商標を形容詞的に用いる?
事務所で薦められて、「米国商標法・その理論と実務」(創英知的財産研究所著、Holland & Hart協力、経済産業調査会)を読みました。ざっと米国商標法の復習をするのに役立ちます。その中で、「商標の普通名称化を防ぐための具体的措置」というページが気になりました。
米国商標法・その理論と実務―Q&A方式による理論解説 (現代産業選書―知的財産実務シリーズ)
- 作者: 創英知的財産研究所
- 出版社/メーカー: 経済産業調査会
- 発売日: 2004/10
- メディア: 単行本
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商標の普通名称化は、「エスカレーター」「エレベーター」のように、かつては商標であったものが、商品の普通名称となってしまって、誰が(どの会社が)使っても良いようになってしまった状態をいいます。
本来、独占的に使用できる知的財産が、社会の共用物になるのを避けるため、米国の商標実務家は、次の措置を薦めているとのことです。
①マークは、それ自体を名詞として用いるのではなくて、形容詞的に、それに続く名詞と組み合わせた形で用いよ。
例えば、XEROX photocopierと、商標に一般名称を付けて、XEROXは商標であることを明確にするためです。
②商標の部分を商標以外の部分から区別して用いよ。
文章中に商標を書くときに、大文字にしたり、フォントを変えたり、TMや®をつけて、商標部分を他の部分と区別する。
③商標は所有格で用いるな。
XEROX's photocopierとは書かない。①とセットで、XEROX photocopierとするという意味と思います。
④商標を複数形にするな。
two XEROXsではなく、XEROX photocopiersとする。
⑤商標は、それ自体を動詞的に用いるな。
「xeroxする」という用い方はしない。
コメント
この①~⑤は、基本的に、新聞記事やカタログのような、文章中に、商標を書くときの注意点です。この中で、気になったのは、①と③です。
表面的に理解すると、ブランドマネジメントの世界で云われていることと、矛盾するところがあるためです。
一般に、ブランドはロゴになっているので、ロゴと他の要素を結合させることを嫌いますので、①や③はブランド表現としてはありえません。ポスターの左肩や右下のブランドロゴには、何も他の要素を追加しないのが、普通です。
また、ブランド(Brand Name)に他の要素(普通名称部分)を追加することは避けるよう指導します。
理由は、A)ブランドロゴはシンボルとして、シンボルらしく独立して使用するという考えが一つです。
B)ブランドに、別の要素を付けると、別のブランドになるというのがもう一つの理由です。「楽天」に「トラベル」を付けた「楽天トラベル」は、通販の「楽天」ではない新ブランドになります。また、例えば、「ソニー」に「生命」を付けた「ソニー生命」は、大きなブランド拡張になりますので、ロゴなどについて、細心の注意が払われています。
アップルのApple watchやApple TVは例外であり、同社が特別に伸ばしたい商品で、ブランドと普通名称(記述的な部分)がセットになった商標で、企業としては、相当、気合の入った商品ということになります。