日本には制度がなく、先進国では少数派
2020年4月3日の日経に「秘密特許の導入」についての記事がありました。
(真相深層)「秘密特許」で抜け穴防げ 安保技術、公開禁止ルール浮上 企業への補償など課題 :日本経済新聞
- 安全保障上、重要技術情報の国外流出を防ぐ「秘密特許」が議論に
- 技術安全保障研究会や産業構造審議会の安保に関する小委員会が「秘密特許」の必要性を示す
- 特許情報をコントロールする制度が全くないのは、G20 で日本とメキシコだけ
- 米国は、国防総省などの判断で公表禁止。ライセンスや外国出願の制限。出願人には国から一定の補償
- 日本では「秘密」という言葉に、国民の知る権利との関係で反発あり
- 企業への投資を通じた技術の国外流出については、5月に改正外為法が施行。しかし、十分ではないとの認識
- 企業は、秘密特許の線引きや補償に関心
というような内容です。
コメント
記事にはウラン濃縮技術の特許が北朝鮮の核開発に転用されるリスクの記載があります。また、民生技術であっても軍事技術に転用可能なものはあるでしょうから、企業が心配する秘密特許と通常特許との線引きは難しいだろうということが容易に想像がつきます。
記事では、米国では国防総省などの判断で、公表禁止が命じられるとありますが、そうなると日本では防衛省の判断ということになるのでしょうか。
ただし、先ほどのウラン濃縮の話でいくと、経済産業省や外務省です。
多くの官庁が特許の公表について審査をする必要が出てきそうです。
公表する時期は、出願から18か月後ですので、この期間内に関係官庁が特許の公表を判断する必要が出てきます。この作業自体も大変な作業であるように思われます。
キーワード検索などで、ある程度の絞り込みはできるのでしょうが、最後は専門家が公表、非公表を決定する必要がありそうです。
また、非公表となったものは、非公表以外にどのような制約があるのか、記事にあったように外国出願できないのか?ライセンスできないのか?という点も論点になりそうです。
これに近いものですが、海外の研究所で発明されたものは、当該国で第一国出願をしないといけないというルールで、秘密特許を議論するなら、このような制度も一緒に議論することになるのではないかと思いますが、今回はどこまでの射程範囲なのでしょうか。
米国の場合、歴史的にも、国防総省は技術開発のパトロンであり、国防総省には相当な技術のエキスパートがいるように思います。
日本の防衛省などが中心となるとしても、技術の目利き、判断、補償をする機関を作らないと、折角、秘密特許の制度を作っても、なかなか上手く回らないような気もします。
(※ 検索をしていると、特許法の条文にはないが、日本にも一部、秘密特許があるというブログ記事がありました。日米間の「軍事関連特許の秘密保持に関する条約」により、米国で秘密特許の場合、日本でも秘密となるそうです。)
さて、秘密意匠は、昔からありますが、こちらはマーケティングリサーチのためと説明されており、企業のための制度です。意匠には、公開代償の独占権という発想は、特許よりも少ないのだと思います。
最近は、商標の公開もインターネットで簡単に閲覧できるので、本当に企業がパブリシティしたい時期とネットで話題になる時期がズレているという問題があります。企業の立場では、商標でも、意匠のような制度があっても良いような気がします。
商標では、意匠以上に公開代償の独占権という発想はないので、出願人の希望で、登録まで秘密にするという制度もありだなという気はしますが、商標調査にブラックボックスが増えてしまい、調査に支障がでるという反論がありそうです。
ではなぜ、意匠では認められるのでしょうか。余程、第三者に影響がないからでしょうか?
ちょっと簡単には結論が出ません。