カテゴリーの代名詞なのに
2019年1月23日の日経電子版に、中国のシェア自転車の「モバイク」がブランド名を美団単車に変更するという記事がありました。
記事によると、
- 現在のモバイクの株主は、中国ネット出前サービス大手の「美団点評」
- 傘下のシェア自転車大手の「摩拝単車(モバイク)」のブランド名を「美団単車」に変更
- 美団は、スマホから出前が注文できる人気のアプリ。「美団」ブランドは中国で高い知名度
- モバイクのアプリについても、美団に一本化し、美団ユーザーにモバイクの利用を促す
- 中国のシェア自転車は経営難。ブランド名を変更することで、マイナスイメージを払拭する狙い
- しかし、モバイクは、シェア自転車2強の「ofo(オッフォ)」と並び高い知名度
- 既存ブランドを捨てることはかえってリスクになる可能性
コメント
2019年1月24日の朝日新聞には、モバイクは、日本でも、LINEと組んで、神奈川県大磯町や奈良市で事業を展開しているとあり、この日本のブランド名がどうなるかは不明とあります。また、モバイクと並んで2強とされる、ofo(オッフォ)も経営難とあります。
シェア自転車が、中国で大ヒットして、その後に過当競争になり、経営が悪化し、美団に買収され、美団のもとで建て直しの努力がなされているのは分かります。昨年末に、モバイクから創業メンバーが離れたということもあるようですが、モバイクのブランドを止めるというのは、どうなのかなと思いました。
ブランディングでは、ブランドを創るのは、宣伝ではなく、パブリシティ(広報)であるという話があります。
特に、はじめにあるカテゴリーを、一番にスタートしたブランドは、ずっと一番であり続けることが多く、あの商品といえば、あのブランドと消費者の心に強く焼き付けられていることがあります。
- バンドエイドは、最初の救急絆創膏
- ケンタッキーフライドチキンは、最初のファーストフードのチキンチェーン
- ゼロックスは、最初の複写機
というようなものです。
このカテゴリーを作ったブランドは、忘れ去られることがありません。
日本語でいうと代名詞になったという事だと思います。
広告は、出来上がったブランドを維持するために、防衛的に行われるものであり、ブランドを創るのは、このカテゴリーに最初に現れたということが非常に有利な点になります。
この視点で見ると、何とかモバイクのブランドを残した方が良かったのではないかとい気がします。
日経には、モバイクの創業メンバーが抜けたことが、今回の判断に影響があったようなことが書かれていましたが、その創業メンバーが他で事業を開始したとしても、「モバイク」のブランドを使うことはないと思いますので、ブランドを変える一因となることはあっても、主な原因ではないと思います。
カテゴリーを作ったようなブランドまで捨て去る必要があるほど、事業環境が変化していたということなんでしょうか。