですが、室外機は家の外になり、車と同様に、どのメーカーを使っているのか、ご近所にもろに知られてしまいます。

 

そのためでしょうか、海外では、室外機のブランド表示を非常に大きくしてくれという要望がよくあります。外国製品(日本製品)を使っているんだと、近所に知ってもらいため(自慢したいため)と聞きました。

 

しかし、調べてみると、今回の私のご近所の製品は、エコキュートの室外機のようです。デンソーは、カーエアコンの事業はありますが、家庭用エアコンの事業はないようです。

一方、Wikipediaによると、デンソーは、エコキュートの基本特許を持っている会社で、デンソーのWebサイトに、エコキュートのラインアップされていました。

 

デンソーエコキュート開発物語|テクノロジー|自然冷媒給湯機エコキュート | デンソー

こちらのデンソーのWebサイトに、デンソーエコキュートの関係が、すこしドラマチックに解説してくれています。

 

元々、カーエアコンの次世代冷媒を探しており、CO2に行きつき、東京電力電力中央研究所と共同研究して、エコキュートの技術を確立したようです。

 

このデンソーのWebサイトによると、技術はデンソーが開発したが、販売ルートに課題があり、複数の住宅市場に強い設備機器メーカーのブランドで販売し、デンソーは、基幹部品の給湯機本体を製造供給することになったとあります。そういう関係なのですね。

 

また、Wikipediaによると、「エコキュート」の商標権は、関西電力がもっているとあります(商標登録第4575216号です)。この関係は良くはわかりませんが、オール電化に熱心な関西電力が商標権を持つということは、事業の推進のために必要だったのだと思います。

 

一般に、商標権は、特許に比べて、共有という概念になじみがありません。商標は、出所表示機能が基本と良いながら、複数出所の想定は、原理的に、出所表示機能とは相いれない部分があります。もちろん、複数で使用する場合も、品質表示は宣伝広告機能はありますので、商標の保護は必要です。

そのためでしょうか、特許ではあれだけある、共同出願は、商標では、さぱっりありません。

 

一般に、業界で共同して作った技術的な商標などは、共同出願するよりは、幹事会社を決めてその単独名義で出願することが多いようです。幹事会社は一社のときもありますが、複数の会社が国で割ることもあります。

 

あまり行き過ぎると、業界なれ合いになりますが、どこか突出した会社があり、全部面倒を見る場合以外は、分担も致し方ないという感じです。

 

この点、海外企業は、皆さん、技術ブランドの取得に熱心ですので、同じ技術に対して、我先に商標権を取得して、ノウハウをセットにしてパッケージ化して、ライセンスすることが多いと思います。

ノイズリダクションのドルビーなどが代表ですし、IEEE1394にアップルがFireWireと名付け、ソニーがi-Linkと名付けた事例(結局、このネーミング競争はソニーの勝ちでした)などがあります。必ずしも、特許をすべて持っている必要はありません。技術の規格をパッケージ化して、名前を付けて、商標権でライセンスを取れば良いのです。

 

ポイントは、規格のパッケージ力とネーミング力と商標権取得力です。

 

この観点で、エコキュートの商標権を見ると、なぜデンソーは基本特許をもちながら、商標権取得を関西電力に譲ったのかは、理解に苦しみます。

 

デンソーは他にも、QRコードの特許を持っており、規格も作ったのに、無償解放しています。普及をしたいため、課金しないということは理解できますが、今となっては、課金しておけばというところではなかったでしょうか。

 

ちなみに、J-Plat Patによると、「QRコード」の商標権は、(株)デンソーウェーブが権利をもっていますが、無効審判中とあります。こちらも、だいぶ、ややこしくなっているようです。