裁判を受ける権利と表現の自由
2019年10月28日の日経に、スラップ(SLAPP)訴訟という話が出ていました。批判的な言動をして名誉を棄損されたなどと訴訟を起こされた側が「言論を封じるための不当な提訴だ」と主張して、提訴を違法とする判決を得ることをいうようです。
10月に2件の判決があったそうです。
その提訴は「スラップ訴訟」? 判断のポイントは :日本経済新聞
- 千葉地裁松戸支部:フリージャーナリストの主張を認め、地方議員に約78万円の賠償を命じた
- 東京地裁:弁護士の主張を認め、大手化粧品会社会長に110万円の賠償を命じた
- スラップ(SLAPP)とは、「社会的参加を妨害するための戦略的訴訟」の略語。恫喝訴訟とも訳される
- 米国で1980年代に公害問題で企業を批判した市民が訴えられるケースが多発
- 多くの州が法的に規制。原告が提訴の正当性を立証できなければ裁判打ち切りに
- 違法となる基準は、①原告が主張した権利などに事実的、法律的な根拠がない、②そのことを知りながらあえて提訴した
- 日本でも2000年代初めから目立ち始めた
コメント
スラップは、Slap(平手打ち)なのかと思ったら、略語(abbreviation)のようです。
Wikipediaに詳しく解説がありました。
SLAPPは、strategic lawsuit against public participationの略で、恫喝訴訟、威圧訴訟、批判的言論威嚇目的訴訟ともいう。
Wikipediaには、数点、事例が掲載されています。
特許権侵害や商標権侵害で警告書を送るときに、メーカーに送ることもあれば、取引先の流通に送ることもあります。特に、商標権侵害などでは流通に送ることも多いと思います。そのとき、ビックリしたメーカーから、営業妨害だと主張されることがあります。
恫喝という面では似ています。
しかし、スラップ訴訟で裁判が打ち切られるのは、表現の自由に該当するような例外的なものであり、知財事件のような商売上や営業的な利害の衝突の問題は、表現の自由が問題になることは少ないので、スラップ訴訟と認定されるようなことはほとんどないように思います。
知財事件で、営業妨害だと云われたときは、こちらは正当な権利の主張をしているだけです。もし、これが営業妨害というなら、どうぞ裁判でもやってください。正々堂々と受けて立ちますというしかないように思います。
ただ、スラップ訴訟という言葉と、概念だけは押さえておいて損はなさそうです。