Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その36)

商標権の効力の拡大ー連合商標と防護標章

商標権の効力の拡大として、連合商標と防護標章が説明されています。

 

連合商標も、防護標章も、母法であるイギリスにおいても廃止されたので、登録促進の名目下に連合商標制度が廃止された。

ただし、防護標章制度は廃止されずに残った。

 

連合商標(associated trademark)は、禁止権の範囲を明確にするものであるが、ストック商標の過剰な確保に利用され、不使用商標の増大を招く一因になった。

連合商標廃止に伴い、類似商標の分離移転、同一商標の分割移転が可能となったが、連合商標の持っていた紛争予防効果がなくなり、また、新たに導入された混同防止付加表示請求権は、実務上、いろいろな問題点がある。

 

防護標章(deffencive mark)は、不正競争防止法より迅速・容易な登録手段で、重ねて保護するものであり、行き過ぎがないように、類似の標章や類似商品・役務には及ばない。

そのため、一部の酷似させることを目的とする不正商品事件以外には使うことができず、一般大多数の模倣事案では、防護標章制度は直接に働かない。防護標章制度は不人気であり、登録が困難な割に、いざというときに役に立たないもので、著名性立証のときに役立つだけである。

 

コメント

防護標章制度に批判的な人は、非常に多いと思います。中国の馳名(チメイ)商標制度の方が、著名商標保護の実効性が高いですし、インドの周知商標登録制度(英語では周知商標と著名商標の差はなく、双方がWell-known trademarkですので、翻訳としては周知商標登録制度となります。内容は著名商標登録制度です)も、中国のものに近いようです。

 

防護標章制度は、日本の商標制度の盲腸のようなもので、無くても良いが、著名商標の保護が不十分であるということを、日本人に考えさせるために、政策的に残したというのが正しい理解です。

一刻も早く、防護標章制度を改定して、中国やインドのようなある程度実効性のある著名商標の保護制度にするか、あるいは、類似概念を最高裁が「小僧寿し事件」で示した混同的類似概念に、意識を変えて、周知商標や著名商標の類似範囲は広く、未使用の商標の類似範囲は狭いという運用に変える必要があります。

そのようなことをすると、特に、周知著名ではないが、権利だけは沢山もっているような既存の権利者が不利益を被るのだろうと思いますが、既存の権利者よりも、実際の使用者を保護すべきですし、産業政策的に見ると、大企業よりもスタートアップが活躍しやすい制度にすべきですので、知財協会や弁理士会に代表される、既存の権利者の意見を聞かずに、国民のために、必要な法改正をすべきと思います。

 

さて、小野先生は、連合商標は積極的に評価されていました。連合商標を積極に評価するのは珍しいなと思います。

小野先生の立場は、不正競争防止法旧6条の商標権の権利行為の適用除外は、登録主義を貫くためには、必要な条文であって、それを無くしてしまうと、不正競争防止法が優位となり、商標登録制度の存在価値がなくなるというものです。

 

それ自体はその通りですが、登録主義の内容を変えるしかないかなと思います。

ドイツなどは登録主義といいつつ、登録時には使用は要求されませんが、抵触性の審査=異議申立は、不使用商標を根拠としてはできませんし、権利行使も不使用商標ではできませんし、商標権の発生理由自体、商標登録がなく未登録周知商標でも商標権が発生するとしていますので、ドイツを見本に、登録主義を再整理するのが、一番、現状に会っているのではないかと思います。

また、相対的拒絶理由の審査を残すなら、アメリカ的に残すことも可能です。

 

最近審査で類似判断が甘いというのは、アメリカに近づいているのだとます。

ドイツ的な要素は、権利行使時に、不使用では権利行使できないとすることです。既に損害賠償請求権は、不使用では発生しないと理解されていますが、不使用ではは差止請求できないという判例が出てくると、日本の商標制度も、相当、前に進むと思います。