Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

本社のシンガポール移転

ダイソンとLIXIL

2019年1月25日の朝日新聞で、ダイソンが英国からシンガポールに、本社を移転するという記事を見ました。

  • 本社と電気自動車の生産部門をシンガポール
  • 家電生産が盛んなアジアに経営の中心を移転
  • 研究開発部門は英国に残す
  • 今後数カ月以内に
  • ダイソン首脳は、EU離脱とは無関係と説明

とあります。

 

もう一つは、LIXILです。日経ビジネス電子版に、MBOを行い、日本を上場廃止にして、シンガポールに本社を移転し、シンガポールで上場する計画があるという記事が出ています。

スクープ LIXILがMBO検討、日本脱出も:日経ビジネス電子版

日本の市場では、コングロマリットディスカウントで評価されているので、会社を国内会社と海外会社に分けようとしたが、すでに一体化が進んでおり、分ける作業をするよりも海外移転が良いという判断とあります。

 

こちらについては、2019年1月20日付のロイターに、そのようなことは決まっていないという反対の記事もありましたので、実際どうなるのかは不明ですが、日本の大企業が国外移転する話しは聞いたことがありません。実現すれば、大きな影響があると思います。

 

コメント

最近読んだ2つの記事が、ともに、シンガポール移転といっていたので、関心を持ちました。日経ビジネスLIXILの記事によると、シンガポール法人税率が低いということと、アジアにあるということと、株式市場(SGX)があるというが書かれています。

 

香港とシンガポールを比べると、香港市場には規制があり、シンガポールになるとあります。

 

日本に本社を置いて、ニューヨーク証取引所で上場している会社は、Wikipediaによると、2018年11月現在、11社あるようです。

ソニー、ホンダ、三菱UFJFS、オリックストヨタキヤノン、野村HD、みずほ、三井住友FS、LINEとあります。

上場を止めたのは、パイオニアTDK日立製作所パナソニック、クボタ、コナミアドバンテスト日本電産、NTT、NTTドコモ、京セラと、こちらも11です。

 

一方、シンガポールのSGXに、上場しているのは、野村、村田製作所、MARUWAとあります。上場廃止をしたのは、コナミジークホールディングスとあります。

 

重複上場になるのかもしれませんが、日本に本社を置きながら、シンガポールに上場することは、今でも、可能ではあるようです。

 

英国企業の本社がシンガポールに移っても、英語は通じるし、生産拠点であるアジアには近いし、伸びている市場だしと、理解できますが、

日本企業の本社がシンガポールに移転するとすると、実際、どうなるのかなぁと思います。

 

既に生産拠点やアジアの販売拠点は、アジアかもしれませんが、日本には研究開発や日本市場もありますので、間接部門も、相当数、日本に残るのではないかと思います。

そうなると、意思決定に関与する少数の人がシンガポールに移るというのが現実的で、税制や証券市場のメリットを享受するということとが一番のメリットとなりそうです。

 

日本の営業や研究開発の人も、外資系の企業に勤務したことになり、英語を使う機会が増えるだろうということと、経営の手法が欧米的に変化することが想定されます。

非常に面白い試みだと思います。

 

先日、知財の研修会で、シンガポールは、特許審査でも優秀という話を聞きました。審査官に博士号の保有者が非常に多く、先行技術調査は英語を中心にするので、質が高いと言っていました。

(日本語の先行技術調査では、既に先行調査は無理な時代になっており、英語、中国語、韓国語のサーチが必要な時代だそうです)

対抗するためには、特許庁も英語や中国語のできる博士を大量に採用して、日本の審査の魅力を高める必要がありそうです。

英文明細書を一から書けるだけの英語力というのは、一部の渉外弁理士の特技のようなものでしたが、審査官に、それに近い英語力が求められる時代になっているようです。

 

事務所でも、シンガポールの事務所はハブとして、東南アジアやオセアニアを見ているとようです。

 

シンガポールには、法制度の透明性や、優秀な人材が集まることから、アジア本社を作るならシンガポールという流れは止まりそうにありません。