100社を調査した結果の60社の事例集
2019年6月24日の日経新聞に、特許庁が、国内外の企業の知的財産戦略についての事例集を発行したという記事がありました。
- トヨタやマイクロソフトなど約100社の調査。60社の事例掲載
- スタートアップ企業との連携が知財戦略の傾向
- 経営層や知財担当者へのヒアリング結果
- 今後、全国各地で説明会
- オープンイノベーションや、異業種参入時に知財戦略が重要
- トヨタが、IT企業が自動車分野に参入することを意識して、特許のライセンスを結んでいる
- KDDIが、自社サービスを向上させるため、協力関係にある新興企業の権利化や訴訟対応を支援
とあります。
報告書自体は、次から入手可能です。
「経営における知的財産戦略事例集」について | 経済産業省 特許庁
コメント
これは、お金のかかっている調査だなと思いました。よくある、外郭団体の受託事業のように、まともに、複数の担当者を海外に送って調べているとすると、だいぶお金が、かかりそうです。
調査の実施主体が、PwCコンサルティングであり、世界各地に支社があると思いますので、そこからヒアリングに行ってもらえば、それほどはかからないのかもしれませんが、実際、どうやったんでしょうか。
PwCにとっては、特許庁からの依頼なので、表玄関から行ける面白い企画だったのだと思います。日本国特許庁の名前と、世界のPwCのネットワークを使えば、この調査も、思ったよりは、簡単に進むのかもしれません。
60社の事例が、ミソなのですが、これが、今の知財の現状なんだろうなと思います。各社、赤裸々にリアルなことを話している訳ではないと思いますが、世界の会社は、だいたいこのようなことを考えているということは分かります。
ただ、文章の意味を読み取るのは、これはこれで大変です。特許庁が、説明会をするようですので、それに参加した方が、理解できると思います。
新聞に、トヨタとKDDIが例として出ていますが、トヨタは他に、ソフトウェアの特許の相互利用を行うコンソーシアムに入っていることが紹介されています。どんなソフトなのかはよく分かりません。
KDDIは、スタートアップが提案したアイディアが不当に取り扱われない仕組みを用意しているとあります。
KDDIから見ると、スタートアップの活用が上手くいっているということになりますが、一方、より広い視点で見ると、スタートアップが元気にならないと、日本が元気にならないという面があり、従来の慣行を配して、KDDI的にやって欲しいという経産省や特許庁の意向もうかがえます。
この事例集のもうひとつの価値は、外国企業の事例を掲載している点にあるように思います。巻頭にある鴻海の元法務部長の話は参考になりますし、やはり、海外企業は、戦略的発想で先を行っているなという感じがします。
企業の知財部は、こんなことをやっているだなということが、分かる事例集だと思いました。
ほとんど、商標やブランドは、言及がない感じです。実際、知財部ではなく、経営企画やコニュニケーション系の部門がやっていることも多いので、致し方ないというところでしょうか。