米国は、1件あたり22倍
2020年6月22日の日経に、日本の大学発特許のライセンス収入が、米国に比べて少なく、また、大学の研究費の民間負担率が低いという話が出ています。
(エコノフォーカス)大学発特許 生かせぬ日本 1件あたりライセンス収入、米は22倍 投資乏しく研究細る懸念 :日本経済新聞
- 2017年に、日本の大学発の特許で、収入につながったのは、約6000件で計50億円
- 米国は2万件超で3360億円
- 一件あたりの額は、米国は日本の22倍
- 研究者はライセンス収入に不満
- 例として、がんの免疫治療薬の「オプシーボ」の本庶佑京大特別教授と小野薬品の係争(年8000億円の売上があり、226億円の配分を求めて提訴)
- 成功例は、東大TLOがスタートアップのペプチドドリームの新規アブ予約権を取得したケース
- また、民間の大学研究費の負担は、日本は2.6%、米国5.2%、ドイツや韓国は10%超
- 米国は国からの委託研究の成果を受託者が特許にできる(1980年のバイ・ドール法)
- 日本は、2009年から同様の制度
- 大学には、知財力も不足。偏り。東大は255件。しかし、名古屋大で111件、慶応大で68件と少ない
コメント
3つぐらいのことを一つの記事にしているようです。
一つめは、日米のライセンス収入の比較。
二つめは、大学の研究費の民間負担割合。
三つ目は、委託研究の成果の帰属です。
これらは相互に絡み合っている内容なんだろうと思います。
一つめの、一件あたりのライセンス収入が低く、米国の22分の1しかないというのは、結果論です。
二つめの、民間負担が少ないというのは、どうなんでしょうか。最近は、オープンイノベーションとかいうので、きっちりと成果として研究結果が出るところなら、委託研究は盛んであるように思いますが、企業は大学の考え方とか、ルールとかが嫌で、大学の活用を敬遠しているのかもしれません。
三つめの、委託研究の成果物を、受託者が特許にできるという点は、重要なように思いますが、研究者や中小企業なら良いのですが、大企業が受託者になる場合が多かったりすると、あまり意味がないように思いました。実体は、大企業優遇策になっていないなら良いのですが、どうなんでしょうか。
日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法第17条) (METI/経済産業省)
米国バイ・ドール法28年の功罪 新たな産学連携モデルの模索も
こちらは、2009年の文章ですが、今でも参考になりそうです。
本庶先生の226億円は累積金額で、2017年計50億円というのは単年度のライセンス収入ですが、本庶先生への支払が認められると全体が相当程度押し上げられそうです。
こんな高額収入を、日本の裁判所が認定してくれるのかどうかですね。
日本企業は判決がでたら従うのだと思いますが、ここまで金額が高額化すると、裁判所の権威、あるいは敬意や尊敬というものが必要なような気がします。
基本は、グローバルに見ても納得性のある理論で構築された成果物である判決で見てくれということなんでしょうか。
一般の人には、知財判決をそのままで理解することは難しいので、それを通訳する新聞記者や大学教授の役割も重要ということなんだろうと思います。