知財管理 2019年9月号
知財管理誌の9月号に、知財協会の情報システム委員会の第3小委員会の、「知財管理システムによる業務効率化に関する調査」という論説がありました。
- クラウド型知財管理システムが導入されつつある
- 委員会所属企業とシステムベンダに、アンケートとヒアリング
- クラウド型システムは、サーバ保守の負担軽減、特許事務所・年金管理会社との外部連携、業務の効率化につながるとして関心が高い
- セキュリティとカスタマイズが難点
- 企業では、コストの他、データ連携、グローバル化対応のメリット
- 特に大企業は積極的。特許事務所にデータ入力を委託するメリット。自社開発の高コストからの脱却。クラウドを不安視しない(クラウドストレージも7割が利用して良い)
- 大企業に対応しているクラウド型製品は3製品。外国ベンダが多い
- ベンダのヒアリングから、小規模企業はカスタマイズを望んでいない。エクセル管理から知財管理システムに移るだけで業務見直しのメリットあり
というような内容です。詳細は、知財管理誌をご確認ください。
コメント
分かりやすく書かれた論説です。
大企業はカスタマズができる海外のクラウドを使い、小企業はカスタマイズの要望自体が少ないので国内ベンダのもので十分。どちらにしても、クラウド化は避けられない流れという印象を受けました。
同論説では、イニシャル時はクラウドが安く、ランニング費はオンプレミスが安いとありますが、これはベンダへの費用だけを見ての結果とあります。
人件費やサーバー保守費、減価償却費を入れると、知財システムの担当者がいるような企業にとってはクラウドにコストメリットがあると思います。
サーバーの構築、維持、メンテナンスもありますが、企業にとって本当に重要なのは、データ入力を特許事務所や年金管理会社に外注できるメリットです。
社員でデータ入力をできるほど、人材に余裕のある企業は少ないのではないかと思います。
企業の論理からすると、特許事務所でも事務所のシステムに情報を入れる作業をしているんだから、それを企業でするのは二度手間であり、情報を分けてもらいたいとなります。
一方、事務所としては、顧客企業ごとに異なったシステムに入力するのは、手間です。
事務所のシステムとデータ連携ができるとしても、顧客毎に違った作業になるので、これは面倒です。
特許事務所が一つのクライアントだけで成り立っているのであれば、問題ないのですが、複数の大手クライアントが、違った仕様でのデータ提供を要望してくると、対応するのが大変です。
大手の特許事務所ほど、この問題に悩まされていると思います。
商標の場合、マークアイのTMODSや、GMOブライツコンサルティングのBRANTECTなどの、国内商標企業のものが人気があるかもしれません。しかし、これらの会社は、自社サービスへの誘導のために、このサービスを開発、提供しているので、特許事務所への公開はあっても特例なのだと思います。
その意味では、特許のクラウドシステムの各ベンダに、なぜ、これらの商標専門システムが人気なのか、考えてもらいたいなと思います。
本来は、弁理士会などが音頭をとって、インターフェイスの共通化を検討すべきだと思います。ほとんど同じデータだと思いますので、やればできるでしょうし、そのメリットは業界全体に及ぶのではないかと思います。
特許庁、知財協会、弁理士会の共通の施策で推進して欲しいテーマです。