Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

副業人口の調査結果

初の1割超というけれども

2018年9月1日の日経に、副業人口が初の1割超という記事がありました。

www.nikkei.com

  • 副業人口が2017年に690万人。初めて就業者の1割を超え
  • 総務省の2017年就業構造基本調査
  • 副業を持つ就業者は267万人。就業者全体の4%
  • 副業を持つことを希望する就業者は424万人
  • 合わせて10.5%
  • 大企業が副業解禁に動いている東京と、沖縄、京都、奈良など全国の観光地を中心に増加

という記事です。

 

調査結果は、こちらです。

統計局ホームページ/平成29年就業構造基本調査の結果

 

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厚生労働省のモデル就業規則が2018年1月に発行され、副業はルール上は、原則OKとなっています。

モデル就業規則について |厚生労働省

モデル契約書を引用すると、

(副業・兼業)

第67条 労働者は、時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

その解説には、次の記載があります。

労働者の副業・兼業について、裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であることが示されていることから、第1項において、労働者が副業・兼業できることを明示しています。

そして、秘密保持と長時間労働防止のために、届け出があると説明しています。特に、ダブルで雇用契約を結ぶ場合、労働時間の通算で労働時間を見るという昭和23年の通達を紹介しています(相当、古い通達です。雇用でなく、個人でやる場合でも労働する時間は同じですので、突っ込みどころのある通達の引用です。雇用や個人営業に関係なく、総労働時間の関係で見るべきではないかと思います。)。

 

原則OKだけれども、個別にNGになる場合があり、届け出をもって判断するということで、厚生労働省のモデル就業規則の解説には過去の判例を使って説明がされています。

ただ、これらの判例は、過去の、副業が原則禁止時代の判例ですので、これからの原則OKの時代には、判断はよりOK方向になるように思います。

 

さて、判例でも原則OKで、政府も推進している副業ですが、冒頭の日経の記事の数字を見る限りは、2017年の調査の時点では、大きな変化があるとは思われません。

 

2002年、2007年、2012年、2017年と5年毎の調査のようですが、実際に副業をしている人は4%程度で、安定しています。

副業希望者が、5%だったのが、2017年にやっと6%になって、双方を足して、全体として、10%を超えたという程度です。

政府がこれだけ旗を振って、この程度しか増加しないのか?と思いました。

 

ただ、モデル就業規則の改訂が、2018年1月ですので、これ以降、増えるとすると、2017年は、それ以前のスタート時点での数字であり、次回の2022年の調査で初めて結果がわかるのかもしれません。

 

既に就業規則がある会社は、次の改訂のタイミングまでは、従来の副業原則禁止の就業規則と思いますが、新しくできる会社などは、はじめから新しいモデル就業規則をベースに規則を作ると思います。

 

社会一般に、新規則がなじむには、5年でも、まだ短いのかもしれませんが、本来、憲法上の職業選択の自由との関係が微妙な話ですので、少しでも改善するのは良いとは思います。

東京圏からの移住で300万円

300万円で何ができるか?

2018年8月28日の日経に、内閣府が地方創生の一環で、東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)から、地方への移住者に、最大300万円を補助する制度を検討するという記事がありました。

www.nikkei.com

  • 2019年度の概算要求に織り込む
  • 起業した場合は300万円まで
  • 転職の場合は最大100万円
  • 地域魅力創造有識者会議で検討
  • 対象は、東京圏を除く道府県
  • 東京圏の転入超過は、4年連続で10万人を超える
  • 2014年の閣議決定では、2020までに人口の出入りを均衡されることだった

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この話、少し前から、検討しているようです。

驚いた点は、「道府県」が対象とありますので、大阪府京都府も対象ということになります。当然、愛知県(名古屋)も同様になるはずです。

 

朝の電車のラッシュなどを見ると、東京圏の人口は多すぎると思いますので、何等か手を打った方が良いと思いますが、地方の方が生活は豊かなのに、なぜ東京圏に来るかです。

東京圏に来ているのは、結局は、地方には仕事がないからであって、地方での起業を誘発する仕組みが本筋です。

 

起業で300万円、転職で100万円というのは、税金のバラマキという批判もあると記事にはありました。

 

果たして、300万円で何ができるのか?と考えると、あまり大したことはできそうにありません。

大阪で、小さな特許事務所を開いたとして、家賃が月20万円とすると、年間で240万円となります。リースでも良いのですが、残りの60万円で、PC、机、複合機、書棚を揃えることは難しいかなぁというレベルです。

一人で、特許事務所を開業する程度なら、ありがたい金額ですが、フランチャイズドトール・コーヒーの喫茶店を開業にするとか、コンビニを経営するとかには、一桁以上、足りません。

 

以前も書いたかもしれませんが、外資などが、本格的に、日本に支社を作る場合、外国人は、特に東京というこだわりがないようで、大阪でも、京都でも、名古屋でも、福岡でも構わないようです。

たとえば、1000人の会社を作りたいという話があったとします。東京は家賃など会社を作るための費用も高いので、地方でも問題ないなら、地方の方が合理的です。

しかし、1000名の入ることができるオフィスはなかなか、東京圏以外にはありませんし、外国人の子供達を受け入れる学校、1000戸の優良な賃貸住宅(高級マンション)というインフラがネックになって、結局、東京圏にせざるをえないと聞きました。

 

補助金のバラマキではなく、東京を消極的に選ばざるを得ない原因を発見し、その解決のために、お金を使う方が、将来的に生きてくるように思います。

 

高級マンションを作るのは、民間の仕事のように思いますが、たとえば、大阪の中心部に、企業誘致したい国(例えばフランス、インド)を決めて、その国の外国人が高校レベルの教育まで受けられるような、インターナショナルスクールを誘致するというのは、どうかと思いました。

 

横浜の都筑区仲町台に、なぜか「東京独逸学園」という名前の学校があります。

Deutsche Schule Tokyo Yokohama

歴史 | Deutsche Schule Tokyo Yokohama

 

どの地方も、子供の数が減っていますので、遊休学校もあると思います。大阪府大阪市がやればできるように思いますが。

買ってみました

英単語の語源図鑑

2018年9月1日の日経の書評欄で紹介があった、「英単語の語源図鑑」をアマゾンで買いました。 

英単語の語源図鑑

英単語の語源図鑑

 

まだ、パラパラめくっている段階なのですが、この種の本としては大ヒットしているそうです。第1刷が2018年5月23日で、私の買った本は、2018年8月21日の第9刷とあります。毎週のように増刷している計算になります。帯には、10万部突破とあります。

 

語源は、英単語の数を増やすために、重要なアプローチということですが、難解な本が多く、ハードルが高かったようです。この本は、そこをイラストを活用して理解しやすくしています。

著者は、3名おられるようですが、筆頭の清水さんは、高校の英語の先生だそうです。他の2名の方は、イラスト原案を考えた英語の先生(イラストレータでもある)と、実際にイラストを描いた方という組合せです。

 

全体に、1000の単語の語源が解説されているそうです。この考え方を身につければ、10,000語レベルの単語力となるとのことです。

ネイティブの英単語力は、30,000語。東大入試レベルで6,000語。10,000語というのは、ノンネイティブとして、十分なレベルということです。

 

英単語には、接頭語+語根+接尾辞で成り立っており、この3つの意味を、例えば、attractionは、接頭辞(at:~の方へ)+語根(tract:引く)+接尾辞(ion:名詞を作る)で、「引くつけるもの」、したがって、「魅力」と説明されています。

 

1000語の英単語ですが、TOEICで良くみるものもあれば、案外知らない単語もあります。知っている単語で、語源の考え方を理解して、知らない単語で、語源で意味を想像する訓練ができる感じです。

 

通常、英単語を覚えるときは、英文中での使用例に何回もあたることで覚えますが、語源の方法では初見でだいたいの意味が推測できます。

本書では、これは、漢字の偏と旁(つくり)の関係と同じと説明しています(漢字では偏と旁から、ある程度、意味が想像できます)。

 

コメント

あれこれ読むべき本や記事があり、一つの本を、体得するまで時間をかけてじっくり読むことは、最近ほとんどないのですが、この本は、その価値がありそうです。

 

英語は、この1年半、鋭意修行中です。外国商標の権利取得についての英文を読んで日本語にしてクラインアントに伝える、また、クライアントの要望を英語にして送るという、コレポンの繰り返しです。

仕事は、専門用語が多いので、だんだん慣れてはきましたが、まだこれで良いという感じはありません。

 

また、この1年3ヶ月、毎週、英語の学校にも通っており、その宿題(日課のようなもの)を毎日1時間程度やっています。

そのためか、定期的に受けている、TOEICの得点も、1年で45点ぐらい上がり、上向きではあるのですが、自分なりの目標達成には、もう少し時間がかかりそうです。

 

弁理士試験の受験のときも、2年で受かるかと思ったのが、4年かかりました。TOEICも1年で目標に到達したかったのですが、目標まで、この後どのぐらいかかるのか、分かりません。

 

まあ、あきらめずに前に進むしかありません。

ソフトバンクとY!mobile

3ブランド体制

2018年8月18日の日経に、ソフトバンクの格安スマホブランドの話がありました。

www.nikkei.com

というような内容です。

 

コメント

数字が出ている点で、面白い記事です。ソフトバンクの契約が3000万件弱で、ワイモバイルの契約は300万件あるという数字です。大きな数字です。

 

第二ブランドであるとか、ディフュージョンラインとか、言われているものです。

"diffusion"の意味は「普及」という意味で、普及のために、低価格のラインを作ったという意味になるようです。

 

第二ブランドという言葉には、低価格という意味はありませんので、低価格帯を指すときには、ディフュージョンラインという言葉を使うようです。

などが事例のようです。

 

ソフトバンクがワイモバイルを展開しており、auUQモバイルを展開していますが、ドコモはディフュージョンラインがありません。

このあたり、ソフトバンクauの狙いは、もともとは、ドコモのシェアだったんだと思いますが、今や、ソフトバンク自体も大量の契約者がおり、その顧客を食ってしまう(カニバリゼーション)が、課題というのが、冒頭の記事の言わんとするところです。

 

カニバリは、よく議論になりますが、実際、カニバリで事業が縮んだという話はあまり聞きません。衣料品などは、市場が大きく、個々のブランドの規模は小さいので、問題が生じないのだと思います。

これに対して、通信は寡占ですので、カニバリの実態が目に見えて検証できるかもしれません。

経営学の先生などは、研究のやり甲斐のあるテーマではないでしょうか。

 

 

さて、楽天モバイルが第4の事業者として免許をもらい競争が激化しますし、政府の方針も料金を4割下げるようにという指導も入ってくるようですので、今までのように、儲からなくはなるのではないでしょうか。

 

日本の携帯電話メーカーは総崩れになり、その中でキャリアだけが儲かっていたというのも納得いかないものがありますし、一消費者として通信料金は高すぎるように思いますので安くなることは歓迎です。

 

ソフトバンクは、まだ、格安スマホで事業を伸ばす方向性のようですが、ドコモなどは格安スマホに参入せず、dポイントのような金融その他のサービスにシフトしているように思います。

 

 

最後に、LINEモバイルというのは、LINEがやっているのではなく、ソフトバンクがやっているブランドということも、知りませんでした。

LINEが運営しているものとばかり思っていました。

検索すると、LINEモバイルは、ソフトバンクが51%、LINEが49%で、ソフトバンクの子会社になっているようです。

49%の資本が入っていますし、LINEのサービスとの融合が前提のLINEモバイルではあるようですが、LINEというブランドを、子会社以外にブランドをライセンスしていることになります。

www.itmedia.co.jp

 

マンシングウェア

3社共有からデサント単独へ

2018年8月23日付のデサントの『「マンシングウェア」商標権の一社集約についてのお知らせ』というリリースを見ました。

http://www.descente.co.jp/jp/ir/180823_MSW.pdf

 

デサント伊藤忠東洋紡で共有で保有している「マンシングウェア」の商標権について、伊藤忠東洋紡の持ち分をデサントが譲り受け、一社保有とするという内容です。

  • 1964年からライセンスビジネスとして「マンシングウェア」ブランドを取扱開始
  • 1984年に、伊藤忠東洋紡デサントの三社共有で、日本及びアジアにおける商標権取得
  • 34年にわたり、3社共同で同ブランドのビジネスを展開。年間134億円の売上
  • 東洋紡が製造、伊藤忠商事が貿易、当社が商品 企画・販売
  • 目的は、同ブランドの意思決定を単独で行うことができる
  • 機動的、ダイナミックに、ブランドビジネスを運営

などとあります。

 

コメント

100億円を超える売り上げのビジネスを、三社共有という不安定な形態で、34年間もビジネスを続けてこられたということが、一番の驚きです。

 

三社は、製造、貿易、商品企画・販売と、役割分担がハッキリしていたのだと思いますが、それでも、珍しいなと思いました。

特に、製造は、生産委託先が沢山ありそうですので、東洋紡にお願いするメリットがあるんだろうかと思ってしまいました。

 

マンシングウェア(MUNSINGWEAR)は、ペンギンのワンポイントマークのゴルフウェアが中心のようです。

 

www.munsingwear-jp.com

 

海外では、アメリカを調べましたが、Original Penguinというブランド名のようです。具体的には、"Penguin”という言葉が大きくあって、その下にby Munsingwearというブランドがあり、そして、ペンギンのワンポイントマークあります。Penguinという言葉を重視しているようです。

 

製品本体はワンポイントマークというのは、同じですが、"Penguin"という言葉の扱いが違うようです。

www.originalpenguin.com

 

USのWikipediaによると、MUNSINGWEAR社は、歴史のある下着メーカーだったようです。 1951年にVassar Swiss Underwear Companyと合併し、ペンギンロゴは、1955年から。1960年代、70年代にゴルフシャツがヒットし、1991年にチャプター11、1996年にPremiumWearとなり、John Forsytheに買収され、その会社も2013年に破産したとあります。

MUNSINGWEARとOriginal Penguinブランドは、現在、Perry Ellisがオーナーとあります。

 

ちなみに、Global Brand Databaseをみても、日本などは、3社共有になっていますし、アメリカは、Perry Ellisとなっています。

 

デサントとしては、既に、1984年には、日本やアジアの商標権まで入手して、34年も商売をしていますので、欧米でのブランドの動きが、日本やアジアでの商売に影響があることは無いのだと思います。

 

しかし、日本のサイトを見ていても、過去の60年代、70年代のジャックニクラウスの出ているポスターなどが掲載されていましたので、アメリカ等でのブランドのレガシーは使っています。

 

1984年の商標権の買収時に、レガシーは使って良いとなっていたのか、今でも、使用料を払っているのかは不明ですが、どうしているのかなと思いました。

 

もう一つ、ロゴが違うのは、なぜなんだろうと推測してみました。

一番目立つ、製品=ゴルフウェアには、ペンギンマークしかありません。日本では、これをMUNGINGWEARと記憶させています。一方、アメリカでは、これをPenguin、あるいは、Original Penguinと記憶させています。MUNSINGWEARというブランドはサブです。

 

MUNSINGWEARというのは、もともとは下着メーカーのようですので、日本でいうとグンゼ福助のような会社です。

その会社が出したヒット商品がペンギンマークのゴルフウェアです。グンゼにあたるMUNSINGWEARを大きく出すよりは、ペンギンマークの称呼であるPenguinなり、Original Penguinなりを前に出す方が、特殊な製品ということを説明できたということなのかなと思います。

日本では、幸にも、MUNSINGWEARが下着メーカーとしてのイメージではなく、単に舶来品ということしか情報がなにので、こちらを活用しようとなったのだと思います。

商標登録表示Ⓡ再考(2)

グローバル商標での虚偽表示

 

米国商標法では、損害賠償を請求するためには、相手方の悪意を立証するか、商標登録表示をすることが必要とされており、Ⓡは簡易な商標登録表示方法として、普及しています。

 

一方、商標権をグローバルに考えると、国毎、商品毎の権利という側面があります。商標権がない国や、商標権がない商品に、Ⓡをつける、すなわち、商標出願中(権利にはなっていない)でしかない場合や、使用しているが商標権はない場合などは、Ⓡをつけることが、虚偽表示になってしまう場合があります。(この問題は、米国特許の国内問題とは、違う、グローバルな課題です。)

 

企業としては、虚偽表示を回避するために、ある程度は商標登録がとれているとしても、完全には自信がないので、Ⓡではなく、商標であると認識していることを示すTM表示としておこうという話をよく聞くようになりました。実際、Blurayなどでは、そのようにしています。

 

ただし、Ⓡではなく、TMを選択する場合に、米国で損害賠償請求する場合には、悪意の立証が必要になります。

この点、有名な商標の場合は、悪意の推定が働くという判例もあるようです。

 

商標登録が取れている有名な商標が、TMをつけていたり、ⓇもTMもつけなかったり、法律が想定していなかった奇妙な状況になっています(NIKEのスウォシュマークには、ⓇもTMも、どちらも付いていません。デザイン上の問題と著名性からだと思います)。

 

世の中、奇妙な方向に進んでいるように思います。

 

●ちなみに、

®️の話では、グローバル標準的な意味で、DennemeyerのWebサイトが良くできているようです。参考になると思いますので、ご確認ください。

Overview: Dennemeyer

 

アメリカは既述しましたが、その他、メキシコ、チリ、ペルー、フィリピンなどでは、Ⓡが付いていない場合、商標登録は第三者に主張できないため、商標登録表示は必須とします。それ以外の国では、第三者への権利行使可能という警告をしている効果です。

 

Ⓡは、通常、商標の右肩につけるようです。そして、権利がないのに、Ⓡをつけることは違法と説明しています。

ただし、英国ではどこかの国で登録があれば、違法ではなくなり、フランスでは、Ⓡに法的な意味を認めていないとあります。日本は、フランスに近い運用です。EUTMでは、欧州司法裁判所は、商品の自由な移動を優先して、広告や不正競争法の違反と考えないとあります。

 

Dennemeyerのおすすめは、輸入時にⓇを消したり、一般にパッケージからⓇ外すことではありません。

ドイツの判例を紹介して、製品や少なくとも広告に、このⓇは他国向けの情報と記載することを勧めています。

 

Dennemeyerは、結局、国毎に規制が異なるので、輸出地域、商品のリストに基づき、現地の商標代理人の意見を確認して、決定するしかないとし、TMもⓇもつけない方法を賢明かもしれないとしています。 

 

TMは、アメリカと英国で認められてきた表示ですが、ドイツでは、TMであっても商標登録取得後しか使用できないという判例(驚くべき判例です。登録商標と誤解を与え、不正競争にあたる)と反対の判例が対立しているようで、当面は「登録後にのみ」、TMを使用することを勧めています。

上述のドイツの判例は、面白い点を突いています。ⓇもTMも第三者に対する警告効果としては同じであり、その言わんとするところは分かります。

 

●なお、米国のTMEPのⓇの記載です。 

https://tmep.uspto.gov/RDMS/TMEP/print?version=Oct2014&href=TMEP-900d1e1285.html

 

●国毎に商標登録表示を、ⓇかTMかに、変えるというのは、大変な作業で、実務的に無理です。コストがかかりすぎます。

そうかといって、折角商標登録を取れているのに、社会に権利がとれていることを、全く主張せず、TMや無表示として、ごまかすのは、商標権者の努力義務としての商標登録表示の制度とあまり整合性は、とれていません。

 

●望ましくは、実際に製品を輸出する各国で、緻密に商品単位で、商標権を取得して、堂々と胸を張って、Ⓡをつけることです。

日本は、類似群コード(短冊)で商標権管理が楽なのですが、グローバルには単品指定です。すでに、欧州でもクラスヘディングが認められなくなっていますし、日本企業も目を覚ますべきです。中国も、韓国も、単品指定です。

また、アメリカでは、3M社の公報をみていると、毎年、3M商標の新商品を商標出願しています。

商品が追加されるたびに、商標出願するのが海外での商標権管理の基本と考えると、虚偽表示になるのが怖いからⓇではなくTMというのは、ナンセンスであり、積極的に商品単位で商品管理をして、外国出願をすべきとなります。

 

目標をここに置くと、日本企業の外国商標のレベルが一段とアップすると思います。このように、前向きに、Ⓡを捉えることが、外国商標の実務としては、あるべき姿だと思います。

 

 

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商標登録表示Ⓡ再考(1)

マーキング・トロール

 

商標登録表示として、Ⓡではなく、TMの方を使用するというケースをよく見ます。例えば、Blu-rayのロゴはTM表示です。

この点について、最近、米国特許法のマーキング・トロールの話が、ⓇではなくTMを使用する根拠だという話を聞きました。

 

結論からいうと、特許のマーキング・トロールの話は、特許だけの話で (しかも、すでに解決方向の話であり)、そもそも、商標とは関係ないようです。

 

●米国特許法のマーキング・トロールの意味の説明は、NGBのサイトに詳しくでています。

【Cases & Trends】 追跡 マーキングトロール訴訟 - 訴訟洪水の門戸を開いたForest Group判決後の展開(前編)|知財情報|日本技術貿易株式会社

米国特許法では、損害賠償を請求するには、特許表示が必要であるところ(287条)、虚偽表示については政府が500ドルの罰金を科すことでき(292条)、また、私人が政府に替わって追及した場合、半額を私人がもらえる制度だったようです。

ただ、以前は、500ドルが、侵害全体で500ドルと解釈されていたのに、CAFCが製品一個当たり500ドルと判決したために、パテント・トロールが、マーキング・トロールとなって、私訴を開始し、和解金をせしめるケースが頻発したというのです。

CAFCは、「公衆を欺く意思」という主観的要件を必要としたようです。特許番号は別にWebに記載するとか、警告を受けたら外すとかで、実際上は、テクニカルにトロールからの請求は、回避可能なようですが、トロールの裁判は多数あったようです。

 

●しかし、この特許のマーケティングトロールについては批判が多く、すでに、立法的に解決されているようです。現在は、政府だけが裁判を起こせるとか、実際に特許満了後に残っている特許表示は虚偽表示ではないとか、修正が入っているようです(292条)。

マーキングトロールに関する改正法 - Commutative Weblog 3

虚偽表示の罪(特許法第201条第1項第2号)

 

特許のマーキング・トロールの話は、以上のような内容です。

 

●日本の感覚では、特許と商標は同じような制度に思っていますが、米国では両者の制度は、だいぶ違います。

 

特許表示と商標登録表示についても差があって、特許表示では上記に説明したような500ドルの罰金というものがありますが、商標の場合は、商標権を取るのにUSPTOを欺いた点がFraudになり、取得した商標権が無効になるとかいう内容であり、500ドルの罰金という話が出てきません。

 

商標では、罰金の話がないので、そもそも、損害賠償金がなく、ⓇからTMへの変更と、マーキング・トロールは、関係無いとなります。

 

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