「商標分野におけるAIの今後について」を読んで
パテントの2020年2月号の「商標分野におけるAIの今後について」を読みました。トレルを経営していている方(弁理士)と商標の得意な弁理士のお二人の報告ということです。
昨年10月にAI対商標弁理士というイベントがありましたが、その背景を、当事者がまとめたものであり、貴重なものではないかと思います。
商標弁理士の方は知り合いです。トレルの社長は知り合いではありませんが、トレルの商標出願が伸びているという話は聞きます。少し前にネットに広告を出して安価に仕事を受ける特許事務所が話題になっていましたが、トレルやCOTOBOXのようなAIが人気になっていしまい、そちらの事務所の話題が飛んでしまったような感じでもあります。
詳細な内容は、その内ネットに公開されるパテント誌を読んでもらいたいのですが、言いたかったのは次のような点だろうと思います。
- 日経の2017年9月25日の記事の評価
- 商標業務の中のどの部分がAI向きか
- AIに向いていること
- AIでできることと、その他のコンピュータシステムでできることの違い
まず、日経の記事ですが、野村総研とオックスフォード大学の共同研究では、10~20年後にAIによって自動化される弁理士の死後kは、92.1%という数字があったという点です。この数字は将来に不安をあたえる数字という評価です。
そこで、AI vs 弁理士イベントをして、図形商標の類否判断、文字商標の類否判断、識別力の判断でについて対決実験をし、弁理士の方が少し上のようですが、大体同じような成績だったというような内容です(AIのチェスや将棋に似ています)。
図形商標の調査にはAIは向いているようであり、特許庁などもそこに資金を出していたのではないかと思います。
特許庁における人工知能(AI)技術の活用に向けたアクション・プランの平成30年度改定版について | 経済産業省 特許庁
報告では、弁理士の業務を網羅的に分析して、事務作業の部分、今回の類否判断の部分、クライアントとのヒアリング等の部分に分けて、クライアントとのヒアリング・意向確認・出願戦略策定などが多く、これらは今回のAIとの対決でも評価をしていないし、おそらく代替されないであろうとしています。
その反面、事務作業については、そもそもAIではなく、VBAやRPAで相当置き換わるとしています。
RPAは良く聞きます。知財協会の商標委員会委員長をされていたある方も、RPAの専門部署に移って開発をしていると聞きましたし、これは知財業務においても、大きな流れになりそうです。
VBAとは、Visual Basic for Applicationのことでしょうか。MicrosoftのOfficeに搭載されているプログラミング言語で、Excelのマクロなどを指すようです。
この報告では、今回のAIとの対決は、類否や識別力の判断でしたが、将来は意見書の作成にもAIが活用される可能性があるとしています。
AIの自然言語処理で、「BERT」という手法が注目されており、Googleでは文章の意味を理解するのに、この手法を使っているということです。
可能性としては、意見書の作成が可能かもしれないということでした。
この報告を読んだ感想としては、すでに機械翻訳ではAIの世話になっていますが、外国商標やブランドマネジメントでは、AIはどのように役に立ってくれるのかなと思いした。
できれば、商標よりも難しいとされる指定商品(役務)の判断や、ネット上のブランドの不適切使用の発見や警告書の送付(Who is 情報に基づく、emailでの警告)にAIが活躍するように思います。