マーキング・トロール
商標登録表示として、Ⓡではなく、TMの方を使用するというケースをよく見ます。例えば、Blu-rayのロゴはTM表示です。
この点について、最近、米国特許法のマーキング・トロールの話が、ⓇではなくTMを使用する根拠だという話を聞きました。
結論からいうと、特許のマーキング・トロールの話は、特許だけの話で (しかも、すでに解決方向の話であり)、そもそも、商標とは関係ないようです。
●米国特許法のマーキング・トロールの意味の説明は、NGBのサイトに詳しくでています。
【Cases & Trends】 追跡 マーキングトロール訴訟 - 訴訟洪水の門戸を開いたForest Group判決後の展開(前編)|知財情報|日本技術貿易株式会社
米国特許法では、損害賠償を請求するには、特許表示が必要であるところ(287条)、虚偽表示については政府が500ドルの罰金を科すことでき(292条)、また、私人が政府に替わって追及した場合、半額を私人がもらえる制度だったようです。
ただ、以前は、500ドルが、侵害全体で500ドルと解釈されていたのに、CAFCが製品一個当たり500ドルと判決したために、パテント・トロールが、マーキング・トロールとなって、私訴を開始し、和解金をせしめるケースが頻発したというのです。
CAFCは、「公衆を欺く意思」という主観的要件を必要としたようです。特許番号は別にWebに記載するとか、警告を受けたら外すとかで、実際上は、テクニカルにトロールからの請求は、回避可能なようですが、トロールの裁判は多数あったようです。
●しかし、この特許のマーケティング・トロールについては批判が多く、すでに、立法的に解決されているようです。現在は、政府だけが裁判を起こせるとか、実際に特許満了後に残っている特許表示は虚偽表示ではないとか、修正が入っているようです(292条)。
マーキングトロールに関する改正法 - Commutative Weblog 3
特許のマーキング・トロールの話は、以上のような内容です。
●日本の感覚では、特許と商標は同じような制度に思っていますが、米国では両者の制度は、だいぶ違います。
特許表示と商標登録表示についても差があって、特許表示では上記に説明したような500ドルの罰金というものがありますが、商標の場合は、商標権を取るのにUSPTOを欺いた点がFraudになり、取得した商標権が無効になるとかいう内容であり、500ドルの罰金という話が出てきません。
商標では、罰金の話がないので、そもそも、損害賠償金がなく、ⓇからTMへの変更と、マーキング・トロールは、関係無いとなります。