Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

日立とマークアイがパートナーシップ契約

特許情報入力サービスで

2018年8月9日に、日立製作所とマークアイの双方のWebサイトで、両社が知財情報の入力業務で、パートナーシップ契約を結んだという話があります。

www.hitachi.co.jp

マークアイと日立製作所が知的財産分野のサービス提供における協業パートナーシップ契約を締結 | 株式会社マークアイ

 

日立のWebサイトには、

  • 日立の知的財産管理システム「PALNET/MC6」および日立システムズが提供する「PALNET/MC Cloud」は、業界TOPシェア
  • その顧客向けに、マークアイが特許情報データ入力サービスを提供
  • データ入力にかかる作業負担の削減、費用の低減、入力作業の精度向上
  • 現在、各企業は、知的財産部の社員などにより手作業で入力
  • 特に、外国出願は特許情報の入力項目が多く、業務負荷が高い
  • 知的財産部は入力作業を削減、特許戦略の立案などへ注力
  • セキュリティ、機密性を確保できる環境で作業を行う
  • 情報入力にはデータインポート用ツールを使用
  • 顧客の「PALNET/MC6」「PALNET/MC Cloud」には直接アクセスしない

 

また、マークアイのWebサイトには、

  • マークアイは、グローバル企業に向けた商標権専用の管理システム「TMODS」を開発。長年にわたり、国内外の商標データ入力支援サービスを提供
  • 商標データ管理で培ってきたノウハウを活かした入力支援サービスを特許の分野において提供
  • 国内外の特許実務経験者を中心とする在宅チームが、書誌的事項を記載した書類の仕分け・入力業務

マークアイのWebサイトには、説明図があり、これによると、代理人によるコレポンがマークアイに入り、それをマークアイの在宅チームが、入力するとあります。

 

コメント

日立のシステム向け限定とはいえ、面白いサービスが出てきたなという感じです。確かに、外国出願の書誌的情報は、各国の法制度情報と語学が必要であり、素人では簡単には扱えません。

 

時代の流れだと思います。企業と特許事務所ではやるべき仕事が異なり、企業では、各国法制の理解や入力業務に、それほどの時間やパワーは割けませんし、一方、企業の入力にミスがあると大変です。特に、働き方改革の中、入力作業で残業などはできそうにありません。

 

以前、特許事務所に勤務していて外国事務をやっていて現在は家庭にいる主婦は、沢山います。また、企業知財部や特許事務所を退職した経験のある方も沢山いると思います。そのような方の仕事としては、最適です。

 

今は、日立のシステム向けという限定がありますが、将来的にはどうなのかと思います。特許事務所なども、業務拡大・顧客支援という意味では、今回のマークアイと同じことができないものかと思います。

特に、事務所の顧客が、日立のシステムを使っているときに、同じことができそうです。そういう意味で、今回の協業が、独占的契約になっているのかどうか、興味があります。

 

マークアイのWebサイトの説明図によると、各国代理人からのコレポンが、直接マークアイに入るように見えますが、ここは、どうなんでしょうか?

通常は、

●各国代理人が英語でコレポン(除く、中国、韓国、台湾)→日本の代理人(特許事務所)が日本語化→顧客企業

というのがルートであり、顧客企業は、日本語の紙媒体から特許情報を自社で入力し、それが、負担になっていました。

 

マークアイも、商標なら自社が国内代理人になっているものがありますが、特許はやっていないので、どうしても、日本の特許事務所経由でデータをもらうことになります。(直接出願している会社は少ないと思います。)

日本の特許事務所は、日本語で、顧客報告用の帳票を作成しますので、それをマークアイに送るなら、日本語からの入力業務となり、入力の正確性は求められますが、それほど高度な業務ではありません。(マークアイが関与しなくても、他の業者でもできそうです)

 

日本の事務所に来た電子メールを、そのまま、加工せずにマークアイに転送するとなると、中間処理などは、マークアイの業務範囲ではないと思いますので、出願・登録報告との切り分けが難しくなります。

(もしかすると、中間と出願・登録報告の仕訳までは特許事務所の仕事になるのかも知れません。)

 

昨今の特許事務所では、企業から、電子データでの納品要望が多いのですが、

1)単に保管のために、PDFで納品して欲しいというもの

2)そのときに、読み取り可能な形式のPDFで納品してくれというもの

3)企業のシステムに合致した形のデータで、納品してくれというもの

4)企業のシステムに入力してくれというもの

5)マークアイが代理した外国商標案件のように、マークアイが自社のクラウドシステムに入力してくれるもの

など、色々あります。

 

今回のものは、1)~3)の何れかの形で、特許事務所から企業に納品し(企業とマークアイとにパラでメールで納品かもしれません)、マークアイが、それを入力するのだと考えました。

 

企業から特許事務所に移って、知財情報の入力業務は、業界全体として重複作業となっており、大きな無駄があると思っていました。

従来の特許事務所の発想では、自分の出した書類には責任をもつが、企業のシステム入力まで責任を持てないという考えだと思います。

 

また、特許事務所でもミスは起こりえますので、企業は企業の専門家の目で、ダブルチェックする意味もあったと思います。

 

その企業のダブルチェックの部分が、マークアイという外部に移るというように理解しましたが、それでも、二重の業務になっているのは事実です。

 

特許事務所も、企業を先取りする気概が必要であり、マークアイを待つまでもまく、特許事務所側から、このような提案を、日立に働きかけるべきです。一つの事務所では無理でも、複数集まれば、可能なこともあります。CPAは、そのようなところから生まれたのだと思います。

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将来的には、特許事務所側が、専門家によるダブルチェックや、AIでのチェックをするなどして、データ入力まで責任をもってやるようになるのではないかと想像しました。

正確性について、マークアイと特許事務所の競争となるイメージです。