待ち合わせの黒人客逮捕
2018年4月18日の朝日新聞(夕刊)で、米国のスターバックスが、5月29日午後に全米8,000店の直営店が、一斉休業するという記事がありました。
- 4月12日、フィラデルフィアの店舗で、商品を買わずに店舗にいた黒人男性2名が逮捕
- 知人との待ち合わせ。商品を買わないまま着席。トイレを使おうとして断れた
- 店は退店を求めた。2人は拒否。店が通報。警察が不法侵入で逮捕。
- 居合わせた客が撮影。コメントをつけてツイッターに投稿。1千万回以上の視聴
- 人種差別との批判が殺到。ボイコット運動が起こっていた
- 4月17日に、一時休業して、研修をすることを発表
- 17万5千人が人種差別を防ぐ研修を受ける
コメント
4月12日に事件が起こって、SNSで情報の拡散があり、4月17日には対策としての研修会の発表という流れですので、危機管理といしては、非常に素早い対応ではないかと思います。
実際の研修会は、5月29日午後としても、それが実施できるようにするのは、簡単なことではないように思いました。
場所はどうするのでしょうか?テレビ会議のシステムのある貸会場が、全米で確保できたのでしょうか?店舗でやるなら、電話会議と配布資料で対応かなと研修会のロジスティクスのことを心配してしまいました。
全米でのボイコット運動を抑えるためには、こういう方法を取るしかなかったのだと思います。
今回は、人種差別事件でしたが、何かがあったら一斉休業して一斉研修するという危機管理のプランをもっていたのではないかと思うぐらいのスピード感です。
最近の日本の会社は、詳細な災害対策を持っており、業務継続のため、自宅でも仕事ができるようにテレワーク環境を整え、防災訓練を実施し、安否情報報告システムを用意し、安否確認訓練までやっているのは、地震がない国の人からすると驚くべきことだと思いますが、多くの会社で実施していることだと思います。
ただ、日本の会社の危機管理は、地震や風水害などの災害に特化しているので、今回のスターバックの危機のようなことまでは、想定していないと思います。
日本でも、危機管理の射程範囲は広めに考え置いて良いのではないかと思いました。
海外のメディアで、この研修について、どんな論調かと思って調べると、半日の研修程度では人種差別を防ぐことは難しいというようなものが、複数ありました。
例えば、2018年4月22日のThe Guardianです。
専門家の意見として、とりわけジェンダーや人種の偏見のあたりでは、素早く対応したとするために、研修という選択肢を採用するが、労働者の教育では研修は最低限のインパクトしかない。
人々は信念や視点の変更を強く強いられているように感じ、もっとステレオタイプになったり、反発のきっかけになったりするとしています。
半日の研修だけでは解決しないとは思いましたが、研修だけでは逆効果の場合もあるようです。
スターバックの依頼した専門家は、今回の研修(racial bias training)に関して、今回は、eye-catchingのステップであり始まりにすぎず、違った人種や背景を持つ人の相互交流を促進することを、仕事に落とし込む必要があるとしています。
そして、ポリシーや手順の見直しが必要であり、また、経営陣の深い関与が必要であり、従業員のためのルールの変更が必要ということです。
例えば、店でまっている人に適用されるルールやトイレを使用する人のルールなどの明確化が必要としています。
職場風土にまで落とし込むということですね。
スターバックスは、米国では良い雇用者として知られているようです。例えば、アリゾナ大学と提携して、従業員の身分のある期間は大学の授業料を免除したり、週20時間以上働く労働者には健康保険の資格を与えたりしているとあります。
名声に傷がつくがことが心配ですが、別のサイトで株価は下がっていないとありました。
別のWebサイトでは、この事件のマネージャーは、既に解雇されたとありました。日本では、解雇はなかなかできないですので、違いがあるなと思いました。